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第二章 離された手、繋がれた手
第8話 ニガテなあの娘
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「じゃあ、とりあえず下校するのを待ち伏せ──」
「あのー」
永が時刻を確認しながらこの後のプランを立てようとしたその時、蕾生の後ろからひょっこり顔を出す人物がいた。銀騎星弥だった。
「ヒエッ!」
突然の本人登場に、さすがの永も素っ頓狂な声が出た。
蕾生も反射的に後ろを振り返る。完全に不意をつかれて蕾生の方は声も出なかった。
「ああ、よかった、追いついて。えっと、三組だよね?」
銀騎星弥は蕾生の方を見て、屈託なく尋ねる。
「あ、ああ……」
まさか向こうの方から話しかけてくるとは夢にも思わないので、蕾生は頷くことしかできなかった。
「三組の学級委員の人に伝えて欲しいんだけど、生徒会が配った一年生のアンケートがまだ出てなくて──」
「あ、学級委員ならこいつ」
奇跡的に永にバトンタッチできるキーワードが彼女から紡がれたので、蕾生は反射的に話題を振った。
「ああ! そう、ハイ、僕です」
永もまだ面食らった表情のまま慌てて手を上げる。
「そうなの? わあ、ちょうどよかった。クラスで集めて明後日くらいまでに生徒会に出してくれる?」
銀騎星弥は両手をパンと叩いて晴れやかな笑顔を見せる。
「ああ、遅れてゴメンナサイ。でもなんで銀騎さんが?」
「あ、わたし、役員じゃないんだけど、たまにお手伝いしてるの。一年生の連絡係みたいな」
「へえー、そうなんだー!」
予定にない出来事が起きたせいで永も舞い上がってしまったのだろう、人をくったような皮肉はおろか女子限定の褒め言葉すらも出てこない。
この調子では今日のうちにお友達になるなんて無理だな、と蕾生は思った。
「じゃ、じゃあ、集めたら銀騎さんに渡せばいいかな?」
それでもなんとか明日に繋げようと永はどもりながら尋ねる。
「え? あ、うん、それでもいいよ。えっと……」
「あ、僕、周防永。こっちのでっかいのは唯蕾生っていうの」
自己紹介にこぎつけたところで、永にやっと余裕が出てきたのがわかった。それで蕾生も少し冷静になり、軽く頭を下げた。
「周防くんと、唯くん……だね。それじゃよろしくね。呼び止めてごめんね」
「いいええ、どうもお疲れさんです」
永が愛想よく手を振ると銀騎星弥も軽く手を振って足早に花壇へと戻っていった。
その姿を見送って、蕾生はやはり彼女の何が永を混乱させるのか実際に会話してみてもよくわからなかった。
「はあー! やっぱだめだ、あの子、僕苦手」
永はどっと疲れたような顔で、肩で息を吐く。
「永、どうした? いつもの余裕が全然なかったな」
「……なんだろうね、銀騎の関係者だって思うから変に緊張するのかな」
「そうなんじゃねえの? とにかくもう一度話しかける機会ができたな」
「そうだね、ラッキー。じゃあ、帰りながら明日の対策をたてようか」
永は蕾生との会話で元の落ち着きを取り戻していた。
「なるべく自然なやつな」
「わかってるって!」
もうすぐ陽が落ちる。明日こそはこっちが主導権をとってやるんだと永は意気込んでいた。
「あのー」
永が時刻を確認しながらこの後のプランを立てようとしたその時、蕾生の後ろからひょっこり顔を出す人物がいた。銀騎星弥だった。
「ヒエッ!」
突然の本人登場に、さすがの永も素っ頓狂な声が出た。
蕾生も反射的に後ろを振り返る。完全に不意をつかれて蕾生の方は声も出なかった。
「ああ、よかった、追いついて。えっと、三組だよね?」
銀騎星弥は蕾生の方を見て、屈託なく尋ねる。
「あ、ああ……」
まさか向こうの方から話しかけてくるとは夢にも思わないので、蕾生は頷くことしかできなかった。
「三組の学級委員の人に伝えて欲しいんだけど、生徒会が配った一年生のアンケートがまだ出てなくて──」
「あ、学級委員ならこいつ」
奇跡的に永にバトンタッチできるキーワードが彼女から紡がれたので、蕾生は反射的に話題を振った。
「ああ! そう、ハイ、僕です」
永もまだ面食らった表情のまま慌てて手を上げる。
「そうなの? わあ、ちょうどよかった。クラスで集めて明後日くらいまでに生徒会に出してくれる?」
銀騎星弥は両手をパンと叩いて晴れやかな笑顔を見せる。
「ああ、遅れてゴメンナサイ。でもなんで銀騎さんが?」
「あ、わたし、役員じゃないんだけど、たまにお手伝いしてるの。一年生の連絡係みたいな」
「へえー、そうなんだー!」
予定にない出来事が起きたせいで永も舞い上がってしまったのだろう、人をくったような皮肉はおろか女子限定の褒め言葉すらも出てこない。
この調子では今日のうちにお友達になるなんて無理だな、と蕾生は思った。
「じゃ、じゃあ、集めたら銀騎さんに渡せばいいかな?」
それでもなんとか明日に繋げようと永はどもりながら尋ねる。
「え? あ、うん、それでもいいよ。えっと……」
「あ、僕、周防永。こっちのでっかいのは唯蕾生っていうの」
自己紹介にこぎつけたところで、永にやっと余裕が出てきたのがわかった。それで蕾生も少し冷静になり、軽く頭を下げた。
「周防くんと、唯くん……だね。それじゃよろしくね。呼び止めてごめんね」
「いいええ、どうもお疲れさんです」
永が愛想よく手を振ると銀騎星弥も軽く手を振って足早に花壇へと戻っていった。
その姿を見送って、蕾生はやはり彼女の何が永を混乱させるのか実際に会話してみてもよくわからなかった。
「はあー! やっぱだめだ、あの子、僕苦手」
永はどっと疲れたような顔で、肩で息を吐く。
「永、どうした? いつもの余裕が全然なかったな」
「……なんだろうね、銀騎の関係者だって思うから変に緊張するのかな」
「そうなんじゃねえの? とにかくもう一度話しかける機会ができたな」
「そうだね、ラッキー。じゃあ、帰りながら明日の対策をたてようか」
永は蕾生との会話で元の落ち着きを取り戻していた。
「なるべく自然なやつな」
「わかってるって!」
もうすぐ陽が落ちる。明日こそはこっちが主導権をとってやるんだと永は意気込んでいた。
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