46 / 106
エピソード3『万屋太陽と白金愛梨』
【第45話】万屋太陽と白金愛梨②
しおりを挟む「もしもし……? 皐月姉? ごめん、今日帰るの少し遅くなる……。うん……もちろん気を付けるよ。うん…………晩ご飯は家で食べるから……うん…………分かった……じゃあ、そういう事で……」
月夜は、皐月との通話を切った。
スマホをポケットの中へ仕舞い、テーブルを挟んで座っている愛梨へと視線を向ける。
二人は今、喫茶店に来ていた。
夕食は家で食べるから、デザートならば付き合うという月夜の提案を、愛梨が飲んだ形だ。
そして、『それなら良いお店があるわ』と、愛梨がこの店を紹介した……という運びである。
開口一番、月夜が問う。
「で? 話って何?」
「言わなくても分かっているのでしょう? 私と……太陽くんの話よ」
「……また、私の心を読んだのね?」
「心を読まなくても分かるよ。あなたがバカじゃないって事、私は知ってるもの」
「ちっ……嫌味な女ね……私はね、あなたのそういう所が嫌いなのよ」
イライラが隠せない月夜。
「そう……」と、愛梨は淡々と頷いた。
「でも、こうして二人きりで喫茶店《ここ》に来てくれた……。何より私は、それが一番嬉しいわ」
「それはあんたが――」
「あ、あのぉ……ご注文良いですかぁー……」
険悪なムードをへし折るかのように、店員が話に割り込んできた。
そう……ここは喫茶店なのだ。注文は一番にするべき事柄である。
月夜は渋々、メニューを手に取り、サッと眺めた後「チーズケーキとレモンジュースで」と注文。
「私もチーズケーキとオレンジジュースお願いします」
愛梨もそれに同調すると、月夜が怪訝な表情を見せる。
店員が去って行くのを確認すると、月夜は一言。
「真似しないでよ」
「真似じゃないよ。私、いつもここ来たらチーズケーキを頼むの。美味しいんだよ? ここのチーズケーキ」
「…………あっそ」
「似てるんだね……好み」
「は?」
「ケーキの好みも……好きな人の好みも」
「はぁ!? す、好きな人って! あんたねぇ!!」
「静ちゃんから聞いたわよ。月夜ちゃんは、ブラコンだって」
「あ……あれは! あんたが先に!」
「私が?」
「…………何でもないわよ……」
ここで愛梨が視線を落とす。
「私……もっともっと、月夜ちゃんの事知りたいな」
「あっそ……私は全然、あんたに興味なんてないけどね」
「うん……知ってる」
苦笑いの愛梨。
「……その顔……」
「え?」
「私はあんたのその顔が気に入らないのよ! 【読心】だかなんだか知らないけど! その何でも理解してますって表情が気に食わないのよ!! 私の事知りたいなら! その得意な読心で、私の心も読めば良いでしょ!? そして、あんたは理解するの! 私が……如何にあんたの事が嫌いなのか! 理解するのよ! そうすれば、きっと私に許可を貰おうともせず、兄貴と付き合おうって考えになる筈だから!!」
「あ、心配しなくても、ちゃーんと心は読んでるわよ?」
「この野郎っ!!」
月夜が机を強く叩いた。
「じゃあ何でわざわざ私の元になんて来るの!! 悪口でも言われたい訳!? ドMなの!?」
「ううん……むしろ私はSよ。ドS」
「聞きたかないわ! そんな事!!」
「心を読んだ……だからこそ、よ」
「……え?」
「月夜ちゃんが今言ったように……心の底から私の事を嫌いでいてくれたのなら。こんな事しなくて、良かったのになぁ」
「っ!!」
痛い所を突かれ、押し黙る月夜。そして彼女は深い溜め息をついた。
「……なるほど、やっぱり全てお見通しって事なのね……」
「ええ……何せ私は――他人の心が、読めるから……」
「…………」
「私は今まで……この力で、色んな人を不幸にしてきた……今、あなたにしているようにね……。この一件は、私の人生を大きく左右する出来事に他ならない……。だからこそ、私はあなたと向き合わなくてはならないの……。不幸ではなく……太陽くんを、幸せにする為に……」
「……兄貴を……?」
「そう。ねぇ知ってる? 私が太陽くんを好きなくらい……そして、月夜ちゃんが、太陽くんを好きなくらい……太陽くんも、月夜ちゃんの事が、好きなんだよ?」
「………………」
「そんな太陽くんが、大好きな妹さんが嫌う女性と一緒になって、本当の意味で幸せになれるのかなぁ?」
「……知らないわよ……そんな事……勝手に幸せになればいいんじゃないの?」
「月夜ちゃん」
「何よ……」
「お願いします……。お願いだから……私と、ちゃんと向き合ってくれないかな?」
「…………向き合ってるでしょ? 今こうして……テーブルを挟んで……」
「嘘つかないで、月夜ちゃんだって本当は分かっている筈よね? 私が言っているのは、そういう物理的な話じゃなくて、『心の問題』だよ」
「はぁ? 何言ってんの? 意味分かんないんだけど」
「月夜ちゃん!!」
「っ!!」
突然大声を上げた愛梨に驚く月夜。
「…………知ってた? 私……腹が立つと、こんな風に大声を出したりするんだよ?」
「あ……あんた、一体何を……」
「太陽くんと昔、仲が悪かった頃なんて、ずっと彼に酷い事を言ってきたの……彼の胸を抉るような……エグい事をね。どう……? そういう私を、あなたには――知って欲しいって、言っているの」
「…………」
「私と、ちゃんと向き合って欲しいっていうのは、そういう事」
「………………」
「人ってね……? 上手いのよ、猫を被るのが」
「……知ってるわよ……そんな事……」
「だからこそ……あなたには、本当の私を知って欲しい。その上で、判断して欲しい」
「判断……?」
「そう……。太陽くんの事が大好きで――彼の事を一番見てきたあなたが――――私が、彼の横に居て良い存在であるのかどうかを、見極めて欲しいの」
「…………! 見極め、る……? 私が……?」
「それがあなたに認めて貰うという事……そして、それを問うている、今、この瞬間が――――私の覚悟よ」
「…………っ!!」
月夜は見誤っていた。
白金愛梨という女性の事を……。
今までただただ嫌っていた月夜は知らないのだ……この目の前にいる愛梨という女性の――――執念深いとも言える、頑固な本性を。
「ねぇ……月夜ちゃん? もう一度聞くわよ……? 私と――――ちゃんと向き合って」
愛梨と月夜のバトルは続く……。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』
鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、
仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。
厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議――
最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。
だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、
結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。
そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、
次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。
同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。
数々の試練が二人を襲うが――
蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、
結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。
そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、
秘書と社長の関係を静かに越えていく。
「これからの人生も、そばで支えてほしい。」
それは、彼が初めて見せた弱さであり、
結衣だけに向けた真剣な想いだった。
秘書として。
一人の女性として。
結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。
仕事も恋も全力で駆け抜ける、
“冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる