魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

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第15話 魔術師の情報収集 2

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 困惑した様子のアルフォンス様は不自然に視線をさまよわせた後、私が抱えた荷物をみて「あっ……」と小さく声を漏らした。

 うーん、その「あっ……」はどういう感情なのかな。
 なんでこんな所にいるのか、からの何か知らないけど都合良く荷物持っているからそのまま追い出せるな、とか思っていたりしない?

「……その荷物はもしかして、ここを出て行くつもりなのか?」

 おもむろに口を開いた彼は、ずいぶんと険しい表情でこちらを伺うように見つめてくる。

 まぁ、当然そうなりますし、そう見えますよね。
 でも違うんですよ、出て行きたくはないんですよ……!!
 ここはいい感じに説明しなくては……。

「実はアルフォンス様の出て行かれたあと、使用人の皆さんにご協力いただいて色々と呪いについて調べさせてもらっていたのです。そこで色々と必要な道具が出てきたため荷物を取りに戻っていたところで、これから部屋に戻って続きを行うところでございます」

 ようするにコレは部屋に戻るつもりという主張。
 私にはまだやらなければならないことがあるので、今すぐ追い出すのはやめて欲しいな~
 いや、切実にね……!!

「……私が出て行った後にワザワザそんなことをしていたのか?」

 その声は先程よりも低く、そしてかたいものだった。

 えっ、これはもしかして怒ったりしてない?
 勝手に色々したのはやっぱりマズかったか……。

「はい、そうです」

 でも言ってしまったことは事実以外の何者でもないため、素直に認めるしかない。
 どうか怒られませんように……いや、もう最悪怒られてもいいので追い出されませんように……。

「あんな態度をとったのに、キミはそんなに親切なのだな……」

 ポツリとアルフォンス様が何か言ったようだが、その声はあまりにも小さくて聞き取ることができなかった。
 私に対して良くないこと言ってないよね、ね?

「……いま、なんて言ったんですか?」

 正直、聞くのも恐いが聞かないワケにもいかないため私はそう聞いた。

「いや、なんでもない……」

 アルフォンス様は一瞬目を閉じてそれだけ言うと、今度はまっすぐに私を見つめてきた。

 さっきアルフォンス様を怖くないって言ったことを覆すようで申し訳ないけど、私は今一番この人が怖いです。最後通告的は意味で……。
 だって雰囲気、思い切って何か言おうとしてる、それだもの!!

「それよりも、先程のことを謝罪したい」

 ん? 謝罪したい……?
 えっ謝罪させたいではなくて……?

「私がとった先程の言動はキミに対して失礼なものだっただろう……だからすまなかった」

 混乱する私をよそに、アルフォンス様は話を続ける。
 あっ今、確かに私に対して謝ったから紛れもなく謝罪ですね。

「そして都合のいい話しと思うかも知れないが……私からもキミに解呪をお願いしたい」

 本人は申し訳なさもあるのか躊躇うように発した言葉だったが、私にとっては欲しくて仕方ない言葉であったため、先程までの混乱やアルフォンス様の細かい様子など諸々は即座にどうでもよくなった。

「はい、是非そうさせてください!!」


 そしてすっかり嬉しくなった私は、返事のついでにアルフォンス様の手を両手で握ってしまった。
 あっ良い毛並み。

「なっ……!!」

 そして突然の私の行動に驚いたのかアルフォンス様は、口をぱくぱくさせている。
 獣なのに魚っぽくてちょっと面白いな……って思ってる場合じゃないか。

「ごめんなさい」

 じゃっかん獣毛への未練はあるものの、ここで間違って怒らすのは痛いためおとなしく手を離した。
 アルフォンス様は大きく深呼吸をした後、ジトッとした視線をこちらに向けてきた。

「……キミは少し軽率に触り過ぎじゃないのか」

「ええ気をつけようと思っているのですが、好きなんでつい……」

 動物の毛皮が近くにあるとついつい触りたくなってしまうんだよね……。

「好き……!?」

 アルフォンス様が目を白黒させて先程よりも更に驚いているように見えるが、そんなに私の毛皮、もとい動物好きがそんなに以外だろうか。
 なにやら考え込んでしまって様子がおかしいアルフォンス様をどうしたものかと考えたが、とりあえず落ち着くまで放っておいて必要なことは勝手に進めてしまおうと結論づけた。

「話は変わりますが、先程の部屋にアルフォンス様が戻ってきて下さったら話したいと思っていたことがあるのですが、このまま部屋に戻るということでよろしいでしょうか?」

「ああ……」

「じゃあ、一緒に部屋に戻りましょうか?」

「ああ……」

 生返事だが頷いてくれているし、足も動かしてくれているため多分大丈夫だろう。

 さて、アルフォンス様も戻ってきてくれるようなので身体調査は一旦後回しにしようかな。
 もっと色々と調べたい気持ちもあるが、正式に依頼を受けることが決まった今、焦るのは逆によろしくない。

 どこかぼんやりとした様子で隣を歩くアルフォンス様を横目で見つつ、私は私でどのように話をしようかと考えながら使用人の皆さんが待つ部屋に戻ったのだった。
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