8 / 35
第8話 殺さないでお姉ちゃん!
しおりを挟む
翌日。クレアドールの町。
昼になると、近隣の町や村から腕自慢が集まってきた。理由は『英雄カルマ親衛隊の募集』である。なんだか、レッドベリルとの戦いで、俺もそこそこ活躍したところを見せてしまったせいか、村の人たちから英雄扱いを受けるようになってしまった。
「けど、ちょっと大げさじゃないかな?」
「そんなことはありません! カルマ様は、紛れもなく英雄です!」
ルリが力説すると、他の召使いもうんうんと頷いている。
「あの時……カルマ様が命を懸けて戦ってくださらなかったら、フェミル様がくる前に全滅していました。あの時の雄々しき姿ッ! このルリの目に焼き付いています!」
そう言って、彼女は俺の手を、両手で包んで見つめてくる。
「そ、そうか?」
「はい!」
ずいぶんと評価されてしまったようだ。
「あの……いつまで手を握っているつもりですか?」
じとーっと半眼を滑らせるフェミル姉ちゃん様。ルリはハッとして手を離した。
「ももも、もうしわけございません!」
「いいですけど……。そろそろ始めますか?」
「はっ――」
首肯して、ルリが募集試験の始まりを合図をする。
「それではみなさま、よくお集まりくださいました! これより、カルマ様の親衛隊を決める選考会を開始いたします!」
宮殿の庭――庭といってもかなり広い空間。乱雑に散らばっていた猛者たちが集まってくる。俺は、国王が座ってそうな簡易玉座に座らされていた。
今日の選考会は、合格基準を下げる予定だ。さすがに、単身で四天王に匹敵する逸材などいない。とっとと採用して、姉ちゃんに安心して旅に出てもらおう。
「さて、それでは一次試験の内容ですが――これから皆様には勇者フェミルと戦ってもらうことになります――」
会場が騒然となる。そりゃそうだ。勇者フェミルとは、世界最強の人類。腕自慢の連中も、さすがにビビるだろう。もっとも、血湧き肉躍る連中も何人かいるようだが――。
まあ、姉ちゃんが適当に戦って、それなりに強いと判断したら合格させることになっている。そして、二次試験で人格を見て、合否を決める感じだ。
「ご安心ください。勇者フェミルの武器は木剣です。そして魔法は使いませんのでご安心を。さらに、皆様には一斉にかかっても構いません」
「一斉に……?」「いいのか?」「こっちは何百人いると思ってるんだ?」
少なくとも三百人はいるだろう。姉ちゃんなら大丈夫だと思うけど。
「そっちは、魔法でも刃物でもなにを使っても構いませんよ。殺す気でやってください」
言いながら、木剣をひゅんと振るう姉ちゃん。自信満々だ。
「それでは、試験開始でございますッ!」
ルリが腕を振り下ろすかのように合図。召使いが巨大な鐘を鳴らし、試験が始まった。
――だが、強者たちは動こうとしない。
「どうしたんですか? かかってこないのですか?」
「う、うう……」
俺は察する。弱い奴は及び腰だ。混戦になった隙を狙っているのだろう。いちばん最初に向かっていきたくないのだ。
そして実力のある奴は、フェミルの強さを感じてしまっている。要するに、木剣を持って突っ立っているだけなのに、恐ろしいほど隙がないのを理解しているのだ。
「むぅ。このままじゃ、試験になりませんねえ……臆病者はいりませんし……全員落選ってことにしますか」
言われて、焦り出す参加者たち。すると、中からひとり歩み出てきた。ゴリラみたいな男だ。超巨大な鎖付き鉄球を持っている。
「はッ! おまえらが殺らねえのなら、俺が殺ってやるぜ! おらぁッ!」
鎖を振り回し、遠心力で鉄球を投げつける。
