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第13話 王子さまの心中 -別視点-
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部屋を飛び出したあと、混乱した頭を冷やすために私は行き先も決めず延々と廊下を歩き続けていた。
どのくらい時間が経っただろうか。まだ若干頭がぼーっとするものの多少は冷静になってきたため、混乱した思考を更に整理するために先程の出来事を少しずつ思い返すことにした。
そもそもの発端は、セルバンのやつが勝手にリアへ呪いの解呪を依頼しようとしたことにある。一応、昨晩相談されて考えると言った以上は私から彼女に言い出すつもりはあった……ただ、もう少し慎重に様子を見てから話しをしようと思っていたのに、予想外の余計なことをされたためすっかり気が動転してしまったんだ。
……いや、違うな。正直なところ、私は彼女に呪いを解いてくれるように頼むことに乗り気ではなかった。だからセルバンが、突然ああ言い出したことに対して動転してしまったというのが正しい。
乗り気ではなかった理由は他でもない……面倒ごとをお願いすることで、あの魔術師の少女リアが態度を変えるのではないかと恐れていたのだ。
たしかに今までは特に怯えるわけでも嫌悪感を見せるわけでもなく接してくれている彼女だが、それはコチラが助けている状況だから表面上仕方なくそうしているのではないか。一度そう思ってしまえば、その疑念を拭うことは容易ではない。
ではその状況が変わってしまえばどうなるだろう……もし他の人間のような冷たい反応をされたらと考えると、それが何よりも恐ろしく感じてしまった。
呪いも解けずリアに冷たい態度を取られて自分の元を去られる位なら、嘘でもいいから最後まで普通に接してもらって、普通に別れる方が幸せではないか……そんな考えが心の中渦巻いていた。
だが私がそんな不安に駆られているとも知らぬ彼女は、セルバンとの言い争いに割って入ってこう言い出したのだ。
「その呪い、私が解いてみせましょう」
正直、意味が分からなかった。頭の中で何故どうしてという疑問が止まらなかった。
他でもない私自身が、この容姿を近くに寄るのすらおぞましい化け物だと自覚していた。だから魔術師といってもこんな少女が、しかも赤の他人に等しい存在が、わざわざ私の呪いを解くと言い出したことが信じられなかった。
そしてその疑念と不安が言わなくていい、ロクでもない余計なことばかりを口走らせた。
親切心で呪いを解くと言っているのなら、そこまで言われた時点で怒り出して撤回してもおかしくないハズだが彼女は何故かムキになって反論し続けた。
そして最終的に決してコレだけ言うまいと思っていた『自分の容姿を恐れているのではないか』という類いの問いをいつの間にか零してしまったのだった。
自分が口走った台詞に絶望して俯いていたところ、リアの行動は思いがけないものだった。
まず彼女は自ら躊躇なく、私に触れてきたのだ。それに驚く間もなく触れた手で俯いた私の顔を上げさせ、真っ直ぐと目を合わせてこういった。
「私はアルフォンス様のその容姿を一度たりとも恐ろしいと思ったことはありませんよ」
最初に見たときに美しいと思った、澄んだ海のような瞳が私のことを見据えている。
その瞳には一切の陰りがなく、彼女が嘘をついてないことを十分過ぎるほど伝えてくれる。
では、本当に恐れてはいないのか……。
そう分かると今まで抱いていた不安や疑念が霧散していき、胸が軽くなっていくような気がした。
しかし待て、今の状況はなんだ。
私の顔に添えるように触れているリアの手、私と目を合わせるために近くまで寄せられた彼女の顔。妖精を思わせるような可憐で美しい彼女の顔がすぐそこにある。
現在の状況に思考がしばらくのフリーズをした後に一気に顔が熱くなった。
先程とは別の理由でまともに頭が働かなくなった私だったが、とにかくこれ以上この娘の側にいるのはマズいということだけは判断できた。
そして私は逃げるように彼女のいる部屋から飛び出したのだった。
うっ、あの場面を改めて思い出すとまた頭がのぼせるような感覚になった。
あの娘は一体なにを考えているのだろうか、確かにああした理由自体は理解出来るが、それを差し引いてももう少し躊躇するべきではないか。
