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第二章 離された手、繋がれた手
第7話 ナンパ大作戦
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「とにかく、あの子とお近づきになって、オトモダチとしてあの子の家に遊びに行く。それが最初のミッション!」
永の唱える穴だらけの計画に、蕾生はかなり不安になっていた。
「なんで俺が? 口のうまいお前の方が適任だろ?」
「いやあ、彼女、僕みたいに胡散臭いのは嫌いだと思うんだよねえ」
「自覚あったのか……」
永はとにかく弁が立つ。そのせいで男子の受けはあまり良い方ではない。
その代わり女子にはそのトーク力で結構人気があるのだが、男子から見れば口先だけの胡散臭いヤツというのが永の総評だ。
そして図体がでかくて怖い蕾生を従えていることで、中学時代はまあまあ煙たがられていた。
「目が笑ってない僕よりも、ちょっと不良っぽいけど純朴なライくんの方がウケがいいはず!」
「今、話しかけるのか?」
蕾生は心底気が進まないのに、永は構わずに作戦を述べる。
「いや、とりあえず、一人淋しそうにあの集団の前を横切って。視線は花に。なんかちょっと可愛いものを見るような目で!」
「えええー」
それに一体なんの意味があるのか。蕾生は本当に嫌だった。
「ほら、早く行って!」
背中を押されて蕾生は渋々歩き出した。
花壇の前まで行くと、蕾生はとりあえず指示通り女子達の前で立ち止まる。
「?」
それまで花に集中していた女子達は突然現れた大きな人影に気づいて顔を上げた。
女子達から一斉に視線を浴びた蕾生は、緊張で顔が強張った。客観的に見て「ガンを飛ばす」ような状態である。
「!」
一人は驚愕し、また一人は明らかに怯えていた。だが、銀騎星弥だけは物怖じせずに蕾生をじっと見つめていた。
「──!」
目があったものの、どうしていいかわからず、蕾生はプイとそっぽを向いて花壇を通り過ぎ、正門の方へ向かった。
「何、今の」
「たしか隣のクラスの……」
「やだ、怖い……」
口々に女子達が蕾生に嫌悪の感情を向ける。ただ、銀騎星弥だけは目を丸くさせながらも肩で風切って歩いていく蕾生の背中を見送っていた。
「だめかも……」
一部始終を見届けた永は肩を落とした後、急いで裏門を通って外から蕾生の待つ正門へと向かったのだった。
「な? ダメだったろ」
永と合流した蕾生はすっかり不貞腐れていた。
「うーん、怖そうに見える男子が実は草花好きで意外と可愛いところがあるのね作戦だったんだけどなー」
永はがっかりと肩を落として見せる。そのわざとらしい仕草から、もしかして遊ばれたかもとも思って蕾生はますます不機嫌になる。
「周りくどすぎるだろ! お前が得意のおしゃべりでいけ」
「どうかなー、自信ないなー」
蕾生が詰め寄っても永はのらりくらりとしてあまり積極的ではない。
「なんでだよ、しゃべりで女子と距離つめるの得意だろ?」
「うーん、そこらの女の子なら楽勝なんだけど、彼女の雰囲気が苦手っていうか……」
「好感度のかたまりみたいなヤツなんだろ?」
「いやー、なんか苦手な気がするんだよね。話したこともないんだけど」
全く煮え切らない態度の永は初めて見た気がする。いつもの大胆で口八丁に相手を丸め込む手口を出そうとしないことが蕾生は不思議で仕方ない。
「じゃあ、どうすんだよ。さっきので俺の印象最悪になってんぞ。どうやって挽回すんだよ」
「やっぱり、ねえちゃん俺と付き合えよ、キャー助けてそこの怖そうな男子作戦かなあ」
さらに穴が空いた作戦を口にする永に蕾生は呆れた。
「絶対、やだ」
「えー」
「真面目にやれよ。もう直接話しかければいいだろ」
「ライくんが?」
期待を込めた視線を向けた永を蕾生はばっさりと切り捨てた。
「俺が女子と話せると思うか? お前が銀騎博士のファンなんですーって軽めにいけばいい」
「えー、ライくんに指示された。いつもと逆だあ」
「逆じゃない、口での攻撃はお前の領分!」
蕾生の言葉が最後通告になった。永は観念したように頷く。
