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第15話 世界最高峰のザル警備
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その日の夜。俺は、宮殿のベッドで横になっていた。なかなか眠れなかった。
――ようやく、姉ちゃんたちがいなくなる。これでいい。嬉しいはずだ――と、思う反面、不安と心配も湧いてくる。
町を、たった数日で世界最高の貿易都市へと成長させ、さらには各国も震えるほどの戦力を集めてしまった。その手腕は偏に俺への愛の賜だろう。
わかるだろうか、世界情勢を歪曲させるほどの愛。その重さを。もちろんそこには邪気などなく、特に姉ちゃんに関しては、ラブではなくライクなのである。イシュタリオンさんも似た感情かもしれない。けど、もし俺になにかあったら、ふたりは飛んできてしまう。
――俺の役目は、ふたりを心配させないこと。
そういう使命を背負ってしまっている。何があっても、俺はこの町で立派にぬくぬくと暮らさなければならない。雨の日も風の日も、魔王軍に襲われようが、四天王が攻めてこようが、暴動が起ころうが、姉ちゃんに心配をかけないためにも、余裕と平然を装う。
それができるだろうか――。
『カルマくん――』
ふと、扉の向こうから姉ちゃんの声が聞こえた。
「姉ちゃん?」
『入ってもいいですか?』
「……ああ」
扉の向こうで姉ちゃんが解錠処理を行う。俺の寝室は特別製だ。一見して普通の部屋だが、壁のすべてが結界クラスの魔法防壁で構築されている。ルリ曰く隕石が直撃しても、俺だけは助かるらしい。弱い魔物だと近づいただけで、浄化される。
さらには賊の侵入を防ぐための、鉄壁の施錠システム。人によって違う魔法の波動を感知することでの認証。続いて暗証番号の入力。操られていないか、脅されていないかを確認するための感情感知機能。扉は、魔法技術の粋で構築されている。
また、二種類の緊急脱出ボタンがあって、ひとつは部屋ごと射出。イシュタリオンさんの故郷であるカルトナの中庭へと飛んでいくそうだ。もうひとつのボタンを押すと、強力な大地魔法が発動し、地下へと潜っていくらしい。そこには、数年分の食料が貯蔵されているので、世界が平和になるまでシェルター内で隠れることができる。正直いらない。世界が滅亡しているのに、俺だけ生き延びるなんて嫌だ。
現状、このセキュリティシステムを抜けられるのは、俺と姉ちゃんとイシュタリオンさんとルリしかいない。まあ、内側にいる俺からだと、ドアノブをひねるだけで開くのだけど。
カチャっと扉が開いた。髪の色と同じぐらいピンクなパジャマを纏う、フェミル姉ちゃんが入ってくる。
「寝てましたか?」
「いや、寝れなかった」
「ふふ、お姉ちゃんもです。やっぱり遠足の前は眠れませんよね」
「旅は遠足じゃないだろ」
姉ちゃんは、連日連夜休むことなく都市開発をしていたのだ。絶対に疲れているはず。それなのに、眠れないってことは、俺のことが気になって仕方がないからだと思う。
「早く寝ろよ。明日から、旅が始まるんだろ」
「わかってます……。わかってますよ……。だから、お姉ちゃんが安心して眠れるよう……今日だけは、一緒のお布団で眠ってもらってもいいですか?」
「一緒に……?」
「はい! 添い寝です!」
俺の役目は、姉ちゃんを安心させることだ。ならばと、断れるわけがなかった――。
――そんなわけで、俺と姉ちゃんはひとつのベッドで横になる。いやらしい気持ちにはならないけど、恥ずかしい気持ちにはなる。
旅してるから、テントの中でぎゅうぎゅう詰めになりながら寝たりとか、雪山で毛布が足りない時とか、一緒になってくるまったりとかしてるけど、やっぱ意識しちゃうよなぁ。っていうか、姉ちゃんとは血が繋がっていないわけだし……。
