魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

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第65話 少年との約束-別視点-2

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「そうそう、それよりもロイくんは服をどうにかした方がいいと思ってね……」

 リアが話を変えるように、パンと手を叩きながらそんなことを言い出した。
 まぁ、確かにこの子供の服はボロボロであまり見れたものではないが……。

「だからテキトーな服のを、いくつか買ってきたから試してみてよー」

 そして彼女はゴソゴソと、荷物の中から子供用の服を何着か取り出し始めた。

「き、キミは服まで買ってきたのか!?」

「いえいえ、あくまでついでですよ~ それに最低限服装はちゃんとしてないと、街の方にいってもロクな扱いをされないことは目に見えてますから」

「それはそうだろうが、わざわざそこまでするか……」

「ええ、私やる時は中途半端なことはしない主義なので!!」

 むむ、理屈はなんとなく分かるが納得出来ない。
 なぜこんな生意気な子供のためにそこまでするのだろうか……そう、こんな生意気な子供のために!!

「まぁ、正確なサイズは分からないので、気持ち大きめの服を選んできたんですけどね~ これならたぶん平気なはず……あれ、ロイくんどうしたの?」

 ……気が付くとどうやらあの子供が俯いてしまっていたらしい。
 いよいよリアにすら、まともに応じる気が無くなったかのか?
 それだったらいい機会だから、徹底的に懲らしめても……。

 そんなことを考えたものの、残念ながら表情をみるにどうも違いそうだ。

「気付いたんだ、自分にはここまでしてもらっても返せるものが何もないって……」

 そしてソレは深刻そうな表情で、そんなことを言い出す。

 ……いや、今更何を言ってるんだこの子供は、それをいうなら母親をリアにせた時点でそうではないか。むしろ一から十まで彼女の厚意こういに甘えるつもりじゃなかったことが驚きだ。

「うん、そっか……」

 でも心優しいリアはそのようなツッコミを入れたりせず、そっと頷く。
 ああ、優しいなぁ……そのうえ可愛いなぁ……。

「確かに今のロイくんでは、さっきの診察料も今買ってきた服のお金も払うのは難しいだろうね……」

 リアのそんな言葉に、あの子供は黙り込んでうつむいてしまった。
 そうだ、もっと言ってやれ……!!

「だから返すつもりがあるのなら、それはずっと後でいいよ?」

 しかしリアは、私が予想外の方向に話のかじを切った。
 え、そう来るのか……?

「まずはしっかり勉強して、その後に勉強したことを活かして働くようになって……そうして、いつかお金を稼げるようになったら返してくれればいいからね」

「いつか稼げるようになったら……」

「そうそう、いわゆる出世払いというやつだね」

 ……ま、まぁ、一理あるが……コレに限っては無理だろう。

「分かった、頑張って勉強して出世する!!」

 くっ……リアの今の言葉のお陰で、あの子供がすっかり元気を取り戻してしまった……。
 いや、出世とか絶対無理だろう!! リアの手前わざわざ口に出さないが、私はそう思うぞ!?

「そうそう、その意気……という、ところで私が買ってきた服を試してみて欲しいんだけど」

「うん!!」

 ああ、すっかり元通りの調子だ。むしろ前より元気になった気さえする……本当に残念だ。
 非常に残念だ。


「そうだ、その前に……」

 私の落胆らくたんを余所に、楽しそうな様子で子供用の服の準備をしていたリアだったが、ふいにその動きを止めた。

「ロイくん、少しだけ口を閉じて息を止めてくれる?」

 …………何やらまた彼女が妙なことを言い出したな。
 んん、私にも何をするつもりなのか全く検討がつかないぞ。

「う、うん分かった」

 さすがにリアをしたってるソレも、やや困惑した様子だったがぎこちなく頷く。

「ふふ、じゃあ行くよ」

 リアがパチンっと指を鳴らすと、あの子供の周りを囲むように水が現れた……いや、湯気が出てるからお湯か?