だが、フェミルはそれを拳で砕いてみせる。バゴギャンと一撃粉砕だ。余談だが、鉄を破壊するというのは、相当な行為である。普通なら鉄は凹むだけ。それがバラバラになるということは、かなりの威力で殴ったことになる。
「うん。まあまあですね。もうちょっとがんばったら、合格ラインですよ」
ほんのわずかな褒め言葉。けど、鉄球ゴリラの耳には届いていないようだった。得物が素手で砕かれたことに困惑しているようだ。
「な……そ、そんなッ! た、高かったのに――」
「不憫だな……。ルリ、あとで弁償しておいてあげて」
「かしこまりました。……お優しいのですね、カルマ様は」
いい感じに向かって行ってくれたのに、姉ちゃんが派手にやるから、みんな戦意喪失してしまったじゃないか。
「お、おい、みんなで一斉に仕掛けるぞ。それなら、少しぐらい隙ができるはずだ」「あ、ああ、そうだな」「一対一でなんとかなる相手じゃねえし……」「やるぞ! 俺たちで勇者フェミルを倒すんだ!」
けど、連中も腹をくくったようだ。そうこなくっちゃな。早く姉ちゃんに認められてくれ。そして、魔王討伐の旅に戻らせてやってくれ。
「うおらああぁあぁぁッ!」
怒号。まるで戦争が始まったかのようだ。数多の猛者が勇者に襲いかかる。連中も本気だ。誰もが武器――殺傷能力満載の刃物を振り回している。中には弓矢を使っている奴もいる。魔法の詠唱を始めている奴もいる。
「はぁあぁぁッ! とりゃあ! ええい! そいやぁ!」
しかし、余裕で応対する姉ちゃん。雨のように降りしきる魔法や矢を受けても、平然としている。木剣は魔法で強化してあるのか、鋼鉄の剣を次々にへし折っていく。これ、試験になるのか?
「ふむふむ……5番と10番……82番辺りがいい動きしてますね」
さすがはルリ。姉ちゃんにちゃんとした選考などできないと踏んだのか、期待できそうな連中に目星を付けてくれている。うーん、できるメイドだ。
――10分後――。
「ふぅ、こんなものですか……。えっと……良さげな人はいませんでしたね」
いたよ。ちゃんと見てろよ。ルリがチェックしてくれてたよ。途中から、俺もチェックしてたよ。っていうか、死屍累々だ。いや、生きてるけどさ。
とりあえず戦闘試験は終わって、立っているのは姉ちゃんひとりだけになった。300人ぐらいの参加者は、庭にうずくまって、瀕死の昆虫みたいになっている。
「……大丈夫かなぁ」
「ご安心ください、カルマ様。あの方たちの治療費は、こちらが負担しますから」
参加費も出るそうだ。そうだよな。遠路はるばるやってきて、勇者に打ちのめされただけで帰らされたら、さすがに泣きたくなるもんな。
「フェミル様。私の方で審査していましたが、なかなかの逸材が揃っておりました。鍛えれば、十分な戦力になるかと」
ルリが、姉ちゃんに提言する。
「そうですか……むぅ……ちょっと心配ですが……っと――まだ、根性のある方がいるみたいですね」
終わったと思ったら、ひとりの男が起き上がった。最初に向かっていった鉄球ゴリラだ。
「ウオオオアアァアァァァッ!」
最後の力を振り絞って、無策にも正面から向かっていく。
「精神だけは認めます――ッ?」
振り下ろすかのようなパンチ。姉ちゃんは、それを腕で防ぐ。すると、防御の上から吹っ飛ばされる。ずざざと靴底を滑らせながら着地する。
「ななっ?」と、さすがの姉ちゃんも驚いていた。意外だ。こんなパワーを残していたとは。
「グルァアアァァ」
駄々っ子のように拳を叩きつけまくる鉄球ゴリラ。姉ちゃんは、それらを受け流し、拳を叩き込む。派手に吹っ飛ぶゴリラ。
「こ、これは……どういうことです?」
鉄球ゴリラを皮切りに、倒れていた連中が、次々と息を吹き返す。