「ん? んふふ~」
ベッドの中で顔を見合わせる。超近い。姉ちゃんが嬉しそうに笑う。俺は、思わず顔を背けて反対側へと寝返りを打った。すると、姉ちゃんは俺の背中に身体を寄せてくる。お腹へと軽く手を回してきた。
「こうして、一緒に寝るのも久しぶりですね~」
「いいから寝ろ……」
「眠たくなったら寝ますよ~」
姉ちゃんと出会ったのは、俺が五歳の時だったか。ギルドの運営に携わっていた俺の親父が連れてきた。なんでも、ハンターが森で保護したらしい。孤児院に連れていったのだが、シスターと折り合いが悪かったのか、親父は連れて帰ってきてしまった。
ほんの数日預かるだけだったのだが、俺と姉ちゃんが仲良く遊んでいたのを見て、そのまま養子にしたそうだ。
別に普通の姉弟だった。まあ、姉ちゃんは女の子なのに、少し剣術に興味があったぐらいだ。それでも、世間では『ちょっと変わった子』ぐらいの認識だっただろう。けど、一年前。魔王が復活してから、事態は急変した。
俺の祖国ジスタニアを始め、世界各国が魔王軍との戦争を始めた。劣勢を悟ると、世界各国は救世主である『勇者』を探し始めた。
ジスタニアの王ガルフォルドは、国中の腕自慢に招集をかけた。その時、俺は親父の運営していたハンターギルドに登録してあったので、参加することになる。当時は、まだAランクだったかな。親父がギルドがらみの仕事なので、昔から身体だけは鍛えていた。
そうしたら、姉ちゃんも参加するとかいいだした。理由は『カルマくんが心配だから』だそうだ。
そんなわけで、俺と姉ちゃんはガルフォルド王の招集に応じて、勇者の選別試験を受けることになる。形式はトーナメント戦だ。
姉ちゃんは戦っている最中に、額に勇者の紋章を発現させ、次々に参加者を蹂躙することになる。それを見たガルフォルド王が、大会も半ばに、フェミルこそ真の勇者だと認めることになった。
……ちなみにだけど、大会自体は最後までやって、結局は俺が優勝した。トーナメントの決勝で、姉ちゃんと戦うことになったんだけど『カルマくんとは、戦えません……!』と、膝を突いて泣きながらギブアップした。要するに、大会の結果関係なく、姉ちゃんは勇者として認められたというわけだ。
まあ、考えてみれば、疑わしい点はあった。そもそも、幼いフェミルが森の中でひとりはぐれていたら無事で済むわけがない。実力も存在も不思議ちゃんだったのである。
そんなわけで、勇者として選ばれた姉ちゃんは、国の指導で訓練を受ける。俺も、付き人として任命されたので訓練を受けた。一応、優勝して実力は証明できているし。で、魔王討伐の旅へと出ることになったわけだ。
イシュタリオンさんやリーシェとの出会いは旅の途中だ。ま、それはまた別のお話。――そう考えると、姉ちゃんとはずっと一緒だったなぁ。
「明日から、お姉ちゃんたちはいなくなりますから、自分のことは自分でするんですよ? お野菜もしっかり食べるんですよ? 運動も適度にやること。風邪を引かないように、暖かくして眠るんですよ?」
「はいはい」
「そして、もし、お姉ちゃんが帰ってこなくても泣かないこと――」
それは、不意打ち的な一言だった。ずっと、考えないようにしていた。いや、旅を始めた時から、そうなる可能性は常に付きまとっていた。
俺たちは、これまでなんとか生き残れてきた。四天王の極炎のレッドベリル。喪心のフォルカスを撃破した。しかし、それ以上に強いと噂される不死身のロット。神域のアークルード。さらには、それら四天王に匹敵するといわれているエヴァンス、バスタール、キルフレイム。俺たちが力を合わせても勝てるかどうか怪しい連中が残っているのだ。
「……姉ちゃんは、絶対に帰ってくるだろ」