 それらが例の子供の全身をおおつつむように流れ、一瞬で汚れを取り去ってしまった。
 更にリアがもう一度指を鳴らすと、お湯はシュッと音を立てて消え去り、その後には足元から暖かい風が起こってそやつの身体を乾かした。

「これでどうかな?」

「わぁっすごい!!」

 一連のそれを体験したソレは、キラキラと感動した目をリアに向けているが……。
 え? いや、何だそれは……本当に凄いな!? なんなら自分もやって欲しいのだが……。

「それじゃあ、今度こそ新しい服を着てみてよ」

「うん!!」

 だが私の興味など関係なく、リアはドンドン話を進めていく。

 今度は、あの子供の着替えを手伝い始めた。
 その時のリアがまたニコニコと楽しそうで……まぁ可愛いな。彼女は何をしてても大体可愛いが。
 そう言えばリア、以前やたら着替えの手伝いをしたがってたからなぁ……。
 むっではこれはあの時、できなかったことの代わりか……? そう考えると、少しイラッとするな。


「……どうかな?」

着替えを終えたアレが、嬉しそうに両手を広げてリアに服を見せている。
まぁ、普通だな……それ以上でもそれ以下でもない。

「似合ってるよ!!」

「え、へへ」

「それじゃあ、今度はこっちを……」

そうして今度は、リアが別の服をいそいそと持ち出す。

 ん……あれ、よく考えると私、途中からのやりとりに一切入れていないな?
 こんな感じは、掃除の時にもなかったか!?
 あの子供のことは心底どうでもいいが、リアに相手にされないのは結構寂しい気が……。

 でも今、ここで間に入るのはおかしいし……仕方ない、これが終わるまでは黙っておくか……。

 その後、私はこの子供が服を着替えては、リアに褒められる場面を、延々と見させられることになった……。
 つ、ツラい……なんだこの苦行は……。




「それじゃあ、そろそろ私達は帰るね」

 何十分が経過しただろうか……。
 ひと通りの服を着せて満足したらしいリアが、そう言った。

 よ、ようやくここから出られる……!! この不毛な時間が終わる!!

 喜々して出て行こうとした私の視界の端で、あの子供がリアの手を引っ張ってぎゅっと握りしめてるのが目に入った。
 は……はぁっ!? 何を勝手にリアに触っている……!?

「……ねぇリオン、また会いに来てくれる?」

 誰が来るか……!?
 心の中で反射的にそう思った私とは逆に、優しげな笑顔を浮かべたリアは言う。

「そうだね、きっとまた来るよ」

 え、また来るつもりなのか……? わざわざ?

「っ!! 約束だよ」

「うん、約束だってロイくんは出世して今回のお礼をしてくれるんでしょ?」

「うん!!」

 ああ、確かにそんな話もあったな……。
 でも来なくてもよくないか? 少なくとも私はもう来ない方がいいと思うぞ?

「あ、あとまた来る時に……もしよかったら、その、さっきみたいな魔法を教えてくれないかなって思って……」

 はっ、魔法を教えてくれだと??
 流石にそれは図々しいだろ、まぁずっとこの子供は図々しいがな……ほら、リアきっぱり断っていいぞ。

「そうだね……じゃあ、次会うまでに物凄く勉強を頑張ってたら考えてあげようかな?」

あ……考えてあげるのか。
まぁアレだな彼女は優しいからはっきり断らなかっただけで、実質断ったということだよな……そうだよな?

「分かった、物凄く頑張る!!」

「うん、頑張ってね」

にっこりと笑顔でそう答えるリア、とても可愛い。もはや彼女だけが癒しだ……。

「それじゃあ、またねロイくん。 表の街に出る時は身なりに気をつけるんだよ~ あと今日あげた服も貧民街だと目立つから、着る時には気を付けてねー」

「分かった!! またねー」

はぁ……やれやれ、ようやく本当に終わったか……。

 ほっとしながら外へ出て扉を閉める瞬間、私はあの子供と一瞬だけ目があった。
 扉はすぐに閉じてしまったが、アレがニヤリと笑いパクパクと口を動かしたのが見えた。

『バカ』

 そう……あの子供は確かにそのように口を動かしていた。
 な、なんてめたマネを!?

「あれ、どうかしましたか?」

 私が静かに怒りを感じていたところ、リアが不思議そうに私の顔を見つめてきた。

 うむ、今のことをリアに話、戻って文句の一つでも付けてから帰るか?
 だが、正直アレのためにこれ以上時間を浪費したくもないし……何よりかっこ悪い気が……くっ。

「…………なんでもない、早く行こう」

「そうですか、分かりました」

 そう考えた結果、私はこの場を後にすることを選んだ。
 リアも一瞬不思議そうな顔をしたものの、何も聞かずに頷いてくれた。
 ああ、もう些細ささいな動作全てが可愛いな……。


 だがしかし生意気な子供よ、この借りはいつか返す……!!
 いいか、必ずだ!!
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