ヒーロー達の青春エピローグ

蜂峰 文助

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エピソード1『球乃大地と天宮姫』

【第19話】球乃大地と天宮姫②

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(大地の奴……アレは絶対、何か隠してる……)

 帰り道、月夜は思考する。

(ちょっと整理してみよっか……。
 姫からの又聞きだけど……。
 そもそも大地が、他の生徒から恨まれた要因は、『その発言』からだ……。
 大地は元々は人気者だった。頭も良いし、スポーツ万能……女の子達からも人気があったらしい……。
 優しくて、勉強とかもよく他の生徒に教えていたらしいし……。
 なのにある日突然――
 に対して……『前々から思ってたんだけどよぉ? 人に聞きに来る前に、自分の頭を使ったらどうだ? だからポンコツなんだよ、お前は』等という暴言を吐いた。
 それだけじゃない……その後――
 『他のクラスの奴ら、お前らもだ! どうせオレの頭の良さを妬んでんだろ! 糞低脳の糞凡人共が! お前らみたいな下等な生物が、天才であるオレと一緒の空気を吸える事自体有難いと思え! この、カス共が!!』等という暴言を、クラス中に大々的に発言した。
 それからだ……大地が、他の生徒に恨まれ始めた……いや、妬まれ始めたのは……。
 最初この話を姫から聞いた時、恨まれるのは当然、自業自得だ。……とか思っちゃったけど……あの時の大地の表情を見るに……それは早計だったのかもしれない……。
 私は……いえ、私達は考えるべきだったのだ……。
 何故――大地が突然、そんな暴言を吐いたのか……。考えるべきだったのだ。
 よーく考えてみると……明らかに、おかしい)

「なぁーに、家の前で難しい顔してんだよ。うんこでもしてぇのか?」
「え!? あ……」

 デリカシーを微塵も感じさせない声掛けをしてきたのは太陽だった。
 どうやら長い間考え込んでいたらしい……気が付けば、自宅の前に辿り着いていたようだ。
 太陽は、そんな事など知らずに声を掛ける。

「何驚いてんだ? 大好きなお兄ちゃんと帰るタイミングが重なって喜んでんのか?」
「いや……それはない、けど……」
「即答かよ……ったく……ボーっとしてねぇで中入るぞ」
「う、うん……」

 太陽が月夜の横を通り過ぎ、玄関の前へ。そして鍵を開ける為、ポケットから鍵を取り出している。
 月夜は思った。

(兄貴なら、何か別の答えが浮かぶかもしれない……大地と兄貴、頭の出来は天と地ほども違うけど、一応兄貴も男だから)

「ねぇ兄貴……」
「ん? 何だ?」
「えーっと……何て言えば良いのかな? えーっと……その、さ……意図的にさ、……かな?」
「はぁ? 人に嫌われようとする? 何でそんな事を急に………………あ、もしかして……大地の事か?」

 こういう時の太陽は、異様に察しが良い。
 まるで他人の心が読めるのでは? そう錯覚してしまう程、彼はよく気付くのだ。
 嘘をつく理由がない――月夜はそう思い。素直に頷いた。

「そう……大地の事、なんだけど……」

 と、なれば太陽は更に気付く。
 今の質問に加え、先程の月夜の難しい表情……その二つを組み合わせる事で一つの疑問が浮かんだ。

「何かあったのか?」
「……実はね……姫と大地が……――」

 そして月夜は、今日あった出来事の経緯を全て話した。
 太陽は顎に手を当てながら、「なるほどねぇ……」と呟く。

「だからさっきの質問って訳か」
「そう……ねぇ兄貴。兄貴ならどう思う? 自分から嫌われようと思う時って……どんな時?」
「うーん……そうだな……例えば――


 自分が嫌われる事で……かな?」


 月夜は、そんな太陽の言葉を反芻する。

「他人の……助けに……」
「いや、他人っつーか……何だろうな……に――というのが正しいかもしれない……そのくらいじゃないと、自らを犠牲にするのは、流石に躊躇いがあるだろ」
「なるほど……大切な人……大地にとって、大切な人って言うと……」
「まぁ、一人しかいねぇわな。大地《あいつ》……口では、お前の事好きだ好きだって言ってたけど……それは絶対に違う。お前も当然……それは理解してんだろ?」
「うん……分かってる……それは、見てれば、分かるよ……。でも、じゃあ何で大地は、そんなをついたんだろう?」
「さぁな、頭の良い奴の考えてる事は分かんねぇよ……いや、正確には、他人の考えてる事が普通は分からないもんなんだよな」
「だよね……やっぱり直接聞き出すしか……でも、大地がそう簡単に口を割る訳ないし……」

