17 / 94
第17話 魔術師の説明会 2
しおりを挟む
私の言葉に部屋全体がにわかにざわついた。
先程の説明の引き合いに毒という単語を使ったからという部分もあるだろう。そこについては申し訳なく思うけど、これ以上適切な例えがないのだから仕方ない。
「不安を煽りたいワケじゃないので先に言っておきますが、特別危険な要素が見つかったというわけじゃないのでそこは安心してください」
こういう時は早めに、落ち着いて貰うのが一番。
誤解されては困るので、心配する必要がないことだけはキチンと伝える。
やや不安そうな雰囲気は残ったものの、静かになった。
「それでは皆さんの呪いについて詳しい説明をしたいと思いますが、その前に前提として皆さんの呪いはかけられた時点で分かる呪いです」
大精霊さまもご丁寧に呪いをかけたと言ってくれているくらいだし、隠す気がサラサラないことは疑いようもない。
「ですが、その一方でその呪い自体を分からないように隠蔽する術も同時に掛けられていました」
「……それは一体どういうことなんだ」
「大精霊様は分かりやすく呪いをかけて下さったのに、呪いを隠そうという謎の手間をかけているということですね」
「何故だ」
「意図は不明です。しかし半端な実力の魔術師であれば気づけない程度の隠蔽はしてあります」
だからこそ、到着当初の本調子じゃない私は呪いに気づけなかったというわけだ。
自分でいうのもなんだけど、ずっと歩き続けた後、魔獣と戦いながら森をさ迷い、極めつけには嵐に晒されるという不運に見舞われた人間の調子がいい方がむしろどうかしている。
私は悪くない。
「逆に言うとある程度の実力のある魔術師であれば見抜ける程度のアラがこの隠蔽にはあるんですよ。普通の魔法使いや魔術師ならただの実力不足で片付く問題ですが、この世の神秘の最高峰にいる大精霊が使った術にしてはあまりにもお粗末なものと言わざるを得ません」
絶対に大精霊が間違うワケがないとは言い切れないけど、その可能性は限りなく低い。
「そのお粗末な術に反して、呪いのほうは今までに見たことのないほど緻密に組まれた魔術でしたよ。さすが大精霊様と言ったところですが、その落差のお陰で余計に違和感が増しましたけどね」
本当に中身の呪いの方は素晴らしく良い仕事されているな、という感じだった。
まぁ呪いである時点で良い仕事というのは相応しくないかも知れないけど、凄いのだけは間違いない。
「先程、私は大精霊様の意図は分からないと言いましたが、今の私には分からないだけで間違いなく何かしらの意図が存在していることは確かだと思います」
「なので、もし大精霊様が何を考えているのか少しでも心当たりがあればご相談下さい」
「……分かるわけがなかろう」
そうですよね。
もののついでに言ってみただけなので、あまり期待しているわけではない。
「とにかく大精霊様の情報は重要であるため、今の話に限らず少しでも情報があれば教えて下さい。どんな情報が役に立つかは案外分からないものですからね」
ただコチラについてはちょっとだけ期待をしている、もしダメだったとしても自力で頑張るけどね。
「呪い自体の解説については一旦ここで区切って、お次は具体的に呪いをどのような手段で解くつもりかというのを簡単にですがご説明したいと思います」
正直にいうとここまでは今から話す内容に持っていくための前置きで、ここからが本題なわけだ。さて、上手く納得してもらえるかな。
「その案は三つほどあるため一つずつ、説明していきますね。まず一つ目は私が呪いを分析して解くという方法です。かなり高度な術を使っているため分析に多少時間が掛かるかも知れませんが、必要に応じて協力して頂けると助かります」
「それはもちろんだが……」
何故だろう、唐突にアルフォンス様の様子がどこかおかしい。
この先が大事なのに……今の発言にマズい部分でもあったかな。
「……呪いを解く方法として大精霊が言ってきた真実の愛とかについてはどう考えている?」
どうやら私が原因ではなさそうで一安心。
確かに真実の愛とかいう言葉は人によっては、口にすることへ気恥ずかしさを感じるよね。当事者ならなおさらだろう。
「もちろんそちらについても考えてありますが、私はあまり重視しない方向性で考えております」
「……やはり、この姿では難しいからか」
「いえ、それは関係ありません」
私がばっさりと否定すると、アルフォンス様は驚いたのか目を丸くしている。
「では何故だ?」
「正直にいって真実の愛という基準が曖昧で分かりづらいからです。きっとこれは恋愛的なものを指しているような気がしているのですが、親しい人に感じる親愛は真実の愛じゃないと言ってしまえば変な話になりますし……。もし恋愛感情だったとしてもどこからが真実の愛かが謎ですし」
つまり自分がよく分からない確実性のないものだから、あまり力を入れる気にはなれないわけなんだよね。
アルフォンス様は納得しているような納得してないような微妙な反応だ。
「一応、大精霊さまの言っていることなので全く無視する気はありませんけど。こちらの話については、上手くいったらラッキーくらいの心持ちで呪いで眠らされている囚われのお姫様でも探しておきますね」
「それはどこかのおとぎ話の話じゃないのか!?」
そうそう、王子さまの口づけで呪いが解けるあれだ。題名は忘れたけど、同じような話がいくつか合った気がする。
「アルフォンス様の前例がある時点で存在は否定できませんからね。重視しないとは言いましたがちゃんと探しはするので安心してください」
「それは安心していいのか……」
アルフォンス様が困惑した声を漏らすが、するべき説明はキチンとしたので無視して話を進めることにした。
