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第7話 不死身のロット死す!
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「それでは、順番に入室させてください」
――どうしてこうなった? っていうか、俺をリストラする話はどうなった?
安全面が不十分だと感じた姉ちゃんは、腕に自信のある護衛を雇うことにしたらしい。残念な姉は、残念なことに金だけはある。
旅に出る時に、国王から呆れるほど金を受け取っている。町を救う度に、町長や富豪や貴族から多額のお礼を受け取っている。そもそもイシュタリオンさんは王族だし、リーシェも特許を多数持っている。
ほかにも、金の混ざったゴーレムを倒した時、リーシェが『この辺りに金鉱山があるんじゃない?』と判断し、山を調べてみたところビンゴ。土地を所有していたドミローザ国から凄まじく感謝され、発掘される金の20%を永久的に贈与されることになったのである。こうしているうちにも、姉ちゃんの金保有率は増えていき、その額たるや把握しきれないほどである。
さらには世界各国からクラウドファンディングで集められた金がある。魔王討伐のために集められたその金の使い道は自由だ。勇者フェミルの一存で、なんにでも使えることができる。これまたリーシェの頭が良いので、行く先々の町で優良企業を買収して回っている。
というわけで、護衛の面接。
ルリがひとりめの候補者を入室させる。勇者フェミルの前ということで緊張しているのか、ぎこちない感じで椅子に腰掛ける。
「それでは、自己紹介をしてください」と、姉ちゃんが告げる。
「はっ! ジスタニア出身のベルーガともうします!」
「ふむふむ……ギルドのB級ハンターですか……」
「はい。クラスは低いですが、実力には自信があります。必ずや、カルマ様を御守りしてみせましょう」
「ちなみに、先日のレッドベリルが襲撃してきた時、あなたはなにをしていました?」
「魔物を相手に奮闘していました。五匹の魔物を同時にね。苦戦しましたが、倒しましたよ」
「その割には、怪我がないようですが?」
「え? あ……そ、それは……その……じ、実力です! ――ウッ!」
姉ちゃんが眼光を滑らせると、候補者が気絶してしまう。能力の低い人間は、姉ちゃんに威嚇されただけで気絶してしまうのである。まあ、勇者だし、それぐらいの能力はあるよなあ……。というわけで試された結果、ベルーガさんとやらは、さほどの実力を身につけていなかったらしい。
「不採用。――ルリちゃん。次の候補者を入室させてください」
ルリが、候補者の襟首を掴んで退室させる。そして、新しい候補者を入れる。
「俺は傭兵のガデム。金さえもらえればなんでもやる傭兵だ」
「じゃあ、金さえもらえばカルマくんを襲うこともするんですね? 不採用」
こうやって、うちの姉ちゃんが次々に不採用を突きつけていくのであった。
☆
面接は終了。結局、ひとりも採用されずに終わった。
その日の夜。俺は姉ちゃんと一緒に食事をすることになった。町の高級レストランで、超分厚いステーキをいただいている。なにこの柔らかい肉。ナイフの重みだけでスゥと切れるんですけど。っていうか、スプーンですくって食べれそうなんですけど。
「むぅ……困りましたね……カルマくんを守ってくれそうな人材がいないです」
「採用基準が厳しすぎるんじゃないかな?」
少なくとも姉ちゃんの中では『レッドベリルを倒せるぐらい』の基準を設けてそうである。優しい姉ちゃんなんだけど、俺のこととなると、周りが見えなくなると言うか、アホになるんだよなぁ……。
「そうなのでしょうか? けど、再び魔物の襲撃があったらと思うと……お姉ちゃんは、魔王討伐に集中できません……」
「なんのためにリストラしたんだよ……」
「そ、それは、そのッ……足手纏いだからです!」
もう、ごまかさなくてもいいのに。結局、姉ちゃんは俺から離れられないでいる。もしかしたら俺の方から、姉ちゃんをリストラした方がいいのかもしれない。
「と、とりあえず! 明日も採用をがんばります! ルリちゃんの話では、隣町からも人が集まるみたいなので、期待しましょう!」
☆
その頃。リーシェはというと、ジドー洞窟の最深部に到達していた。