仮にも初対面の男に軽々しく触れ顔を近づけるなど……いや、そもそも男として見られていないのか。私のことを恐がっていないのは事実のようだが、それとは別に男としても意識してはいないのだろう。彼女の行動を見るにそう考えるのが自然だろうな……。
一応、私には呪われる以前も含めると女性経験もあったのだが、彼女は私の知っている女性というものとずいぶんと違うように感じられた。
間違ってもあんな間近に顔を近づけて見つめてきたり、顔に触れてくるような者はいなかった。
そのうえ変わっているのは行動だけでなく、その容姿もそうだった。
昔の経験を含めれば美しい女を数多く知っているはずであったが、その中で比較しても彼女の美しさは異彩を放っていた。
青色がかった銀髪に澄んだ海のような青い瞳。彼女のような色の髪ははじめて見るものだったし、青い目自体は良く見る色であるはずなのに私が知る限り普通にはない不思議な色彩の青色であった。
不思議な色彩の眼と髪その2つが何よりも彼女の美しさを、他にはないも幻想的なものにしているように思える。
本当に彼女は何者なのだろか……。
出身地を濁した辺りから、いっそ海の妖精だと言われても納得してしまいそうな自分がいる。
謎の多い彼女について思う部分は多々あるが、考えて答えが出るものでもなさそうだしこれ以上は止めておこう。
さて、ずっと歩き続けるわけにもいかないし、今後のことについて考えなければな……。
どうするにせよ、まずリアに対して先程の謝罪をするこれだけは確定だ。そして彼女の答え次第で、改めて私からも呪いを解いてくれるように頼むことにしよう。
先程は自身の感情を暴走させて色々と言ってしまったが、呪いには私だけでなく使用人たちも巻き込まれているのだから、それを考えればお願いする以外の選択肢はない。
それらの考えを固めると、私はようやく足を止めた。
何も考えずに歩き回っていたため、現在地を確認しようと辺りを見回すと、そこがある部屋の目の前だと気付いた。
「ああ、ここは図書室か……」
近頃は近寄ってすらいなかったが、ここには呪いや精霊について調べるためにかなりの本を揃えていたはずだ。
もしリアが私の謝罪を受け入れてくれたならば、そして呪いを解いてくれると言うのであれば……ここの部屋を紹介するのも良いかも知れないな。
心の内で紆余曲折を経たものの、そんなことを考えられる程度には私の気持ちは上向くようになっていたのだった。
どのくらい時間が経っただろうか。まだ若干頭がぼーっとするものの多少は冷静になってきたため、混乱した思考を更に整理するために先程の出来事を少しずつ思い返すことにした。
そもそもの発端は、セルバンのやつが勝手にリアへ呪いの解呪を依頼しようとしたことにある。一応、昨晩相談されて考えると言った以上は私から彼女に言い出すつもりはあった……ただ、もう少し慎重に様子を見てから話しをしようと思っていたのに、予想外の余計なことをされたためすっかり気が動転してしまったんだ。
……いや、違うな。正直なところ、私は彼女に呪いを解いてくれるように頼むことに乗り気ではなかった。だからセルバンが、突然ああ言い出したことに対して動転してしまったというのが正しい。
乗り気ではなかった理由は他でもない……面倒ごとをお願いすることで、あの魔術師の少女リアが態度を変えるのではないかと恐れていたのだ。
たしかに今までは特に怯えるわけでも嫌悪感を見せるわけでもなく接してくれている彼女だが、それはコチラが助けている状況だから表面上仕方なくそうしているのではないか。一度そう思ってしまえば、その疑念を拭うことは容易ではない。
ではその状況が変わってしまえばどうなるだろう……もし他の人間のような冷たい反応をされたらと考えると、それが何よりも恐ろしく感じてしまった。
呪いも解けずリアに冷たい態度を取られて自分の元を去られる位なら、嘘でもいいから最後まで普通に接してもらって、普通に別れる方が幸せではないか……そんな考えが心の中渦巻いていた。
だが私がそんな不安に駆られているとも知らぬ彼女は、セルバンとの言い争いに割って入ってこう言い出したのだ。
「その呪い、私が解いてみせましょう」
正直、意味が分からなかった。頭の中で何故どうしてという疑問が止まらなかった。
他でもない私自身が、この容姿を近くに寄るのすらおぞましい化け物だと自覚していた。だから魔術師といってもこんな少女が、しかも赤の他人に等しい存在が、わざわざ私の呪いを解くと言い出したことが信じられなかった。
