騎士不適合の魔法譚

gagaga

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第一章

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「この結界、浮いてる!?」

 シスが目を見開いて驚いているが、一体なにをおどろいているのか。
 ふふふん。

「結界は空間に張るのだから浮いていても不思議はないだろ?」
「その結界は本来空間に固定されているはずですが……、その空間ごと移動しているのが不思議でたまりません」

 俺たちは結界のなかにいるから床が消えても落下していない。だがこのままでは帰れないだろう?
 だから結界を移動させていたのだが、なにを驚いているのか。
 フフフ……。

「キャスがやっていた空中ダッシュの応用で、空間に固定した結界を、空間ごと干渉して動かしているんだ」

 何でもない事のように言い、軽く胸を張る。
 さぁお前ら、もっと驚け。俺を褒めろ。

「わ、私の……。それって、つまり、私はお役に立てたということでしょうか!?」

 はぁ!?
 どうして今の感嘆がそんな方向へと向かった?

「あー、まぁ、そうだな。面白い発想だったし、俺もあらたな魔法の形を習得した。このようにな。そういう意味では役に立ったな」

 いらんことした結果でイーブンくらいなんだが……。
 胡乱な目でキャスを見るも、両手で顔をはさんでクネクネと踊っているだけだった。
 そんな姉の姿を見て、なぜかシスが身を乗り出し、己の顔を指さした。

「わたしは!? わたしは!?」
「シス、お前もか。お前は、……。お前とは一度魔法について語り合いたいと思ってるな」
「やった! やった! 旦那様とお話! うれしい!!」

 こいつの頭の中には、何がつまっているのか。
 そんな気持ちで言ったのだが、なぜか大喜びされた。

 なんか、思ってたんとちがう……。

「そ、そのときはぜひ私も同席させてくださいませんか!?」

 キャスまでそんなことを……。熱心なことだな。

「別に、いいが?」

 その返答に姉妹がはしゃぐ。
 わーい、やったーって、お気楽だな。

「それはそれとして、先ほどの魔法、『アーマゲドン』なのですが、私にはまったく理解がおよびませんでした」

 先の光景を思い出したのか、キャスが目をしばたかせる。
 シスは両手を上げて、ワタワタと振り回す。

「わたしもー。今までと全然ちがってさっぱり分かんなかった? 属性がウジャーってなってたり、フワフワとんでたのは分かったんだけど」

 どうやら俺の『アーマゲドン』を身振り手振りで再現しようとしたのだろう。
 いや、無茶だし、結界内は狭いんだから暴れるな。

「あれは魔力だったのでしょうか? 赤、オレンジ、黄、緑、薄青、青、紫に白と黒、輝く褐色に」
「銀色に金色、あと灰色と、無色っぽいのもあったかなー?」

 頭を押さえつけてシスを静かにさせるが、その間にも姉妹の討論会は続く。

「それらがまるで舞いおどる天使のようで、とてもきれいでした」
「あれって悪魔じゃないの? そいつらがドカーンバシャーンって暴れてたよね?」
「そうなの?」
「そうじゃなかったの?」

 双子の姉妹が同じ光景を見て、真逆の結論を出し顔を見合わせている。
 中々に面白く、そして珍しい姿だ。

 しかし、もうそこまで分析できているのか。
 あの魔法の再現にはいくつか要素が足りないようだが、少し見ただけでよくもそこまで分かったものだ。
 思わず感心して、うんうんと頷いてしまった。

 しかしそれでも完ぺきではない。当然だ、俺が苦心の末に編み出した究極魔法、そう、アルティメットスペルなのだからな!!

 なんせ神の領域の魔法だからな。

 神の領域だからな!!

 たかだか天才ごときに簡単に理解されてたまるか!

 ……、たまるか!

 …………。

「一つだけヒントをやろう。あれら全てが『サモンボール』だ」
「ええ!?」
「うっそぉ!?」

 ふんふん、はっはっは!
 おどろいてるな!

「あの魔法は『サモンボール』の集大成の魔法だ。この魔法を鍛え続けるといつかたどり着く」

 常人にはまず無理だ。俺のような全属性強化の素質がなければたどり着けない。
 と、思っている。

「すごいです。私の理解を完全に超えています……」
「この『サモンボール』がいくつも集まって、あれになる? どうやって? わかんないよぅ……」

 そうだろう、そうだろうとも!!

 わっはっはっはっはっは!!


 姉妹にはおどろかされっぱなしだったが、ダンジョン攻略の最後で一泡吹かせることが出来たようだ。
 自尊心は、保たれた。


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