24 / 106
ヒーロー達の青春エピローグ~夏の章~
【第23話】浮いた話がなくなったなぁ、って思ってさ
しおりを挟む夏休みも近付く、とある日の帰り道。
海波静が唐突に切り出した。
「あー……木鋸先輩に会いたいなぁー……」
「ふむ……」
それを耳にした月夜が、抱いた疑問をそのまま口にする。
「木鋸先輩、木鋸先輩って……あのさぁ? 静。あの変態クソ野郎のどこがそんなに良いの? あの緑アフロのどこにそんな魅力がある訳?」
「ん? 分かんないと思うよー。ブラコンの月夜にはー」
「私ブラコンじゃないしっ!」
「いやいやいや、どう見ても……どの角度から見てもブラコンっしょ。紛うことなきブラコン日本代表だよ……」
そう言って静は「はぁ……」と深い溜め息をついた。
「それ、前に姫からも同じ事聞かれたんだけどさぁ? 木鋸先輩って、あんた達から見てそんなに魅力ないのか?」
「うん、ないね。全く」
「即答なんだ……」
「うん、即答。だって、どう考えてもアイツに静は勿体ない。静は良い子だし、モテるんだからさぁ。他にもっと良い人が……」
「そこで聞いていただこう!! 木鋸先輩の素晴らしさを!!」
「は?」
唐突に、何かが始まった。
月夜が、一ミクロンも興味抱かない、何かが。
「その見る目のない両目に訴えても無駄だと察した私は! その腐っていない可能性のある両耳に訴える事に決めたのだ! 両耳の穴をかっぽじって聞くが良い!!」
「はぁ……」
「良いか!? 一気に行くぞ!!
先ずは木鋸先輩の魅力その一! いつも眠そうなだらしない目!!
魅力その二! いつもボケーッとして半開きの口元!
魅力その三! 謎のアフロ! 手を突っ込んだらモフモフしてそう!!
魅力その四! 所構わずエロい事に目がない恥知らずさ!!
魅力その――」
「あ、もういいもういい……」
「何で止めるのさ! まだまだ木鋸先輩には魅力が溢れて……」
「一つ聞いて良いかな? 静」
「何さ!」
「今のって……魅力、を言ったんだよね?」
「そうだ! 魅力だ!」
「悪口……じゃなくて?」
「魅力だ! 木鋸先輩への悪口なんか、口が裂けても言えるか!!」
「へぇ……そ、そうなんだ……ふぅん……」
やはり、千草に対して何の魅力も感じない、月夜であった。
「とにかく!!」静は言う。
「木鋸先輩は優しくて! 思いやりのある! 良い人なんだからぁ!!」
「はいはい……分かった分かった……」
返事をしながら月夜は思う。
(あの糞アホアフロの何が、ここまで静を引き付けるのだろう……? よく分かんない……)
そう……思ったのであった。
「はぁ……月夜にはやっぱ分かんないかぁ……あーあ。木鋸先輩と付き合えたらなぁー……」
項垂れるように発した静のその言葉。
それを耳にした月夜は、とあるキーワードに反応する。
「そうそう、付き合う――と言えば、土門くんと星空さん、付き合い始めたらしいよ」
「えぇっ!? マジで!?」
「うん、マジで」
「そっかぁー……良かったなぁ、宇宙さん」
「そうだね」
「てっきり最初は太陽さんと愛梨さんかと思ってたんだけどなぁー」
その言葉を聞いた瞬間、一気に月夜の顔が曇る。
いや、曇るというより、怒りの表情だ。
「あの女が兄貴に手ぇ出したらぶっ飛ばすから」
「本当に月夜は愛梨さんに容赦ないなぁ……大地と姫の時お世話になったんだからさぁ……もっと心を広く持てよ……」
「確かにあの時はお世話になったけどさぁ……それとコレとは話が別だもん」
「……そういうもんかねぇ……。
つーか、大地と姫も最近良い感じだし……皆続々と春が来てるなぁ……羨ましいよ……」
「春……ねぇ……季節はもう、夏だけどね」
そう言いながら月夜は、雲一つない青空を見上げた。
「大地と姫……上手くいくと良いなぁ……」
「……それ、なんだがな? 月夜」
「どれ?」
「それ」
「大地と姫の事?」
「うん」
「あの二人がどうかしたの?」
「いや……大地は最初、月夜の事が好きって言ってたろ? 結局それは違ったみたいだけど……それでさ……」
「ふむ……それで?」
「月夜から浮いた話がなくなったなぁ、って思ってさ」
「はぁ!?」
眉間に皺を寄せる月夜。
再度、静は問い掛ける。
「なぁ月夜ー。浮いた話とかないのぉー?」
「……ないわよ……ある訳ないでしょ。そんなもの……」
「ちぇー……つまんないのぉ……」
口を尖らせる静の横に並び、歩いている月夜が思い老ける。
(そうよ……私にそんな話なんてないわよ……今一瞬、あいつの顔が浮かんだけど……これは違う……これ別に恋なんかじゃない……)
「あれ? 月夜と静じゃねぇか。帰りか?」
(え?)
声のした方へ振り向くと、そこに、太陽の同級である――透士郎の姿があった。
偶然、通り掛かったようだった。
元気に静が挨拶を交わす。
「ああー! 透士郎さんだ!! お久しぶりです!!」
「おう、久しぶり。帰りに会うとか珍しいな。静、今日は練習休みなのか?」
「うん! テスト期間だしね! でも自主練はバリバリするよー! なんてったって大会も近いしね!」
「程々にな。……月夜も久しぶりだな。この前、飯食いに行った以来か?」
「しょ……しょうっね!」
モジモジしながら答える月夜。
「っ!?」
これを見た静の恋愛センサーが、ピーンっと働いた。
月夜の恥ずかしそうな表情。
紅潮している両頬。
モジモジとしている可愛らしいその仕草。
それらは正に――――千草を前にした時の静《自分》そのものだ。
(あら?)
「どうしたんだ? 月夜。顔赤いぞ? 熱でもあんのか?」
「べっ、別に! そんなんじゃ……ないわよっ! こっち見ないでっ!」
「はぁ?」
(あら? あらあらあらあら? あらまぁー!!)
目を輝かせながら、よからぬ事を企む静の姿が、そこにあった。
次回へ続く。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
マカロニ
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
商人の男と貴族の女~婚約破棄から始まる成り上がり~
葉月奈津・男
恋愛
「あなたとの婚約、破棄させていただきます!」
王立学院の舞踏会。
全校生徒が見守る中、商家の三男カロスタークは、貴族令嬢セザールから一方的に婚約破棄を突きつけられる。
努力も誠意も、すべて「退屈だった」の一言で切り捨てられ、彼女は王子様気取りの子爵家の三男と新たな婚約を宣言する。
だが、カロスタークは折れなかった。
「商人の子せがれにだって、意地はあるんだ!」
怒りと屈辱を胸に、彼は商人としての才覚を武器に、静かなる反撃を開始する。
舞踏会の翌日、元婚約者の実家に突如として訪れる債権者たち。
差し押さえ、債権買収、そして“後ろ盾”の意味を思い知らせる逆襲劇が幕を開ける!
これは、貴族社会の常識を覆す、ひとりの青年の成り上がりの物語。
誇りを踏みにじられた男が、金と知恵で世界を変える――!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる