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第52話 再建、再見
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帰国した俺たちラングリード騎士団は、国民の歓迎を持って迎え入れられる。
倒したのが、俺たちじゃないにしても、彼らにとってはそんなことなど関係なく、ただただ平和になったことだけに喜びを馳せる。
この日の新聞には『ついに魔王討伐!』『世界平和の始まり!』『勇者ベイル大快挙!』『プリメーラちゃん獅子奮迅の活躍』『フランシェ様大手柄』『メリアが魔王軍五大魔将を撃破!』
そんな記事ばかりが書かれていた。
町は連日連夜の大賑わい。安心して暮らすことができるのもあるけど、観光都市ゆえにこれまで以上に、観光客が増える。景気が良くなる。未来の盛況を見据えて、町の人たちは幸福を噛みしめるのだった。
――だが、俺たち騎士団には懸念が残っていた。
季節は冬。大分寒くなってきた。外は雪が降っている。お汁粉の美味い季節になった。秋のうちに魔王討伐が終わって良かったと思っている。
そんな折り、俺は騎士団の休憩所のこたつで、フランシェと向き合いながら語り合っていた。
「放ってはおけないよな……」
そう言って、俺は新聞を差し出した。
『――残される魔人の脅威』
新聞記事の隅に、そういった文章が見受けられるようになった。騎士団もだが、国民も薄々わかっている。魔王はいなくなったものの、魔人ヴァルディスという存在が残っていることを。
「ええ、このまま何事もなく終わるとは思えません」
――あいつは悪い奴じゃねえ。
実際に戦ったからわかる。あいつの拳には悪意がなかった。支配が好きなわけでもなく、戦争が好きというわけでもない。
奴は、ただただ力を求めていた。
純粋な戦闘欲。例えるなら、身体を鍛えることが好きなアスリートだ。強くなるという一点に対し、周囲が見えなくなるほど夢中になるという子供みたいな奴。
「ヴァルディスの目的は、いったいなんなのでしょうか? ……もし、自らが魔王になるつもりならば、ゲルギオラス以上の脅威になるかと」
フランシェが懸念する。だが、俺はみかんを剥きながら、真剣な面持ちで否定する。
「ヴァルディスの目的は、おそらく俺だ」
奴は己の信念のために、すべてを投げ捨てる覚悟のある武人。もっとも厄介なタイプの敵だ。奴と初めて対峙した時、あいつは丸腰の俺を殺せた。
けど、それよりも己の強さを渇望し、サウナという新たなる境地を見いだした。奴が望むのは、俺以上の力。その力を手に入れ、俺を倒すことこそ、使命だと思っている。
「そのために、奴はサウナを極めようとしている。究極のととのいを見つけて、完全体になることが目的だろう」
「究極のととのい……ですか?」
「別に不思議なことじゃねえ。サウナーは、誰もがみんな、より気持ちよくなる入り方を模索している。新規開拓や、グッズ集め、身体を鍛えてポテンシャルを高めるとかな」
「では、ベイルなら、究極のととのいを手に入れるために、どうしますか?」
「……正直なところ……わからねえ」
サウナを探求する旅に終わりはないと思っている。サウナは、いわばメビウスの輪だ。
新たな発見と感動を見つけたかと思うと、いつの間にか一周回ってもとのサウナに戻っている。
だが、やはりそれでは満足できず、新しい発見を求めて模索する。無限に続く探求。終わりなんてないし、究極なんて存在しないとすら思える。
「ヴァルディスとの対話を試みたいですね。魔王を倒してくれたのですから、人間に対して好意的な感情を持っているかもしれません。問題は、どこにいるのかわからないことですが」
「だったら、良い方法があるぜ」
「良い方法?」
「――ああ、ホーリーヘッド温泉を再建するんだ」
トーレスに破壊されてしまったが、もしガチで建設できていたら、ラングリードでも難攻不落の温泉として樹立していただろう。
「最高のサウナがそこにあるのなら、どんなところにあってでも入りたくなる。それがサウナーの性ってものだ」