「はい……けど、万が一のことがあるかもしれません」
「万が一は……ねーよ……」
「これは戦争なんですよ。だから、万が一の時に、カルマくんは泣かないって約束してください。そうしないと、お姉ちゃんは安心して旅に出られません」
背を向けたまま、俺は言い返す。
「わかったよ」
泣かないわけがないけど。
「ふふ、これでようやく一安心です」
俺の後頭部をなでなでするフェミル姉ちゃん。
「けど、姉ちゃんも約束しろ。絶対に帰ってくるって。でなきゃ、俺が安心してぬくぬく暮らせないからな」
「……そっか……そうですね。わかりました。お姉ちゃんも、必ず帰ってくることにします。よし、これでお互い安心ですね」
「……だな」
「じゃあ、褒めてください。なでなでしてください」
「調子に乗るな――」
ふと、その時だった。セキュリティ万全の扉が再び開いた。バン! と、勢いよく。俺たちは身体をビクンと反応させる。
「カルマ! 起きているか!」
イシュタリオンさんだった。起きているもなにも、そんな扉の開け方をしたら寝ていても起きるだろう。
「お、起きてますけど……」
すると、彼女は姉ちゃんのことなど視界に入っていないかのように話を続ける。
「眠れないのだ。すまないが……今日だけでいい……一緒に寝てくれるか?」
「は、はあ……?」
と、困惑気味に声を漏らすが、俺の返答を待たずにイシュタリオンさんは、俺の布団へと入ってくる。
「ダメです! 今日だけは、カルマくんは私のものです!」
「嫌だ! 最後になるかもしれないから、私も一緒に寝るんだ!」
かくして俺は美女二人に挟まれて眠ることになる。左を向けば、姉ちゃんの「んふふ~」という感じの嬉しそうな顔がある。反対側を向けば、胸元を限界ギリギリまではだけさせたイシュタリオンさんがいる。目が開いてるけど、たぶん寝ている。旅のせいで、目を開けたまま眠れるようになっちゃったんだろうなぁ……。
こうして、最後の夜は更けていくのであった――。
――ようやく、姉ちゃんたちがいなくなる。これでいい。嬉しいはずだ――と、思う反面、不安と心配も湧いてくる。
町を、たった数日で世界最高の貿易都市へと成長させ、さらには各国も震えるほどの戦力を集めてしまった。その手腕は偏に俺への愛の賜だろう。
わかるだろうか、世界情勢を歪曲させるほどの愛。その重さを。もちろんそこには邪気などなく、特に姉ちゃんに関しては、ラブではなくライクなのである。イシュタリオンさんも似た感情かもしれない。けど、もし俺になにかあったら、ふたりは飛んできてしまう。
――俺の役目は、ふたりを心配させないこと。
そういう使命を背負ってしまっている。何があっても、俺はこの町で立派にぬくぬくと暮らさなければならない。雨の日も風の日も、魔王軍に襲われようが、四天王が攻めてこようが、暴動が起ころうが、姉ちゃんに心配をかけないためにも、余裕と平然を装う。
それができるだろうか――。
『カルマくん――』
ふと、扉の向こうから姉ちゃんの声が聞こえた。
「姉ちゃん?」
『入ってもいいですか?』
「……ああ」
扉の向こうで姉ちゃんが解錠処理を行う。俺の寝室は特別製だ。一見して普通の部屋だが、壁のすべてが結界クラスの魔法防壁で構築されている。ルリ曰く隕石が直撃しても、俺だけは助かるらしい。弱い魔物だと近づいただけで、浄化される。
さらには賊の侵入を防ぐための、鉄壁の施錠システム。人によって違う魔法の波動を感知することでの認証。続いて暗証番号の入力。操られていないか、脅されていないかを確認するための感情感知機能。扉は、魔法技術の粋で構築されている。