そしてその疑念と不安が言わなくていい、ロクでもない余計なことばかりを口走らせた。
親切心で呪いを解くと言っているのなら、そこまで言われた時点で怒り出して撤回してもおかしくないハズだが彼女は何故かムキになって反論し続けた。
そして最終的に決してコレだけ言うまいと思っていた『自分の容姿を恐れているのではないか』という類いの問いをいつの間にか零してしまったのだった。
自分が口走った台詞に絶望して俯いていたところ、リアの行動は思いがけないものだった。
まず彼女は自ら躊躇なく、私に触れてきたのだ。それに驚く間もなく触れた手で俯いた私の顔を上げさせ、真っ直ぐと目を合わせてこういった。
「私はアルフォンス様のその容姿を一度たりとも恐ろしいと思ったことはありませんよ」
最初に見たときに美しいと思った、澄んだ海のような瞳が私のことを見据えている。
その瞳には一切の陰りがなく、彼女が嘘をついてないことを十分過ぎるほど伝えてくれる。
では、本当に恐れてはいないのか……。
そう分かると今まで抱いていた不安や疑念が霧散していき、胸が軽くなっていくような気がした。
しかし待て、今の状況はなんだ。
私の顔に添えるように触れているリアの手、私と目を合わせるために近くまで寄せられた彼女の顔。妖精を思わせるような可憐で美しい彼女の顔がすぐそこにある。
現在の状況に思考がしばらくのフリーズをした後に一気に顔が熱くなった。
先程とは別の理由でまともに頭が働かなくなった私だったが、とにかくこれ以上この娘の側にいるのはマズいということだけは判断できた。
そして私は逃げるように彼女のいる部屋から飛び出したのだった。
うっ、あの場面を改めて思い出すとまた頭がのぼせるような感覚になった。
あの娘は一体なにを考えているのだろうか、確かにああした理由自体は理解出来るが、それを差し引いてももう少し躊躇するべきではないか。
仮にも初対面の男に軽々しく触れ顔を近づけるなど……いや、そもそも男として見られていないのか。私のことを恐がっていないのは事実のようだが、それとは別に男としても意識してはいないのだろう。彼女の行動を見るにそう考えるのが自然だろうな……。
一応、私には呪われる以前も含めると女性経験もあったのだが、彼女は私の知っている女性というものとずいぶんと違うように感じられた。
間違ってもあんな間近に顔を近づけて見つめてきたり、顔に触れてくるような者はいなかった。
そのうえ変わっているのは行動だけでなく、その容姿もそうだった。
昔の経験を含めれば美しい女を数多く知っているはずであったが、その中で比較しても彼女の美しさは異彩を放っていた。
青色がかった銀髪に澄んだ海のような青い瞳。彼女のような色の髪ははじめて見るものだったし、青い目自体は良く見る色であるはずなのに私が知る限り普通にはない不思議な色彩の青色であった。
不思議な色彩の眼と髪その2つが何よりも彼女の美しさを、他にはないも幻想的なものにしているように思える。
本当に彼女は何者なのだろか……。
出身地を濁した辺りから、いっそ海の妖精だと言われても納得してしまいそうな自分がいる。
謎の多い彼女について思う部分は多々あるが、考えて答えが出るものでもなさそうだしこれ以上は止めておこう。
さて、ずっと歩き続けるわけにもいかないし、今後のことについて考えなければな……。
どうするにせよ、まずリアに対して先程の謝罪をするこれだけは確定だ。そして彼女の答え次第で、改めて私からも呪いを解いてくれるように頼むことにしよう。
先程は自身の感情を暴走させて色々と言ってしまったが、呪いには私だけでなく使用人たちも巻き込まれているのだから、それを考えればお願いする以外の選択肢はない。
それらの考えを固めると、私はようやく足を止めた。
何も考えずに歩き回っていたため、現在地を確認しようと辺りを見回すと、そこがある部屋の目の前だと気付いた。
「ああ、ここは図書室か……」
近頃は近寄ってすらいなかったが、ここには呪いや精霊について調べるためにかなりの本を揃えていたはずだ。
もしリアが私の謝罪を受け入れてくれたならば、そして呪いを解いてくれると言うのであれば……ここの部屋を紹介するのも良いかも知れないな。
心の内で紆余曲折を経たものの、そんなことを考えられる程度には私の気持ちは上向くようになっていたのだった。
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