「ならば――」
「アレが完成すれば、ヴァルディスは必ず現れるだろうな」
倒したのが、俺たちじゃないにしても、彼らにとってはそんなことなど関係なく、ただただ平和になったことだけに喜びを馳せる。
この日の新聞には『ついに魔王討伐!』『世界平和の始まり!』『勇者ベイル大快挙!』『プリメーラちゃん獅子奮迅の活躍』『フランシェ様大手柄』『メリアが魔王軍五大魔将を撃破!』
そんな記事ばかりが書かれていた。
町は連日連夜の大賑わい。安心して暮らすことができるのもあるけど、観光都市ゆえにこれまで以上に、観光客が増える。景気が良くなる。未来の盛況を見据えて、町の人たちは幸福を噛みしめるのだった。
――だが、俺たち騎士団には懸念が残っていた。
季節は冬。大分寒くなってきた。外は雪が降っている。お汁粉の美味い季節になった。秋のうちに魔王討伐が終わって良かったと思っている。
そんな折り、俺は騎士団の休憩所のこたつで、フランシェと向き合いながら語り合っていた。
「放ってはおけないよな……」
そう言って、俺は新聞を差し出した。
『――残される魔人の脅威』
新聞記事の隅に、そういった文章が見受けられるようになった。騎士団もだが、国民も薄々わかっている。魔王はいなくなったものの、魔人ヴァルディスという存在が残っていることを。
「ええ、このまま何事もなく終わるとは思えません」
――あいつは悪い奴じゃねえ。
実際に戦ったからわかる。あいつの拳には悪意がなかった。支配が好きなわけでもなく、戦争が好きというわけでもない。
奴は、ただただ力を求めていた。
純粋な戦闘欲。例えるなら、身体を鍛えることが好きなアスリートだ。強くなるという一点に対し、周囲が見えなくなるほど夢中になるという子供みたいな奴。
「ヴァルディスの目的は、いったいなんなのでしょうか? ……もし、自らが魔王になるつもりならば、ゲルギオラス以上の脅威になるかと」
フランシェが懸念する。だが、俺はみかんを剥きながら、真剣な面持ちで否定する。
「ヴァルディスの目的は、おそらく俺だ」
奴は己の信念のために、すべてを投げ捨てる覚悟のある武人。もっとも厄介なタイプの敵だ。奴と初めて対峙した時、あいつは丸腰の俺を殺せた。
けど、それよりも己の強さを渇望し、サウナという新たなる境地を見いだした。奴が望むのは、俺以上の力。その力を手に入れ、俺を倒すことこそ、使命だと思っている。
「そのために、奴はサウナを極めようとしている。究極のととのいを見つけて、完全体になることが目的だろう」
「究極のととのい……ですか?」
「別に不思議なことじゃねえ。サウナーは、誰もがみんな、より気持ちよくなる入り方を模索している。新規開拓や、グッズ集め、身体を鍛えてポテンシャルを高めるとかな」
「では、ベイルなら、究極のととのいを手に入れるために、どうしますか?」
「……正直なところ……わからねえ」
サウナを探求する旅に終わりはないと思っている。サウナは、いわばメビウスの輪だ。
新たな発見と感動を見つけたかと思うと、いつの間にか一周回ってもとのサウナに戻っている。
だが、やはりそれでは満足できず、新しい発見を求めて模索する。無限に続く探求。終わりなんてないし、究極なんて存在しないとすら思える。
「ヴァルディスとの対話を試みたいですね。魔王を倒してくれたのですから、人間に対して好意的な感情を持っているかもしれません。問題は、どこにいるのかわからないことですが」
「だったら、良い方法があるぜ」
「良い方法?」
「――ああ、ホーリーヘッド温泉を再建するんだ」
トーレスに破壊されてしまったが、もしガチで建設できていたら、ラングリードでも難攻不落の温泉として樹立していただろう。
「最高のサウナがそこにあるのなら、どんなところにあってでも入りたくなる。それがサウナーの性ってものだ」
「ならば――」
「アレが完成すれば、ヴァルディスは必ず現れるだろうな」
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