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第一話 静寂の敵
しおりを挟む第一話 「静寂の敵」
* キャラクター名:
* 主人公: 蓮見 湊(はすみ みなと)
* ヒロイン: 佐倉 陽葵(さくら ひまり)
* ヒロインの幼馴染: 勇気(ゆうき)
第一話 プロローグ
大学の講義室。その後方の扉が開いた瞬間、
それまで穏やかだった空間の「温度」が明らかに数度上がった。
「……来た」
「ねえ、見て。今日の蓮見くん、少し気怠げじゃない?」
「かっこいい……。でも、近づけないオーラ凄すぎ」
ひそひそという囁き声が、さざ波のように教室中に広がっていく。
蓮見湊は、無表情のまま眉間に深い皺を刻んだ。
視線を床に落とし、長い足を苛立ちとともに動かす。
(……チッ、またか)
心の中で吐き捨てた舌打ちが、唇の端から漏れそうになるのを辛うじて抑えた。
財閥系グループの末端に籍を置く家系に生まれた湊にとって、
他人の視線は ✱「好意」✱ ではなく
✱「監視」✱ か ✱「打算」 でしかなかった。
かつて、自分を巡って女子たちが派閥争いを起こし、挙句の果てに誘拐未遂のトラブルにまで発展した過去がある。
湊にとって、黄色い声を上げる年頃の女子という生き物は、静寂を乱し、平穏を脅かす
「最も警戒すべき存在」
だった。
第一話 「静寂の敵」
俺の隣の席に座ったお前を、横目でチラリと見る。
昨日倒れていた時に助けてくれた奴だと気づいているが、わざとそぶりを見せない。
「別に。ただ隣に座っただけなら文句は言わねぇよ」
少し冷たい口調で答えながら、教科書を開く。
だが内心では、なぜわざわざ俺の隣に座ったのか疑問に思っている。
また女子特有の下心があるんじゃないかと警戒心を強めながらも、昨日助けてくれたことは事実だ。
「...授業始まるぞ」
そう言って前を向き直すが、時々チラチラとお前の様子を伺っている。
お前が何か企んでいないか、それとも本当にただ席が空いていなかっただけなのか。
俺の猜疑心は簡単には消えない。
お前の手が一瞬止まったのに気づき、少しだけ口元が緩む。
やはり聞こえていたか。でも、何も返してこない。
授業が進む中、お前が本当に真面目に授業を受けている様子を横目で確認する。
普段俺に話しかけてくる女子とは明らかに違う態度だ。
下心も、媚びるような態度も見られない。
「...」
少し拍子抜けしたような気持ちになりながらも、俺も授業に集中し始める。
だが、昨日助けてもらったことが頭から離れない。
普通なら「大丈夫だった?」とか聞いてきそうなものだが、お前は何も言ってこない。
授業が半分ほど進んだところで、ふとお前のノートが目に入る。
綺麗な字で几帳面にまとめられている。
「...お前、真面目だな」
ぽつりと小さく呟く。
それは褒め言葉なのか、それとも単なる独り言なのか、自分でもよくわからない。
ただ、少しだけ警戒心が緩んだのは確かだった。
お前の手が一瞬止まったのに気づき、少しだけ口元が緩む。
やはり聞こえていたか。でも、何も返してこない。
授業が終わり、周りの学生たちがざわざわと席を立ち始める。
俺は教科書をカバンにしまいながら、お前の方を見る。
「...昨日のこと、覚えてないわけじゃないだろ」
直接的には聞かず、遠回しに探りを入れる。
お前がどう反応するか見たかった。
助けてくれた理由、そして今日わざわざ隣に座った理由。
もし下心があるなら、ここで何か言ってくるはずだ。
「別に礼が言いたいわけじゃない。ただ...」
言葉を濁しながら立ち上がる。
本当は礼を言うべきだとわかっているが、素直になれない自分がいる。
人を信じられない、疑ってばかりの自分。
「お前、名前は?」
結局、それだけ聞いて、お前の反応を待つ。
カバンを肩にかけたまま、じっとお前を見つめている。
「名乗るほどのものではありません」
お前の冷たい返答と、一瞥もくれずに立ち去ろうとする姿勢に、俺は思わず眉をひそめる。
普通の女子なら、ここぞとばかりに名前を言って連絡先を聞いてくるはずなのに。
「待て」
思わずお前の腕を掴んでしまう。
自分でも驚くような行動だった。なぜ引き止めたのか、自分でもよくわからない。
ただ、このまま何も言わずに去られるのが、妙に気に食わなかった。
「...なんで助けた?下心があるなら今のうちに言えよ」
相変わらず警戒心は解けていない。むしろ、お前のこの態度が余計に怪しく感じる。
普通じゃない。だからこそ、余計に気になってしまう。
掴んだ手を離しながら、少しだけ声のトーンを落とす。
「俺は...人に助けられるのに慣れてない。特に女には」
ぽつりと呟く。これ以上は言えない。言いたくない。
でも、お前には少しだけ、ほんの少しだけ、他の女子とは違う何かを感じていた。
✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱✱
新連載はじまりました
よろしくお願いします
蓮見 湊(はすみ みなと)くんの独白形式で進んでまいります
謎の多き湊くん、何やらトラウマを抱えているご様子
そんな時出会った、今までとは違うヤツ
佐倉 陽葵(さくら ひまり)
彼女と関わることで二人に何がおこるのでしょか?
表紙見てもらえました?
アレが湊くんであのビジュアルですからね?
周りはほって置かないでしょうね
でも、自己肯定感が低い人は辛い事らしいです
それてば
最期までお付き合い下さると嬉しいです!
コメント、いいね、フォロー頂くと泣きます!
よろしくお願いします!
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