転生帰録──鵺が啼く空は虚ろ

城山リツ

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第六章 鵺が啼く空は虚ろ

第18話 前回

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 穏やかな様子も束の間で、また思い出したように詮充郎せんじゅうろうは憎しみを吐露する。
 
「だが、その矢先に分家の分際で御堂みどうが裏切った。その裏にはお前達がいたな」
 
「前回の転生のことだな」
 
 視線を向けられた永が答えると、永に向けて指差しながら詮充郎は言う。
 
「私達親子はぬえに肉薄しながらも勝てなかった。紘太郎ひろたろうは重傷を負った。鵺と相打ちになったお前たちの亡骸を見て思ったよ。せめてこいつらの遺体は絶対に保存して隈なく研究し尽くしてやると! だが、それも半分は叶わなかった。死んだと思っていたリンが息を吹き返したことでな」
 
「──!」
 
 もたらされた事実にはるかが衝撃を受ける。その様を気にも止めず詮充郎は続けた。
 
「あの娘は私に取引きを持ちかけた。ハルとライはこのまま転生させろ、その代わり自分の身体を差し出すと」
 
「な──」
 
「私としてはとても美味しい話だったよ。生きた因子持ちのサンプルが手に入るのだから。だが、よく見ればリンも一時的に生き返っただけで、瀕死の状態だった」
 
 ここまで語った後、永に向けられていた視線をふと鈴心すずねに移して、詮充郎は呟くように言う。
 
「心配するな、私は約束は守る」
 
「え?」
 
 永がつられて鈴心すずねを見れば、とても青白い顔で自らを抱き締めるような格好で何かに耐えているように見えた。
 だが、詮充郎が間髪入れずにまた話し始めたのでそちらに意識を集中させるしかなかった。
 
「そこで構想中だった試験管ベビーの研究を思い出した。死にゆくリンの魂を保存しておいて、実験用の卵子に憑依させリンの生まれ変わりを我が手中に収めることにした」
 
「そんなことが本当に可能だったのか?」
 
 事前に説明はされていたが、永はまだ半信半疑だった。リンの魂を受精卵に憑依させるなど、そんな冒涜的なことができてたまるかと思ってもいた。だが、詮充郎は得意げに両手を広げて大仰に言う。
 
「我が息子紘太郎にかかれば可能なのだよ! 紘太郎はすぐにリンの魂を抜き、一先ず家宝の幽爪珠ゆうそうじゅに格納した。それから幽爪珠から魂を卵子に移す術式を私に託して、力尽きて死んだ」
 
「お父様は、その時に亡くなっていた……?」
 
 銀騎しらき紘太郎ひろたろうの死の真実を知り、星弥せいやは絶句する。詮充郎は明確な年代を言わないが、少なくとも十六年以上は前だろう。ならば自分はどうやって生まれたのかを考えた。
 皓矢こうやにその答えを求めたが、兄は何も言わずに星弥の手を優しく握る。詮充郎の嘆きの言葉はその間も続いていた。
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