先程の説明の引き合いに毒という単語を使ったからという部分もあるだろう。そこについては申し訳なく思うけど、これ以上適切な例えがないのだから仕方ない。
「不安を煽りたいワケじゃないので先に言っておきますが、特別危険な要素が見つかったというわけじゃないのでそこは安心してください」
こういう時は早めに、落ち着いて貰うのが一番。
誤解されては困るので、心配する必要がないことだけはキチンと伝える。
やや不安そうな雰囲気は残ったものの、静かになった。
「それでは皆さんの呪いについて詳しい説明をしたいと思いますが、その前に前提として皆さんの呪いはかけられた時点で分かる呪いです」
大精霊さまもご丁寧に呪いをかけたと言ってくれているくらいだし、隠す気がサラサラないことは疑いようもない。
「ですが、その一方でその呪い自体を分からないように隠蔽する術も同時に掛けられていました」
「……それは一体どういうことなんだ」
「大精霊様は分かりやすく呪いをかけて下さったのに、呪いを隠そうという謎の手間をかけているということですね」
「何故だ」
「意図は不明です。しかし半端な実力の魔術師であれば気づけない程度の隠蔽はしてあります」
だからこそ、到着当初の本調子じゃない私は呪いに気づけなかったというわけだ。
自分でいうのもなんだけど、ずっと歩き続けた後、魔獣と戦いながら森をさ迷い、極めつけには嵐に晒されるという不運に見舞われた人間の調子がいい方がむしろどうかしている。
私は悪くない。
「逆に言うとある程度の実力のある魔術師であれば見抜ける程度のアラがこの隠蔽にはあるんですよ。普通の魔法使いや魔術師ならただの実力不足で片付く問題ですが、この世の神秘の最高峰にいる大精霊が使った術にしてはあまりにもお粗末なものと言わざるを得ません」
絶対に大精霊が間違うワケがないとは言い切れないけど、その可能性は限りなく低い。
「そのお粗末な術に反して、呪いのほうは今までに見たことのないほど緻密に組まれた魔術でしたよ。さすが大精霊様と言ったところですが、その落差のお陰で余計に違和感が増しましたけどね」
本当に中身の呪いの方は素晴らしく良い仕事されているな、という感じだった。
まぁ呪いである時点で良い仕事というのは相応しくないかも知れないけど、凄いのだけは間違いない。
「先程、私は大精霊様の意図は分からないと言いましたが、今の私には分からないだけで間違いなく何かしらの意図が存在していることは確かだと思います」
「なので、もし大精霊様が何を考えているのか少しでも心当たりがあればご相談下さい」
「……分かるわけがなかろう」
そうですよね。
もののついでに言ってみただけなので、あまり期待しているわけではない。
「とにかく大精霊様の情報は重要であるため、今の話に限らず少しでも情報があれば教えて下さい。どんな情報が役に立つかは案外分からないものですからね」
ただコチラについてはちょっとだけ期待をしている、もしダメだったとしても自力で頑張るけどね。
「呪い自体の解説については一旦ここで区切って、お次は具体的に呪いをどのような手段で解くつもりかというのを簡単にですがご説明したいと思います」
正直にいうとここまでは今から話す内容に持っていくための前置きで、ここからが本題なわけだ。さて、上手く納得してもらえるかな。
「その案は三つほどあるため一つずつ、説明していきますね。まず一つ目は私が呪いを分析して解くという方法です。かなり高度な術を使っているため分析に多少時間が掛かるかも知れませんが、必要に応じて協力して頂けると助かります」
「それはもちろんだが……」
何故だろう、唐突にアルフォンス様の様子がどこかおかしい。
この先が大事なのに……今の発言にマズい部分でもあったかな。
「……呪いを解く方法として大精霊が言ってきた真実の愛とかについてはどう考えている?」
どうやら私が原因ではなさそうで一安心。
確かに真実の愛とかいう言葉は人によっては、口にすることへ気恥ずかしさを感じるよね。当事者ならなおさらだろう。
「もちろんそちらについても考えてありますが、私はあまり重視しない方向性で考えております」
「……やはり、この姿では難しいからか」
「いえ、それは関係ありません」
私がばっさりと否定すると、アルフォンス様は驚いたのか目を丸くしている。
「では何故だ?」
「正直にいって真実の愛という基準が曖昧で分かりづらいからです。きっとこれは恋愛的なものを指しているような気がしているのですが、親しい人に感じる親愛は真実の愛じゃないと言ってしまえば変な話になりますし……。もし恋愛感情だったとしてもどこからが真実の愛かが謎ですし」
つまり自分がよく分からない確実性のないものだから、あまり力を入れる気にはなれないわけなんだよね。
アルフォンス様は納得しているような納得してないような微妙な反応だ。
「一応、大精霊さまの言っていることなので全く無視する気はありませんけど。こちらの話については、上手くいったらラッキーくらいの心持ちで呪いで眠らされている囚われのお姫様でも探しておきますね」
「それはどこかのおとぎ話の話じゃないのか!?」
そうそう、王子さまの口づけで呪いが解けるあれだ。題名は忘れたけど、同じような話がいくつか合った気がする。
「アルフォンス様の前例がある時点で存在は否定できませんからね。重視しないとは言いましたがちゃんと探しはするので安心してください」
「それは安心していいのか……」
アルフォンス様が困惑した声を漏らすが、するべき説明はキチンとしたので無視して話を進めることにした。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる