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本編
234:最後の盟友契約
……なんてタイミングだ。
というか、今の今までワールドクエスト中なのをすっかり忘れていた。
うぅん……さすがにタイミングを正確にコントロールすることはできないと思うが……月での邂逅の裏を勘繰ってしまう。
ちょうどどちらも最終局面に入っていてタイミング調整がなんとなくいけそうだったからやってみた、くらいのことはしそうだ。
「どうした?」
僕が頭を抱えているのを見て、バラムが心配そうに覗きこんでくる。
「……いや、ほぼ同じタイミングで異人たちのワールドクエストも終わって、無事王都が解放されたようだ」
「………………あー」
僕が頭を抱えた理由に思い当たったらしく、遠い目をする。おそらく、僕も同じ目をしているのだろう。
『クククッ、直前に我らの故郷解放の報せもあったのであろう? 人種族の一都市解放程度とでは規模が違いすぎるであるなぁ』
シルヴァがほぼ的確に状況を要約してくれる。
「全体アナウンスは聞こえないはずなのに察しが良いな……?」
『クハハッ! 異人のことはだいぶ研究できているであるからな! このくらい容易いことである!』
そう言って得意げに鼻息をボフーッと鳴らす。
僕はシルヴァの言う『故郷』に目を向ける。……おそらく、こちらは光神の統べる世界を巡ったあとに来ることを想定されていそうな世界であるので、手段的にも実力的にも、来たいと思って来れる場所ではないだろう。
じゃあ、なんで僕が来れてしまっているんだというツッコミは勘弁して欲しい。僕にも分からない。気づけばこんなことになっていた。
……少しも悔いてはいないが。
いずれにしても、王都が確実に正規ルートであろうと思うので、そちらを楽しみ尽くしてからゆっくり来て欲しい。
「!」
突然、バラムが僕の腰を抱えて飛び退る。僕たちがいた場所を見ると、復活した闇の世界から続々と黒い異形が月を取り囲んで舞いはじめていた。
よく見てみれば、形は異なるが既知のものたちであることに気づく。
「あれは……ピクシーか」
僕の世界のものではない、元々闇の世界に存在していただろうピクシーが月の周囲を取り囲んでいる。こうして見れば、新たな神を歓迎して寿いでいるようにも思える。
〈称号【月の修復者】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
〈称号【月の管理者】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
〈称号【連環】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
〈特殊条件を満たしました。称号【縁覚】が【深根環柢】に変化しました〉
〈職業『縁覚編纂士』が『深根環柢編纂士』に変化しました〉
〈ユニーク装備[縁覚の編纂士装束]がユニーク装備[深根環柢の編纂士装束]に変化しました〉
〈技能《縁覚編纂士トウノの旋律》が《深根環柢編纂士トウノの旋律》に変化しました〉
〈特殊条件を満たしました。技能《月ノ眼》を獲得しました〉
「…………えぇ?」
そして唐突に通知ラッシュが来た。…………なんか、タイミングが少しおかしくないだろうか? 今までの経験から言うと、月を出たタイミングか全体アナウンスのタイミングと同時に来ていそうなものだが……まぁ、いろいろ……詰まっていたのだろう。
変わったものの確認は……またあとででいいか。いろいろありすぎて疲れてきてしまった。ということで、称号なども据え置きにしておく。
「お前……また何かしたのか?」
「ん? 何がだ?」
「なんか服が変わったぞ」
「……ああ、ユニーク装備がまた変化したようだ」
「……また変わったのか。……まぁ、変わらねぇ方がおかしいか」
バラムがそう言って月へと視線を向ける。……確かに、今回は中々大それたことをしたものだと思うので、得るものがあったのだろう。
