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第74話 実は色々気が気でない-別視点-
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ああ、どうも落ち着かない……。
古城に帰ってきた直後、準備が必要だと言う侍女三名にリアが連れて行かれた結果、私は一人になった。
準備というのは、私が誘った今夜のダンスのことだろうが……。
こうして一人になると、やはり色々なことを考えてしまう。
実は密かにずっと気に掛かっているのが、先刻の私が気絶している間の一件についてだ。
リアのおかしな行動のせいもあって、一応は話を聞かない方向に持っていってしまったが、やはりあれを全く気にしないと言うのは無理がある……。
彼女が言うには、賊が出たという話だったが……正直なところ、あんな巨大なドラゴンを賊が使うなんて目立つし効率が悪いにもほどがあるだろうと思う。
確かに我が国ではドラゴンの運用や生育が盛んなのは確かだが、ドラゴンを育てるのはそれなりに大変だ。
それは資金面でも技術面でもそうであり、だから実際のところ育てている場所も限られている。であるからして、あのような巨大な種類のドラゴンとなると、更に育てられる場所も限られているはずだが……。
いくら考えても国内でそんな場所に心当たりがない……私が知らない十年間に状況が変わった可能性もあるが、どちらかと言えば外から連れ込まれた可能性の方が高いだろうと思う。
あとじっくり見たわけではないから断定できないが、あれはかなり良い環境で育てられた個体であるような雰囲気があった。
なんというか鱗の色艶が物凄くよかったように見えた。
総じて、ただの賊のドラゴンとは考えづらいというのが、私の見立てであるが……。
……わざわざその考えをリアに伝える気はなかった。
なぜなら彼女はあえて、その一件をごまかしたからだ。
彼女にとって触れて欲しくない何かしらがあるのは間違いないだろう……。
そしてこれはあくまで私の想像に過ぎないが、あのドラゴンの持ち主はリアの知り合いなのではないかと思えてならなかった。
元々リアもこの国の外から来た存在で、同じように外からやってきた彼女の関係者があのドラゴンを連れてきた……そうであれば色々と納得ができる。
わざわざあんなドラゴンを使った理由は分からないが、きっとその人物はリアとの接触を図ったのだろう。そして私の意識がない間に、私に知られたくないような何らかのやりとりをした……。
まぁ、そんな風に色々と考えてみたところで、実際がどういう事情だか分かるものではない。……が、ただ彼女が私に隠し事をしている事実だけは間違いないだろうな。
それ自体は最初から分かり切っていたことであるが……それが今更になって、こんなにも寂しいのは何故だろうか。
……私はリアと少しは親しくなれたものだと思っていたが、それはもしかすると思い上がりだったのかも知れない。
よく考えると今までの彼女の言動にも、たまに距離を感じさせられるような部分があったような気がするし……。
何も今すぐ全てを話して欲しいわけではないが、もっと私を信用して貰えないものだろうか。
そう、もっともっと彼女との距離を縮めるには一体どうしたら……。
「殿下!!」
「お、おぅ!?」
背後から急に声を掛けられたせいで、思わずビクッとしてしまった。
「……どうした?」
しかしその驚きを出来る限り出さないように気を付けつつ振り返ると、そこには先程リアを連れて行った侍女たちの一人がいた。
「リア様の準備はほぼ終わったため、殿下もそろそろお支度をなさりましょうー!!」
ああ、なるほどそういうことか。
もうリアの準備が……。
「わかった、行こう」
ダンスは私から誘ったものだから、こちらが遅れるようなことはあってはならないだろう。
今考えていたことについては、すぐに答えが出るものでもないし一旦忘れるとしよう……。
「そうそう、リア様のことは是非ご期待下さいね!! とても素敵ですので!!」
「そうか……」
確かにリアならば何を着ても似合うだろうからな……。
さぞかし、そのドレス姿は素晴らしいことだろう。
そうして美しく着飾った彼女の姿を想像すると、暗く沈んでいた気持ちが自然と上向いてきた気がする。
