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第一章
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ギルドを出た俺は、つい本音をもらしてしまう。
「ハメられた」
はぁ、日差しが眩しいなぁ。
「ご主人様? ご主人様!」
なんだよ。俺は今、ちょっと考え中なんだよ。
「あの、いえ、申し訳ありません。しかしその……」
「坊ちゃん! お迎えにあがったザマスよ!!」
「マッケイン様がおられますと……、お伝えしようとしたのですが……」
……、マママ、マッケイン!?
どうしてお前がギルド前の通りにいるんだ?
それだけでもおどろきなのに……
「ヲイ、お前の後ろのソレはなんだ?」
「自動車ザマス! これで坊ちゃんをお迎えにあがったザマス!」
こいつ。
俺が目立ちたくないの知っているクセに、何のつもりだ?
背筋を伸ばし仁王立ちするマッケインの怪しさしか感じられない所作を引き気味に眺める。
すると俺の叫びを聞きつけてしまったのか、あの女が現れる。
「おや、こいつは一体なにごとなんだい?」
ゲゲッ、ガルベラ!
「おやおやおや、お美しいお嬢様、初めましてザマス」
「おう、いいねぇ、そういうの大好物だ。で、アンタは何者だ?」
「ワタクシ、K=インズ商会で副会長なる役職を務めているマッケインと申すザマス」
「いやに大物が出てきたねぇ。うちでもいくつか商品を扱ってるよ」
なんだ?
二人の間に火花が飛び散っているような?
両者してかなりの実力者なので、物理的な火花さえ散っている。
悲鳴を上げ、退避していく通行人たち。そしてカタカタと震え、角から頭を出して様子を伺うギルドマスター。
……ヲイ。
そんな外野を一切合切無視して、両者が言葉の小競り合いを始める。
「お嬢様のお名前をお伺いしてもよろしいザマス?」
「ああ、名乗られたからにゃ答えんとな。ガルベラだ」
「ガルベラ様ザマスか! ああ、なんと高貴で、お美しいお名前で、……、一部界隈で有名ザマスね」
マッケインの声のトーンが下がった?
何をしようと言うんだ、マッケイン。そいつは本当に危険だぞ。全力の俺が街を完全破壊するレベルで対応しなきゃ止めれないレベルの猛者だぞ?
そうは思うが行動に出ない。
なぜなら今の俺は、そんな二人の間に挟まってしまっているからだ。
世間ではこれを、逃げ遅れた、という。
「私を知っているのかい。なら話は早いはずだ。ギルドの前にそんなけったいな箱を置いとかれても困るんで、とっとと消えな」
「おっと、美しいからこそおそろしいザマスね。ですが、そうザマスね。お耳を拝借してもよろしいザマスか?」
「おう、なんだい? 辞世の句なら聞いてやるよ?」
なにこのやり取り。怖すぎるんだが?
まるで北朝鮮とアメリカみたいなんだが?
……、実は大丈夫なヤツかもしれん。
コニョコニョとマッケインがガルベラに耳打ちをする。
聞こえる距離だが、敢えて聞かなかった。
聞くのが怖かったからではない!!
「……、分かった。ボウズのことは任せな」
「話が早くて助かるザマス」
「いや、私もちょっと調子に乗ってたようだ。ボウズがあまりにもかわいくてな」
「それはしょうがないザマス。うちの坊ちゃんは世界一ザマスから」
「そうだな。いや、アンタとは案外気が合いそうだ」
「こちらこそ今後ともごひいきにお願いするザマス」
大丈夫なヤツだった。
だが、俺の思ってた方向と違う。
そのまま俺たちは、ガルベラや呆然とした他の冒険者に見送られて自動車で走り去った。
「おいザマス! 違った、マッケイン! お前、あのガルベラに何を言った?」
「ほんの少し。オイタをするようなら、わが商会はこの街から完全撤退すると伝えただけザマス」
そうか。
この国の販路の大半を牛耳るK=インズ商会が撤退したともなれば、この街は阿鼻叫喚だろうからな。ガルベラの及び腰も分かろうものだ。
「いや待てよ!! それ、脅迫じゃねぇか!?」
「たんなる事実ザマスよ」
こいつ……。
「マッケイン。確かに今回は助かった。だが、次はこんな姑息な真似すんなよ?」
人々の生活を人質におどすなんてのは、領地を乗っ取った王国騎士団の連中と同じだ。
あいつらと同類?
