転生帰録──鵺が啼く空は虚ろ

城山リツ

文字の大きさ
49 / 122
第三章 君を取り戻す

第11話 鵺にかけられた呪いとは

しおりを挟む
「で、何を話せばいいんだ?」
 
 はるか蕾生らいおも今日の話題について思い悩んでいた。すると星弥せいやが小さく手を挙げて喋り始める。
 
「あの、わたし聞きたいことがあるんだけど」
 
「なに?」
 
 永は軽く返事をして星弥に注目した。
 
周防すおうくん達は、九百年の間に三十三回も繰り返し転生してるって言ったけど、どうやってるの?」
 
「どうやってる、とは?」
 
「具体的な方法のこと。先週、すずちゃんの今回の転生は、もしかしたらお祖父様がうちの秘術か何かを使ってるかもって言ってたけど、それより前はどうやって転生してたの?」
 
 素朴だがとても重要な質問だと蕾生は思った。何しろ転生しているという事実のみ永から聞かされ、その詳細は未だに教えられていないのだから。
 
「あー、そうだね……うーん、白状すると僕らは好きで転生してる訳じゃない。ぬえに殺されて気づいたら生まれ変わってるんだ。転生に関しては僕らの意思は関係ないと思う」
 
 永が歯切れ悪くそう答えると、星弥は更に食い下がった。
 
「なら、その鵺の呪いって何なの? 何度も転生させること?」
 
「いや、鵺の呪いは転生させることじゃない」
 
「じゃあ、何?」
 
「それは……まだ言えない」
 
 やはり永は口を噤んでしまった。鈴心すずねが現れ、蕾生にも現状の理解が進んできたところだが、永にとってはまだ不十分なのだろう。そしてそれを聞いた星弥は遠慮がちに尋ねる。
 
「──わたしがいるから?」
 
「いや、ライくんにもまだ言えない」
 
 蕾生は黙って二人の会話を聞いていた。一体永は何を恐れているのか、それを知らなくては本当の意味で一緒に運命に立ち向かう、などと偉そうには言えない。それが蕾生にはひどくもどかしい。
 
「どうして?」
 
「それを今ここで言ったら、確実に──日常は消え失せる」
 
 永が躊躇いながら、言葉を選びながら放った言葉に、蕾生も星弥も絶句した。
 
「まだなんの準備もできてないし、情報も揃ってない。軽はずみに口にすれば、僕らは君を巻き込んで即死するだろう」
 
「……」
 
 大袈裟ではない表現に、星弥は微かに震えていた。それくらいの恐ろしい事実を永は抱えている。
 
「今は、そうだな、このまま時を無駄に過ごしていくと、僕ら三人に大きな呪いが降りかかる。こんな表現しかできない。ごめん」
 
 軽口ばかりの永だけれど、それだけ深刻な事情があるのを蕾生に悟らせないためのものであることは、蕾生本人が一番わかっている。
 
ただくんは、それでいいの?」
 
「ああ。気にはなるけど、永がここまで躊躇するからには仕方ないだろ。何度も繰り返してきたからこその判断だと思う」
 
「──そっか。わかった」
 
 当人達が納得しているなら自分がこれ以上詮索することではない、と星弥はそこで引き下がった。
 
「ありがと、ライくん」
 
「ん」
 
 永と蕾生を見て男の子同士の信頼関係っていいなと思う反面、それが崩れた時の危うさも星弥は感じていた。
 永と蕾生がまるでゴールのない綱渡りをしているように思えた。だから星弥は出来る限りの情報を得ようと試みる。
 祖父のためではなく、彼らのためでもない。何かの時に自分が適切な行動をとるためだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

処理中です...