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エピソード3『万屋太陽と白金愛梨』
【第50話】万屋太陽と白金愛梨⑦
しおりを挟む白金愛梨は、他人の心が読める。
故に、彼女の前で隠し事は出来ない。
全てが看破されてしまうのだ。
良い事も……悪い事も。
(だから当然……オレが今から告白しようとしている事など、容易く看破されている事だろう……。
逆を言えば、そうだと分かっていながら、わざわざこの場所まで来てくれたという事は、返事はほぼ百%OKである筈だ。
告白成功率、百%の告白――そんなもの、傍から見ると、茶番でしかないと思う……。
そんなつまらない物語……例え小説にした所で、誰も読まない。
駄作決定だ。
しかし……こと、白金愛梨とオレ、万屋太陽との関係性では、この茶番こそが必要不可欠なのだ。
何せオレ達は互いに捻くれ者だから。
互いの心の読み合いを超え、言葉として伝え合って、歩んで来たのが、オレと白金の関係性なのだから。
だから――オレと白金の間には、心の繋がりよりも、言葉の繋がりここが意味を持つ。
通常ならば、言葉だけと聞いてしまうと、どうしても『口先だけ……』『表面上』『口で言うだけなら猿でも出来る』等とマイナスのイメージが浮かんでしまう。
だけど、オレ達の関係は違う。
何故なら――目の前にいるこの可愛らしい女性は――他人の心が読めるのだから。
そして白金は、これまで沢山……人の心を読んできた。
人の心の声を聞いてきた。
良い声も……悪い声も、聞いてきた。
良い声と悪い声……どちらが多かったのかも、彼女は知っている事だろう。
そのどちらが多かったのかは、明白だ。
人間とは欲深い生き物――そんな事実をオレが身に染みて体感するよりも先に、かつてのオレは理解したのだ。
出会った頃の白金愛梨を見ていれば、その理解は容易かった。
人の心を読む事で――彼女がこれまでどれ程の絶望を味わってきたのか……それは、心の読めないオレには分からない。いいや……他の人間だって分からない筈だ。
理解なんて到底出来ない筈だ。
何故なら――普通の人間は、他人の心など決して読めはしないのだから……。
したがって、オレと白金との間には、心の繋がりなどは意味がない。
そんなものは、とうの昔に繋がっている。
それでもオレ達の関係は前に進まない。
白金が進ませてくれないのだ。
彼女はこうオレに訴えてきている。
『言葉にして欲しい』――と。
だからこそ、オレがすべき事は、『言葉で伝える事』だ。
ただし、心が読める白金相手には、ただただ言葉を伝えるだけではいけない。
上っ面の言葉だけでは……心を読める彼女の前では容易く看破されてしまう。
彼女が欲しているのは……そんな言葉ではない。
心と言葉――それらが、一致している言葉。
…………まったく……ワガママな奴だ……。
強欲にも、程がある。
オレはこれまで……その勇気が持てなかった……。
何故なら、自分の心の底など、通常なら自分にすら分からないものなのだから。
本当にオレは……白金愛梨の事が好きなのか?
何度も何度も何度も……自問自答してきた。
その度にオレは、何度も何度も何度も自分に『好きだ』と答えてきた。
けれど、その答えに確証を持てていなかった。
気付かせてくれたのは――皆の勇気だ。
大地と姫の勇気。
千草と静の勇気。
忍と宇宙の勇気。
そして――――月夜と話をしてくれた、白金の勇気。
当然、そんな事には気付いていた。
何故、月夜があれ程まで、白金の事を嫌っていたのか……気付かない訳がないだろう。
オレは……皆から勇気を貰った。
そして――背中を押して貰った。
もう……尻込みする理由もない。
まだ、『幾つか解決出来ていない問題』もあるが、それらは全て、付き合ってから考えるべき問題だ。
目の前の可愛らしい彼女は今――覚悟を持って、そこに立っている。
ならばオレもそれに答えるべきだろう……。
言おう。
オレのこの気持ちを――百%――声に乗せて……)
「オレは――白金愛梨が好きだ。だからオレと……付き合ってくれないか?」
遂に――太陽は言った。
愛梨に……愛の告白を、したのだった。
対する、彼女の返答は……。
「………………」
返答は……。
「………………」
「し、白金……? ど、どうしたんだ? 何で返事を……」
「………………」
俯いているのでどんな顔をしているのかが分からない。
返事もない……。
太陽に不安が押し寄せてくる。
「白金……?」
(え? えぇ!? 何この反応!? オレ……何かやらかしたか!?)
ドクンドクンドクン……と、心臓が高鳴る。
すると……大きく息を吐いた後、ゆっくりと愛梨は顔を上げた。
「え……」
その時の表情は笑顔であり。
そして――――
まぶしく見えるほど――綺麗だった。
ついつい、顔が赤くなってしまう太陽。
(おいおい……! 何だその顔は……! 反則だろ……!!)
「んー? 何が反則なのかなぁー? 太陽くーん?」
ニヤニヤと、弄ってくる愛梨。
そこには、普段通りの愛梨の姿があった。
なので、太陽も普段通りの対応を返す。
「う、うるせぇ!! 何でもねぇよ」
「照れちゃってぇ……可愛いなぁ」
「ふざけんな! そして茶化すな! 答えを言え! 答えを!!」
強引に話を逸らし、告白へ持って行く太陽。
そんな彼の様子を見て、愛梨は「ふふふ」と笑う。
「……んだよ……何、笑ってんだよ……」
「いや……その顔が見たかったんだよ」
「?」
「…………」
愛梨は……かつて、宇宙と交した言葉を思い出す。
『じゃあ何故告白しないのだ……訳が分からんぞ……言ってる事が支離滅裂だ』
『間違いなく、太陽くんが私に告白して来る時には……照れ臭そうに、顔を真っ赤にするでしょ? 私はもう……それが見たくて見たくて仕方ないの。想像するだけで……キャーっ! 興奮しちゃうなー!』
『……え? ひょっとしてそれが……告白しない理由?』
『うん! 何かご不満でも?』
「…………私の方が……顔……真っ赤になっちゃったね……」
「ん? 何か言ったか?」
「ううん……何でもない」
笑顔で取り繕う愛梨。「でも……答えだよね……答え」と呟き、コホンッと一回咳払い。そして――
「私も……太陽くんの事――――大好きだよ」
その言葉と、その満面の笑顔を前に、太陽の身体は自然と動き出した。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
愛梨が頭を下げ、顔を上げると……。
「え?」
太陽は愛梨を抱き締め、そして……。
「むぐっ……! ………………。」
こうして……。
万屋太陽と白金愛梨は――ようやく……付き合う事となったのであった。
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