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小さな王子様と知り合いました。
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「何です、みく様。一人でニヤニヤして」
アメリアさんが、私を訝しげに見て言った。
「うん。今日はすごく良い夢を見てね」
私はほうっとため息をついて言った。
「まあ。一体どのような夢を?」
「う、うん。あのね......。アスラン様が私をお姫様抱っこして、ベッドに寝かせてくれる夢。そして、寝かせた後に......きゃっ!」
私は両手で顔を塞ぎ、いやいやをするように顔を振っていると、アメリアさんが何か言ったみたいだ。
「......それはあながち夢ではないのでは......?」
「え?何か言った?」
「......いえ。それよりみく様、昨夜はソファで殿下がいらっしゃるのを待つと言っていましたわよね?」
「ええ。でも眠くなって、私無意識にベッドに戻って寝たみたいなの。だからあんな夢を見たのね。今回はルドルフが出て来なかったから、目覚めが良いわ」
「そうですか。それはよろしゅうございましたね。ですが、そのままソファで眠ってしまったら、風邪を引いてしまいかねません。これからは、ソファで待つのはやめて頂けませんか? みく様が風邪を引いたら、わたくしの監督不行届きだと叱られてしまいますから」
「そうね。わかったわ。これからはもうしない」
アメリアさんはそれを聞いて、ニコリと微笑むと言った。
「それでは朝食のご用意を致します。朝食がお済みになったら、気分転換と体力作りに、庭園のお散歩でもまいりましょう」
「ええ。そろそろ落葉樹の紅葉が見頃かもしれないわ」
温暖なこの世界にも、緩やかな四季があるようで、今は紅葉の時期だった。
「わあ、綺麗~」
どんぐりのような木が、黄色やオレンジに染まり、光を浴びてキラキラと光っていた。
「この国には真っ赤な紅葉はないの?」
「少ないですがありますよ。確か、アスラン様の別宅に、一本あった気がします」
「わあ。みたいなあ」
「ですが今は、あそこの敷地内は関係騎士しか入れないようになっています。アスラン様がお忙しいので、執務室にお泊まりになってらっしゃるので」
「そう。じゃあ、あそこの動物たちはどうしているの?」
「それは騎士たちがちゃんと世話をしに行っていますから心配ありませんわ」
「良かった」
私たちは雑談をしながら、紅葉や秋の花々を楽しんでいた。
「おい! そこの女!」
こちらに向かってやや高い子供のような声が発せられた。
私はキョロキョロと辺りを見回すが、誰もいないようだ。
「どこから声がしたのかしら?」
私がアメリアさんに問いかけると、アメリアさんは上を指差して答えた。
「みく様、あちらからですわ」
見るとどんぐりのような木に、男の子が登ってこちらを見ていた。
結構ぽっちゃりした感じの男の子だけど、木登りできるなんてすごいな。
私がそう思っていると、アメリアさんが男の子に向かって叫んだ。
「ジョゼフ殿下! 危のうございますよ!早く降りて来てください」
そうすると、その男の子はスルスルと木から降りて来た。
ニカっと笑って私に話しかける。
「お前、みくだろ! 大兄さんの奴隷の!」
「まあ殿下。みく様は奴隷ではありませんわ。アスラン殿下の側仕えでいらっしゃいますよ」
アメリアさんが小さな王子様を嗜めたけど、私は別に腹も立たなかった。
「元気の良い王子様ですね。あなた様はそんなところで何をしていたのですか?」
「今、貴族教育の時間なんだけどさ、マナーとかめんどくせ~から逃げて隠れてたんだぁ」
悪びれもせず、ニカっと笑ってそう言った。
アメリアさんは呆れてため息を、私は子供らしい王子様に好感を感じてクスクスと笑った。
「なぁみく! 俺をお前の部屋にかくまってくれよ! ちょっとの時間だけで良いからさ」