台座に突き刺さった魔剣デッドハートがあった。だが、それを守るようにして巨大な獅子が待ち構えていた。四肢には翼が生えていて、まるでキメラかマンティコア。口からは火炎を吐き出し、翼を仰げば真空派が巻き起こる。ランク付けをするならS級か、それ以上。だが――。
「グァアァアァッ! グゥゥ……に、人間よ、よくぞ試練を乗り越えたな……我を倒すとは……ま、待ち焦がれていたぞ……貴様こそ、魔剣デッドハートの持ち主に相応し――」
「うっさいうっさうっさい! あたしが使うんじゃないわよ! フェミルが使うの! 私はタダのお使いなんだからぁぁあぁッ! って、誰がガキの使いだぁあぁぁッ!」
「グギャアアァアァァアァ!」
雷撃魔法を撃ち放つリーシェ。すでに瀕死だった獅子が黒焦げになる。
リーシェはキレていた。イシュタリオンと別れた彼女は、律儀にも使命を果たすため、ひとり寂しく潜った。時間にして10時間。不眠不休。仲間もいないので仮眠すらとれない。ゆえに、半泣きになりながら、一気に最深部へと到達したのである。
「おい、獣」
横たわる焦げた幻獣に、上から目線で語りかけるリーシェ。
「は、はい……?」
「出口、あるわよね?」
「で、出口……?」
「普通、あるでしょ……? ボスを倒したら、そこらへんの壁が崩れて、すぐ外に出られるとか……あるわよね? まさか、同じ道を引き返せとか言わないわよね? ねえ? ねえねえねえねえねえ?」
ぶち殺すぞと言わんばかりの瞳で、幻獣を問い詰めるリーシェ。
「い、いえ……か、帰りは同じ道をご利用くださ――」
「ざっけんなぁああぁぁッ! こんなアホなところに魔剣を隠してんじゃないわよ、うわぁああぁぁん!」
幻獣に、トドメの雷を食らわせるリーシェ。息を切らしながら魔剣を台座から引き抜いた。
「冗談じゃないわ! 冗談じゃないわッ! マジふざけんな! 神だか女神だか知らないけど、なんでこんな合理的じゃない洞窟を創ったのよ!」
キッと洞窟の壁を睨む。そして、頭の中で近隣の地図を思い浮かべる。おそらくだが、この辺りの壁を掘り進めれば、同じ道を引き返すよりも、最短距離で外に出られるような気がする。
リーシェは賢者。この世でもっとも賢き者。バカみたいな発想だが、バカと天才は紙一重だ。いける。きっと出られる。たぶん。
「だぁありゃあぁあぁッ!」
その壁に魔剣を突き刺す。そして、えぐるように振るう。
「こうなったらッ! この壁を掘り進んでッ! 外に出てやるッ!」
合理的! 実に合理的! 落盤など知ったことか! 神の創った洞窟だろうが知ったことか! どうせ二度と潜ることないんだから、山ごと消えても構うもんか!」
掘る。ひたすら掘る。魔力が尽きてもいい。魔剣デッドハートが折れてもいい。世界の平和など知ったことか! いや、大事か? 大事だ!
「絶対に、世界を平和にして、カルマのところに帰るんだからぁああぁぁぁッ!」
掘り進めること数時間。火事場の馬鹿力が、岩をも通す一念となって――外の光を見せてくれる。ガコンッ! と、岩壁が崩れ、外界の景色が広がった。太陽の光が、彼女を包み込んだ。
「……綺麗……」
なんてことのない景色。ただの森だ。けど、ずっと暗闇を彷徨っていた彼女にとって、その光景は眩しすぎた。
「絶対に……世界を救うんだから……」
達成感と開放感。そして安心感に包まれた彼女は、決意を胸に――そして、拳を小さく握りしめる。――けど、その時だった。聞いたことのない声が耳朶を打つ。
「やあ。どうやら魔剣デッドハートを手に入れたようだね」
若い男の声。森の中から聞こえてきた。ゆっくりと歩み寄ってくる、涼しい顔した若い男。真っ白なシャツに真っ白なズボン。そして真っ白なくせ毛。人間に見えるが、漂う魔力は禍々しい。
「それ、ぼくにくれないおぶふぁッ!」
間合いに入った瞬間に、拳を叩き込むリーシェ。相手が何者かはわからないけど、明らかな敵意と悪意――邪悪な魔力を感じる。
余裕があれば、不意打ちなどしなかっただろう。だが、疲労困憊のリーシェは自己保身のため、反射的に顔面へと一発食らわせてしまった。
「だ、誰ッ?」
若い男は吹っ飛び、大木へと派手に激突する。
「は、はは……相手が誰なのかもわからないのに、ずいぶんとご挨拶だね」
岩肌から、身体を剥がすように立ち上がる彼。
「――ぼくの名前はロット。魔王軍四天王のひとり不死身のロッぐああぁあぁあぁッ!」
「四天王ぉぉぁあぁあぁぁッ!?」
名乗り終える前に、魔剣デッドハートを胸へと突き刺すリーシェ。もう、これ以上戦いたくない。疲れた。お腹すいた。お布団で眠りたい。カルマのところに帰りたい!
