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第7話 腹が減ってはなんとやら
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「やはり分かるのか……」
「ええ、でも自信があったワケではありませんよ」
この呪いは、一般的な呪いと随分と違う。だから呪いだと言い切る自信がなかった。
「詳しく聞かせていただけますか?」
「ああ、もちろんだ。だが事情を話しはじめると長くなってしまうので、先に食事を済ませてからにしないか……?」
アルフォンス様がテーブルの上の料理に目をやる。
わぁー美味しそう……ってそうだけど、そうじゃなくて。
「……確かに、それが良いかも知れませんね」
そう、ここで話を始めると食事を抜くことになるかも知れない。そしてその栄養不足により、考えが上手くまとまらなくなって良い考えが出ない……十分、ありえる可能性だ。決して、私のお腹が空いて仕方ないとか、そういう理由が先走ってるわけではない。
「それでは、いただきます」
とりあえず、することも決まり食事に手を付けることに対して遠慮がなくなったため、さっそくサンドイッチを手に取り口に運ぶ。
うん、思ったとおり美味しい。
あっという間に1つ目のサンドイッチを平らげると、2つ目に手を伸ばす。
口を開きかけたところで、アルフォンス様がコチラを凝視していることに気が付いた。
この視線は、もしかして感想を待っていたりするのだろうか。
確か手作りだって言っていたし……。
あやうく食べることに夢中になるところだった。
えーっと感想、感想、かんそう……。
「保存食と違って全然美味しいです!!」
「…………」
もしかしなくても、感想を間違えた!
だって唖然とした顔しているもの。
早急にフォローしなければ。
「パンと野菜の相性が凄くいいです!!」
「……ああ」
「パンがふわふわしています!!」
「……そうか」
「とっても美味しいです!!」
褒め言葉の勢いにおされ気味で、ぎこちなく頷いていたアルフォンス様が、そこでふっと笑った。
「ありがとう……」
……よし、笑ったな。
もしかしたら呆れて笑っている可能性もあるけど、そこは気にしたら負けだ。
安心したらお腹が空いた気がするので、食事に戻ろう。
「一応、スープもあるのだが」
「はい、喜んでいただきます」
一瞬、器に直接口を付けてスープを飲もうかと思ったが、ちゃんとスープの横にあるスプーンがあったため、それでいただくことにした。スプーンでスープをすくい上げて口に入れる。
温かいスープが口の中に広がる。最近は温かいものと言えば、お湯くらいしか飲んでいなかったため物凄く美味しく感じる。
「ああ美味しい、幸せです……」
「いささか大袈裟ではないか」
「いいえ、アルフォンス様がしっかり作って下さったことが分かる。優しい味の美味しいスープですよ」
サンドイッチの時の褒め方は、勢いに任せであまり上手くなかったため。今度は不自然ではない程度にしっかりと、美味しいことが伝わるように気を付けて褒めた。
「そうか……」
喜んでくれるかと思いきや、アルフォンス様はプイっと横を向いてしまった。
これもダメだったのかな……。上手に褒めるのって難しいな。
「そういえば、私の幼馴染みも料理が上手いんですよ」
食事の手を進めつつも、無言になってしまうのは気まずいため。褒めることは諦めて、代わりに適当な話をすることにした。
「お菓子をよく作って持ってきてくれて、それがまた美味しいんですよね」
「そうなのか」
さいわいアルフォンス様は、すぐ話題にのってくれた。そうじゃなくても勝手に喋るつもりだったけど、ちゃんと聞いてもらえるのは嬉しい。
「特に私が好きなお菓子を覚えていてくれて、作ってくれるのが嬉しいんですよね~」
「……その幼馴染のことは大切か?」
少し悩むような素振りを見せたアルフォンス様が、唐突にそんなことを聞いてきた。
何故、急にそんなことを聞くのか疑問を感じつつも素直に答えた。
「ええ、もちろん」
「でもそんな風に大切な幼馴染がいるのに、キミはどうして旅に出たんだ」
「それはなんと言いますか、抑えられない冒険心に後押しされて……って感じですね」
これも本心だ。ただその冒険心は愛読している冒険小説の影響だという部分は伏せておいた。これを言ってしまうと、流石にアホっぽく見えるのは自分でも分かる。アホだけど、馬鹿じゃないので自重くらいは知っている。
「美味しかったです、ご馳走でした」
そうこうしている内に、テーブルの上の食べ物が綺麗になくなった。だいぶ、私の方で食べてしまった気もしないでもないが、今はそれよりも重要なことがあるので考えないでおこう。
「食事も食べ終えたところで、呪いのこと詳しくお話いただけますかね」
いかにも真剣な空気に切り替えて、アルフォンス様に話を振った。
「そういうことになっていたからな」