バラムに言われて装備がどう変わったのか気になったので、それだけステータス画面で確認する。……なんだか、すごく繊細な装飾が増えてものすごく豪華な装束になっていた。
色は、さらに黒へと近づきつつも星々の輝きが垣間見える不思議生地だ。ストラウスの色に似ている。
そして、外套は布がだいぶ薄くなって、ヴェールのようになってしまった。名前も『深根環柢の編纂士装束:羽衣』となっている。外套ではなく、羽衣になったようだ。一応、フードについたフクロウの仮面はこれまた豪華になった以外はそのままだった。
「ふぅむ……変わっても変わっても、防御力が上がるどころか見た目的には下がっている気すらするな」
実際には、ほんの少しずつ上がってはいるのだが変わらず焼け石に水程度でしかない。
「……もはや、そういう問題じゃねえ気がするが……」
「うん? それは……ん?」
バラムにどういう意味か聞こうとしたところで────感知したマーカーに気をとられる。
そちらに目を向けると、黒いすらりとしたシルエットが僕の前に傅いた。
「我が君……月を修復し、同胞を解放してくださり感謝いたします。この御恩は生涯忘れませんわ」
頭から黒いヴェールを被り、気品溢れる漆黒のロングドレスを身に纏っている。見た目には先ほどまでのノーと寸分違わない姿だが、今はそこに確かにマーカーを感知している。影ではない、本物のノーだ。
「こうして影ではなく、我が君に見えることができて恐悦至極に存じます。まずはこちらを」
ノーがそう言ながら手をかざす。すると……。
〈【エクストラレガシークエスト:月の修復】をクリアしました〉
〈クリア報酬は依頼者より受け取ってください〉
クエストクリアの通知が流れる。…………そういえば、これはまた別だったか。先ほどの怒涛のアナウンスと通知ラッシュですっかり抜けていた。
「我が君の偉業への報酬に値するものを与えるなどおこがましいことですが……まずは、我が忠義を捧げさせていただきたく」
「……ああ。約束だったな」
盟友契約のことを言っているのだとすぐに思い至ったので、僕はインベントリからギルドカードを取り出し、ノーに差し出す。
差し出したギルドカードを持つ僕の手をノーが両の手でとると、自分の額へと近づける。
「ああ……ありがたき幸せ……」
そして、僕に盟友契約の申請が届く。
〈『運命紡織の王 妖糸錘女 ノーナ』から盟友契約が申請されました。盟友契約を結びますか?〉
「……うぅん」
…………実はマーカーが出た時点でノー……ノーナの情報は見えてはいたのだが、信じ難くて目を逸らしてしまっていた。
しかし、盟友契約の申告で突きつけられてしまっては受け入れるしかない。
というか。
「本当に妖精なのか……?」
普通に神の一柱では? 称号の雰囲気やノーナが操るモチーフから察するにどう考えても『運命の女神』とかそういう存在だ。《慧眼》の情報では分類のところに『妖精』とあるが……本当に???
「我が君にはお見えになっているのでしょう? それが全てですわ」
ノーナが袖で口元を隠しながら言う。
運命の……妖精と盟友契約を交わせてしまう時点であり余る報酬なのではと思わないでもないが、ノーナにとってこれは僕への報酬扱いではないのが恐ろしい。……これからの報酬が。
しかし、約束は約束だ。
目を瞑って盟友契約の申請を受ける操作をえいやと行う。
〈『運命紡織の王 妖糸錘女 ノーナ』と『森碧の深根環柢編纂士 本の虫 トウノ』との間に盟友契約が結ばれました〉
〈称号を確認しています…………意匠を生成中……………盟友の証が付与されました〉
〈盟友契約を結んだ住民が上限に達しました〉
ノーナとの間に絆が生まれたのを感じる。盟友の証は……右の手首にブレスレットとしてはまっていた。淡く光る銀の糸が絡みながら輪になっているような意匠だ。
「やっとこの時が……我が君との絆を感じますわ……」
感じ入るようなノーナの左の手首には、全体がオリーブ色で、本から蔦のような植物が生えてぐるっと輪になっている意匠のブレスレットがはまっている。僕の盟友の証だ。
「それでは我が君。わたくしからの報酬は、わたくし“たち”の力を我が君のものとしてくださいませ」