また、二種類の緊急脱出ボタンがあって、ひとつは部屋ごと射出。イシュタリオンさんの故郷であるカルトナの中庭へと飛んでいくそうだ。もうひとつのボタンを押すと、強力な大地魔法が発動し、地下へと潜っていくらしい。そこには、数年分の食料が貯蔵されているので、世界が平和になるまでシェルター内で隠れることができる。正直いらない。世界が滅亡しているのに、俺だけ生き延びるなんて嫌だ。
現状、このセキュリティシステムを抜けられるのは、俺と姉ちゃんとイシュタリオンさんとルリしかいない。まあ、内側にいる俺からだと、ドアノブをひねるだけで開くのだけど。
カチャっと扉が開いた。髪の色と同じぐらいピンクなパジャマを纏う、フェミル姉ちゃんが入ってくる。
「寝てましたか?」
「いや、寝れなかった」
「ふふ、お姉ちゃんもです。やっぱり遠足の前は眠れませんよね」
「旅は遠足じゃないだろ」
姉ちゃんは、連日連夜休むことなく都市開発をしていたのだ。絶対に疲れているはず。それなのに、眠れないってことは、俺のことが気になって仕方がないからだと思う。
「早く寝ろよ。明日から、旅が始まるんだろ」
「わかってます……。わかってますよ……。だから、お姉ちゃんが安心して眠れるよう……今日だけは、一緒のお布団で眠ってもらってもいいですか?」
「一緒に……?」
「はい! 添い寝です!」
俺の役目は、姉ちゃんを安心させることだ。ならばと、断れるわけがなかった――。
――そんなわけで、俺と姉ちゃんはひとつのベッドで横になる。いやらしい気持ちにはならないけど、恥ずかしい気持ちにはなる。
旅してるから、テントの中でぎゅうぎゅう詰めになりながら寝たりとか、雪山で毛布が足りない時とか、一緒になってくるまったりとかしてるけど、やっぱ意識しちゃうよなぁ。っていうか、姉ちゃんとは血が繋がっていないわけだし……。
「ん? んふふ~」
ベッドの中で顔を見合わせる。超近い。姉ちゃんが嬉しそうに笑う。俺は、思わず顔を背けて反対側へと寝返りを打った。すると、姉ちゃんは俺の背中に身体を寄せてくる。お腹へと軽く手を回してきた。
「こうして、一緒に寝るのも久しぶりですね~」
「いいから寝ろ……」
「眠たくなったら寝ますよ~」
姉ちゃんと出会ったのは、俺が五歳の時だったか。ギルドの運営に携わっていた俺の親父が連れてきた。なんでも、ハンターが森で保護したらしい。孤児院に連れていったのだが、シスターと折り合いが悪かったのか、親父は連れて帰ってきてしまった。
ほんの数日預かるだけだったのだが、俺と姉ちゃんが仲良く遊んでいたのを見て、そのまま養子にしたそうだ。
別に普通の姉弟だった。まあ、姉ちゃんは女の子なのに、少し剣術に興味があったぐらいだ。それでも、世間では『ちょっと変わった子』ぐらいの認識だっただろう。けど、一年前。魔王が復活してから、事態は急変した。
俺の祖国ジスタニアを始め、世界各国が魔王軍との戦争を始めた。劣勢を悟ると、世界各国は救世主である『勇者』を探し始めた。
ジスタニアの王ガルフォルドは、国中の腕自慢に招集をかけた。その時、俺は親父の運営していたハンターギルドに登録してあったので、参加することになる。当時は、まだAランクだったかな。親父がギルドがらみの仕事なので、昔から身体だけは鍛えていた。
そうしたら、姉ちゃんも参加するとかいいだした。理由は『カルマくんが心配だから』だそうだ。
そんなわけで、俺と姉ちゃんはガルフォルド王の招集に応じて、勇者の選別試験を受けることになる。形式はトーナメント戦だ。
姉ちゃんは戦っている最中に、額に勇者の紋章を発現させ、次々に参加者を蹂躙することになる。それを見たガルフォルド王が、大会も半ばに、フェミルこそ真の勇者だと認めることになった。
……ちなみにだけど、大会自体は最後までやって、結局は俺が優勝した。トーナメントの決勝で、姉ちゃんと戦うことになったんだけど『カルマくんとは、戦えません……!』と、膝を突いて泣きながらギブアップした。要するに、大会の結果関係なく、姉ちゃんは勇者として認められたというわけだ。
まあ、考えてみれば、疑わしい点はあった。そもそも、幼いフェミルが森の中でひとりはぐれていたら無事で済むわけがない。実力も存在も不思議ちゃんだったのである。
そんなわけで、勇者として選ばれた姉ちゃんは、国の指導で訓練を受ける。俺も、付き人として任命されたので訓練を受けた。一応、優勝して実力は証明できているし。で、魔王討伐の旅へと出ることになったわけだ。
イシュタリオンさんやリーシェとの出会いは旅の途中だ。ま、それはまた別のお話。――そう考えると、姉ちゃんとはずっと一緒だったなぁ。
「明日から、お姉ちゃんたちはいなくなりますから、自分のことは自分でするんですよ? お野菜もしっかり食べるんですよ? 運動も適度にやること。風邪を引かないように、暖かくして眠るんですよ?」
「はいはい」
「そして、もし、お姉ちゃんが帰ってこなくても泣かないこと――」
それは、不意打ち的な一言だった。ずっと、考えないようにしていた。いや、旅を始めた時から、そうなる可能性は常に付きまとっていた。
俺たちは、これまでなんとか生き残れてきた。四天王の極炎のレッドベリル。喪心のフォルカスを撃破した。しかし、それ以上に強いと噂される不死身のロット。神域のアークルード。さらには、それら四天王に匹敵するといわれているエヴァンス、バスタール、キルフレイム。俺たちが力を合わせても勝てるかどうか怪しい連中が残っているのだ。
「……姉ちゃんは、絶対に帰ってくるだろ」
「はい……けど、万が一のことがあるかもしれません」
「万が一は……ねーよ……」
「これは戦争なんですよ。だから、万が一の時に、カルマくんは泣かないって約束してください。そうしないと、お姉ちゃんは安心して旅に出られません」
背を向けたまま、俺は言い返す。
「わかったよ」
泣かないわけがないけど。
「ふふ、これでようやく一安心です」
俺の後頭部をなでなでするフェミル姉ちゃん。
「けど、姉ちゃんも約束しろ。絶対に帰ってくるって。でなきゃ、俺が安心してぬくぬく暮らせないからな」
「……そっか……そうですね。わかりました。お姉ちゃんも、必ず帰ってくることにします。よし、これでお互い安心ですね」
「……だな」
「じゃあ、褒めてください。なでなでしてください」
「調子に乗るな――」
ふと、その時だった。セキュリティ万全の扉が再び開いた。バン! と、勢いよく。俺たちは身体をビクンと反応させる。
「カルマ! 起きているか!」
イシュタリオンさんだった。起きているもなにも、そんな扉の開け方をしたら寝ていても起きるだろう。
「お、起きてますけど……」
すると、彼女は姉ちゃんのことなど視界に入っていないかのように話を続ける。
「眠れないのだ。すまないが……今日だけでいい……一緒に寝てくれるか?」
「は、はあ……?」
と、困惑気味に声を漏らすが、俺の返答を待たずにイシュタリオンさんは、俺の布団へと入ってくる。
「ダメです! 今日だけは、カルマくんは私のものです!」
「嫌だ! 最後になるかもしれないから、私も一緒に寝るんだ!」
かくして俺は美女二人に挟まれて眠ることになる。左を向けば、姉ちゃんの「んふふ~」という感じの嬉しそうな顔がある。反対側を向けば、胸元を限界ギリギリまではだけさせたイシュタリオンさんがいる。目が開いてるけど、たぶん寝ている。旅のせいで、目を開けたまま眠れるようになっちゃったんだろうなぁ……。
こうして、最後の夜は更けていくのであった――。
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