最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga

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終章 リュータとそれぞれの話

第八十八話 ミチルの話

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 一部の人たちに「メス勇者」と呼ばれている藤堂満です、こんばんは。
 ただいまの時刻は、午後八時半です。
 現代人の私としては寝るにはかなり早い時間ですが、私と一緒にいる面々はすでに夢の中の住人です。
 私は眠くないので少しばかり考え事をしようかと思っていましたが、折角ですので一緒に旅をしているこの方々を紹介しましょう。

 私の左側、一番近くにいるのが、緑の髪のドラちゃん。私の服のスソを指で軽く摘まんでいる十二歳くらいの子供特有のあどけないしぐさと、ちょっと男の人には見せられない緩み切った寝顔がチャーミングな女の子。しかしその正体は、この世界では非常に珍しい神様の子供、妖精さん。その中でも力ある「大地の神様」の子供、ハイドライアドです。
 そんなすごい存在だけど、見た目も行動も年相応のかわいらしい女の子です。私のことを気に入ってくれたのか、こうやってよく一緒に眠ってくれます。

 続いて、私の右側にいるのは、ソラミさん。黒い髪なのに銀河のように煌めいているちょっと人間離れした容姿の女性。彼女もまた妖精さんの一人で、本人が仰るには「星空の神様」の子供、ハイデカンだそうです。
 そんな彼女は今晩もまた、苦悶の表情を浮かべて目をつぶっています。「行き遅れじゃないから」と時折漏れ聞こえる不穏な寝言と、その後で安堵して、すごく男の人には見せられないたるみ切った寝顔がぶきm・・・、いえ、とにかくそう言う方です。長寿な妖精さんの中でも彼女は最古参だそうですが、見た目は出来る社会人、そして見た目に違わず知識は豊富、そして意外にも料理も得意で、先ほどの寝言の件さえなければ非常に頼りになるお姉さんです。

 続いて正面。私につむじを向けているのは記子さん。白い髪に黒のストライプが、あ、今日は横なんですね、とにかくそう言う髪色の女の子です。気分によってストライプや地色の色が変わったり、縦だったり横だったり斜めだったり太くなったりする、人間離れどころかもはや人間じゃないのを全力で主張している女の子です。そんな人間じゃない彼女もまた妖精さんで、「記録の神様」の子供、ハイピクシーです。
 ピクシーと言うと妖精全般の事なのですが、彼女が言うには、自分は元は形のない霊体に近い存在で、本来は実体化しない。それがどういう訳か実体化した為に固有の種族名はなく、通称であるハイピクシーと名乗っているそうです。そしてそんな事情から、彼女は能力が元々低く、魔王に加護を断ち切られてはいないですが力の程は今の私たちとそう違いはありません。
 そんな見た目だけが人間離れした彼女ではありますが、心は女の子です。あまり自己主張はしませんが、行動する時はとても大胆で、一番最初にお風呂に乱入したのも彼女でした。まさか幼いドラちゃんよりも早く行動するとは誰も思っておらず、周りは「こんな所に伏兵が!?」と驚いていました。

「ふふっ。それでも寝顔はこんなにもかわいい」

 紀子さんは記憶を司っているだけあって、夢の操作もお手の物だそうです。今もいい夢を見ているのか、優し気な表情で眠っています。あまりのかわいさに頭を撫でたいですが、触れた相手の記憶を無意識に読み取ってしまう彼女です。意識していればそんな事はないそうなのですが、眠っている間に触れるとその能力が誘発され、彼女を起こしてしまいます。だから見つめるだけ。触れられないのは残念ですが、ふふふ、それでもかわいいなぁ。

 私は一人っ子だったから、姉妹がいたらこんな感じかな、と少し嬉しくなります。
 しかしここまで気を逸らしていても、まだ眠くはありません。最近は魔物を狩る頻度が増えたので運動不足と言うほどではありませんが、でもすぐに寝入るほど疲れてもいません。

