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訪れた二度目の辻の部屋は、前回来た時よりもずいぶん雑然としていた。
「あの時は本当に、前日に掃除しまくったんですから」
恥ずかしそうに辻が弁明し、樋口は笑った。
「それでも僕の部屋よりきれいですよ」
そう言うと、辻も軽く笑った。
そして訪れる、沈黙。
辻にしてみれば、今後の明確な方針を打ち出されていない状況で、自宅でふたりきりになってしまって、正直なところどうしていいのかわからない。樋口は何のために辻の部屋へ来たがったのだろうか。
辻に出された茶をふたりで啜りながら、どちらも言葉を紡ぐわけでなく、時間だけが過ぎてゆく。辻にとってはなかなかに地獄のような時間である。樋口の口から何か語られるのを待っているのだが、そろそろ限界が近い。
今後距離を取られるのは、とても悲しいが仕方のないことだと思った。けれど、今まで通りも寂しいな、と思う。やっぱり、叶うなら……
「辻さん」
ようやく樋口の口が開いた。辻は真摯な眼差しを樋口に据え、固唾を呑んで次の言葉を待つ。
「僕も、辻さんのこと、好きです、けど」
「ほんとですか?!」
辻にとって、樋口の言葉は予想外だった。それならどうして、辻が告白した時点で「僕もです」と言ってくれなかったのか。そしたらこんなに長い時間気を揉まなくて済んだのに。
「嬉しいです、樋口さんも僕のこと……!」
すっかり舞い上がって正面に回り込み、両肩をきつく掴む辻に
「待って」
樋口の冷静なひとことは、まるでのぼせ上がった辻の頭に冷水をかけるようだ。「待て」を命じられた犬のように、辻は動きを止めた。
「……すみません……」
「単刀直入にお訊きします。辻さんは、僕を抱きたいと思っていますか?」
冷静で落ち着いた声色と似つかわしくない内容に辻は一瞬ひるんだが、迷いなくきっぱりと答えた。
「許されるのであれば、もちろん」
「……はあ~……」
真剣に答えたというのに、樋口から返ってきたのはなんとも間の抜けたため息。
「樋口さん……?」
「すみません、やっぱり今まで通り、お友達で……」
イヤな予感が的中し、樋口は落胆していた。やはり辻はタチだった。そうだろうとは思っていたが、事実として突きつけられるとショックを隠しきれない。
「あの時は本当に、前日に掃除しまくったんですから」
恥ずかしそうに辻が弁明し、樋口は笑った。
「それでも僕の部屋よりきれいですよ」
そう言うと、辻も軽く笑った。
そして訪れる、沈黙。
辻にしてみれば、今後の明確な方針を打ち出されていない状況で、自宅でふたりきりになってしまって、正直なところどうしていいのかわからない。樋口は何のために辻の部屋へ来たがったのだろうか。
辻に出された茶をふたりで啜りながら、どちらも言葉を紡ぐわけでなく、時間だけが過ぎてゆく。辻にとってはなかなかに地獄のような時間である。樋口の口から何か語られるのを待っているのだが、そろそろ限界が近い。
今後距離を取られるのは、とても悲しいが仕方のないことだと思った。けれど、今まで通りも寂しいな、と思う。やっぱり、叶うなら……
「辻さん」
ようやく樋口の口が開いた。辻は真摯な眼差しを樋口に据え、固唾を呑んで次の言葉を待つ。
「僕も、辻さんのこと、好きです、けど」
「ほんとですか?!」
辻にとって、樋口の言葉は予想外だった。それならどうして、辻が告白した時点で「僕もです」と言ってくれなかったのか。そしたらこんなに長い時間気を揉まなくて済んだのに。
「嬉しいです、樋口さんも僕のこと……!」
すっかり舞い上がって正面に回り込み、両肩をきつく掴む辻に
「待って」
樋口の冷静なひとことは、まるでのぼせ上がった辻の頭に冷水をかけるようだ。「待て」を命じられた犬のように、辻は動きを止めた。
「……すみません……」
「単刀直入にお訊きします。辻さんは、僕を抱きたいと思っていますか?」
冷静で落ち着いた声色と似つかわしくない内容に辻は一瞬ひるんだが、迷いなくきっぱりと答えた。
「許されるのであれば、もちろん」
「……はあ~……」
真剣に答えたというのに、樋口から返ってきたのはなんとも間の抜けたため息。
「樋口さん……?」
「すみません、やっぱり今まで通り、お友達で……」
イヤな予感が的中し、樋口は落胆していた。やはり辻はタチだった。そうだろうとは思っていたが、事実として突きつけられるとショックを隠しきれない。
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