8 / 15
告白
しおりを挟む
暴れながら連れていかれる義母たちを眺め、閉められたドアにその騒音が絶たれるのを見守った。
ひとときの静寂の後、どこからともなく拍手の音が聞こえ始めた。どんどん大きくなるその音は僕とルシアン殿下を包み、僕らは見つめ合って笑った。
「ありがとう皆の者!私たちはここで下がらせてもらう。皆は引き続きパーティを楽しんでいってくれ」
そのルシアン殿下の掛け声に、人の輪は段々と崩れていった。
そうして僕はルシアン殿下に抱えられ、通りすがる者たちに祝福をもらいながら広間を後にした。
貴族たちの中には、まだ納得のいっていない表情の人達も見られた。僕らこれから、この人達に認めて貰えるよう頑張らなければいけない。その決意を固めつつ、大好きな人の腕の中で幸せを噛み締めた。
◇◇◇
コツコツと靴と大理石が当たる音が廊下に響く。
僕とルシアン殿下は、先程までの喧騒とは打って変わった静寂の中を進んでいた。
「エルヴァン、体調は大丈夫かい?」
「はい、もう大分落ち着きました」
「よかった」
ほっとしたように笑ったルシアン殿下に、僕はおずおずと問いかけた。
「あの…ルシアン殿下?」
「うん?なんだい」
「えっと、何から聞けばいいのか…あの、ルカ様って何なんですか?」
僕がそう尋ねると、ルシアン殿下は一瞬呆気にとられた顔をした。その後顔を綻ばせて笑い、上機嫌に口を開いた。
「そうだなぁ…ルカは私が身分を捨てて歩くための仮面みたいなものだよ。ほら…こうやってね」
ボンッと音がして、ルシアン殿下の頭部が煙に包まれる。そして現れたのは、見慣れたルカ様の顔。といっても変わったのは髪と瞳の色だけだ。
「すごい…!どうやったんですか?」
「髪色と瞳の色を変える魔法具だよ」
たしかに、肖像画でしか殿下の見目を知らない民衆には、ルカ様が殿下だと分かる者はいないだろう。
「ルカ様の髪や瞳が綺麗なのは、色じゃなくて質が良いってことだったんですね…」
「ふふ、綺麗だって思ってくれてたのかい?」
「ありふれた色なはずなのに、すごく綺麗だから…なんでだろうって思ってました」
「…照れるな」
顔を逸らしたルシアン殿下の耳がほんのり赤く染まっている。それを見ていたらなんだか浮ついた気持ちになって、目を閉じて殿下の肩に身を預ける。
少しの間歩いて、ルシアン殿下は目的地であろう部屋の前で足を止めた。扉の前で待っていたメイドが扉を開けて二人で部屋へ入ると、大きなベッドが目に入った。
そっとそこに降ろされて、ルシアン殿下はこちらを向いてベッドの縁に座った。
「そういえば、ルカ様はご身分のお話しはしてませんでしたね…僕は本当のルシアン殿下を、どれだけ知ってるのかな」
少しだけ不安になった。
僕の知ってるルカ様は本当は存在しない方なんだろうか、と。
声色からその不安が滲み出ていたのか、ルシアン殿下は僕の手を握って話した。
「不安になっても仕方ない。私は君に沢山の隠し事をしていたからね…けれど嘘をついたことはない。君と話していたときの私は、紛れもなくここにいるルシアンそのものだ」
きっと僕より不安だったのは彼だと、震える手がそう教えてくれた。
多分殿下は、最初から僕が番だとわかっていたのだと思う。じゃなきゃあんな打合せされたような演技出来ないだろう。
あの演技が何のためのものだったのかは分からないけど、運命だとか、好きだとかだけじゃどうにもならない何かがあったのは、分かっているつもりだ。
だから大丈夫だと、変わらない僕の気持ちを伝えようと思った。
「…じゃあ、僕はルシアン殿下のことが好きです」
「エルヴァン…」
瞬時に顔を上げたルシアン殿下は、不安そうだった顔をゆがめて拙く微笑んだ。
「ありがとう。私は…君のことを逃したくなくて、強引にことを運んでしまった。民衆の前であんな演技をしたのは、頑なな貴族たちが文句を言えないようにするためでもあったが、君を私の番として周知させて、逃げられないようにしようと思ったのもあるんだ。卑怯で重くて…こんな私でも、好きでいてくれる?」
