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第三章

3-11 鵺の呪いとは?

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「で、何を話せばいいんだ?」
 
 はるか蕾生らいおも今日の話題について思い悩んでいた。すると星弥せいやが小さく手を挙げて喋り始める。
 
「あの、わたし聞きたいことがあるんだけど」
 
「なに?」
 永は軽く返事をして星弥に注目した。
 
周防すおうくん達は、九百年の間に三十三回も繰り返し転生してるって言ったけど、どうやってるの?」
 
「どうやってる、とは?」
 
「具体的な方法のこと。先週、すずちゃんの今回の転生はもしかしたらお祖父様がうちの秘術か何かを使ってるかもって言ってたけど、それより前はどうやって転生してたの?」
 
 素朴だがとても重要な質問だと蕾生は思った。何しろ転生しているという事実のみ永から聞かされ、その詳細は未だに教えられていないのだから。
 
「あー、そうだね……。うーん、白状すると僕らは好きで転生してる訳じゃない。ぬえに殺されて気づいたら生まれ変わってるんだ。転生に関しては僕らの意思は関係ないと思う」
 
 永が歯切れ悪くそう答えると、星弥は更に食い下がった。
 
「なら、その鵺の呪いって何なの?何度も転生させること?」
 
「いや、鵺の呪いは転生させることじゃない」
 
「じゃあ、何?」
 
「それは……まだ言えない」
 
 やはり永は口を噤んでしまった。鈴心が現れ蕾生にも現状の理解が進んできたところだが、永にとってはまだ不十分なのだろう。
 そしてそれを聞いた星弥は遠慮がちに尋ねる。
 
「──わたしがいるから?」
 
「いや、ライくんにもまだ言えない」
 
 蕾生は黙って二人の会話を聞いていた。一体永は何を恐れているのか、それを知らなくては本当の意味で一緒に運命に立ち向かうなどと偉そうには言えない。それが蕾生にはひどくもどかしい。
 
「どうして?」
 
「それを今ここで言ったら、確実に──日常は消え失せる」
 
 永が躊躇いながら、言葉を選びながら放った言葉に蕾生も星弥も絶句した。
 
「まだなんの準備もできてないし、情報も揃ってない。軽はずみに口にすれば、僕らは君を巻き込んで即死するだろう」
 
「……」
 
 大袈裟ではない表現に、星弥は微かに震えていた。それくらいの恐ろしい事実を永は抱えている。
 
「今は、そうだな、このまま時を無駄に過ごしていくと、僕ら三人に大きな呪いが降りかかる。──こんな表現しかできない。ごめん」
 
 軽口ばかりの永だけれど、それだけ深刻な事情があるのを蕾生に悟らせないためのものであることは蕾生本人が一番わかっている。
 
ただくんは、それでいいの?」
 
「ああ。気にはなるけど、永がここまで躊躇するからには仕方ないだろ。何度も繰り返してきたからこその判断だと思う」
 
「──そっか。わかった」
 
 当人達が納得しているなら自分がこれ以上詮索することではない、と星弥はそこで引き下がった。
 
「ありがと、ライくん」
「ん」
 
 永と蕾生を見て男の子同士の信頼関係っていいなと思う反面、それが崩れた時の危うさも星弥は感じていた。
 永と蕾生がまるでゴールのない綱渡りをしているように思えた。だから星弥は出来る限りの情報を得ようと試みる。
 祖父のためではなく、彼らのためでもない。何かの時に自分が適切な行動をとるためだ。
 
「じゃあ、鵺の呪いがふりかかったとして、貴方達を殺すことができたなら、呪いはそこで終わるんじゃない?」
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