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第二章
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しおりを挟む「さぁレースが始まりました。実況はわたくし、ホロン。解説はあのK=インズ商会の副会長、マッケイン様です!」
「よろしくザマス」
「いやー、今日から始まるレース、楽しみですねー」
「そうザマスね」
……、マッケイン、お前、何やってんの?
あと、隣の実況のヤツ、昔見た事あるんだが?
そいつ、もしかして以前騎士マッケインの部下とかやってなかったか?
いかん。もう間もなくスタートだ。余計なことに気を取られるな。
ハンドルを握り直し、ブレーキを最小限にし、アクセルへと足を置く。
緊張感が高まる中、スターターが旗を振り上げ……
三、二、一、ゴー!!
振り下ろした!
「おっと、レースが開始されました、が、これはすごい! ゼッケン百番、猛烈なスタートダッシュだ!」
「マシンの性能は同じザマス。そうなるとあれはご本人の実力ザマスね」
「あのゼッケン百番は魔法使いの方でしょうか! 風で自分を押すとは、ユニークな魔法ですね」
「攻撃性のない魔法であれば規定にはかからないザマス。回数制限もあるザマスが、もうこの差ではそれも意味ないザマスね」
「あーっと、トップと二位以下は半周も差がついている! これは速い! ゼッケン百番! 速すぎる!」
ゼッケン百番、つまり俺。
俺は速い。常識だ。
「他の魔法使いも何人か直線で真似た魔法を使っているザマスね。でも最初の差を埋めるには至ってないザマス」
「自分の体を風で押すわけですからものすごい圧力でしょうし、限界がありますね」
「そうザマス。その点坊……、ゼッケン百番様は初速を伸ばすために使ったから体への影響も魔力の消費も少なかったはずザマス」
「なるほどー、ゼッケン百番はかなりの知恵者のようですね。これはこの大会、大波乱の予感がしますよー!!」
マッケイン、今坊ちゃんって言いかけたな。
なんで解説にいるのか疑問はあるが、仕事なのだろうから黙っておく。
だが、俺の正体ばらすようならシメる。すごくシメる。
具体的には、指の間に木の棒を挟んで、シメる。
「ゼッケン百番、いま十周を終えてゴール! タイムは、なんと歴代最速!」
「当然ザマス」
「マッケイン様はゼッケン百番の方をご存知なのですか?」
「ええ、知っているザマスよ。でも秘密ザマス」
「おっとこれは意味深! まさかK=インズ商会の秘蔵の新星か!? 新たな刺客の登場に、プロの面々も戦々恐々としているでしょうね」
ふう。
色々余計なことを言い始めたマッケインには後でお仕置きしなければならないな。
具体的には、以下略。
一足先にレースを終えた俺は、カートを指定のピットにインする。
車体から降りヘルメットを脱ぐとシスが手を差し出してきたのでヘルメットを渡す。
すると丁度良いタイミングでキャスがタオルを差し出してくる。
さすが双子、息がぴったりだ。
「お疲れさまでした、ご主人様。こちら、ぬれタオルです」
「おう、気が利くな」
「旦那様、こっちは乾いたタオルだよ。ぬれたままだと風邪ひいちゃうしね」
俺は魔力で免疫力をあげてるから風邪ひかないんだが、まぁいい。
ぬれたままにしておくと気持ち悪いからな。
微妙に暖かいぬれタオルがまた心地よい。
手をふき、顔をふいているとチラリと見えたは、接近する小柄な影。
のじゃ だ。
のじゃ が両手を広げて迫ってくる。しかしそれは天狐姉妹により阻まれる。
「亭主殿、喜びのハグなのじゃ~~~、むぎゅっ」
「それは許しませんよ?」
「キャス殿、冗談じゃ、冗談。順番は守るのじゃー」
「何の順番だ……」
キャスが期待を込めた目で両手を広げてステイしているが、いや、ハグしないぞ?
あ、俺にだけ見える耳と尻尾がしおれた。
一応、フォローしておくか。
「下らん事をするな。それにまだ一次予選を突破しただけだ。二次予選、本戦とあるのだから気を抜くな」
「はい! んぎゅーー」
「あぁ!? ご主人様に自ら抱き着くなんて、システィずるいです!」
背後からシスに不意打ち気味に抱き着かれたが、直後にこいつは己の愚かさを知るだろう。
「んはぁー、背中が汗でベトベトだぁ……」
あーあ、だからやめといたのに。
炎天下の中でのレースだ。コンクリからの照り返しもあり、サーキット内は相当な気温となっている。
だから俺も他のレーサーも汗だくなのだ。
「俺も着替えるから、シスも着替えてろ」
「はぁい……」
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