「大丈夫です。貴方が貴方である限り、ずっと好きですよ」
そう言って笑うと、詰めていた息を吐いた殿下が僕を抱き寄せた。
ひとときの静寂の後、どこからともなく拍手の音が聞こえ始めた。どんどん大きくなるその音は僕とルシアン殿下を包み、僕らは見つめ合って笑った。
「ありがとう皆の者!私たちはここで下がらせてもらう。皆は引き続きパーティを楽しんでいってくれ」
そのルシアン殿下の掛け声に、人の輪は段々と崩れていった。
そうして僕はルシアン殿下に抱えられ、通りすがる者たちに祝福をもらいながら広間を後にした。
貴族たちの中には、まだ納得のいっていない表情の人達も見られた。僕らこれから、この人達に認めて貰えるよう頑張らなければいけない。その決意を固めつつ、大好きな人の腕の中で幸せを噛み締めた。
◇◇◇
コツコツと靴と大理石が当たる音が廊下に響く。
僕とルシアン殿下は、先程までの喧騒とは打って変わった静寂の中を進んでいた。
「エルヴァン、体調は大丈夫かい?」
「はい、もう大分落ち着きました」
「よかった」
ほっとしたように笑ったルシアン殿下に、僕はおずおずと問いかけた。
「あの…ルシアン殿下?」
「うん?なんだい」
「えっと、何から聞けばいいのか…あの、ルカ様って何なんですか?」
僕がそう尋ねると、ルシアン殿下は一瞬呆気にとられた顔をした。その後顔を綻ばせて笑い、上機嫌に口を開いた。
「そうだなぁ…ルカは私が身分を捨てて歩くための仮面みたいなものだよ。ほら…こうやってね」
ボンッと音がして、ルシアン殿下の頭部が煙に包まれる。そして現れたのは、見慣れたルカ様の顔。といっても変わったのは髪と瞳の色だけだ。
「すごい…!どうやったんですか?」
「髪色と瞳の色を変える魔法具だよ」
たしかに、肖像画でしか殿下の見目を知らない民衆には、ルカ様が殿下だと分かる者はいないだろう。
「ルカ様の髪や瞳が綺麗なのは、色じゃなくて質が良いってことだったんですね…」
「ふふ、綺麗だって思ってくれてたのかい?」
「ありふれた色なはずなのに、すごく綺麗だから…なんでだろうって思ってました」
「…照れるな」
顔を逸らしたルシアン殿下の耳がほんのり赤く染まっている。それを見ていたらなんだか浮ついた気持ちになって、目を閉じて殿下の肩に身を預ける。
少しの間歩いて、ルシアン殿下は目的地であろう部屋の前で足を止めた。扉の前で待っていたメイドが扉を開けて二人で部屋へ入ると、大きなベッドが目に入った。
そっとそこに降ろされて、ルシアン殿下はこちらを向いてベッドの縁に座った。
「そういえば、ルカ様はご身分のお話しはしてませんでしたね…僕は本当のルシアン殿下を、どれだけ知ってるのかな」
少しだけ不安になった。
僕の知ってるルカ様は本当は存在しない方なんだろうか、と。
声色からその不安が滲み出ていたのか、ルシアン殿下は僕の手を握って話した。
「不安になっても仕方ない。私は君に沢山の隠し事をしていたからね…けれど嘘をついたことはない。君と話していたときの私は、紛れもなくここにいるルシアンそのものだ」
きっと僕より不安だったのは彼だと、震える手がそう教えてくれた。
多分殿下は、最初から僕が番だとわかっていたのだと思う。じゃなきゃあんな打合せされたような演技出来ないだろう。
あの演技が何のためのものだったのかは分からないけど、運命だとか、好きだとかだけじゃどうにもならない何かがあったのは、分かっているつもりだ。
だから大丈夫だと、変わらない僕の気持ちを伝えようと思った。
「…じゃあ、僕はルシアン殿下のことが好きです」
「エルヴァン…」
瞬時に顔を上げたルシアン殿下は、不安そうだった顔をゆがめて拙く微笑んだ。
