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第二章 離された手、繋がれた手
第19話 解釈違い
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「あの、もう少し詳しく教えてくれない? すずちゃん、とっても辛そうだったの。このままじゃいけないと思う」
星弥の言葉に、永は視線を移して真剣な顔をして言う。
「うん、できれば銀騎さんにも協力して欲しいんだけど、僕らの事情を話す前に言っておかないといけないことがある」
「?」
「僕らはいずれ銀騎詮充郎の敵になる」
「──!」
その永の宣言に、星弥は肩が震える程に驚き、困惑の表情を向ける。蕾生にも突然そのことが現実味を帯びてきて緊張が走った。
「リン──鈴心が僕ら側につけばもちろん彼女も君の家族の敵だ」
「お祖父様も、関係があるの?」
「あるなんてもんじゃない。元々、銀騎の家とは因縁があるんだ。詮充郎は中でも一番タチが悪い。前回も酷い目に合わされてね」
朗々と語ってみせる永の言葉を星弥は少し眉を顰めて聞いていた。
「そんな因縁の相手の家にリンが転生してるなんて出来すぎてると思わない?」
「お祖父様が、何かをしたってこと?」
「まあね。あのジジィの性格からしたら、僕はそれを確信してる。多分、君よりも僕は銀騎詮充郎という男を理解している」
「……」
口数の少なくなった星弥を追い詰めるように永はたたみかけた。
「どうする? お祖父様、の敵に手を貸す覚悟が君にあるならその先のことを話す」
「永! そんな言い方──」
さすがに言い過ぎだと蕾生は思った。女子相手に容赦がなさすぎる。けれどそんな蕾生を手で制して永は続けた。
「鈴心を救いたかったら、僕らに協力するしかないよ?」
挑戦的な永の物言いに、星弥は少しだけ考えた後、口を開いた。
「周防くんは、お祖父様かすずちゃんか選べってわたしに言ってるのね」
「そう。君が鈴心を大切に思ってるのは伝わってるからね」
「それは周防くんもでしょ? すずちゃんがどうしても必要だからわたしを脅すみたいな言い方をしてる」
「うん?」
相手が引く態度を見せないので、永は小首を傾げた。星弥は真っ直ぐに永を見て言う。
「わたしが協力しないと、すずちゃんともう一度会うなんてできないよ? ましてや説得なんて」
「えーっと……」
永は急に目を泳がせ始める。そこへとどめの一言をにこやかに星弥が放つ。
「お願いするべきなのは周防くんの方だよね?」
「……」
言葉のない永に、星弥はにっこり笑った顔のまま、首を傾けて降参を促した。
「──やっぱり、君は苦手だなあ」
永が言い負かされたのを初めて見た蕾生は、思わず口を開けて二人を見比べてしまった。両者ともニコニコ笑いながら恐ろしい雰囲気で会話を続ける。
「僕が頭を下げたら君は協力してくれるのかな?」
「頭を下げる必要はないけど、わたしって頼まれたら断れない人みたいだから」
「──なるほど。僕は君の人となりを間違えて解釈してたみたいだ」
こういうのを狐と狸のばかし合いと言うのか、それとも敵対する大臣同士の腹の探り合いとでも言おうか、どちらにしても蕾生にとっては高次元の会話がなされていた。
「参ったな、もっと直感を信じれば良かった」
「そうかもね」
顔は笑っているが目が笑っていない同士、にこやかな攻防の後に永が折れた。
「わかった。まずは君に事情を話す。その後君が選ぶといい。協力するか──詮充郎につきだすか」
「いいのか? 永」
万が一の事を考えて蕾生が尋ねると、永は両手を軽く掲げて降参のポーズでおどけて見せる。
「まあ、大博打ではある。けど、これくらいの賭けには勝てないとね」
永と蕾生の心が決まったのを見定めて、星弥はにっこり笑って言った。それは勝利宣言と言ってもいい。
「お話長くなるよね? お茶、入れ直すね」
そうして、今度はカモミールティーが入れられる。蕾生は初めてだったが一口飲むと気分が落ち着くようだった。
