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長閑な村に到着しました。
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馬車で1時間ほど揺られ、ローデル村と言うところへ着いた。
あたり一面が緑だ。
ポツリポツリと民家が見え、牛のような動物が、のんびりと草を食んでいる。
本当に何もない長閑な村のようだ。
私は馬車から降りるとう~んと伸びをする。
「あ~っ、思ったより馬車って揺れるから、お尻が痛いわ~」
「みくは馬車が初めてなんだったな。エンジンとやらで動く車とか言うものは、そんなに揺れないのか?」
「少しは揺れますけど、全然違いますよ。スピードも馬車の何倍も出ますから、ここまで来るのに30分くらいで来られるんじゃないかな?いや、道路が整備されていたらもっと早いかも」
「そのような乗り物があるとはな」
「車は早いですけど、もっと早いものはいくらでもありますよ。新幹線とか飛行機とか、ロケットなんか、音が伝わる早さの単位で飛ぶらしいです」
「想像もつかぬ世界にいたのだな、みくは。くれぐれも、そのようなことは他人に言うでないぞ。そなたの知識を欲しがって、世界中に狙われることになるからな」
「賢くない私でも、それくらいは分かっているつもりです。だけどアスラン様には、話したっていいでしょう?前の世界のこと、話さずいると忘れてしまいそうで心許ないんです」
「......そんな風に私のことを信用するな」
「アスラン様。悪者ってどう言うのか知っていますか?」
「?」
「私は信用できる人間ですって言うんです」
私は笑顔でそう言った。
「だから、信用するなと言うアスラン様は、信用できるってことなんですよ」
「......しかし私とて人間だから。いつ裏切るか分からないのだぞ。......と言って恐れられても困るが、人を簡単に信用してはいけないと私は言いたいのであってだな......」
アスラン様はどう言っていいのか分からないようで、困惑気味にそう言った。
「大丈夫です。私、意外と疑り深い人間なんです。人間って信用してないし、好きじゃないんです、私」
「むう......。言っていることと、やっていることがひどく矛盾しているような......?」
「アスラン様は特別なんです。この世界に一人くらい信用できる人がいてくれないと、私、何を信じて生きていいか分からないから。だから信じていてもいいでしょう?」
アスラン様は返事をするでなく、診療所に向かって歩き出した。
◇◇◇
「ヨハン殿。世話になっておる。......どうだ、エルザのその後は」
アスラン様は、来る途中に立ち寄った花屋で買った花束を渡しながら尋ねた。
「殿下。今回は来られるのが遅かったから、お忙しいのかと思っておりましたが。......そちらのお嬢さんが原因ですかな?」
もやしのように細っこいおじいさんが、私を見てにっこりと微笑んだ。
私はぺこりと頭だけ下げ、アスラン様を見る。
「まあ、いろいろあってな。こちらは私の側仕えのみくだ」
「みくです。これからこちらに来るときは毎回ついて来ます。よろしくお願いします」
私はアスラン様に許可も得ず、勝手にそう言ったら、アスラン様が仮面の下でため息をついたのが分かった。
そんな様子を見て、ヨハン医師は、はははと笑ってアスラン様に言った。
「良い側仕えが見つかったようで宜しゅうございましたな、殿下」
アスラン様はこの話を切り替えるべく、ヨハン医師に問う。
「ヨハン殿。それよりもエルザは?」
「はい。ずいぶん回復しましたよ。この様子なら、もう以前のように足繁く通って来られずともよろしいですよ」
「そうなのか?」
「はい、百聞は一見にしかず。エルザの様子を見てみるといいでしょう」
「しかし、私の姿を見て、また調子悪くなると困るのでは?」
「ですから、殿下の姿は見えないように、こっそりと見ていただきましょう」
そう言って、ヨハン医師は私たちをエルザさんのところへ案内した。
あたり一面が緑だ。
ポツリポツリと民家が見え、牛のような動物が、のんびりと草を食んでいる。
本当に何もない長閑な村のようだ。
私は馬車から降りるとう~んと伸びをする。
「あ~っ、思ったより馬車って揺れるから、お尻が痛いわ~」
「みくは馬車が初めてなんだったな。エンジンとやらで動く車とか言うものは、そんなに揺れないのか?」
「少しは揺れますけど、全然違いますよ。スピードも馬車の何倍も出ますから、ここまで来るのに30分くらいで来られるんじゃないかな?いや、道路が整備されていたらもっと早いかも」
「そのような乗り物があるとはな」
「車は早いですけど、もっと早いものはいくらでもありますよ。新幹線とか飛行機とか、ロケットなんか、音が伝わる早さの単位で飛ぶらしいです」
「想像もつかぬ世界にいたのだな、みくは。くれぐれも、そのようなことは他人に言うでないぞ。そなたの知識を欲しがって、世界中に狙われることになるからな」
「賢くない私でも、それくらいは分かっているつもりです。だけどアスラン様には、話したっていいでしょう?前の世界のこと、話さずいると忘れてしまいそうで心許ないんです」
「......そんな風に私のことを信用するな」
「アスラン様。悪者ってどう言うのか知っていますか?」
「?」
「私は信用できる人間ですって言うんです」
私は笑顔でそう言った。
「だから、信用するなと言うアスラン様は、信用できるってことなんですよ」
「......しかし私とて人間だから。いつ裏切るか分からないのだぞ。......と言って恐れられても困るが、人を簡単に信用してはいけないと私は言いたいのであってだな......」
アスラン様はどう言っていいのか分からないようで、困惑気味にそう言った。
「大丈夫です。私、意外と疑り深い人間なんです。人間って信用してないし、好きじゃないんです、私」
「むう......。言っていることと、やっていることがひどく矛盾しているような......?」
「アスラン様は特別なんです。この世界に一人くらい信用できる人がいてくれないと、私、何を信じて生きていいか分からないから。だから信じていてもいいでしょう?」
アスラン様は返事をするでなく、診療所に向かって歩き出した。
◇◇◇
「ヨハン殿。世話になっておる。......どうだ、エルザのその後は」
アスラン様は、来る途中に立ち寄った花屋で買った花束を渡しながら尋ねた。
「殿下。今回は来られるのが遅かったから、お忙しいのかと思っておりましたが。......そちらのお嬢さんが原因ですかな?」
もやしのように細っこいおじいさんが、私を見てにっこりと微笑んだ。
私はぺこりと頭だけ下げ、アスラン様を見る。
「まあ、いろいろあってな。こちらは私の側仕えのみくだ」
「みくです。これからこちらに来るときは毎回ついて来ます。よろしくお願いします」
私はアスラン様に許可も得ず、勝手にそう言ったら、アスラン様が仮面の下でため息をついたのが分かった。
そんな様子を見て、ヨハン医師は、はははと笑ってアスラン様に言った。
「良い側仕えが見つかったようで宜しゅうございましたな、殿下」
アスラン様はこの話を切り替えるべく、ヨハン医師に問う。
「ヨハン殿。それよりもエルザは?」
「はい。ずいぶん回復しましたよ。この様子なら、もう以前のように足繁く通って来られずともよろしいですよ」
「そうなのか?」
「はい、百聞は一見にしかず。エルザの様子を見てみるといいでしょう」
「しかし、私の姿を見て、また調子悪くなると困るのでは?」
「ですから、殿下の姿は見えないように、こっそりと見ていただきましょう」
そう言って、ヨハン医師は私たちをエルザさんのところへ案内した。
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