「ありがとう。私は…君のことを逃したくなくて、強引にことを運んでしまった。民衆の前であんな演技をしたのは、頑なな貴族たちが文句を言えないようにするためでもあったが、君を私の番として周知させて、逃げられないようにしようと思ったのもあるんだ。卑怯で重くて…こんな私でも、好きでいてくれる?」
「大丈夫です。貴方が貴方である限り、ずっと好きですよ」
そう言って笑うと、詰めていた息を吐いた殿下が僕を抱き寄せた。
194
あなたにおすすめの小説
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
一度は逃がしてあげたが、次は無いよ
釦
BL
獣人もの。
今でも、昔付き合っていた狼獣人への恋慕が隠せない健気なリス獣人。
振られたのはリス獣人なのに、医師で狼の男は別れた後から何故か遊び方が派手になり、リス獣人に優しくしたり…突き放したり……。
狼獣人×リス獣人
『偽物の番』だと捨てられた不憫な第三王子、隣国の冷徹皇帝に拾われて真実の愛を教え込まれる
レイ
BL
「出来損ない」と捨てられた場所は、私の居場所ではありませんでした。
ラングリス王国の第三王子・フィオーレは、王族の証である『聖種の紋様』が現れなかったことで「偽物の番」と罵られ、雪降る国境へと追放される。
死を覚悟した彼の前に現れたのは、隣国アイゼン帝国の「冷徹皇帝」ヴォルフラムだった。
悪辣と花煙り――悪役令嬢の従者が大嫌いな騎士様に喰われる話――
ロ
BL
「ずっと前から、おまえが好きなんだ」
と、俺を容赦なく犯している男は、互いに互いを嫌い合っている(筈の)騎士様で――――。
「悪役令嬢」に仕えている性悪で悪辣な従者が、「没落エンド」とやらを回避しようと、裏で暗躍していたら、大嫌いな騎士様に見つかってしまった。双方の利益のために手を組んだものの、嫌いなことに変わりはないので、うっかり煽ってやったら、何故かがっつり喰われてしまった話。
※ムーンライトノベルズでも公開しています(https://novel18.syosetu.com/n4448gl/)
処刑エンドの悪役公爵、隠居したいのに溺愛されてます
ひなた翠
BL
目が覚めたら、やり込んだBLゲームの悪役公爵になっていた。
しかも手には鞭。目の前には涙を浮かべた美少年。
——このままじゃ、王太子に処刑される。
前世は冴えない社畜サラリーマン。今世は冷徹な美貌を持つ高位貴族のアルファ。
中身と外見の落差に戸惑う暇もなく、エリオットは処刑回避のための「隠居計画」を立てる。
囚われのオメガ・レオンを王太子カイルに引き渡し、爵位も領地も全部手放して、ひっそり消える——はずだった。
ところが動くほど状況は悪化していく。
レオンを自由にしようとすれば「傍にいたい」と縋りつかれ、
カイルに会えば「お前の匂いは甘い」と迫られ、
隠居を申し出れば「逃げるな」と退路を塞がれる。
しかもなぜか、子供の頃から飲んでいた「ビタミン剤」を忘れるたび、身体がおかしくなる。
周囲のアルファたちの視線が絡みつき、カイルの目の色が変わり——
自分でも知らなかった秘密が暴かれたとき、逃げ場はもう、どこにもなかった。
誰にも愛されなかった男が、異世界で「本当の自分」を知り、運命の番と出会う——
ギャップ萌え×じれったさ×匂いフェチ全開の、オメガバース転生BL。
「大好きです」と言ったらそのまま食べられそうです
あまさき
BL
『「これからも応援してます」と言おうと思ったら誘拐された』のその後のお話
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
リクエストにお答えしましてその後のお話🔞を書きました。
⚠︎
・行為に必要な色んな過程すっ飛ばしてます
・♡有り
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる