魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

文字の大きさ
76 / 94

第75話 ダンス前のゴタゴタ-別視点-

しおりを挟む
 一応、私も着替えてみたが……。

 鏡に映った自分の姿に、私は思わず頭を抱えた。
 ずんぐりむっくりとした体型に、無理矢理着せられた様な正装用せいそうようの服。
 サイズなどは間違っていないはずなのに、今の私が着ていると服の華やかさの分だけ強烈な違和感がある……。

 元より期待などしていなかったが、これは流石に……マヌケ過ぎる気が……。

『ぷっ……え、なんでそんな面白いお姿をなさっているのですか?』

 ダメだ……これは流石に笑われる!!
 実際に今、物凄くハッキリ想像できた。

 せっかく用意して貰ったものだが、私の方はいつもの服に戻しておこう、それがいい……。
 そう決意して身をひるがえしたところ、そこにはリアを連れて行った侍女たちが見事に揃っていた。

「あら、殿下のご準備も終わったようですね!!」

「っ!? いや、これは……」

「ささ、リア様はもうお待ちですよ参りましょう~」

 こちらが言葉を返すより先に、侍女たちは私を部屋から引っ張り出したのだった。
 このままではマズい……!!

「ま、待ってくれ……」

「リア様のドレス姿はそれはもう素敵ですよ!!」
「楽しみにしていて下さいませ!!」

「あ……そ、そうなのか……」

 その言葉で一瞬リアのドレス姿を想像してぼんやりしてしまったが、違うそうではないぞ……!?

「私はこれから着替えようと思っていて……」

「あら、もう着替えられてるではないですか~」
「はい、それはもうバッチリ決まっておりますよ」

「…………嘘だろう」

 確かに着替えはしたが、バッチリ決まっているという言葉に関しては一切同意できない。
 なぜならさっき自分で確認して、マヌケだったことを知っているからな……!?

「いえいえ、リア様もきっと褒めてくださいます」
「ええ、間違いありませんよ」

 そのリア様に見られたくないから着替えたいのだが!?

「と、とにかく一旦私を離してくれ……っ」

「あの、すみませーん」

 そんな押し問答をしていたところ、聞き覚えのある声が私の耳に届いた。
 こ、これは間違いなくリアの……。

「きゃぁああああ、まだダメです!!」

「っっっ!?」

 反射的に振り返ろうとした私の首が、何者かによって訳も分からぬまま無理矢理別の方向に向けさせられた。
 あ゙あ゙あ゙あ!?

「あ、アルフォンス様!?」

「リア様、こちらに来てはダメですよ!?」
「戻って物陰に隠れて下さいませ!!」

「は、はい?」

「「「早く!!」」」

「あ、はい、分かりました……」

 首の痛みで涙目になる私を他所に、侍女とリアのやり取りが聞こえてくる。
 そしてコツコツと早足に遠ざかる足音が聞こえたのちに、首への拘束はようやく解かれたのだった。
 そこで改めて分かったことだが、今まで私に首をとりついていたのは、巻き尺の侍女だったらしい……な、なんて危険なんだろうか。

「ふぅ、よかった……」

「いや、何もよくないのだが!?」

 勝手にほっとしている侍女たちに、私は思わずそう言った。
 先程のアレだって私の身体が頑丈だからよかったものの、普通の人間だったら首が完全にしまっていた気がするぞ……。

「確かに今の対応は少し礼を失していたかも知れませんが」

「少しか……?」

 私がぼそっとそう言ってみたものの、侍女は見事にそれを無視して続けた。

「こんな場所でリア様の素晴らしいドレス姿を、うっかり見てしまう方が大きな損失です!!」

「…………それは、そうかもしれないな」

 もっとハッキリ注意しようと思っていたものの、その言葉を聞いて私の気は変わった。
 確かにリアのドレス姿が、素晴らしいものであろうことは間違いないだろうからな……。

「「「そうでしょう!?」」」

 すると侍女たちは、揃って食い気味にそう言ってきた。
 あ、あまりの勢いに思わず後退あとずさってしまったぞ……。

「いいですか、リア様のこのドレス姿を初めて見れる瞬間は一回だけです!!」
「ならばその貴重な一回はしかるべき場所とタイミングを選び!!」
「更に万全の状態で望むべきだとは思いませんか……!?」

「た、確かに……」

 たたみ掛けるように侍女たちから熱弁をふるわれ、私は思わず頷く。

「間違っても、その瞬間がテキトーな廊下で消費されるなどあってはなりませんよね……!?」

「…………そうだな」

 改めてそう考えてみると、彼女たちは物凄くいい仕事をしてくれたような気がしてきたな……。
 実際、リアのドレス姿はそれくらい貴重なものだと言えよう。それを私の不注意で台無しにするのはあってはならぬことだろう。

「そこまで考えてくれていたのに、すぐに理解できなくてすまなかった……」

「いえ、分かって下さればそれで構いません」

「あのぅ……」

 これはリアだな。先程隠れるように言われたため、隠れたままで声を出しているのだろう。

「水を差すようで申し訳ないのですが、そこまで期待するようなものではありませんよ……?」

「あら、またそんなことを仰って……!!」
「実は先程からリア様は照れていらっしゃるようで、我々が褒めるたびに控え目に否定してくるんですよ~」
「きゃー、お可愛らしいですよね……!?」

 えっ、あのリアが照れてるのか?
 そ、それは……凄く可愛いのだろうな……。

「照れてないですよ……」

「ほら、お可愛らしい!!」

「違います……」

 確かにいつもとはちょっと違う、控えめで遠慮がちな声色。そこに入り混じる困ったようなニュアンスが、照れから来てるのだとすれば……。
 か、可愛い……!! 声だけで姿は見えてないのに、反応がもう可愛いぞ……!?

「うぅ……暇なのでちょっと様子を見に来たつもりでしたが、そんなことばかり言うなら私はもういきますからね?」

「はい、舞踏会場の方でお待ちになっていて下さいませ。あそこが一番ドレス姿が映えますので」

「分かりました……」

 そうして足音が遠ざかっていったと思ったら、途中でなぜか止まって引き返してきた。
 うむ、どうしたのだろうか……。

「そうそう、一つ言い忘れてましたが……私よりアルフォンス様の今の装いの方が、ずっと素敵だと思いますよ?」

 えっ、ああ、先程のゴタゴタの間に私の今の姿が見られていたのか……だが、素敵というのは……。

「少なくとも私は好きですので……!!」

 す、すっっ!?

「それでは」

 リアは遠くから一方的にそれだけ言うと、今度こそ去って行った。
 す……すき…………好きか。

「ほら、だからリア様は褒めて下さると言いましたでしょう?」

「ああ……」

 例え世辞だったとしても、彼女がそう言ってくれるのであれば……。
 これはこれでもう構わないか……少なくとも私自身はそう思えた。

「ではリア様に追いつかない程度に、ゆっくり行きましょうか」

「ああ、そうだな……」

 そして安心するとともに、急にうきうきするような心持ちにもなってきたぞ。
 リアとダンスを踊ることも、ドレス姿を見れることもどちらも楽しみだ……。



―――――――――――――――――――――――――――……



【オマケ】
その後のリア(さっきのアルフォンス様、お洋服を着たぬいぐるみみたいで可愛かったなぁ……)

※テーマパークとかで売ってるアレのイメージ
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

わたくしが社交界を騒がす『毒女』です~旦那様、この結婚は離婚約だったはずですが?

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
※完結しました。 離婚約――それは離婚を約束した結婚のこと。 王太子アルバートの婚約披露パーティーで目にあまる行動をした、社交界でも噂の毒女クラリスは、辺境伯ユージーンと結婚するようにと国王から命じられる。 アルバートの側にいたかったクラリスであるが、国王からの命令である以上、この結婚は断れない。 断れないのはユージーンも同じだったようで、二人は二年後の離婚を前提として結婚を受け入れた――はずなのだが。 毒女令嬢クラリスと女に縁のない辺境伯ユージーンの、離婚前提の結婚による空回り恋愛物語。 ※以前、短編で書いたものを長編にしたものです。 ※蛇が出てきますので、苦手な方はお気をつけください。

【完結】婚約者なんて眼中にありません

らんか
恋愛
 あー、気が抜ける。  婚約者とのお茶会なのにときめかない……  私は若いお子様には興味ないんだってば。  やだ、あの騎士団長様、素敵! 確か、お子さんはもう成人してるし、奥様が亡くなってからずっと、独り身だったような?    大人の哀愁が滲み出ているわぁ。  それに強くて守ってもらえそう。  男はやっぱり包容力よね!  私も守ってもらいたいわぁ!    これは、そんな事を考えているおじ様好きの婚約者と、その婚約者を何とか振り向かせたい王子が奮闘する物語…… 短めのお話です。 サクッと、読み終えてしまえます。

悪役令嬢はヒロイン(♂)に攻略されてます

みおな
恋愛
 略奪系ゲーム『花盗人の夜』に転生してしまった。  しかも、ヒロインに婚約者を奪われ断罪される悪役令嬢役。  これは円満な婚約解消を目指すしかない!

黄金の魔族姫

風和ふわ
恋愛
「エレナ・フィンスターニス! お前との婚約を今ここで破棄する! そして今から僕の婚約者はこの現聖女のレイナ・リュミエミルだ!」 「エレナ様、婚約者と神の寵愛をもらっちゃってごめんね? 譲ってくれて本当にありがとう!」  とある出来事をきっかけに聖女の恩恵を受けれなくなったエレナは「罪人の元聖女」として婚約者の王太子にも婚約破棄され、処刑された──はずだった!  ──え!? どうして魔王が私を助けてくれるの!? しかも娘になれだって!?  これは、婚約破棄された元聖女が人外魔王(※実はとっても優しい)の娘になって、チートな治癒魔法を極めたり、地味で落ちこぼれと馬鹿にされていたはずの王太子(※実は超絶美形)と恋に落ちたりして、周りに愛されながら幸せになっていくお話です。  ──え? 婚約破棄を取り消したい? もう一度やり直そう? もう想い人がいるので無理です!   ※拙作「皆さん、紹介します。こちら私を溺愛するパパの“魔王”です!」のリメイク版。 ※表紙は自作ではありません。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私生児聖女は二束三文で売られた敵国で幸せになります!

近藤アリス
恋愛
私生児聖女のコルネリアは、敵国に二束三文で売られて嫁ぐことに。 「悪名高い国王のヴァルター様は私好みだし、みんな優しいし、ご飯美味しいし。あれ?この国最高ですわ!」 声を失った儚げ見た目のコルネリアが、勘違いされたり、幸せになったりする話。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています。

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

処理中です...