「明日はもうちょっと運動量、増やそうかな」

 一時期は魔王によって神様から授かった力がなくなって体調も不良だったけど、それももう慣れました。むしろ今は以前よりも気持ちが軽いです。力は減ったけど髪は戻ってきました。もうそれだけで生きる気力が湧いてきます。

「う、うーん」

 聞こえた声の方を見ると、記子さんの右側、苦し気に寝返りを打つ女性の姿が見えます。真っ赤な髪に、今は寝ていますが、起きているとかなり粗野な言葉づかいで私を最初に「メス勇者」と不名誉な二つ名をで呼んでくれた真紅さんです。
 彼女もまた妖精さんです。稀有な存在のはずの妖精さんですが、ここには大勢集まっています。それには沢山の事情がありますが、私としては定められた運命だと思っています。
 それはさておき、その真紅さんですが彼女は「火の神様」の子供です。それと同時にハイゴブリンと言う種族でもあります。ゴブリンと言えばファンタジーの定番ですが、元々は人と同じような種族だそうで、私の知るゴブリンは魔物化している別物です。名前が同じで紛らわしいですが、サルと人間くらい差がある存在なので一緒くたにすると怒られます。
 そんな一風変わった彼女ですが、その変わり具合は外見にも表れています。彼女のファッションはかなり独特で、私なら絶対着ないであろう前衛的な格好をしています。ただの帯を体に巻いただけのようなスタイルで、もうそれは痴女と呼んでも差し支えないんじゃないかなと思ってしまうほど露出が多いのですが、家事全般が得意でお姉さん気質のとても面倒見がいい人です。ドラちゃんは属性的に苦手だそうですが、それさえなければと私の次に懐いています。口調や見た目と人格がもっとも噛み合っていない人ですね。

「でもなんでそんな苦し気に・・・、あ!?」

 よく見ると真紅さんの足が記子さんの足にかかっています。寝相の悪い彼女ですが、今日は一段と大胆です。最初に左足が記子さんにかかった後で、寝返りでさらに左側、記子さん側へと移動しています。いかにも不器用な真紅さんらしい動きですが、紀子さんを見れば、わずかに眉をひそめています。どうやら状況から察するに、真紅さんの足蹴を不快に思った紀子さんが真紅さんに悪夢でも見せているのでしょう。地味ですが、非常に恐ろしい攻撃です。

「しょうがないですね。ドラちゃん、ちょっとごめんね」

 おねむのドラちゃんには聞こえていないでしょうが、それでも一声かけてから私の服を軽く摘まんでいるドラちゃんの手を外します。それでも起きる様子はないですが、念のためにそれで起きなかったかを確認してから立ち上がり、紀子さんに触れないように歩いて真紅さんの足をそっと移動させます。足を元の位置に戻して、はだけたタオルケットを元に戻します。

「この配置は失敗ですね。明日になったらまた相談しようかな」

 普段であれば紀子さんはどちらかの端に陣取っていますが、今日はローテーションの都合でこうなっています。まずドラちゃんは私とセットに、ソラミさんは記子さんの隣は断固拒否。そして真紅さんは記子さんを挟んで反対側で眠る藍子さんとは絶対に隣り合いたくないので、どうしてもこういう配置になってしまいました。

「属性の相性問題はあるけど、どうにかならないでしょうか」

 全部で私たち女の子が九人と、リュータさんを含めての総勢十人。
 大所帯で、なおかつ全員がリュータさんの、その、お嫁さん。つまりは家族。
 だからもっと仲良くできたらいいんだけど、何か方法はないのかな。

「それは無理」
「あれ? クロちゃん?」

 声を掛けられ顔をそちらに向ければ、先ほどまでこの場にいなかった七人目、「闇の神様」の子供クロちゃんが入り口にいました。彼女は今日の当番の一人で、今頃ならこの場にはいないエルフの二人、ハイエルフのシルビィちゃんとダークエルフのミントさんと共に、その、子作りに励んでいるはず。

「もう十分もらった」

 それにしても戻ってくるのがあまりにも早すぎるので心配になった私に対して、下腹部に手を当てて微笑むクロちゃん。見た目が私より年下の十五歳程度だからちょっと背徳感があるけど、その幸せそうな顔を見たらそんな意識も飛んでしまう。

