騎士不適合の魔法譚

gagaga

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第一章

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「改めて、私はガルベラ。元二等級冒険者で、本部付きの監査官よ。よろしく」
「あ、ああ。よろしく頼む……」

 元二等級冒険者でギルマスを超える前衛。

 だが、これは……。

「……元一等級冒険者のまちがいでは?」
「……ホゥ……」

 気温が五度くらい下がったな。
 だがしかし、これで確信した。

「野暮なことを聞いたな。今のは忘れてくれ」

 というか、余計なことを聞いてしまった。
 ガルベラが身にまとう属性、それはおそらく光の属性。驚異的な力の代償に己の器を燃やす、並の人では成しえない奇跡を起こすための属性。
 そんな奴が過去を語り始めたら、絶対めんどうくさい。

 だからもう絶対聞かない。

「そうだな、ボウズの言うと」
「おおっと! それで、用件はなんだ?」

 言わせないぞ?
 聞く気ないし、どうあがいてもめんどうにしか転ばないだろうからな。

「……ホホウ、この私にそんな態度を取るのか……」

 二度、気温がまた下がったな。

「お姉さま……わたし、寒いよ……」
「奇遇ね、私もなんだか寒いわ……」

 俺がよけいなことを言ったからだ、すまん。

「母さん! 何してるんですか!」
「アベルぅぅぅ!!」

 ガルベラの意識がサブマスのアベルに向いた。お陰で緊迫した空気がなくなった。

 ……アベルに抱き着いて頬ずりしている。
 まぁ、元二等級冒険者だと聞いてそんな予想はしていたが、やはりアベルの母親だったか。

「見た目は成人した息子がいるとは思えん若さだ。顔立ちは似ているし、姉と言われた方がしっくりくるが……」

 前衛は生命力にあふれている。
 元二等級冒険者、あるいは元一等ともなれば、肉体を最適年齢に保てるのかもしれない。
 若さは肉体限界にも影響を与えるし、ありえるな……って、おい!

 ガルベラが急接近してきて、いつの間にかアベル共々抱きかかえられていた。

「どうして俺まで抱えられているんだ!?」
「かわいいことを言うボウヤが悪いんだよ!」

 どこがだ!? なにがだ!?
 あと、キャスとシスは、次は自分たちの番だから、みたいにガルベラの次に並ぶんじゃない。

 これ、そういうアトラクションじゃねーから!?

「おう、こいつぁ何のさわ……。ガルベラ! 帰ってたのか!」
「ああ、帰ってきた、が、気安く名前を呼ぶんじゃないよ!!」
「ふげあ!?」

 丁度良いタイミングで出てきたギルマスが、見事なアッパーで飛んでったな。
 それにより、ギルマスに注目していた冒険者たちがガルベラに気付く。

「やべぇ、アネさんが帰ってきた」
「だ、誰が最初にあいさつに行く?」
「俺はいやだ! 絶対にイヤだ!!」
「諦めろ! 後になればなるほど苦しくなるだけだ!!」

 ……。
 何者なんだよ、このオバ……お姉さんは。
 確かに怪力だが、普通にしてりゃ気のいいオバ……お姉さんだろ。
 何をそんなにビビってんだか。

 は、はは……。

「い、いいか、カイ! ハニートラップには気を付けろよ! 一晩だけ、一度だけだと誘われても乗るんじゃない! その先は、アリ地獄だ! 女ってヤツぁ、初めての相手には執着しちまうんだよ!」
「なにを無責任なことを言ってるんだよ!! このスカタン!!」
「あいだァ! 許してぇ!?」

 チラリと天狐姉妹を見る。

 それ、もうちょっと前に教えてほしかったなぁ。




 ――ギルド応接室。

「カイ、今回の件の顛末書だ。読んどきな」
「ああ、分かった。どれ……」

 ……、これはすごいな。このわずか数日でここまで調べ上げて、しかも領主どころか国王の押印までもらってやがる。
 ますますこいつの元一等級冒険者疑惑が確信に近づいたな。

「……っ、国王の押印だと!?」
「まぁな」

 まぁな、って、おま……。

「すごすぎだろ……」
「だろー? ギルドの連中も、もっとこうボウズみたいに素直におどろいてくれりゃかわいげもあるんだがねぇ」
「ガルベラ……さん。いや、それは無理だろう。ここから王都まで馬車で十日かかるんだぞ。それを一晩でひとっ走りできる時点で受け入れられねぇって」
「アンタはだまってな! あと王都までなら三時間もありゃつくよ。できないアンタには根性が足りないんだよ!」
「はい……シミマスン」

 馬車で十日。一日平均百キロだとして、千キロ。三時間だから時速三百キロ以上。確か新幹線の運行最大速度がそれくらいだ。

 かるく人類やめてるわ、それ。

「ボウズだってそれくらいヨユーだろ?」
「ああ、まぁな」
「ほれ見ろ! アンタの根性がたりねーんだよ!」

 ……あれ? 俺もかるく人類やめてるのか?
 俺のは魔法だし、ノーカンだよな?



「それで、カイ。内容のほうはどうだい?」

 お、おう。ちょっと衝撃の事実に呆然としてしまったな。
 ザザザっと顛末書を読む。

 ……、なるほど。

「あらかた俺の予想通りだ。やはり珍しい脱皮型のダンジョンか。付属の資料には、そうか、光の属性のダンジョンも脱皮型。つまり、特殊属性や上位属性のダンジョンは脱皮型なのか。道理で数が少ない訳だ」

 そうなると、雷、霧、塵と言った他の上位属性のダンジョンもそうなのか?
 二属性三属性のダンジョンが、実は上位属性のあぶれた弱い属性で構築された、本当は危険な上位ダンジョンの可能性。

 安全だからと建てた迷宮都市がダンジョンの脱皮により一転して地獄と化す。

 あり得るな……。

 そんな怖い想像をしたせいで鳥肌が立ってしまった。腕をさすっていると、ガルベラが突然大笑いし始めた。

「くくっ、ふぁーーーっはっはっはっはっは!!」
「な、なんだ!?」

 ガルベラが壊れた!?

「いやー、ボウズ、試して悪かったね。でもこれで一等級の座に近づいたよ! さすが私が見込んだボウズだね! コレやるよ」

 え? は?
 飴? あ、はい……。

「ボウズ、今の情報の中にはアンタの報告になくて、しかも公開されていない情報があったんだよ」

 え?

「それを公開してもいいって許可のために、わざわざ陛下にハンコをもらってきたのさ」

 なんだとぅ……?

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