ふたりで編むのは赤い糸

海棠 楓

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 辻の家は一般的な1LDKで、入るとすぐに広すぎず狭すぎずのリビングがお目見えし、その奥には寝室であろう部屋が見える。男の一人暮らしにしては、随分と小ぎれいできちんと片付いている。
「キレイにされてますね、僕んちと大違いです」
 樋口が苦笑すると、
「樋口さんが来てくださるんで必死で掃除したんですよ。普段はもっと汚いです」
 待ち合わせの後に二人で立ち寄ったスーパーマーケットで買い込んだ今夜の酒やつまみを冷蔵庫に入れながら、辻は謙遜した。

 ソファに並んで座り、早速編み始めようということになり、樋口が先ほど買ったばかりの毛糸を袋から取り出した。
「良い色ですね。落ち着いてて温かみがあって、とても樋口さんらしい」
 そしてそう言ったときの辻の表情がとても優しかったこと、そして自分がそんな風に見られていることに、樋口は驚いた。
 その後黙々と編んでは時折辻が樋口に質問、という時間が流れた。いつの間にか日はとっぷりと暮れ、夜の帳が下りていた。
「お腹空きません?」
「ですね、少し休みましょう」

 辻がソファから立ち上がり、冷蔵庫へ向かう。その背中を見つめながら、樋口はぼんやりと考える。神経質で臆病な性格柄、ストレスを感じることが多いが、辻といる時には全くそれを感じないと気づいた。ストレスどころか、一緒にいることが非常に心地よい。それは単純に共通の趣味を持つ人間と関われているからかもしれないし、また辻が気遣い上手であるという点も多分にあるのだろう。
 その夜の酒は今までのどんな酒より美味だった。

 これまでのように人目を避けられる場所を探す必要がなく、また経済面でも有り難く、それ以降はもっぱら辻の家で共に編むのが当たり前となった。隔週末ぐらいのペースで樋口は辻の家を訪れては、セーターを編む。同じ編み図を見て編むので、自然色違いの同じデザインとなる。
「なんだかペアルックみたいですよね」
 なんて辻が屈託なく言うので、樋口の顔が熱くなった。
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