魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

文字の大きさ
2 / 94

第2話 嵐は突然に 2

しおりを挟む
「こんばんは、素敵なお城ですね……!!」

 数秒の思考停止ののち、無理矢理出した第一声はこれだった。
 我ながら、どうしてこうなったか分からない。

「……は?」

 だから相手の反応ももっともだと思った。
 先程は驚いてしまった私だったが彼の正体にすぐ思い当たった、私の故郷にはいない存在ではあったが彼はきっと獣人という種族であろう。

「一体、なんのようだ?」

 これももっともである疑問に、今度は言葉を選びながら答えた。

「私の名はリア、旅の者です。森を抜けようとしたところ、嵐に遭って道に迷ってしまいココへ辿り着きました。不躾ぶしつけとは思いますが夜道とこの天候では街まで辿り着くのは難しいため、どうか嵐が収まるまでココで雨宿りをさせて頂けないでしょうか?」

「雨宿り……つまり泊めて欲しいということか?」

「建物の中に入れて頂いて休めれば床でも結構ですので!!」

「いや若い娘が、それはどうかと思うぞ……」

「そうですかね、私は旅をしているので多少は平気ですよ」

 獣人さんは厳めしい見かけと違って優しい方のようだ。

「そもそも私の姿を見た反応が……いや、とりあえず上がって貰おうか」

 彼の言いかけた一言に、やはり失礼な反応だったかとドキドキしながらも、私は城の中へと招き入れられたのだった。



 玄関からエントランスへ招き入れられた私は辺りを見渡していった。

「それで、何処の床を使えばよろしいでしょうか?」

「そんなに床で寝たいのかキミは!?」

「別にそうじゃありませんが……」

「それなら部屋を貸すのでそこで寝てくれ」

「まぁ、なんてお優しい」

「……それくらい当然だろう。それより濡れた上着も脱いで乾かしたらどうだ、向こうの部屋に暖炉があるからそこで乾かせるはずだ」

「そうですね、お言葉に甘えてそうさせて頂きます」

 指摘された通りにそそくさとローブを脱ぎ、獣人さんに案内されて暖炉のある部屋へと通された。なるべく濡れた部分が火に当たるように気をつけながら暖炉の前にローブを置き、ついでに他の鞄の中身も問題無いか確認した。

(よしよし……)

 もともと防水機能がある鞄だったこともあり、何も問題はなさそうだった。
 一通りの作業が終わり顔を上げると、獣人の彼が私をじっと見つめているのに気が付いた。
 手持ち無沙汰にしてしまったことに気が付いてすぐ頭を下げた。

「お待たせして申し訳ありませんでした」

「いや、そんなことはない……」

 彼は気まずそうに顔を横に振ったあと、その体の大きさには似合わない小さな声でいった。

「リアと言ったか、良ければ少し話をしないか……?」

「それは別に構いませんが、どのような話をすればいいでしょうか?」

 私の返事にほっとしたような様子の彼は、私に3人掛けくらいのソファを進めて自らもその向かいに腰を下ろした。

「どんな話でも構わない」

「どんな話でも……?」

 それってむしろ難しくないだろうか? だけどコチラは今まさに雨宿りをさせていだだいている身、全力で相手の期待には応えなければなるまい。
 私が懸命に面白い話を考えていると、コチラが悩んでいることに気付いたのか慌てて付け加えた。

「そう言えば、杖を持っているようだがキミは魔術師なのか?」

「はい、そうですよ。魔術の研究が盛んな場所の出身なので基礎は幼い頃からたたき込まれました」

「そうなのか、その出身地というのは?」

「えーっと、この国からはずっと遠い場所にある形容し難い田舎です! 旅に出たのも田舎に飽きたからです」

 この質問にはやや困ったものの、どうにか堂々と言い切った。この回答に若干怪訝そうな顔をしている気がしないでもないが、そこはあえて無視をして逆に自分が質問をしてみた。

「もし差し支えなければ、アナタのお名前をお聞きしたいのですが……如何でしょうか」

「そう言えば名乗っていなかったな。私の名前はアルフォンス・サン・マーシャル・カストリヤだ」

 上流階級特有の長い名前、これだけ大きな城に住んでいる時点で貴族の可能性は予想通りだった。だが引っかかる部分があった。

「カストリヤって……確か王族の名前ですよね」

 もともと余所者の私は、この辺りの地理や事情に明るいワケでは無い。それでも旅人として最低限、国の名前くらいは把握している。

 この国はカストリヤ王国で、カストリヤは王族しか名乗れない名前のはずだ。

「……その通り、私はこれでもカストリヤ王国の第一王子だ」

 その言葉に自分の背筋が冷たくなるのを感じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!

ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」 それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。 挙げ句の果てに、 「用が済んだなら早く帰れっ!」 と追い返されてしまいました。 そして夜、屋敷に戻って来た夫は─── ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...