異世界サウナ。ととのえばととのうほど強くなる勇者がサウナの力で無双する。~能力を恐れた魔王軍が全裸の時に攻めてくるので、全力でもてなします~

倉紙たかみ

文字の大きさ
51 / 66

第51話 無限の温泉

しおりを挟む
 俺は、バージャムから魔王軍の現状を聞いた。

 魔王ゲルギオラスを倒したのは、魔人ヴァルディス。かつて、俺とメシを食ったサウナー仲間。 奴が、より強力なサウナ魔人となった。

「ヴァルディスはどこにいる?」

「わからぬ。魔王様を殺したあとは、さらなるととのいを求めて旅に出たとか」

 ――それが、コトの顛末だった。

「どうします? フランシェ様」

 メリアが尋ねた。現状、目的は果たした。というか、やるべきことがなくなった。魔王を倒すという目的は、俺以外のサウナーが終わらせてしまったのだから。

「理解しがたいですが、魔王がいなくなったことが事実なら、ここに長居する必要もありません。本国に戻り、このことを世界に報せましょう」

 まあ、これで世界は平和になったのだ。これからは魔王軍の残党狩りなどで、忙しくなるだろう。拍子抜けはしたが、世界を平和にするのは、俺じゃなくてもいい。

「――で、あんたはどうするの?」

 アスティナは、杖を向けてバージャムに問う。そういえば、こいつ熱波師の前に大魔道士だったんだ。杖を持っている姿は、意外と新鮮だ。

「おまえらは、魔王軍を滅ぼすのだろう。ならば、この俺の命も奪うのではないか?」

 切実な疑問に、フランシェが答える。

「抵抗の意思を見せないのであれば……せめて牢獄での暮らしぐらいは保証いたしましょう」

「くくっ……そうなるか。やはりそうなるか……」

 バージャムは薄い笑みを浮かべた。

「誰か、彼の拘束を」

 フランシェが指示すると、部下の者たちが縄を持ってやってくる。それを巻き付けようとしたその時、バージャムは腰の剣を抜いて、斬りつける。

「ぐわッ!」

 斬り飛ばされる兵士たち。俺たちは、すぐさま武器を持って構えた。

「抵抗する気ですかッ?」

 メリアが問うと、バージャムは落ち着きを払って言い返す。

「俺は最後の最後まで、五大魔将としての使命を果たす。勇者を抹殺する。裏切り者のヴァルディスも殺す。我が忠義、最後まで貫く!」

「あんた正気なの? この人数相手に勝てると思ってんの?」

「わかっていないようだな……おまえたちは、罠にかかったのだ」

 現在、この城に数万の魔王軍の残党が向かっているとのこと。あらかじめ、城を空にしておいて、近くに待機させていたらしい。俺たちが入城するのを見計らって、一気に包囲を始めたようだ。

「フランシェ様! 大変ですッ! 魔王軍が、この城を包囲しようとしています!」

 兵士が入ってきて、いましがたバージャムの説明した通りの報告をする。

「ッ! すぐに守りを固めてください!」

「はっ!」

 ヤバい。凄くヤバい。なにがヤバいかって、この城は守りに向いていないことだ。ついさっき、俺は城壁をぶち抜きまくってしまった。たぶんそこから魔物がなだれ込んでくる。そして――。

「ハハハハ! 勇者ベイルよ、もうととのってはいないのだろう?」

 ――そう。時間切れだ。

 バージャムの長い長い説明を聞いているうちに、すでにととのいから1時間以上が経過してしまっている。

「籠城は無駄だぞ。この城の食料はすでに持ち出してある。井戸にも毒を流してある。簡易サウナをつくることもできまい!」

 チープだが効果絶大。

 サウナがなければ、勇者の力は発動できない。

 ――そんなふうに考えていた時期が、俺にもありました。

「残念だが、浅はかにもほどがあるぜ。――メリア」

「はい!」

 メリアが剣を床へと突き立てる。

 そして、ブツブツと詠唱を始めた。いったいなにが起こるのかとバージャムは狼狽していた。

 言の葉を語り終えるメリア。

 ――すると、次の瞬間。

 謁見の間が、みるみるうちに『銭湯』へと変わっていくのだ。

「これは、空間転移ッ?」

 バージャムは、きょろきょろと周囲を見回した。ありえない状況に驚いているようだ。

「違えよ。こいつは結界だ」

 壁も床も、総タイル張り。洗い場に風呂に、サウナまで構築されていく。まさに風呂。和を用いたスタイルの大浴場だ。

「ディメンジョン・サウナ……これが、私の魔法です」

 メリアは誇らしげに笑みを浮かべるのだった。

     ☆

 ――ようやく、ベイルくんの役に立てる時がきた。

 結界師メリア。
 偉大なる母シノン・グラタニアほどの才能はないとされてきた落ちこぼれだった。だが、それは活躍できる場がないからだ。

 ある一定の状況において、彼女は非常に有益な結界を張り巡らせることができる。固有の才能。固有の結界。それは、無限の温泉を創造するに至る。

 温泉地であるラングリードでは、結界内に仮想サウナをつくる能力は意味を成さない。ベイルのように防衛に重きを置いている戦闘スタイルにも必要がない。

 しかし、此度は違った。遠征という特殊環境では、メリアの結界ほど心強いものはなかった。勇者のパートナーに相応しき能力だった。

 ――自分たちに有利な空間を構成し、そこに対象を閉じ込める。その一点において、メリアの右に出る人間はいない。

「ベイル殿、ととのいますか?」

 ベイルが試すように水風呂へと腕を突っ込んでみる。

「ああ、いい温度だ。ととのわせてもらうぜ」

 時は一刻を争う。ベイルは、さっそくとばかりに脱衣を始めた。

「おれのッ! なにが結界だぁぁぁッ!」

 狼狽したバージャムが激高し、サウナを破壊しようとする。しかし、壁から大量の剣が生えてくる。ウニのように出現したそれは、矢のように解き放たれ、バージャムを貫いていく。

「ぐぎゃぁぁぁぁぁッ!」

 怯んだところを、フランシェとアスティナが袋叩きにする。

「無駄ですよ。この空間は、私の思うままの現象を引き起こすことができます」

 メリアが指を跳ね上げる。

 すると、タイルから槍が出現し、バージャムを貫いていった。さらに、お湯が風呂から飛び出した。それは龍の如くうねり、バージャムへと激突する。

「ぐぼはッ!」

 床のタイルが剥がれ、手裏剣のように襲いかかる。壁に描かれていた獅子の絵から、それが具現化するように飛び出し、バージャムを襲う。

 それはまさに阿鼻叫喚の有様だった。

「よし、じゃあととのってくる」

 そして、ベイルはサウナへと入っていくのであった。


 その後。
 バージャムは一瞬のうちに敗北。

 城を包囲していた魔物の軍勢は、フランシェ率いる騎士団が時間を稼いでくれた。

 こちらには元魔王軍最高の頭脳プリメーラがいるので、防衛はお手の物だった。城のことを知り尽くしているので、罠などを起動して侵入を防いでくれた。

 ベイルがととのってからの顛末は、もはや語るまでもないだろう。

 そこから先は、一方的な蹂躙だ。
 魔王軍の残党を一気に撃破。
 世界に平和が訪れるのだった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

処理中です...