「ぐ……くくッ……上手く不意を突いたつもりだろうけどね……生憎と、幾千幾万のアンデッドを食し、その力と魔力を宿したぼくは不死身なのさ。魔剣を手に入れてくれてありがとね。さあ、それをこっちに……って……え? ……傷が……修復しない? ま、まさかデッドハートには再生を阻害する力が――」
「知るかぁあぁぁッ!」
縦横無尽に刃を走らせる。相手の都合など知ったことか。魔剣の能力なども知ったことか。とにかく、このままだと過労死する。過労死する前に殺す!
いくつもの剣閃が四天王ロットを両断。首が地面に転がった。彼は驚愕の表情で、口を動かす。
「な、なんという強さッ! こ、これがッ魔剣デッドハートの力ッ? これが勇者フェミルの実力――」
「誰がフェミルじゃぁあぁ! あんな奴、知るかぁあぁぁぁッ」
生首となったロットをさらに切り刻んでいくリーシェ。
「ぐぎゃあぁああぁぁッ!」
「はあ……はあ……絶対に……絶対に……世界を平和にして……カルマのところに帰るんだから……」
カルマには『ざまぁ』と言われてもいい。けど、フェミルとイシュタリオンにだけは絶対に言わせないんだから。
――どうしてこうなった? っていうか、俺をリストラする話はどうなった?
安全面が不十分だと感じた姉ちゃんは、腕に自信のある護衛を雇うことにしたらしい。残念な姉は、残念なことに金だけはある。
旅に出る時に、国王から呆れるほど金を受け取っている。町を救う度に、町長や富豪や貴族から多額のお礼を受け取っている。そもそもイシュタリオンさんは王族だし、リーシェも特許を多数持っている。
ほかにも、金の混ざったゴーレムを倒した時、リーシェが『この辺りに金鉱山があるんじゃない?』と判断し、山を調べてみたところビンゴ。土地を所有していたドミローザ国から凄まじく感謝され、発掘される金の20%を永久的に贈与されることになったのである。こうしているうちにも、姉ちゃんの金保有率は増えていき、その額たるや把握しきれないほどである。
さらには世界各国からクラウドファンディングで集められた金がある。魔王討伐のために集められたその金の使い道は自由だ。勇者フェミルの一存で、なんにでも使えることができる。これまたリーシェの頭が良いので、行く先々の町で優良企業を買収して回っている。
というわけで、護衛の面接。
ルリがひとりめの候補者を入室させる。勇者フェミルの前ということで緊張しているのか、ぎこちない感じで椅子に腰掛ける。
「それでは、自己紹介をしてください」と、姉ちゃんが告げる。
「はっ! ジスタニア出身のベルーガともうします!」
「ふむふむ……ギルドのB級ハンターですか……」
「はい。クラスは低いですが、実力には自信があります。必ずや、カルマ様を御守りしてみせましょう」
「ちなみに、先日のレッドベリルが襲撃してきた時、あなたはなにをしていました?」
「魔物を相手に奮闘していました。五匹の魔物を同時にね。苦戦しましたが、倒しましたよ」
「その割には、怪我がないようですが?」
「え? あ……そ、それは……その……じ、実力です! ――ウッ!」
姉ちゃんが眼光を滑らせると、候補者が気絶してしまう。能力の低い人間は、姉ちゃんに威嚇されただけで気絶してしまうのである。まあ、勇者だし、それぐらいの能力はあるよなあ……。というわけで試された結果、ベルーガさんとやらは、さほどの実力を身につけていなかったらしい。
「不採用。――ルリちゃん。次の候補者を入室させてください」
ルリが、候補者の襟首を掴んで退室させる。そして、新しい候補者を入れる。
「俺は傭兵のガデム。金さえもらえればなんでもやる傭兵だ」
「じゃあ、金さえもらえばカルマくんを襲うこともするんですね? 不採用」
こうやって、うちの姉ちゃんが次々に不採用を突きつけていくのであった。
☆
面接は終了。結局、ひとりも採用されずに終わった。