「なんか、様子がおかしくないか……?」
俺が疑問を飛ばすと、ルリも「そう……ですね」と、表情に真剣味を帯びさせる。
――まるで獣だ。
なにかがおかしい。立ち上がった候補者の連中は、瞳に生気がなく『ウーウー』と唸っている。派手にやられた鉄球ゴリラも、再び立ち上がっている。
――そして、一斉に襲いかかってきた。
まるで、餌に群がる虎。しかも、凄まじいパワーを秘めている。先刻とは打って変わって姉ちゃんが圧倒されている。
「くっ! まさか、敵ッ? ならば、容赦しません!」
「違う! 姉ちゃん! そいつらは人間だッ! 殺しちゃダメだ!」
参加者の中には、身元のハッキリしている者も多くいる。間違いなく人間だ。ともすれば、操られていると思った方がいい。瞳を見れば、正気ではないことがわかる。何かが起こっている。
「しかし――ッ」
姉ちゃんは、めちゃくちゃ戦いにくそうだ。相手が人間ということで手加減しなくちゃいけない。しかも、相手は叩きのめしても、起き上がってくる。鉄球ゴリラは、もう何回叩きのめされているかわからない。
俺は、加勢しようと予備の木剣を掴んだ。
「お下がりください、カルマ様!」
心配して止めるルリ。
「そんなことを言ってる場合かよ!」
俺は、制止を振り切って参戦する。ルリは「ピュイ!」と、口笛を吹いて、武装した召使いたちを呼び寄せる。宮殿の庭で、人間同士が戦いを始めてしまった。
――これはマズい。
参加者たちの消耗が激しい。瀕死なのに強制的に戦わされているようだ。
俺は周囲を見回す。どこかに術者がいるはずだ。景色に溶け込んでいるのか、あるいはめちゃくちゃちいさいとか、隠れているとか。あるいは、参加者の中に紛れ込んでいるのかもしれない。
「姉ちゃん! 術者を探すんだ!」
「わかってますよ!」
このままだと死人が出る。人間が死ぬ。もし、勇者フェミルが人間を殺したなんてことがあったら、町の人からの信頼は地に落ちる。町にはいられなくなる。俺がぬくぬくと暮らすための天下り先がなくなってしまう。姉ちゃんが安心して旅を続けられなくなる。世界が……滅びる――。
昼になると、近隣の町や村から腕自慢が集まってきた。理由は『英雄カルマ親衛隊の募集』である。なんだか、レッドベリルとの戦いで、俺もそこそこ活躍したところを見せてしまったせいか、村の人たちから英雄扱いを受けるようになってしまった。
「けど、ちょっと大げさじゃないかな?」
「そんなことはありません! カルマ様は、紛れもなく英雄です!」
ルリが力説すると、他の召使いもうんうんと頷いている。
「あの時……カルマ様が命を懸けて戦ってくださらなかったら、フェミル様がくる前に全滅していました。あの時の雄々しき姿ッ! このルリの目に焼き付いています!」
そう言って、彼女は俺の手を、両手で包んで見つめてくる。
「そ、そうか?」
「はい!」
ずいぶんと評価されてしまったようだ。
「あの……いつまで手を握っているつもりですか?」
じとーっと半眼を滑らせるフェミル姉ちゃん様。ルリはハッとして手を離した。
「ももも、もうしわけございません!」
「いいですけど……。そろそろ始めますか?」
「はっ――」
首肯して、ルリが募集試験の始まりを合図をする。
「それではみなさま、よくお集まりくださいました! これより、カルマ様の親衛隊を決める選考会を開始いたします!」
宮殿の庭――庭といってもかなり広い空間。乱雑に散らばっていた猛者たちが集まってくる。俺は、国王が座ってそうな簡易玉座に座らされていた。
今日の選考会は、合格基準を下げる予定だ。さすがに、単身で四天王に匹敵する逸材などいない。とっとと採用して、姉ちゃんに安心して旅に出てもらおう。