アルフォンス様は頷いたあと、一呼吸置いてから重々しく口を開いた。
「ええ、でも自信があったワケではありませんよ」
この呪いは、一般的な呪いと随分と違う。だから呪いだと言い切る自信がなかった。
「詳しく聞かせていただけますか?」
「ああ、もちろんだ。だが事情を話しはじめると長くなってしまうので、先に食事を済ませてからにしないか……?」
アルフォンス様がテーブルの上の料理に目をやる。
わぁー美味しそう……ってそうだけど、そうじゃなくて。
「……確かに、それが良いかも知れませんね」
そう、ここで話を始めると食事を抜くことになるかも知れない。そしてその栄養不足により、考えが上手くまとまらなくなって良い考えが出ない……十分、ありえる可能性だ。決して、私のお腹が空いて仕方ないとか、そういう理由が先走ってるわけではない。
「それでは、いただきます」
とりあえず、することも決まり食事に手を付けることに対して遠慮がなくなったため、さっそくサンドイッチを手に取り口に運ぶ。
うん、思ったとおり美味しい。
あっという間に1つ目のサンドイッチを平らげると、2つ目に手を伸ばす。
口を開きかけたところで、アルフォンス様がコチラを凝視していることに気が付いた。
この視線は、もしかして感想を待っていたりするのだろうか。
確か手作りだって言っていたし……。
あやうく食べることに夢中になるところだった。
えーっと感想、感想、かんそう……。
「保存食と違って全然美味しいです!!」
「…………」
もしかしなくても、感想を間違えた!
だって唖然とした顔しているもの。
早急にフォローしなければ。
「パンと野菜の相性が凄くいいです!!」
「……ああ」
「パンがふわふわしています!!」
「……そうか」
「とっても美味しいです!!」
褒め言葉の勢いにおされ気味で、ぎこちなく頷いていたアルフォンス様が、そこでふっと笑った。
「ありがとう……」
……よし、笑ったな。
もしかしたら呆れて笑っている可能性もあるけど、そこは気にしたら負けだ。
安心したらお腹が空いた気がするので、食事に戻ろう。
「一応、スープもあるのだが」
「はい、喜んでいただきます」
一瞬、器に直接口を付けてスープを飲もうかと思ったが、ちゃんとスープの横にあるスプーンがあったため、それでいただくことにした。スプーンでスープをすくい上げて口に入れる。
温かいスープが口の中に広がる。最近は温かいものと言えば、お湯くらいしか飲んでいなかったため物凄く美味しく感じる。
「ああ美味しい、幸せです……」
「いささか大袈裟ではないか」
「いいえ、アルフォンス様がしっかり作って下さったことが分かる。優しい味の美味しいスープですよ」
サンドイッチの時の褒め方は、勢いに任せであまり上手くなかったため。今度は不自然ではない程度にしっかりと、美味しいことが伝わるように気を付けて褒めた。
「そうか……」
喜んでくれるかと思いきや、アルフォンス様はプイっと横を向いてしまった。
これもダメだったのかな……。上手に褒めるのって難しいな。
「そういえば、私の幼馴染みも料理が上手いんですよ」
食事の手を進めつつも、無言になってしまうのは気まずいため。褒めることは諦めて、代わりに適当な話をすることにした。
「お菓子をよく作って持ってきてくれて、それがまた美味しいんですよね」
「そうなのか」
さいわいアルフォンス様は、すぐ話題にのってくれた。そうじゃなくても勝手に喋るつもりだったけど、ちゃんと聞いてもらえるのは嬉しい。
「特に私が好きなお菓子を覚えていてくれて、作ってくれるのが嬉しいんですよね~」
「……その幼馴染のことは大切か?」
少し悩むような素振りを見せたアルフォンス様が、唐突にそんなことを聞いてきた。
何故、急にそんなことを聞くのか疑問を感じつつも素直に答えた。
「ええ、もちろん」
「でもそんな風に大切な幼馴染がいるのに、キミはどうして旅に出たんだ」
「それはなんと言いますか、抑えられない冒険心に後押しされて……って感じですね」
これも本心だ。ただその冒険心は愛読している冒険小説の影響だという部分は伏せておいた。これを言ってしまうと、流石にアホっぽく見えるのは自分でも分かる。アホだけど、馬鹿じゃないので自重くらいは知っている。
「美味しかったです、ご馳走でした」
そうこうしている内に、テーブルの上の食べ物が綺麗になくなった。だいぶ、私の方で食べてしまった気もしないでもないが、今はそれよりも重要なことがあるので考えないでおこう。
「食事も食べ終えたところで、呪いのこと詳しくお話いただけますかね」
いかにも真剣な空気に切り替えて、アルフォンス様に話を振った。
「そういうことになっていたからな」
アルフォンス様は頷いたあと、一呼吸置いてから重々しく口を開いた。
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