その日の夜。俺は姉ちゃんと一緒に食事をすることになった。町の高級レストランで、超分厚いステーキをいただいている。なにこの柔らかい肉。ナイフの重みだけでスゥと切れるんですけど。っていうか、スプーンですくって食べれそうなんですけど。
「むぅ……困りましたね……カルマくんを守ってくれそうな人材がいないです」
「採用基準が厳しすぎるんじゃないかな?」
少なくとも姉ちゃんの中では『レッドベリルを倒せるぐらい』の基準を設けてそうである。優しい姉ちゃんなんだけど、俺のこととなると、周りが見えなくなると言うか、アホになるんだよなぁ……。
「そうなのでしょうか? けど、再び魔物の襲撃があったらと思うと……お姉ちゃんは、魔王討伐に集中できません……」
「なんのためにリストラしたんだよ……」
「そ、それは、そのッ……足手纏いだからです!」
もう、ごまかさなくてもいいのに。結局、姉ちゃんは俺から離れられないでいる。もしかしたら俺の方から、姉ちゃんをリストラした方がいいのかもしれない。
「と、とりあえず! 明日も採用をがんばります! ルリちゃんの話では、隣町からも人が集まるみたいなので、期待しましょう!」
☆
その頃。リーシェはというと、ジドー洞窟の最深部に到達していた。
台座に突き刺さった魔剣デッドハートがあった。だが、それを守るようにして巨大な獅子が待ち構えていた。四肢には翼が生えていて、まるでキメラかマンティコア。口からは火炎を吐き出し、翼を仰げば真空派が巻き起こる。ランク付けをするならS級か、それ以上。だが――。
「グァアァアァッ! グゥゥ……に、人間よ、よくぞ試練を乗り越えたな……我を倒すとは……ま、待ち焦がれていたぞ……貴様こそ、魔剣デッドハートの持ち主に相応し――」
「うっさいうっさうっさい! あたしが使うんじゃないわよ! フェミルが使うの! 私はタダのお使いなんだからぁぁあぁッ! って、誰がガキの使いだぁあぁぁッ!」
「グギャアアァアァァアァ!」
雷撃魔法を撃ち放つリーシェ。すでに瀕死だった獅子が黒焦げになる。
リーシェはキレていた。イシュタリオンと別れた彼女は、律儀にも使命を果たすため、ひとり寂しく潜った。時間にして10時間。不眠不休。仲間もいないので仮眠すらとれない。ゆえに、半泣きになりながら、一気に最深部へと到達したのである。
「おい、獣」
横たわる焦げた幻獣に、上から目線で語りかけるリーシェ。
「は、はい……?」
「出口、あるわよね?」
「で、出口……?」
「普通、あるでしょ……? ボスを倒したら、そこらへんの壁が崩れて、すぐ外に出られるとか……あるわよね? まさか、同じ道を引き返せとか言わないわよね? ねえ? ねえねえねえねえねえ?」
ぶち殺すぞと言わんばかりの瞳で、幻獣を問い詰めるリーシェ。
「い、いえ……か、帰りは同じ道をご利用くださ――」
「ざっけんなぁああぁぁッ! こんなアホなところに魔剣を隠してんじゃないわよ、うわぁああぁぁん!」
幻獣に、トドメの雷を食らわせるリーシェ。息を切らしながら魔剣を台座から引き抜いた。
「冗談じゃないわ! 冗談じゃないわッ! マジふざけんな! 神だか女神だか知らないけど、なんでこんな合理的じゃない洞窟を創ったのよ!」
キッと洞窟の壁を睨む。そして、頭の中で近隣の地図を思い浮かべる。おそらくだが、この辺りの壁を掘り進めれば、同じ道を引き返すよりも、最短距離で外に出られるような気がする。
リーシェは賢者。この世でもっとも賢き者。バカみたいな発想だが、バカと天才は紙一重だ。いける。きっと出られる。たぶん。
「だぁありゃあぁあぁッ!」
その壁に魔剣を突き刺す。そして、えぐるように振るう。
「こうなったらッ! この壁を掘り進んでッ! 外に出てやるッ!」
合理的! 実に合理的! 落盤など知ったことか! 神の創った洞窟だろうが知ったことか! どうせ二度と潜ることないんだから、山ごと消えても構うもんか!」
掘る。ひたすら掘る。魔力が尽きてもいい。魔剣デッドハートが折れてもいい。世界の平和など知ったことか! いや、大事か? 大事だ!