 ここで、月夜はとある事を閃いた。

(いや、ある……。大地に話させなくても……無理やり、あいつの本音を引き出す方法が……だけど、そうなると……うーん……気がびっくりする程進まないなぁ……)

「苦虫を噛み潰したような顔してんなぁ、お前」

 と、太陽が一言口にした。
 溜め息を吐きつつ、太陽は言う。

「恐らく……お前も『その方法』に辿り着いてんだろ? 変なプライドか何なのかは知らねぇけどよ、仲間の為には四の五の考えず動くべきなんじゃねぇか? 自分の事なんて、二の次でよ」
「……うん……そうだけど……」
もきっと――お前の頼みなら、喜んで引き受けてくれる筈だ」
「……うん……そうだね。分かった。ねぇ兄貴……」
「何だ?」
「ちょっと携帯……貸してくれない?」



 そしてその翌日――

 大地は、町にある小さな山の山頂にいた。
 彼はこの場所から見渡せる景色が大好きだった。
 悩みや迷っている事、嫌な気持ちを全て忘れられるような気がするからだ。
 今日も学校をサボり、一人でここ迄足を運んだ訳なのだが……。

「こんな所に居たのか」

 背後から声が掛けられ、大地が振り向いた。
 そこに居たのは……太陽だった。
 大地は、あからさまな作り笑いを顔に貼り付け答える。

「こんな時間に、こんな所に何をしに来たんですか? まだ、学校の時間の筈ですけど? ダメですよ、サボっちゃ」
「堂々と学校サボりまくっているお前に言われたくねぇなぁ。残念ながら」
「まぁ……それもそうですね」

 依然……作り笑いは、張り付いたままだ。
 太陽はそれを確認した後、即座に本題を口にした。

「聞いたぜ……姫と月夜と喧嘩したんだってなぁ」
「……やっぱり、その話ですか。わざわざ僕を説得しに来てくれたんですか? 太陽さんまで出向いてくれるだなんて、光栄な限りです。ですがごめんなさい。僕は学校になんて行く気ないんで」
「説得? んな事しねぇよ。自分の人生だ、好きにすりゃ良い……オレはただ、お前に聞きたいだけだ――何故、わざわざ自分を嫌われるように仕向けたのか……その理由を、知りたいだけだ」
「……なるほど……」
「教えてくれねぇか?」
「嫌です」
「何故嫌なんだ?」
「言いたくないからです」
「だろうな」
「?」

 太陽が笑った。

「言いたくない――そうだよな、普通そうだし。そう言われると思った。だからちょっとばかしを使わせて貰ったぜ。悪く思うなよ……大地」
「裏技…………っ!? まさか――」
「その、まさかだ」

 「もうだろ」太陽は後ろを振り向き、に声を掛ける。

「もう出て来て良いぞー」

 そして、その人物は姿を現す。
 申し訳なさを表情に出しながら――愛梨が、その姿を見せた。

「ごめんね、大地くん。全部――
「白……金っさん!! 太陽さん! こんなの卑怯ですよ!!」
「卑怯なのはごもっともだ。だけど……これくらいしなきゃ、お前の本心が分からない」
「分からなくて良いんですよ!! これは僕だけの問題なんですから!! 放っておいてください!!」

 ようやく――大地の表情から、作り笑いが消えた。
 「……大地くん……」愛梨が口を開いた。

「それは違うよ……これは……君一人の問題なんかじゃない……」
「っ!?」
「君は……姫ちゃんに対して、自己満足を押し付けるなって言ったみたいだけど……この現状こそ、
「……っ! だから放っておいてくださいってば! あなた達には関係が――」
「関係なくなんかない! 私達は仲間なんだよ? それにコレは――あの月夜ちゃんが、! 頼られた以上――私には、その期待に答える必要があるの!」
「……っ!?」

 「……白金……説明してくれ」太陽が、愛梨を促す。
 愛梨が口を開き、その全てを明らかにする。

 明らかにされる時が来た。

「大地くん……あなたは――――」
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