「さて、それでは一次試験の内容ですが――これから皆様には勇者フェミルと戦ってもらうことになります――」
会場が騒然となる。そりゃそうだ。勇者フェミルとは、世界最強の人類。腕自慢の連中も、さすがにビビるだろう。もっとも、血湧き肉躍る連中も何人かいるようだが――。
まあ、姉ちゃんが適当に戦って、それなりに強いと判断したら合格させることになっている。そして、二次試験で人格を見て、合否を決める感じだ。
「ご安心ください。勇者フェミルの武器は木剣です。そして魔法は使いませんのでご安心を。さらに、皆様には一斉にかかっても構いません」
「一斉に……?」「いいのか?」「こっちは何百人いると思ってるんだ?」
少なくとも三百人はいるだろう。姉ちゃんなら大丈夫だと思うけど。
「そっちは、魔法でも刃物でもなにを使っても構いませんよ。殺す気でやってください」
言いながら、木剣をひゅんと振るう姉ちゃん。自信満々だ。
「それでは、試験開始でございますッ!」
ルリが腕を振り下ろすかのように合図。召使いが巨大な鐘を鳴らし、試験が始まった。
――だが、強者たちは動こうとしない。
「どうしたんですか? かかってこないのですか?」
「う、うう……」
俺は察する。弱い奴は及び腰だ。混戦になった隙を狙っているのだろう。いちばん最初に向かっていきたくないのだ。
そして実力のある奴は、フェミルの強さを感じてしまっている。要するに、木剣を持って突っ立っているだけなのに、恐ろしいほど隙がないのを理解しているのだ。
「むぅ。このままじゃ、試験になりませんねえ……臆病者はいりませんし……全員落選ってことにしますか」
言われて、焦り出す参加者たち。すると、中からひとり歩み出てきた。ゴリラみたいな男だ。超巨大な鎖付き鉄球を持っている。
「はッ! おまえらが殺らねえのなら、俺が殺ってやるぜ! おらぁッ!」
鎖を振り回し、遠心力で鉄球を投げつける。
だが、フェミルはそれを拳で砕いてみせる。バゴギャンと一撃粉砕だ。余談だが、鉄を破壊するというのは、相当な行為である。普通なら鉄は凹むだけ。それがバラバラになるということは、かなりの威力で殴ったことになる。
「うん。まあまあですね。もうちょっとがんばったら、合格ラインですよ」
ほんのわずかな褒め言葉。けど、鉄球ゴリラの耳には届いていないようだった。得物が素手で砕かれたことに困惑しているようだ。
「な……そ、そんなッ! た、高かったのに――」
「不憫だな……。ルリ、あとで弁償しておいてあげて」
「かしこまりました。……お優しいのですね、カルマ様は」
いい感じに向かって行ってくれたのに、姉ちゃんが派手にやるから、みんな戦意喪失してしまったじゃないか。
「お、おい、みんなで一斉に仕掛けるぞ。それなら、少しぐらい隙ができるはずだ」「あ、ああ、そうだな」「一対一でなんとかなる相手じゃねえし……」「やるぞ! 俺たちで勇者フェミルを倒すんだ!」
けど、連中も腹をくくったようだ。そうこなくっちゃな。早く姉ちゃんに認められてくれ。そして、魔王討伐の旅に戻らせてやってくれ。
「うおらああぁあぁぁッ!」
怒号。まるで戦争が始まったかのようだ。数多の猛者が勇者に襲いかかる。連中も本気だ。誰もが武器――殺傷能力満載の刃物を振り回している。中には弓矢を使っている奴もいる。魔法の詠唱を始めている奴もいる。
「はぁあぁぁッ! とりゃあ! ええい! そいやぁ!」
しかし、余裕で応対する姉ちゃん。雨のように降りしきる魔法や矢を受けても、平然としている。木剣は魔法で強化してあるのか、鋼鉄の剣を次々にへし折っていく。これ、試験になるのか?