そう言うわけで、小さな王子様を私の部屋にお招きすることになった。
アメリアさんが、私を訝しげに見て言った。
「うん。今日はすごく良い夢を見てね」
私はほうっとため息をついて言った。
「まあ。一体どのような夢を?」
「う、うん。あのね......。アスラン様が私をお姫様抱っこして、ベッドに寝かせてくれる夢。そして、寝かせた後に......きゃっ!」
私は両手で顔を塞ぎ、いやいやをするように顔を振っていると、アメリアさんが何か言ったみたいだ。
「......それはあながち夢ではないのでは......?」
「え?何か言った?」
「......いえ。それよりみく様、昨夜はソファで殿下がいらっしゃるのを待つと言っていましたわよね?」
「ええ。でも眠くなって、私無意識にベッドに戻って寝たみたいなの。だからあんな夢を見たのね。今回はルドルフが出て来なかったから、目覚めが良いわ」
「そうですか。それはよろしゅうございましたね。ですが、そのままソファで眠ってしまったら、風邪を引いてしまいかねません。これからは、ソファで待つのはやめて頂けませんか? みく様が風邪を引いたら、わたくしの監督不行届きだと叱られてしまいますから」
「そうね。わかったわ。これからはもうしない」
アメリアさんはそれを聞いて、ニコリと微笑むと言った。
「それでは朝食のご用意を致します。朝食がお済みになったら、気分転換と体力作りに、庭園のお散歩でもまいりましょう」
「ええ。そろそろ落葉樹の紅葉が見頃かもしれないわ」
温暖なこの世界にも、緩やかな四季があるようで、今は紅葉の時期だった。
「わあ、綺麗~」
どんぐりのような木が、黄色やオレンジに染まり、光を浴びてキラキラと光っていた。
「この国には真っ赤な紅葉はないの?」
「少ないですがありますよ。確か、アスラン様の別宅に、一本あった気がします」
「わあ。みたいなあ」
「ですが今は、あそこの敷地内は関係騎士しか入れないようになっています。アスラン様がお忙しいので、執務室にお泊まりになってらっしゃるので」
「そう。じゃあ、あそこの動物たちはどうしているの?」
「それは騎士たちがちゃんと世話をしに行っていますから心配ありませんわ」
「良かった」
私たちは雑談をしながら、紅葉や秋の花々を楽しんでいた。
「おい! そこの女!」
こちらに向かってやや高い子供のような声が発せられた。
私はキョロキョロと辺りを見回すが、誰もいないようだ。
「どこから声がしたのかしら?」
私がアメリアさんに問いかけると、アメリアさんは上を指差して答えた。
「みく様、あちらからですわ」
見るとどんぐりのような木に、男の子が登ってこちらを見ていた。
結構ぽっちゃりした感じの男の子だけど、木登りできるなんてすごいな。
私がそう思っていると、アメリアさんが男の子に向かって叫んだ。
「ジョゼフ殿下! 危のうございますよ!早く降りて来てください」
そうすると、その男の子はスルスルと木から降りて来た。
ニカっと笑って私に話しかける。
「お前、みくだろ! 大兄さんの奴隷の!」
「まあ殿下。みく様は奴隷ではありませんわ。アスラン殿下の側仕えでいらっしゃいますよ」
アメリアさんが小さな王子様を嗜めたけど、私は別に腹も立たなかった。
「元気の良い王子様ですね。あなた様はそんなところで何をしていたのですか?」
「今、貴族教育の時間なんだけどさ、マナーとかめんどくせ~から逃げて隠れてたんだぁ」
悪びれもせず、ニカっと笑ってそう言った。
アメリアさんは呆れてため息を、私は子供らしい王子様に好感を感じてクスクスと笑った。
「なぁみく! 俺をお前の部屋にかくまってくれよ! ちょっとの時間だけで良いからさ」
そう言うわけで、小さな王子様を私の部屋にお招きすることになった。
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