【書籍化&完結】おそらく、僕だけ違うゲームをしている。【2月中頃発売】

鵩 ジェフロイ

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本編

09:馬車馬a.k.a.サブマスター

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【職業ギルド指名クエスト】
ギルドに集められた情報をまとめて資料を作成し、ギルドへ提出しよう
依頼者:始まりの町『ユヌ』の職業ギルド
進行度:0%
期限:残り7日
報酬:10000G、職業ギルドランク上昇、ユヌの防衛力上昇(微)、ユヌ近郊安全度上昇(微)、資料室の資料の限定的貸出許可


 クエスト受注の意志を示したことで、クエスト受注のアイコンと共に詳細なクエスト内容が表示された。

 ……最後にとってつけたような報酬は僕以外に喜ぶ奴がいるんだろうか?いや、これは指名依頼なので僕が喜ぶような報酬が追加されたのか。
 職業ギルド、というかカーラに完全にツボを押さえられている。あのまま放っておいたら餓死するまで資料室で読書を続けていただろうことを察されているのだろう。

 他の報酬内容についても、通常の依頼よりやはり割が良いように思う。ゴールドだけを見れば、攻略サイトに載っていたどのクエストよりも金額が高い。

 あとはこのプレイヤーが最初に放り込まれる始まりの町、『ユヌ』の安全度も上がるらしい。上がるということは下がることもあるんだろうか。そして現状の安全度はどの程度なのだろうか。
 まぁ、安全度が上がるに越したことは無いだろう。

 当然、僕としては最大の報酬、貸出許可を得る為にきっちりしっかり依頼をこなして見せようじゃないか。

「早速依頼を進めていかれますか?」
「ああ、よろしく頼む」
「分かりました!作業用に奥のデスクを確保してあるので、ついて来てください」

 カーラに促されて受付カウンターの中に入る。
 
 ザワッ

「?」

 カウンターの中に入ったところでギルド内が突然騒がしくなった気がしたが、何だろうか?

 カーラも周りのギルド職員もさして気にする素振りが無く、カーラがどんどん奥へ進んで行ってしまう為、僕も気にせずに足を進めることにした。

「ギルさーん! 編纂士のトウノさん、依頼を受けてくれましたよ! 資料作りの流れを教えてあげてください」
「な、なんだってーーー!? ……ああ、アークトゥリアよ、感謝します……」

 案内された奥のデスク、紙の束がうず高く積まれ過ぎててよく分からないがその中にいるらしい人物にカーラが声をかけると、ガタッという音と喜びを上げる男の声が聞こえた。……未だ姿は見えない。

「ほら、ギルさん。そこにいたらトウノさんに紹介出来ないですから。トウノさん、こちらうちの職員で唯一《筆記》を持っていたが為に、今回地獄を見ている可哀想なギルさんです。こう見えても一応このギルドのサブマスターです」
「やあ、救世主! 私はギルという。このギルドのサブマスターだが、このように馬車馬のように働かされているので気軽にギルと呼んでくれ」
「……どうも。下級編纂士見習いのトウノ、だ。よろしく」
「ではトウノ君と呼ばせてもらおう。よろしくね!!」

 紙束の山からひょっこり顔を出したのは、全体的に細長い印象の疲れた顔をした中年手前ほどの男性だった。どうやらサブマスターという役職に就いているらしいが、平の職員達と距離が近いのか、気安い雰囲気だ。

 丁寧な言葉遣いを使わずに話すのが絶妙に難しく、ところどころ怪しい口調になりながらも職業の「下級」と「見習い」は強調しておく。まだ技能を使用したことも無いんだ、こっちは。

 だと言うのに僕が自己紹介をすると、満面の笑みで両手で手を掴まれブンブンと振られた。相当切羽詰まっていたとお見受けする。

「それでは、トウノさんはこちらのギルさんに資料作りのやり方を教わってくださいね。あ、あと倒れそうになる前に中断して宿で休んでくださいね!」
「ぐ、分かった」

 さらっと僕に釘を刺しながら、カーラは受付カウンターの方へ戻っていく。

「よし、じゃあ早速やり方を説明しようか。まず大まかな流れだけど、ここに積まれている紙束が全てクエスト消化の過程で得られた情報の山になっている。それをトウノ君の場合は次々《分析》していってもらって、《分析》によって出た結果をそこの白紙に《記録》をすると情報がまとまった文書が出来る。どうだい、簡単だろう?」
「……ああ、流れの把握は出来たと思う、んだが、僕はまだ一度も技能を使ったことが無くて技能の使用がちゃんと出来るか自信が無い」
「おや、そうなのかい? ああ、そういえばトウノ君は異人だったね。大丈夫、最初の内は私もサポートするよ。それに異人はものすごい速さで成長するらしいから問題ないだろう」
「よろしく頼む」

 ギルから資料化の流れをレクチャーしてもらい、大体の流れは理解出来た。聞いた感じちゃんと技能さえ使えれば僕にとっては楽な作業だろう。この作業、まず《分析》が無いと詰んでないか?という気がひしひしとしている。ギルは《筆記》しか無いって言っていたし。

「じゃあまずは技能を使うところからいこうか。まずはこのくらいでいいかな。この紙束に向かって《分析》という技能を強く意識してみるだけで発動するはずだ。やってごらん」
「強く意識……。あ、出来た、と思う」
「うんうん、簡単だろう?」

 ギルに促されるままに、技能を意識してみるとあっさり技能発動の感覚があり、紙束の情報が光る文字となって目の前に整然と並んだ。紙束の中には雑なメモ程度のものも多く混じっているようなので、多少読みやすいように整えられてもいるようだ。……なんて便利なんだろう。

「そうしたら次は、この白紙に注目して《分析》で出した結果と《記録》という技能を意識してみてくれ」
「結果を、《記録》……。出来た」

 《記録》も言われるままに発動してみると、目の前で光っていた文字がするっと白紙に吸い込まれたと思うと、そこにはもう白紙ではなく、分析結果が記された紙がそこにあった。

 ふーむ、大昔にあったパーソナルコンピューターと印刷の関係っぽい。

「うん、上出来だ。とまぁ、こんな感じで私が教えられることはもう無くなっちゃったね。あとはここの紙束を全て《分析》と《記録》にかけてもらうだけだ」
「……ああ」

 いくら作業が楽と言っても、改めて大きなデスクいっぱいに積まれた残りの紙束の量を見ると顔がひきつるのを止められなかった。
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