そんなものは死んでも願い下げだ!
「分かっているザマス。そもそも撤退するのは冒険者向きの商品だけザマス。一般の方々には影響がないザマス」
「それでもっ!」
「……坊ちゃん、あの女はギルドの代表として俺と対面したザマス。ならあの女の発言は、そもそもがギルドを背負っていたものザマス。権力は、ただ利用しておしまい、なんてならないザマス。使うには責任が伴うザマスよ」
確かにそうだ。
ならば、不用意な発言でK=インズ商会の副会長を怒らせた向こうが悪い。
「ならば、よし」
「いいのですか!?」
「絶対に次会った時になにか言われるよね?」
いいんだよ、先の事は。
考えたくない。
「まぁいい。それで、今回は何の用だ?」
「はいザマス! ようやく坊ちゃんにお渡しするお屋敷の手続きが完了したので、ご案内に参ったザマス!」
ようやく、か。
そうかそうか。
「確か廃墟寸前の郊外の館だったよな?」
「はいザマス! しかしもう廃墟とは呼ばせないザマス! 完璧な仕上がりザマス!!」
そうかそうか。
俺も噂で
「郊外にバカでかい豪邸が新たに建つんだってよ!」
「あんなとこにお貴族様が住むのか?」
「俺の家、近所なんだよなぁ。どんなヤツが来るのか今から不安で夜しか眠れねぇよ」
「それ、健康だからな?」
なんてやり取りを聞いている。
豪邸って、なんだ?
そもそも俺は中古の目立たない物件だと頼んでいたのに、新たに建つってなんだよ。
「もうどうにでもなーれ」
今日も、いい天気だなぁ。
「ハメられた」
はぁ、日差しが眩しいなぁ。
「ご主人様? ご主人様!」
なんだよ。俺は今、ちょっと考え中なんだよ。
「あの、いえ、申し訳ありません。しかしその……」
「坊ちゃん! お迎えにあがったザマスよ!!」
「マッケイン様がおられますと……、お伝えしようとしたのですが……」
……、マママ、マッケイン!?
どうしてお前がギルド前の通りにいるんだ?
それだけでもおどろきなのに……
「ヲイ、お前の後ろのソレはなんだ?」
「自動車ザマス! これで坊ちゃんをお迎えにあがったザマス!」
こいつ。
俺が目立ちたくないの知っているクセに、何のつもりだ?
背筋を伸ばし仁王立ちするマッケインの怪しさしか感じられない所作を引き気味に眺める。
すると俺の叫びを聞きつけてしまったのか、あの女が現れる。
「おや、こいつは一体なにごとなんだい?」
ゲゲッ、ガルベラ!
「おやおやおや、お美しいお嬢様、初めましてザマス」
「おう、いいねぇ、そういうの大好物だ。で、アンタは何者だ?」
「ワタクシ、K=インズ商会で副会長なる役職を務めているマッケインと申すザマス」
「いやに大物が出てきたねぇ。うちでもいくつか商品を扱ってるよ」
なんだ?
二人の間に火花が飛び散っているような?
両者してかなりの実力者なので、物理的な火花さえ散っている。
悲鳴を上げ、退避していく通行人たち。そしてカタカタと震え、角から頭を出して様子を伺うギルドマスター。
……ヲイ。
そんな外野を一切合切無視して、両者が言葉の小競り合いを始める。
「お嬢様のお名前をお伺いしてもよろしいザマス?」
「ああ、名乗られたからにゃ答えんとな。ガルベラだ」
「ガルベラ様ザマスか! ああ、なんと高貴で、お美しいお名前で、……、一部界隈で有名ザマスね」
マッケインの声のトーンが下がった?
