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王子様のことをわかってもらえたようです。
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「ひっ!」
エルザさんは、仮面を外したアスラン様がいるのに気づいて息の飲んだ。
きっと、私がいることなど、目に入ってはいないのだろう。
「あ......あ......私を連れ戻しに......?」
「......エルザ、」
アスラン様が声をかけた途端、エルザさんは青い顔をさらに青くして、その場にしゃがみこんで叫んだ。
「嫌あああああーーっ!」
頭を隠すように腕で覆い、突っ伏してガタガタ震えている。
完全にパニックに陥っているようだ。
男の子は驚いて棒立ちになり、アスラン様も困惑してオロオロしていた。
私はエルザさんのそばに寄ってぎゅっと抱きしめる。
「エルザさん!エルザさん!大丈夫です!聞いてください、私がアスラン様のそばにいますから!あなたを連れ戻す必要はないのです!!」
エルザさんの耳元で懸命に叫ぶ。
「え...... 」
エルザさんは、叫ぶのをやめて、恐る恐る私を見つめた。
「エルザさん、今は私がアスラン様のところにいるのです。だから奴隷は必要ないのですよ」
少しエルザさんが落ち着いてきたところに、ヨハン医師がやって来た。
「すみません、殿下。わしが引き留めたばかりにこのようなことになって...... 」
アスラン様は、ヨハン医師が来たことにホッとした様子で言った。
「それよりも、エルザを頼む」
「......殿下。わしの出番ではないようです。みく殿のおかげで、すでに落ち着いて来たようですから」
私はエルザさんの両手を握ってにっこりと微笑んだ。
「エルザさん、初めまして。私はアスラン様の側仕えのみくと申します。今日は、アスラン様と一緒に、あなたのお見舞いに伺ったのですよ」
「え......うそ...... 」
「アスラン様は、これまでも、度々あなたの様子を伺いに来ていたのです。姿は見せませんでしたが」
「じゃあ、私は、戻らなくていいの......?」
「ええ。さっきも言いましたけど、私がいますから、もう奴隷は必要ないのです」
「あなたは......?あなたは大丈夫なの......?」
心配げな表情になって、エルザさんが私を見た。
私はにっこりと微笑んで答えた。
「ええ。私は好きでアスラン様のお側にいますから。アスラン様は、とてもお優しくて素敵な方なんですよ」
エルザさんは信じられないと言う顔で、黙って私を見ていた。
「ねえ、エルザさん。思い出してみてほしいのだけど、アスラン様は、あなたに何か、害することをしましたか?アスラン様は、あなたに性奴隷としての役目を強引に求めましたか?」
「......あ...... 」
「私も最初は性奴隷として連れて来られたんですよ。でも、アスラン様は性奴隷は望んでいらっしゃらなかったので、とても紳士に接してくださいました。帰るところのない私に、ただ食事と寝床を与えてくださったのです。あなたも、同じだったのではありませんか?」
「あ......私...... 」
エルザさんは、自分がアスラン様のことをはなから受け入れなかったことに思い至ってくれたようだ。
そこでヨハン医師が入って来た。
「エルザ。みく殿の言う通りだ。殿下は週に一度はここまで足をお運びになり、花束と見舞金を届けてくれていたのだぞ。そして今日は、お前の今後について、わしに身柄を託すとおっしゃられたのだ。奴隷から解放するとな」
「殿下......。申し訳ありません......私...... 」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、エルザさんはアスラン様に謝った。やっぱりアスラン様の顔を見ることはできなかったけれど、俯いたままで、小さな声で。
「......エルザ。これから先も、安心してヨハン殿とともに暮らせよ」
「......はい、殿下...... 」
ああ良かった。アスラン様の誤解が解けたみたいで。
アスラン様は怖い人なんかじゃない。とっても優しくて、素敵な人だ。
もっとたくさんの人に、それを分かってもらいたいなぁ。
エルザさんは、仮面を外したアスラン様がいるのに気づいて息の飲んだ。
きっと、私がいることなど、目に入ってはいないのだろう。
「あ......あ......私を連れ戻しに......?」
「......エルザ、」
アスラン様が声をかけた途端、エルザさんは青い顔をさらに青くして、その場にしゃがみこんで叫んだ。
「嫌あああああーーっ!」
頭を隠すように腕で覆い、突っ伏してガタガタ震えている。
完全にパニックに陥っているようだ。
男の子は驚いて棒立ちになり、アスラン様も困惑してオロオロしていた。
私はエルザさんのそばに寄ってぎゅっと抱きしめる。
「エルザさん!エルザさん!大丈夫です!聞いてください、私がアスラン様のそばにいますから!あなたを連れ戻す必要はないのです!!」
エルザさんの耳元で懸命に叫ぶ。
「え...... 」
エルザさんは、叫ぶのをやめて、恐る恐る私を見つめた。
「エルザさん、今は私がアスラン様のところにいるのです。だから奴隷は必要ないのですよ」
少しエルザさんが落ち着いてきたところに、ヨハン医師がやって来た。
「すみません、殿下。わしが引き留めたばかりにこのようなことになって...... 」
アスラン様は、ヨハン医師が来たことにホッとした様子で言った。
「それよりも、エルザを頼む」
「......殿下。わしの出番ではないようです。みく殿のおかげで、すでに落ち着いて来たようですから」
私はエルザさんの両手を握ってにっこりと微笑んだ。
「エルザさん、初めまして。私はアスラン様の側仕えのみくと申します。今日は、アスラン様と一緒に、あなたのお見舞いに伺ったのですよ」
「え......うそ...... 」
「アスラン様は、これまでも、度々あなたの様子を伺いに来ていたのです。姿は見せませんでしたが」
「じゃあ、私は、戻らなくていいの......?」
「ええ。さっきも言いましたけど、私がいますから、もう奴隷は必要ないのです」
「あなたは......?あなたは大丈夫なの......?」
心配げな表情になって、エルザさんが私を見た。
私はにっこりと微笑んで答えた。
「ええ。私は好きでアスラン様のお側にいますから。アスラン様は、とてもお優しくて素敵な方なんですよ」
エルザさんは信じられないと言う顔で、黙って私を見ていた。
「ねえ、エルザさん。思い出してみてほしいのだけど、アスラン様は、あなたに何か、害することをしましたか?アスラン様は、あなたに性奴隷としての役目を強引に求めましたか?」
「......あ...... 」
「私も最初は性奴隷として連れて来られたんですよ。でも、アスラン様は性奴隷は望んでいらっしゃらなかったので、とても紳士に接してくださいました。帰るところのない私に、ただ食事と寝床を与えてくださったのです。あなたも、同じだったのではありませんか?」
「あ......私...... 」
エルザさんは、自分がアスラン様のことをはなから受け入れなかったことに思い至ってくれたようだ。
そこでヨハン医師が入って来た。
「エルザ。みく殿の言う通りだ。殿下は週に一度はここまで足をお運びになり、花束と見舞金を届けてくれていたのだぞ。そして今日は、お前の今後について、わしに身柄を託すとおっしゃられたのだ。奴隷から解放するとな」
「殿下......。申し訳ありません......私...... 」
ぽろぽろと涙をこぼしながら、エルザさんはアスラン様に謝った。やっぱりアスラン様の顔を見ることはできなかったけれど、俯いたままで、小さな声で。
「......エルザ。これから先も、安心してヨハン殿とともに暮らせよ」
「......はい、殿下...... 」
ああ良かった。アスラン様の誤解が解けたみたいで。
アスラン様は怖い人なんかじゃない。とっても優しくて、素敵な人だ。
もっとたくさんの人に、それを分かってもらいたいなぁ。
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