「……そうだったね。僕が頭でライくんは腕」
「ん」
やっと腹をくくったらしい永に、蕾生も満足そうに頷いた。
永の唱える穴だらけの計画に、蕾生はかなり不安になっていた。
「なんで俺が? 口のうまいお前の方が適任だろ?」
「いやあ、彼女、僕みたいに胡散臭いのは嫌いだと思うんだよねえ」
「自覚あったのか……」
永はとにかく弁が立つ。そのせいで男子の受けはあまり良い方ではない。
その代わり女子にはそのトーク力で結構人気があるのだが、男子から見れば口先だけの胡散臭いヤツというのが永の総評だ。
そして図体がでかくて怖い蕾生を従えていることで、中学時代はまあまあ煙たがられていた。
「目が笑ってない僕よりも、ちょっと不良っぽいけど純朴なライくんの方がウケがいいはず!」
「今、話しかけるのか?」
蕾生は心底気が進まないのに、永は構わずに作戦を述べる。
「いや、とりあえず、一人淋しそうにあの集団の前を横切って。視線は花に。なんかちょっと可愛いものを見るような目で!」
「えええー」
それに一体なんの意味があるのか。蕾生は本当に嫌だった。
「ほら、早く行って!」
背中を押されて蕾生は渋々歩き出した。
花壇の前まで行くと、蕾生はとりあえず指示通り女子達の前で立ち止まる。
「?」
それまで花に集中していた女子達は突然現れた大きな人影に気づいて顔を上げた。
女子達から一斉に視線を浴びた蕾生は、緊張で顔が強張った。客観的に見て「ガンを飛ばす」ような状態である。
「!」
一人は驚愕し、また一人は明らかに怯えていた。だが、銀騎星弥だけは物怖じせずに蕾生をじっと見つめていた。
「──!」
目があったものの、どうしていいかわからず、蕾生はプイとそっぽを向いて花壇を通り過ぎ、正門の方へ向かった。
「何、今の」
「たしか隣のクラスの……」
「やだ、怖い……」
口々に女子達が蕾生に嫌悪の感情を向ける。ただ、銀騎星弥だけは目を丸くさせながらも肩で風切って歩いていく蕾生の背中を見送っていた。
「だめかも……」
一部始終を見届けた永は肩を落とした後、急いで裏門を通って外から蕾生の待つ正門へと向かったのだった。
「な? ダメだったろ」
永と合流した蕾生はすっかり不貞腐れていた。
「うーん、怖そうに見える男子が実は草花好きで意外と可愛いところがあるのね作戦だったんだけどなー」
永はがっかりと肩を落として見せる。そのわざとらしい仕草から、もしかして遊ばれたかもとも思って蕾生はますます不機嫌になる。
「周りくどすぎるだろ! お前が得意のおしゃべりでいけ」
「どうかなー、自信ないなー」
蕾生が詰め寄っても永はのらりくらりとしてあまり積極的ではない。
「なんでだよ、しゃべりで女子と距離つめるの得意だろ?」
「うーん、そこらの女の子なら楽勝なんだけど、彼女の雰囲気が苦手っていうか……」
「好感度のかたまりみたいなヤツなんだろ?」
「いやー、なんか苦手な気がするんだよね。話したこともないんだけど」
全く煮え切らない態度の永は初めて見た気がする。いつもの大胆で口八丁に相手を丸め込む手口を出そうとしないことが蕾生は不思議で仕方ない。
「じゃあ、どうすんだよ。さっきので俺の印象最悪になってんぞ。どうやって挽回すんだよ」
「やっぱり、ねえちゃん俺と付き合えよ、キャー助けてそこの怖そうな男子作戦かなあ」
さらに穴が空いた作戦を口にする永に蕾生は呆れた。
「絶対、やだ」
「えー」
「真面目にやれよ。もう直接話しかければいいだろ」
「ライくんが?」
期待を込めた視線を向けた永を蕾生はばっさりと切り捨てた。
「俺が女子と話せると思うか? お前が銀騎博士のファンなんですーって軽めにいけばいい」
「えー、ライくんに指示された。いつもと逆だあ」
「逆じゃない、口での攻撃はお前の領分!」
蕾生の言葉が最後通告になった。永は観念したように頷く。
「……そうだったね。僕が頭でライくんは腕」
「ん」
やっと腹をくくったらしい永に、蕾生も満足そうに頷いた。
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