「ふむふむ……5番と10番……82番辺りがいい動きしてますね」
さすがはルリ。姉ちゃんにちゃんとした選考などできないと踏んだのか、期待できそうな連中に目星を付けてくれている。うーん、できるメイドだ。
――10分後――。
「ふぅ、こんなものですか……。えっと……良さげな人はいませんでしたね」
いたよ。ちゃんと見てろよ。ルリがチェックしてくれてたよ。途中から、俺もチェックしてたよ。っていうか、死屍累々だ。いや、生きてるけどさ。
とりあえず戦闘試験は終わって、立っているのは姉ちゃんひとりだけになった。300人ぐらいの参加者は、庭にうずくまって、瀕死の昆虫みたいになっている。
「……大丈夫かなぁ」
「ご安心ください、カルマ様。あの方たちの治療費は、こちらが負担しますから」
参加費も出るそうだ。そうだよな。遠路はるばるやってきて、勇者に打ちのめされただけで帰らされたら、さすがに泣きたくなるもんな。
「フェミル様。私の方で審査していましたが、なかなかの逸材が揃っておりました。鍛えれば、十分な戦力になるかと」
ルリが、姉ちゃんに提言する。
「そうですか……むぅ……ちょっと心配ですが……っと――まだ、根性のある方がいるみたいですね」
終わったと思ったら、ひとりの男が起き上がった。最初に向かっていった鉄球ゴリラだ。
「ウオオオアアァアァァァッ!」
最後の力を振り絞って、無策にも正面から向かっていく。
「精神だけは認めます――ッ?」
振り下ろすかのようなパンチ。姉ちゃんは、それを腕で防ぐ。すると、防御の上から吹っ飛ばされる。ずざざと靴底を滑らせながら着地する。
「ななっ?」と、さすがの姉ちゃんも驚いていた。意外だ。こんなパワーを残していたとは。
「グルァアアァァ」
駄々っ子のように拳を叩きつけまくる鉄球ゴリラ。姉ちゃんは、それらを受け流し、拳を叩き込む。派手に吹っ飛ぶゴリラ。
「こ、これは……どういうことです?」
鉄球ゴリラを皮切りに、倒れていた連中が、次々と息を吹き返す。
「なんか、様子がおかしくないか……?」
俺が疑問を飛ばすと、ルリも「そう……ですね」と、表情に真剣味を帯びさせる。
――まるで獣だ。
なにかがおかしい。立ち上がった候補者の連中は、瞳に生気がなく『ウーウー』と唸っている。派手にやられた鉄球ゴリラも、再び立ち上がっている。
――そして、一斉に襲いかかってきた。
まるで、餌に群がる虎。しかも、凄まじいパワーを秘めている。先刻とは打って変わって姉ちゃんが圧倒されている。
「くっ! まさか、敵ッ? ならば、容赦しません!」
「違う! 姉ちゃん! そいつらは人間だッ! 殺しちゃダメだ!」
参加者の中には、身元のハッキリしている者も多くいる。間違いなく人間だ。ともすれば、操られていると思った方がいい。瞳を見れば、正気ではないことがわかる。何かが起こっている。
「しかし――ッ」
姉ちゃんは、めちゃくちゃ戦いにくそうだ。相手が人間ということで手加減しなくちゃいけない。しかも、相手は叩きのめしても、起き上がってくる。鉄球ゴリラは、もう何回叩きのめされているかわからない。
俺は、加勢しようと予備の木剣を掴んだ。
「お下がりください、カルマ様!」
心配して止めるルリ。
「そんなことを言ってる場合かよ!」
俺は、制止を振り切って参戦する。ルリは「ピュイ!」と、口笛を吹いて、武装した召使いたちを呼び寄せる。宮殿の庭で、人間同士が戦いを始めてしまった。
――これはマズい。
参加者たちの消耗が激しい。瀕死なのに強制的に戦わされているようだ。
俺は周囲を見回す。どこかに術者がいるはずだ。景色に溶け込んでいるのか、あるいはめちゃくちゃちいさいとか、隠れているとか。あるいは、参加者の中に紛れ込んでいるのかもしれない。
「姉ちゃん! 術者を探すんだ!」
「わかってますよ!」
このままだと死人が出る。人間が死ぬ。もし、勇者フェミルが人間を殺したなんてことがあったら、町の人からの信頼は地に落ちる。町にはいられなくなる。俺がぬくぬくと暮らすための天下り先がなくなってしまう。姉ちゃんが安心して旅を続けられなくなる。世界が……滅びる――。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる