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第二章 離された手、繋がれた手
第15話 再会は突然に
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「──!」
鈴心と呼ばれたその少女は目を丸くし、口元も開いたまま固まっていた。
「リン!?」
声を揃えて叫んだ蕾生と永に対して、鈴心は少し諦めた様な表情で息を吐く。
「運命には、逆らえないということですか……」
そんな呟きが聞こえる間もなく、反射的に動いたのは永だった。
「リン! お前だったのか! この前の態度はどういうことだ!? なんでそんなに若い!?」
永はそれまでの冷静さを失って、頬を紅潮させながら必死の形相で鈴心に詰め寄り、その細い腕を乱暴に掴む。
「痛い、痛いです。落ち着いてください、ハル様」
鈴心は顔を歪ませて身を捩った。それでも永は手を離さなかった。
「リン! どうして──」
「周防くん、やめて!」
二人の間に星弥が割って入り、永から鈴心を引き離して守るようにたちはだかる。その顔はそれまでの彼女が見せたことのない、険しいものだった。
「永、落ち着け」
今、冷静でいなければならないのは自分の方だ、と蕾生は我に返って永の肩を掴んで低めの声で言う。
「あ──ごめん」
動揺が収まらない永の、焦点の定まらない目。そんなものを見るのは初めてだった。
「とりあえず、座れ」
蕾生は強引に永をソファに沈める。永は黙って従った後、項垂れて両手で顔を覆いながら悲痛な声を絞り出した。
「訳がわからないよ、リン……」
そんなに弱々しい声も蕾生は初めて聞く。その永を見て顔を青ざめ、唇を噛んでいる鈴心の表情には罪悪感が見てとれた。
そんな二人の間に流れる張り詰めた緊張感と蕾生にはまだわからない空気感に、何も言うことができなかった。
部屋に流れるその異質な空気を、星弥の厳しい声が刺した。
「なんなの? みんなは知り合いなの? リンってなんのこと?」
まるで自分の住処を荒らされた猫のように苛立ちを隠さない彼女に、鈴心がその背に向かって静かに言った。
「星弥、席を外してもらえませんか? この二人と話があるんです」
「ダメです!」
星弥の放つ大きな声は、猫に引っかかれたかのような衝撃を蕾生に与えた。
「星弥……」
鈴心は呆れたように溜息を吐く。
「すずちゃんを見ただけで取り乱すような人と、わたし抜きで話すなんて絶対にダメです!」
「星弥、お願いします」
振り返った星弥の腕に縋って、鈴心は丁寧に頭を下げた。
「とても、大事な話なんです」
その態度に幾らか心を和らげた星弥は、困った顔のまましばらく何かを考えた後、意を決した表情でまず部屋の鍵をかけた。そして窓のカーテンを全て閉めた後、鈴心の方を見て言う。
「これが人払いできる精一杯です!」
頑固な雰囲気を崩さずに星弥は鈴心の隣に座り、そこから動かなかった。
鈴心と呼ばれたその少女は目を丸くし、口元も開いたまま固まっていた。
「リン!?」
声を揃えて叫んだ蕾生と永に対して、鈴心は少し諦めた様な表情で息を吐く。
「運命には、逆らえないということですか……」
そんな呟きが聞こえる間もなく、反射的に動いたのは永だった。
「リン! お前だったのか! この前の態度はどういうことだ!? なんでそんなに若い!?」
永はそれまでの冷静さを失って、頬を紅潮させながら必死の形相で鈴心に詰め寄り、その細い腕を乱暴に掴む。
「痛い、痛いです。落ち着いてください、ハル様」
鈴心は顔を歪ませて身を捩った。それでも永は手を離さなかった。
「リン! どうして──」
「周防くん、やめて!」
二人の間に星弥が割って入り、永から鈴心を引き離して守るようにたちはだかる。その顔はそれまでの彼女が見せたことのない、険しいものだった。
「永、落ち着け」
今、冷静でいなければならないのは自分の方だ、と蕾生は我に返って永の肩を掴んで低めの声で言う。
「あ──ごめん」
動揺が収まらない永の、焦点の定まらない目。そんなものを見るのは初めてだった。
「とりあえず、座れ」
蕾生は強引に永をソファに沈める。永は黙って従った後、項垂れて両手で顔を覆いながら悲痛な声を絞り出した。
「訳がわからないよ、リン……」
そんなに弱々しい声も蕾生は初めて聞く。その永を見て顔を青ざめ、唇を噛んでいる鈴心の表情には罪悪感が見てとれた。
そんな二人の間に流れる張り詰めた緊張感と蕾生にはまだわからない空気感に、何も言うことができなかった。
部屋に流れるその異質な空気を、星弥の厳しい声が刺した。
「なんなの? みんなは知り合いなの? リンってなんのこと?」
まるで自分の住処を荒らされた猫のように苛立ちを隠さない彼女に、鈴心がその背に向かって静かに言った。
「星弥、席を外してもらえませんか? この二人と話があるんです」
「ダメです!」
星弥の放つ大きな声は、猫に引っかかれたかのような衝撃を蕾生に与えた。
「星弥……」
鈴心は呆れたように溜息を吐く。
「すずちゃんを見ただけで取り乱すような人と、わたし抜きで話すなんて絶対にダメです!」
「星弥、お願いします」
振り返った星弥の腕に縋って、鈴心は丁寧に頭を下げた。
「とても、大事な話なんです」
その態度に幾らか心を和らげた星弥は、困った顔のまましばらく何かを考えた後、意を決した表情でまず部屋の鍵をかけた。そして窓のカーテンを全て閉めた後、鈴心の方を見て言う。
「これが人払いできる精一杯です!」
頑固な雰囲気を崩さずに星弥は鈴心の隣に座り、そこから動かなかった。
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