永が少し勿体ぶりながら口を開く。九百年前の自分──英治親の伝記が滔々と語られた。
星弥の言葉に、永は視線を移して真剣な顔をして言う。
「うん、できれば銀騎さんにも協力して欲しいんだけど、僕らの事情を話す前に言っておかないといけないことがある」
「?」
「僕らはいずれ銀騎詮充郎の敵になる」
「──!」
その永の宣言に、星弥は肩が震える程に驚き、困惑の表情を向ける。蕾生にも突然そのことが現実味を帯びてきて緊張が走った。
「リン──鈴心が僕ら側につけばもちろん彼女も君の家族の敵だ」
「お祖父様も、関係があるの?」
「あるなんてもんじゃない。元々、銀騎の家とは因縁があるんだ。詮充郎は中でも一番タチが悪い。前回も酷い目に合わされてね」
朗々と語ってみせる永の言葉を星弥は少し眉を顰めて聞いていた。
「そんな因縁の相手の家にリンが転生してるなんて出来すぎてると思わない?」
「お祖父様が、何かをしたってこと?」
「まあね。あのジジィの性格からしたら、僕はそれを確信してる。多分、君よりも僕は銀騎詮充郎という男を理解している」
「……」
口数の少なくなった星弥を追い詰めるように永はたたみかけた。
「どうする? お祖父様、の敵に手を貸す覚悟が君にあるならその先のことを話す」
「永! そんな言い方──」
さすがに言い過ぎだと蕾生は思った。女子相手に容赦がなさすぎる。けれどそんな蕾生を手で制して永は続けた。
「鈴心を救いたかったら、僕らに協力するしかないよ?」
挑戦的な永の物言いに、星弥は少しだけ考えた後、口を開いた。
「周防くんは、お祖父様かすずちゃんか選べってわたしに言ってるのね」
「そう。君が鈴心を大切に思ってるのは伝わってるからね」
「それは周防くんもでしょ? すずちゃんがどうしても必要だからわたしを脅すみたいな言い方をしてる」
「うん?」
相手が引く態度を見せないので、永は小首を傾げた。星弥は真っ直ぐに永を見て言う。
「わたしが協力しないと、すずちゃんともう一度会うなんてできないよ? ましてや説得なんて」
「えーっと……」
永は急に目を泳がせ始める。そこへとどめの一言をにこやかに星弥が放つ。
「お願いするべきなのは周防くんの方だよね?」
「……」
言葉のない永に、星弥はにっこり笑った顔のまま、首を傾けて降参を促した。
「──やっぱり、君は苦手だなあ」
永が言い負かされたのを初めて見た蕾生は、思わず口を開けて二人を見比べてしまった。両者ともニコニコ笑いながら恐ろしい雰囲気で会話を続ける。
「僕が頭を下げたら君は協力してくれるのかな?」
「頭を下げる必要はないけど、わたしって頼まれたら断れない人みたいだから」
「──なるほど。僕は君の人となりを間違えて解釈してたみたいだ」
こういうのを狐と狸のばかし合いと言うのか、それとも敵対する大臣同士の腹の探り合いとでも言おうか、どちらにしても蕾生にとっては高次元の会話がなされていた。
「参ったな、もっと直感を信じれば良かった」
「そうかもね」
顔は笑っているが目が笑っていない同士、にこやかな攻防の後に永が折れた。
「わかった。まずは君に事情を話す。その後君が選ぶといい。協力するか──詮充郎につきだすか」
「いいのか? 永」
万が一の事を考えて蕾生が尋ねると、永は両手を軽く掲げて降参のポーズでおどけて見せる。
「まあ、大博打ではある。けど、これくらいの賭けには勝てないとね」
永と蕾生の心が決まったのを見定めて、星弥はにっこり笑って言った。それは勝利宣言と言ってもいい。
「お話長くなるよね? お茶、入れ直すね」
そうして、今度はカモミールティーが入れられる。蕾生は初めてだったが一口飲むと気分が落ち着くようだった。
永が少し勿体ぶりながら口を開く。九百年前の自分──英治親の伝記が滔々と語られた。
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