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第一章
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しおりを挟む「一九……初めて聞く数字です……」
「逆にそれ、すごいよね!?」
俺のせっかくの暴露も、結局カッコ付かなかった。
なんかもう、はえー、って感じで姉妹が感心してしまっている。
もっとこう、なんで!? そんなまさか!? みたいな反応を期待していたのだが、肩透かしだ。
「あれで分かるのは所詮素質の比率だけだ。そんな比率でも、俺は人並みに体術も扱える。そもそも素質があってもそれを磨かなければ、才能として開花もしないがな」
そうなのだ。俺は今まで自分の肉体能力の才能限界は低いと思っていた。
事実、低いのだろう。
だが、それをレベル上限突破のチートにより、実力的には克服しつつある。
比率の一は最低限の数字だ。それ未満は生命体として存在しえない。神様が元から割り振ってある値だから間違いはない。
そして問題はその比率ではなく、俺の持つ器だ。
いくら全体の十パーセントしか素質がないとはいえ、俺の器はチート級。その全体そのものがバカでかい。
昨日出会った四等級の冒険者の戦士が七三の才能比率としても、器が百だとしたら、肉体才能の絶対値は七十だ。
それに対し、俺の器はおそらくだが千は超える。十パーセントでも百。
はっきり言って、昨日の連中とはタイマンなら近接戦闘だけでもまず負けない。
ただし、取得できるスキルは少ない。
例えば、体術二以上が必須のスキルは取れない。
『タッチヒーリング』、お互いの魔力と生命力を混ぜ、相手のケガを治す技術は体術四以上が必須なのでとうぜん使えない。
ただし俺はそれを超える魔法を持っているので問題にはならんがな。
「俺は普段、剣士として振る舞っている。だからお前らも人前ではそう扱え。いいな?」
「はい!」
「かしこまり!」
シスゥ! お前、本当に、分かってるんだろうな!? あぁ!?
「そ、そんなに見つめられると照れるよぅ……」
睨 ん で る ん だ よ !!
気付け!
そんな気の抜けるやり取りの後、俺は二人を連れて冒険者ギルドへと来た。
ギルドの社屋はでかい。ダンジョンの入り口の管理もあるし、宿泊施設もあるし、万が一のために兵も常駐している。街の中に砦があるようなものだ。迷宮都市はどこもこんな造りだそうだが、俺の見知った都市とはまったく異なる様子に最初は戸惑ったものだ。
ここへ来たのは、冒険者登録をするため。
「と言う訳で、やれ」
「は、はぁ……」
いつもの職員にそう告げる。戸惑いつつも、俺が連れてきた二人の手続きをする。
俺は女は嫌いだ。だから目の前のこいつも男だ。
そいつが少しモジモジしつつ、やや高めの声で俺に聞く。
「あの、その方々は恋人ですか?」
はぁ?
「げぼくだ」
「げぼくです」
「げぼく」
「は、はぁ……。カイ様のげぼく、と……」
ギルドカードの情報にそう記す職員。
いや、お前、何してんの?
「保証人様との関係も登録しなければならないので……」
そういうことは先に言え! ボケ!
「それではこちらをお持ちください……。なるほど、そういうことですか」
ギルド職員が持たせたのは、簡易版の才能測定器だ。
公開されることはないが、ギルドとしては前衛か魔法使いかは分けておきたい。そういう事情から強要されている。
俺も最初は戸惑い、拒否しようかと思ったが、結局受けた。
そして今の今まで俺のその情報がもれることはなかった。家族の重大な秘密は、たとえ身内であっても公表なんかしないというギルドの方針が貫かれていたのだ。
だからこそ、俺は冒険者ギルドを、ほんの少しだけ信じている。
ほんの少しだからな!
「終わりました。成人なさっているので、六等級からのスタートです」
「ありがとうございます」
「わぁ、これでわたしたちも一人前だね!」
そんなわけがない。
ロクに戦うすべも持たずに何を寝言言ってるのか。
それに見てみろ。
シスの不用意な発言で周りの冒険者共が殺気立った。
あんな小娘に何が出来る、と。
フード付きのマントで頭をすっぽりとおおっている都合、二人が亜人だとはばれていない。
だが、話す声や体格で女と分かるし、その体格から強さもおおよそ見当がつく。
冒険者は、冒険をなめる者を許さない。それがたとえ、家族であってもだ。
無駄死にして欲しくないだとか、そんなお優しい理由だけではない。依頼の未達成は家族の悪評につながるのだ。
俺も来た当初は洗礼を浴びた。いや、洗礼をした、というのが正しいか。まぁ、返り討ちにしてやったんだが。
「おい、カイさんよ?」
「あ?」
さっそくお出ましか。
「こわいな。そんなに睨むなよ」
「これは生まれつきだ」
「そんなわきゃねーだろ」
俺たちに早速話しかけてきたのは、筋骨隆々にハゲとヒゲのテンプレートな冒険者。いや、こいつの場合は元冒険者。
「何のようだ? ギルマスさんよ?」
てっきりチンピラまがいの連中が声をかけてくるかと思ったが、最初に来たのがまさかのギルドマスターとは恐れ入る。
普段は面倒くさがって問題にかかわらないのに、今日に限って何だ?
何を、企んでやがる?
「実は、お前さんに不正疑惑がかかってる」
へぇ、不正疑惑か。
「……はぁ!?」
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