「それに、あの二人と合わせるのは無理。激しすぎる」
「あ、うん。そうだね」

 私たちの中でのリュータさんへの執着度をランク付けるなら、一位は間違いなくシルビィちゃんです。リュータさんのお嫁さんが増える事に最も肯定的な人物だけど、正妻の座は誰にも譲らない。そんな子です。綺麗な金髪と透き通るような新葉色の瞳に、少女と大人の女性の中間の顔立ち。私の知るエルフらしいエルフ。その年齢は八百歳を超えているそうで、寿命に関しても加護が生きているから相当に長い。とは言え、大半を寝て過ごしていたそうで、それだけに知識に偏りがあったり、意外と知らない事も多い。お姉さん気質だけど、抜けているところも多いかわいらしい女性ですね。あと、家事が大の得意で、作るお料理は絶品の一言。和食メインだけど、この前作ってくれたハンバーグなんて最高だった。私が彼女を嫁にしたいくらいです。

 そしてもう一人、二番目にリュータさんに執着しているのがダークエルフのミントさん。ミントさんはダークエルフだけどシルビィちゃんとは違い二メートルを超える大柄な女性。ただこの世界のエルフは大半の人がこのサイズで、一部の人たちからは「巨人族」なんて呼ばれています。そんな彼女はリュータさんの匂いが大好きだそうで、隙あらばあの巨胸にリュータさんの頭を抱え込んで、頭のてっぺんの匂いをクンクンしています。ちょっと変態さんです。いえ、エッチの時はリュータさんの全身を舐め回すので、相当な変態さんです。大柄なその姿とは似ても似つかないその立ち振る舞いに、時折ミントさんは大型犬っぽいなと失礼にも思ってしまいます。穏やかな性格をしていらっしゃるので言っても怒ったりはしませんが、繊細な方なので傷つくかもしれません。それとなく言動に注意している方ですが、そう言う所が見た目とのギャップがあり萌えます。

 その二人ですが、私たちとは違い加護が切れていないので体力が非常に多いです。だから他の方々の時とは違い、ほぼ一晩中休みなく行為に没頭します。私たちも普通の人間よりは体力が多いのですが、あの激しさで一晩中は無理で、どうしても先にギブアップしてしまいます。彼女もまたそれで先にギブアップしたのだと思いますが、それにしてもいつもなら日付が変わるまでは粘ります。今日はいくらなんでも早すぎませんか?

「じゃ、お休み」
「え? あ、はい、お休みなさい」

 ドラちゃんが私と引っ付いて寝ているので、この寝室のスペースには若干の空きがあります。ドラちゃんのさらに左側にささっともぐり込んだ小柄なクロちゃんは、もう寝ています。
 そのやや疲れた姿から察するに、今日は相当激しかったのだと思われます。ごくり。

「私は、明後日」

 もうすっかり心だけではなく、体もリュータさんのものとなった私ですが、それでもいまだに緊張をします。あっちの世界にいる時にはまったく想像していなかった展開ですが、それでも不安はなく、むしろニヤニヤが止まりません。
 あちらでゲームをしていた時に想像していたシチュエーションには何一つかからない、ごく普通の行為。それがこんなにも幸せだなんて、知りもしませんでした。

「ああ、さようなら、腐女子だった私」

 かつては触手モノから催眠モノなどの激しいジャンルが結構好きでした。BLも嗜むイマドキ女子でしたが、そんな私とはもう決別しました。
 普通が一番です。

「んにゅ? んにゅーー」

 ぐっと握りこぶしを作っていた私の服を掴むドラちゃんの手で我に返ります。
 誰も見ていないとは言え、ちょっと恥ずかしいですね。
 さて、そろそろ眠くなってきたので寝たいと思います。

 この世界に来て色々ありました。
 髪のお陰で引きこもりになったりと色々あり恨みもしましたが、今は感謝の気持ちでいっぱいです。

 私をこの世界に呼んでくれた神様へ。
 ありがとうございます。

 おやすみなさい。
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