「絶対に、世界を平和にして、カルマのところに帰るんだからぁああぁぁぁッ!」
掘り進めること数時間。火事場の馬鹿力が、岩をも通す一念となって――外の光を見せてくれる。ガコンッ! と、岩壁が崩れ、外界の景色が広がった。太陽の光が、彼女を包み込んだ。
「……綺麗……」
なんてことのない景色。ただの森だ。けど、ずっと暗闇を彷徨っていた彼女にとって、その光景は眩しすぎた。
「絶対に……世界を救うんだから……」
達成感と開放感。そして安心感に包まれた彼女は、決意を胸に――そして、拳を小さく握りしめる。――けど、その時だった。聞いたことのない声が耳朶を打つ。
「やあ。どうやら魔剣デッドハートを手に入れたようだね」
若い男の声。森の中から聞こえてきた。ゆっくりと歩み寄ってくる、涼しい顔した若い男。真っ白なシャツに真っ白なズボン。そして真っ白なくせ毛。人間に見えるが、漂う魔力は禍々しい。
「それ、ぼくにくれないおぶふぁッ!」
間合いに入った瞬間に、拳を叩き込むリーシェ。相手が何者かはわからないけど、明らかな敵意と悪意――邪悪な魔力を感じる。
余裕があれば、不意打ちなどしなかっただろう。だが、疲労困憊のリーシェは自己保身のため、反射的に顔面へと一発食らわせてしまった。
「だ、誰ッ?」
若い男は吹っ飛び、大木へと派手に激突する。
「は、はは……相手が誰なのかもわからないのに、ずいぶんとご挨拶だね」
岩肌から、身体を剥がすように立ち上がる彼。
「――ぼくの名前はロット。魔王軍四天王のひとり不死身のロッぐああぁあぁあぁッ!」
「四天王ぉぉぁあぁあぁぁッ!?」
名乗り終える前に、魔剣デッドハートを胸へと突き刺すリーシェ。もう、これ以上戦いたくない。疲れた。お腹すいた。お布団で眠りたい。カルマのところに帰りたい!
「ぐ……くくッ……上手く不意を突いたつもりだろうけどね……生憎と、幾千幾万のアンデッドを食し、その力と魔力を宿したぼくは不死身なのさ。魔剣を手に入れてくれてありがとね。さあ、それをこっちに……って……え? ……傷が……修復しない? ま、まさかデッドハートには再生を阻害する力が――」
「知るかぁあぁぁッ!」
縦横無尽に刃を走らせる。相手の都合など知ったことか。魔剣の能力なども知ったことか。とにかく、このままだと過労死する。過労死する前に殺す!
いくつもの剣閃が四天王ロットを両断。首が地面に転がった。彼は驚愕の表情で、口を動かす。
「な、なんという強さッ! こ、これがッ魔剣デッドハートの力ッ? これが勇者フェミルの実力――」
「誰がフェミルじゃぁあぁ! あんな奴、知るかぁあぁぁぁッ」
生首となったロットをさらに切り刻んでいくリーシェ。
「ぐぎゃあぁああぁぁッ!」
「はあ……はあ……絶対に……絶対に……世界を平和にして……カルマのところに帰るんだから……」
カルマには『ざまぁ』と言われてもいい。けど、フェミルとイシュタリオンにだけは絶対に言わせないんだから。
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