おそらく、僕だけ違うゲームをしている。

鵩 ジェフロイ

文字の大きさ
200 / 246
本編

234:最後の盟友契約

 ……なんてタイミングだ。
 というか、今の今までワールドクエスト中なのをすっかり忘れていた。

 うぅん……さすがにタイミングを正確にコントロールすることはできないと思うが……月での邂逅の裏を勘繰ってしまう。
 ちょうどどちらも最終局面に入っていてタイミング調整がなんとなくいけそうだったからやってみた、くらいのことはしそうだ。

「どうした?」

 僕が頭を抱えているのを見て、バラムが心配そうに覗きこんでくる。

「……いや、ほぼ同じタイミングで異人たちのワールドクエストも終わって、無事王都が解放されたようだ」
「………………あー」

 僕が頭を抱えた理由に思い当たったらしく、遠い目をする。おそらく、僕も同じ目をしているのだろう。

『クククッ、直前に我らの故郷解放の報せもあったのであろう? 人種族の一都市解放程度とでは規模が違いすぎるであるなぁ』

 シルヴァがほぼ的確に状況を要約してくれる。

「全体アナウンスは聞こえないはずなのに察しが良いな……?」
『クハハッ! 異人のことはだいぶ研究できているであるからな! このくらい容易いことである!』

 そう言って得意げに鼻息をボフーッと鳴らす。

 僕はシルヴァの言う『故郷』に目を向ける。……おそらく、こちらは光神の統べる世界を巡ったあとに来ることを想定されていそうな世界であるので、手段的にも実力的にも、来たいと思って来れる場所ではないだろう。
 じゃあ、なんで僕が来れてしまっているんだというツッコミは勘弁して欲しい。僕にも分からない。気づけばこんなことになっていた。

 ……少しも悔いてはいないが。

 いずれにしても、王都が確実に正規ルートであろうと思うので、そちらを楽しみ尽くしてからゆっくり来て欲しい。

「!」

 突然、バラムが僕の腰を抱えて飛び退る。僕たちがいた場所を見ると、復活した闇の世界から続々と黒い異形が月を取り囲んで舞いはじめていた。

 よく見てみれば、形は異なるが既知のものたちであることに気づく。

「あれは……ピクシーか」

 僕の世界のものではない、元々闇の世界に存在していただろうピクシーが月の周囲を取り囲んでいる。こうして見れば、新たな神を歓迎して寿いでいるようにも思える。


〈称号【月の修復者】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
〈称号【月の管理者】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
〈称号【連環】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉

〈特殊条件を満たしました。称号【縁覚】が【深根環柢しんこんかんてい】に変化しました〉
〈職業『縁覚編纂士』が『深根環柢編纂士』に変化しました〉
〈ユニーク装備[縁覚の編纂士装束]がユニーク装備[深根環柢の編纂士装束]に変化しました〉
〈技能《縁覚編纂士トウノの旋律》が《深根環柢編纂士トウノの旋律》に変化しました〉

〈特殊条件を満たしました。技能《月ノ眼》を獲得しました〉


「…………えぇ?」

 そして唐突に通知ラッシュが来た。…………なんか、タイミングが少しおかしくないだろうか? 今までの経験から言うと、月を出たタイミングか全体アナウンスのタイミングと同時に来ていそうなものだが……まぁ、いろいろ……詰まっていたのだろう。

 変わったものの確認は……またあとででいいか。いろいろありすぎて疲れてきてしまった。ということで、称号なども据え置きにしておく。

「お前……また何かしたのか?」
「ん? 何がだ?」
「なんか服が変わったぞ」
「……ああ、ユニーク装備がまた変化したようだ」
「……また変わったのか。……まぁ、変わらねぇ方がおかしいか」

 バラムがそう言って月へと視線を向ける。……確かに、今回は中々大それたことをしたものだと思うので、得るものがあったのだろう。
 バラムに言われて装備がどう変わったのか気になったので、それだけステータス画面で確認する。……なんだか、すごく繊細な装飾が増えてものすごく豪華な装束になっていた。
 色は、さらに黒へと近づきつつも星々の輝きが垣間見える不思議生地だ。ストラウスの色に似ている。