そう言って恭しく礼をするノーナの両隣に、黒い影が舞い降りた。
というか、今の今までワールドクエスト中なのをすっかり忘れていた。
うぅん……さすがにタイミングを正確にコントロールすることはできないと思うが……月での邂逅の裏を勘繰ってしまう。
ちょうどどちらも最終局面に入っていてタイミング調整がなんとなくいけそうだったからやってみた、くらいのことはしそうだ。
「どうした?」
僕が頭を抱えているのを見て、バラムが心配そうに覗きこんでくる。
「……いや、ほぼ同じタイミングで異人たちのワールドクエストも終わって、無事王都が解放されたようだ」
「………………あー」
僕が頭を抱えた理由に思い当たったらしく、遠い目をする。おそらく、僕も同じ目をしているのだろう。
『クククッ、直前に我らの故郷解放の報せもあったのであろう? 人種族の一都市解放程度とでは規模が違いすぎるであるなぁ』
シルヴァがほぼ的確に状況を要約してくれる。
「全体アナウンスは聞こえないはずなのに察しが良いな……?」
『クハハッ! 異人のことはだいぶ研究できているであるからな! このくらい容易いことである!』
そう言って得意げに鼻息をボフーッと鳴らす。
僕はシルヴァの言う『故郷』に目を向ける。……おそらく、こちらは光神の統べる世界を巡ったあとに来ることを想定されていそうな世界であるので、手段的にも実力的にも、来たいと思って来れる場所ではないだろう。
じゃあ、なんで僕が来れてしまっているんだというツッコミは勘弁して欲しい。僕にも分からない。気づけばこんなことになっていた。
……少しも悔いてはいないが。
いずれにしても、王都が確実に正規ルートであろうと思うので、そちらを楽しみ尽くしてからゆっくり来て欲しい。
「!」
突然、バラムが僕の腰を抱えて飛び退る。僕たちがいた場所を見ると、復活した闇の世界から続々と黒い異形が月を取り囲んで舞いはじめていた。
よく見てみれば、形は異なるが既知のものたちであることに気づく。
「あれは……ピクシーか」
僕の世界のものではない、元々闇の世界に存在していただろうピクシーが月の周囲を取り囲んでいる。こうして見れば、新たな神を歓迎して寿いでいるようにも思える。
〈称号【月の修復者】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
〈称号【月の管理者】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
〈称号【連環】を獲得しました。スロットがいっぱいです。称号を入れ替えますか?〉
〈特殊条件を満たしました。称号【縁覚】が【深根環柢】に変化しました〉
〈職業『縁覚編纂士』が『深根環柢編纂士』に変化しました〉
〈ユニーク装備[縁覚の編纂士装束]がユニーク装備[深根環柢の編纂士装束]に変化しました〉
〈技能《縁覚編纂士トウノの旋律》が《深根環柢編纂士トウノの旋律》に変化しました〉
〈特殊条件を満たしました。技能《月ノ眼》を獲得しました〉
「…………えぇ?」
そして唐突に通知ラッシュが来た。…………なんか、タイミングが少しおかしくないだろうか? 今までの経験から言うと、月を出たタイミングか全体アナウンスのタイミングと同時に来ていそうなものだが……まぁ、いろいろ……詰まっていたのだろう。
変わったものの確認は……またあとででいいか。いろいろありすぎて疲れてきてしまった。ということで、称号なども据え置きにしておく。
「お前……また何かしたのか?」
「ん? 何がだ?」
「なんか服が変わったぞ」
「……ああ、ユニーク装備がまた変化したようだ」
「……また変わったのか。……まぁ、変わらねぇ方がおかしいか」
バラムがそう言って月へと視線を向ける。……確かに、今回は中々大それたことをしたものだと思うので、得るものがあったのだろう。
バラムに言われて装備がどう変わったのか気になったので、それだけステータス画面で確認する。……なんだか、すごく繊細な装飾が増えてものすごく豪華な装束になっていた。