何をしようと言うんだ、マッケイン。そいつは本当に危険だぞ。全力の俺が街を完全破壊するレベルで対応しなきゃ止めれないレベルの猛者だぞ?
そうは思うが行動に出ない。
なぜなら今の俺は、そんな二人の間に挟まってしまっているからだ。
世間ではこれを、逃げ遅れた、という。
「私を知っているのかい。なら話は早いはずだ。ギルドの前にそんなけったいな箱を置いとかれても困るんで、とっとと消えな」
「おっと、美しいからこそおそろしいザマスね。ですが、そうザマスね。お耳を拝借してもよろしいザマスか?」
「おう、なんだい? 辞世の句なら聞いてやるよ?」
なにこのやり取り。怖すぎるんだが?
まるで北朝鮮とアメリカみたいなんだが?
……、実は大丈夫なヤツかもしれん。
コニョコニョとマッケインがガルベラに耳打ちをする。
聞こえる距離だが、敢えて聞かなかった。
聞くのが怖かったからではない!!
「……、分かった。ボウズのことは任せな」
「話が早くて助かるザマス」
「いや、私もちょっと調子に乗ってたようだ。ボウズがあまりにもかわいくてな」
「それはしょうがないザマス。うちの坊ちゃんは世界一ザマスから」
「そうだな。いや、アンタとは案外気が合いそうだ」
「こちらこそ今後ともごひいきにお願いするザマス」
大丈夫なヤツだった。
だが、俺の思ってた方向と違う。
そのまま俺たちは、ガルベラや呆然とした他の冒険者に見送られて自動車で走り去った。
「おいザマス! 違った、マッケイン! お前、あのガルベラに何を言った?」
「ほんの少し。オイタをするようなら、わが商会はこの街から完全撤退すると伝えただけザマス」
そうか。
この国の販路の大半を牛耳るK=インズ商会が撤退したともなれば、この街は阿鼻叫喚だろうからな。ガルベラの及び腰も分かろうものだ。
「いや待てよ!! それ、脅迫じゃねぇか!?」
「たんなる事実ザマスよ」
こいつ……。
「マッケイン。確かに今回は助かった。だが、次はこんな姑息な真似すんなよ?」
人々の生活を人質におどすなんてのは、領地を乗っ取った王国騎士団の連中と同じだ。
あいつらと同類?
そんなものは死んでも願い下げだ!
「分かっているザマス。そもそも撤退するのは冒険者向きの商品だけザマス。一般の方々には影響がないザマス」
「それでもっ!」
「……坊ちゃん、あの女はギルドの代表として俺と対面したザマス。ならあの女の発言は、そもそもがギルドを背負っていたものザマス。権力は、ただ利用しておしまい、なんてならないザマス。使うには責任が伴うザマスよ」
確かにそうだ。
ならば、不用意な発言でK=インズ商会の副会長を怒らせた向こうが悪い。
「ならば、よし」
「いいのですか!?」
「絶対に次会った時になにか言われるよね?」
いいんだよ、先の事は。
考えたくない。
「まぁいい。それで、今回は何の用だ?」
「はいザマス! ようやく坊ちゃんにお渡しするお屋敷の手続きが完了したので、ご案内に参ったザマス!」
ようやく、か。
そうかそうか。
「確か廃墟寸前の郊外の館だったよな?」
「はいザマス! しかしもう廃墟とは呼ばせないザマス! 完璧な仕上がりザマス!!」
そうかそうか。
俺も噂で
「郊外にバカでかい豪邸が新たに建つんだってよ!」
「あんなとこにお貴族様が住むのか?」
「俺の家、近所なんだよなぁ。どんなヤツが来るのか今から不安で夜しか眠れねぇよ」
「それ、健康だからな?」
なんてやり取りを聞いている。
豪邸って、なんだ?
そもそも俺は中古の目立たない物件だと頼んでいたのに、新たに建つってなんだよ。
「もうどうにでもなーれ」
今日も、いい天気だなぁ。
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