そらに光る星

もやしのひげ根

文字の大きさ
9 / 19

9.終わりの始まり

しおりを挟む
 あかりの荷物が届き、整理と作業に追われた土日を挟んで迎えた翌週。
 土日はスマホで小説投稿サイトを読みあさろうと思ったのにな……。



 教室へ入り自分の席へ直行する。
 如月が俺に気付くが、急に辺りをキョロキョロしだして「か、神谷君、おはよう」と挨拶をしてくる。
 なんだこいつ。挙動不審かよ。

 怪しいヤツとは関わりたくないので無視する。



 俺は今日も授業を受けつつ、休み時間になると本を開く。
 しかし、本に向ける意識は半分だけだ。
 毎日真面目に読んでいたら、本が何冊あっても足りない。
 学校内ではスマホを使っているのがバレたら没収されてしまうので使えない。。
 では、残り半分の意識は何に向いているかというと、クラス内の観察だ。

 ジロジロと見てしまうと、キモイとか変態とか罵倒されてしまう。
 しかし、ぼっちの俺には、本に視線を固定しつつ背景として彼らを捉えて観察できる特技が備わっている。
 そして重要なのが、耳だ。
 集中すれば、誰と誰が何を話しているかなんて、決して広いとは言えない教室内では聞き取るのは難しくない。
 そうすることによって、彼らの生態を調査して面倒なことは回避してきた。
 ぼっちにとっては必須といっても過言ではないスキルだ(効果は個人差があります)。





 事件は、3時間目の授業後に起きた。
 週が明けて3日目、誰も近寄らなかったあかりの下へ、数人の人物が歩み寄る。

 それは、如月愛衣の取り巻き3人衆だった。
 名前を覚える必要もないので、俺は心の中で金魚のフン1号、2号、3号と呼んでいた。


「ねえ、あかりちゃんってもしかして、前の学校でイジメられてたりした?」

 問いを発したのは、金髪の見るからにバカっぽいギャルの1号。
 大きくはない声だが、発した人物の影響もあってかクラスないがしんと静まり返る。
 あかりは何も答えない。いや、答えられない。
 しかし、大抵の場合、沈黙は肯定と捉えられる。


「えー! イジメられてたなんてかわいそう!」

 と隣にいたダークブラウンの髪をした2号がわざとらしく大きな声で発言した。
 それは水面に投げ入れられた小石のように波紋を呼び、クラス内に事実として浸透していく。
 次第にざわめく教室内。それを感じてソイツは意地の悪い笑みを浮かべた。

「でも大丈夫。私たちがになってあげるから! これから、よ・ろ・し・く・ね」


 あかりは何も言えずに、震えている。

 逃げようにも、ここは窓側の席。
 隣に立って道を塞がれてはどうすることもできない。

「なんでイジメられてたの?」

「私たちがしてあげるからね」

 4時間目の授業の教師が入ってくるまで彼女らの口は止まることはなかった。




 俺は自分の甘さを痛感した。

 まだあかりのことをよく知らないし、少しずつ変わっていけばいい。そう思っていた。
 しかし、現実は残酷だった。彼女たちがどこでその情報を手に入れたかは定かではないが、まさか転入1週間でこうなってしまうとは。思わず拳を握り締める。
 授業内容など一切頭に入ってこなかった。



 授業が終わり昼休みになった瞬間、あかりは教室を飛び出していってしまう。
 それを見た3人衆が

「キャハハ! あーあ、逃げられちゃった」

「せっかく仲良くお弁当食べてあげよーと思ったのにね」

 耳障りな声が本人不在の席へ歩いてくる。


 俺はあかりを追おうと思ったが、こいつらに何か言わねば気がすまないと思い、立ち上がろうとした。

「ふざけないでよ!」

 しかし俺より先に爆発した人物がいた。

「なんでそんなひどいことができるの!?わざわざイジメられてたかなんて聞く必要ないじゃない!」

 隣の席の人物――如月が怒りを顕にして立ち上がった。

「ハッ! さすが優等生はいうことが違うねえ。なんで? そんなの興味あるからに決まってんじゃん」

「そんな興味本位で傷つけるなんて許せない」

「別にアンタに許される必要なくない?」

「最っ低!」

 そう叫んで如月は教室を出て行った。



 如月が爆発したおかげで踏みとどまった俺は冷めた目で彼女らを一瞥したあと、静かに教室を出た。
 後ろからは

「優等生だからって真面目ぶって調子に乗ってまじウザーイ!」

 と聞こえてきたが、今はそんなのに構っている暇はない。



「おい、どうするつもりだ」

 前を歩く背中に声をかける。

「先生にでもチクリに行くか?」

 如月は振り返って答える。

「あ……、なに? 神谷君は黙ってろって言いたいの?」

 俺を視認すると驚くが、怒りを隠さずに問うてくる。

「そうじゃねえよ。だけど言ったところで無駄だと思うけどな。あいつらは質問しただけでまだ何かしたというわけではないし、証拠もない。どうせ事情を聞かれ注意されるだけだ。……その結果、どうなると思う」

 俺は歩き出しながら答えつつ逆に問う。如月は戸惑いつつも後をついてくる。

「え……? どうって……」

「今度はチクられないように、誰も見ていないところで陰湿なイジメが始まるんだよ」

「そんな……! でも、このままじゃ……」



「神谷君」

 階段を下りたところで俺を呼んだのは担任の錦野先生だった。俺の名前を飛ぶ声は固く、顔も強ばっている。

「ちょうど良かった。今神楽坂さんに会ったわ。泣いてて普通の状態じゃなかったからとりあえず保健室に連れてったけど、何があったの?」


 さすがに人通りのある昼休みの廊下で事情を説明するわけにもいかず、職員室にある応接スペースに移動することになった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

処理中です...