色は、さらに黒へと近づきつつも星々の輝きが垣間見える不思議生地だ。ストラウスの色に似ている。
そして、外套は布がだいぶ薄くなって、ヴェールのようになってしまった。名前も『深根環柢の編纂士装束:羽衣』となっている。外套ではなく、羽衣になったようだ。一応、フードについたフクロウの仮面はこれまた豪華になった以外はそのままだった。
「ふぅむ……変わっても変わっても、防御力が上がるどころか見た目的には下がっている気すらするな」
実際には、ほんの少しずつ上がってはいるのだが変わらず焼け石に水程度でしかない。
「……もはや、そういう問題じゃねえ気がするが……」
「うん? それは……ん?」
バラムにどういう意味か聞こうとしたところで────感知したマーカーに気をとられる。
そちらに目を向けると、黒いすらりとしたシルエットが僕の前に傅いた。
「我が君……月を修復し、同胞を解放してくださり感謝いたします。この御恩は生涯忘れませんわ」
頭から黒いヴェールを被り、気品溢れる漆黒のロングドレスを身に纏っている。見た目には先ほどまでのノーと寸分違わない姿だが、今はそこに確かにマーカーを感知している。影ではない、本物のノーだ。
「こうして影ではなく、我が君に見えることができて恐悦至極に存じます。まずはこちらを」
ノーがそう言ながら手をかざす。すると……。
〈【エクストラレガシークエスト:月の修復】をクリアしました〉
〈クリア報酬は依頼者より受け取ってください〉
クエストクリアの通知が流れる。…………そういえば、これはまた別だったか。先ほどの怒涛のアナウンスと通知ラッシュですっかり抜けていた。
「我が君の偉業への報酬に値するものを与えるなどおこがましいことですが……まずは、我が忠義を捧げさせていただきたく」
「……ああ。約束だったな」
盟友契約のことを言っているのだとすぐに思い至ったので、僕はインベントリからギルドカードを取り出し、ノーに差し出す。
差し出したギルドカードを持つ僕の手をノーが両の手でとると、自分の額へと近づける。
「ああ……ありがたき幸せ……」
そして、僕に盟友契約の申請が届く。
〈『運命紡織の王 妖糸錘女 ノーナ』から盟友契約が申請されました。盟友契約を結びますか?〉
「……うぅん」
…………実はマーカーが出た時点でノー……ノーナの情報は見えてはいたのだが、信じ難くて目を逸らしてしまっていた。
しかし、盟友契約の申告で突きつけられてしまっては受け入れるしかない。
というか。
「本当に妖精なのか……?」
普通に神の一柱では? 称号の雰囲気やノーナが操るモチーフから察するにどう考えても『運命の女神』とかそういう存在だ。《慧眼》の情報では分類のところに『妖精』とあるが……本当に???
「我が君にはお見えになっているのでしょう? それが全てですわ」
ノーナが袖で口元を隠しながら言う。
運命の……妖精と盟友契約を交わせてしまう時点であり余る報酬なのではと思わないでもないが、ノーナにとってこれは僕への報酬扱いではないのが恐ろしい。……これからの報酬が。
しかし、約束は約束だ。
目を瞑って盟友契約の申請を受ける操作をえいやと行う。
〈『運命紡織の王 妖糸錘女 ノーナ』と『森碧の深根環柢編纂士 本の虫 トウノ』との間に盟友契約が結ばれました〉
〈称号を確認しています…………意匠を生成中……………盟友の証が付与されました〉
〈盟友契約を結んだ住民が上限に達しました〉
ノーナとの間に絆が生まれたのを感じる。盟友の証は……右の手首にブレスレットとしてはまっていた。淡く光る銀の糸が絡みながら輪になっているような意匠だ。
「やっとこの時が……我が君との絆を感じますわ……」
感じ入るようなノーナの左の手首には、全体がオリーブ色で、本から蔦のような植物が生えてぐるっと輪になっている意匠のブレスレットがはまっている。僕の盟友の証だ。
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(ムーンライトノベルにも掲載しています)