さて、それでは気を取り直して行くとするか。
古城に帰ってきた直後、準備が必要だと言う侍女三名にリアが連れて行かれた結果、私は一人になった。
準備というのは、私が誘った今夜のダンスのことだろうが……。
こうして一人になると、やはり色々なことを考えてしまう。
実は密かにずっと気に掛かっているのが、先刻の私が気絶している間の一件についてだ。
リアのおかしな行動のせいもあって、一応は話を聞かない方向に持っていってしまったが、やはりあれを全く気にしないと言うのは無理がある……。
彼女が言うには、賊が出たという話だったが……正直なところ、あんな巨大なドラゴンを賊が使うなんて目立つし効率が悪いにもほどがあるだろうと思う。
確かに我が国ではドラゴンの運用や生育が盛んなのは確かだが、ドラゴンを育てるのはそれなりに大変だ。
それは資金面でも技術面でもそうであり、だから実際のところ育てている場所も限られている。であるからして、あのような巨大な種類のドラゴンとなると、更に育てられる場所も限られているはずだが……。
いくら考えても国内でそんな場所に心当たりがない……私が知らない十年間に状況が変わった可能性もあるが、どちらかと言えば外から連れ込まれた可能性の方が高いだろうと思う。
あとじっくり見たわけではないから断定できないが、あれはかなり良い環境で育てられた個体であるような雰囲気があった。
なんというか鱗の色艶が物凄くよかったように見えた。
総じて、ただの賊のドラゴンとは考えづらいというのが、私の見立てであるが……。
……わざわざその考えをリアに伝える気はなかった。
なぜなら彼女はあえて、その一件をごまかしたからだ。
彼女にとって触れて欲しくない何かしらがあるのは間違いないだろう……。
そしてこれはあくまで私の想像に過ぎないが、あのドラゴンの持ち主はリアの知り合いなのではないかと思えてならなかった。
元々リアもこの国の外から来た存在で、同じように外からやってきた彼女の関係者があのドラゴンを連れてきた……そうであれば色々と納得ができる。
わざわざあんなドラゴンを使った理由は分からないが、きっとその人物はリアとの接触を図ったのだろう。そして私の意識がない間に、私に知られたくないような何らかのやりとりをした……。
まぁ、そんな風に色々と考えてみたところで、実際がどういう事情だか分かるものではない。……が、ただ彼女が私に隠し事をしている事実だけは間違いないだろうな。
それ自体は最初から分かり切っていたことであるが……それが今更になって、こんなにも寂しいのは何故だろうか。
……私はリアと少しは親しくなれたものだと思っていたが、それはもしかすると思い上がりだったのかも知れない。
よく考えると今までの彼女の言動にも、たまに距離を感じさせられるような部分があったような気がするし……。
何も今すぐ全てを話して欲しいわけではないが、もっと私を信用して貰えないものだろうか。
そう、もっともっと彼女との距離を縮めるには一体どうしたら……。
「殿下!!」
「お、おぅ!?」
背後から急に声を掛けられたせいで、思わずビクッとしてしまった。
「……どうした?」
しかしその驚きを出来る限り出さないように気を付けつつ振り返ると、そこには先程リアを連れて行った侍女たちの一人がいた。
「リア様の準備はほぼ終わったため、殿下もそろそろお支度をなさりましょうー!!」
ああ、なるほどそういうことか。
もうリアの準備が……。
「わかった、行こう」
ダンスは私から誘ったものだから、こちらが遅れるようなことはあってはならないだろう。
今考えていたことについては、すぐに答えが出るものでもないし一旦忘れるとしよう……。
「そうそう、リア様のことは是非ご期待下さいね!! とても素敵ですので!!」
「そうか……」
確かにリアならば何を着ても似合うだろうからな……。
さぞかし、そのドレス姿は素晴らしいことだろう。
そうして美しく着飾った彼女の姿を想像すると、暗く沈んでいた気持ちが自然と上向いてきた気がする。
さて、それでは気を取り直して行くとするか。
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