 そして、外套は布がだいぶ薄くなって、ヴェールのようになってしまった。名前も『深根環柢の編纂士装束:羽衣はごろも』となっている。外套ではなく、羽衣になったようだ。一応、フードについたフクロウの仮面はこれまた豪華になった以外はそのままだった。

「ふぅむ……変わっても変わっても、防御力が上がるどころか見た目的には下がっている気すらするな」

 実際には、ほんの少しずつ上がってはいるのだが変わらず焼け石に水程度でしかない。

「……もはや、そういう問題じゃねえ気がするが……」
「うん? それは……ん?」


 バラムにどういう意味か聞こうとしたところで────感知したマーカーに気をとられる。


 そちらに目を向けると、黒いすらりとしたシルエットが僕の前に傅いた。

「我が君……月を修復し、同胞を解放してくださり感謝いたします。この御恩は生涯忘れませんわ」

 頭から黒いヴェールを被り、気品溢れる漆黒のロングドレスを身に纏っている。見た目には先ほどまでのノーと寸分違わない姿だが、今はそこに確かにマーカーを感知している。影ではない、本物のノーだ。

「こうして影ではなく、我が君にまみえることができて恐悦至極に存じます。まずはこちらを」

 ノーがそう言ながら手をかざす。すると……。


〈【エクストラレガシークエスト:月の修復】をクリアしました〉
〈クリア報酬は依頼者より受け取ってください〉


 クエストクリアの通知が流れる。…………そういえば、これはまた別だったか。先ほどの怒涛のアナウンスと通知ラッシュですっかり抜けていた。

「我が君の偉業への報酬に値するものを与えるなどおこがましいことですが……まずは、我が忠義を捧げさせていただきたく」
「……ああ。約束だったな」

 盟友契約のことを言っているのだとすぐに思い至ったので、僕はインベントリからギルドカードを取り出し、ノーに差し出す。

 差し出したギルドカードを持つ僕の手をノーが両の手でとると、自分の額へと近づける。

「ああ……ありがたき幸せ……」

 そして、僕に盟友契約の申請が届く。


〈『運命紡織の王 妖糸錘女つむめ ノーナ』から盟友契約が申請されました。盟友契約を結びますか?〉


「……うぅん」

 …………実はマーカーが出た時点でノー……ノーナの情報は見えてはいたのだが、信じ難くて目を逸らしてしまっていた。
 しかし、盟友契約の申告で突きつけられてしまっては受け入れるしかない。

 というか。

「本当に妖精なのか……?」

 普通に神の一柱では? 称号の雰囲気やノーナが操るモチーフから察するにどう考えても『運命の女神』とかそういう存在だ。《慧眼》の情報では分類のところに『妖精』とあるが……本当に???

「我が君にはお見えになっているのでしょう? それが全てですわ」

 ノーナが袖で口元を隠しながら言う。
 運命の……妖精と盟友契約を交わせてしまう時点であり余る報酬なのではと思わないでもないが、ノーナにとってこれは僕への報酬扱いではないのが恐ろしい。……これからの報酬が。

 しかし、約束は約束だ。
 目を瞑って盟友契約の申請を受ける操作をえいやと行う。


〈『運命紡織の王 妖糸錘女 ノーナ』と『森碧の深根環柢編纂士 本の虫 トウノ』との間に盟友契約が結ばれました〉
〈称号を確認しています…………意匠を生成中……………盟友の証が付与されました〉
〈盟友契約を結んだ住民が上限に達しました〉


 ノーナとの間に絆が生まれたのを感じる。盟友の証は……右の手首にブレスレットとしてはまっていた。淡く光る銀の糸が絡みながら輪になっているような意匠だ。

「やっとこの時が……我が君との絆を感じますわ……」

 感じ入るようなノーナの左の手首には、全体がオリーブ色で、本から蔦のような植物が生えてぐるっと輪になっている意匠のブレスレットがはまっている。僕の盟友の証だ。


「それでは我が君。わたくしからの報酬は、わたくし“たち”の力を我が君のものとしてくださいませ」


 そう言って恭しく礼をするノーナの両隣に、黒い影が舞い降りた。
感想 295

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!一肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? 表紙は自作です(笑) もっちもっちとセゥスです!(笑)

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)