61 / 66
第61話 命懸けの贔屓
しおりを挟む
しばしの休憩を挟んだのち、俺たちは再びサウナへと入る。
――強い。
ヴァルディスの成長力はハンパない。と、素直に思う。初めて戦った時も感じたが、こいつにはサウナーとしての凄まじい才能を感じた。
少なくとも、俺がこれまで戦った誰よりも強い。誰よりもサウナを楽しんでいる。
――凄え、つらい。
こんなに才能あるサウナーと殺し合わなくちゃならないなんて。
じっくり身体を温めていた、その時だった。
――バン!
扉が豪快に開いた。外の冷たい空気が、ほのかにサウナをかき回す。俺たちは、ピクリと反応して、来訪者を見やった。
現れたのはハッピ姿のアスティナだった。いつものようにロウリュウの準備をしての登場だった。
「アスティナ……?」
「悪いけど、手伝わせてもらうわよ」
「邪魔をするな。これは俺とヴァルディスの戦いだ」
「冗談じゃないわ。この戦いには、世界の命運が懸かっているんだから、指をくわえて見てるだけなんて嫌よ」
すると、ヴァルディスはほのかな笑みを浮かべて言葉を滑らせる。
「ほう、小娘。ベイルに加担する気か?」
「いけないことかしら?」
俺にだけ上質な熱波を与えて、ととのい度を上げる。それはあまりにもフェアではない。いや、アスティナはそのフェアではない行為を望んでいるのだろう。
「…………構わん。それがおまえたちのやり方だというのなら、好きにすればいい」
しかし、俺にも意地がある。
「出て行け、アスティナ。俺は、実力でコイツを捻じ伏せる」
「簡単に引き下がるコトなんてできないわ。勇者が仲間と共に戦ってなにが悪いのよ」
アスティナは、俺の言うことを聞かずにロウリュウを始める。サウナストーンに水がかけられる。バチバチと響き渡る音は、まるで俺たちの激闘の火花を演出しているかのようだった。
「もう一度言う、出て行けアスティナ――」
「うるさい! ひとりで背負い込むな! あたしは、絶対にあんたを勝たせなくちゃいけないの! それが、大魔道士リオンの娘としての使命なんだからッ!」
厄介なことになったと思った、その時だった。扉の向こうから声が聞こえた。
「別に、いいんじゃないかしら?」
そう言って、入ってきたのはもうひとりのアスティナだった。
「アスティナがふたり……?」
俺は、目を丸くしてつぶやいた。
「トーレスか……」
ヴァルディスは気づいたようだ。
変幻のトーレスの力ならば、アスティナを真似ることぐらい容易かったのだろう。口調までをもコピーし、彼は言葉を紡ぐ。
「そうよ。いくらなんでも、これはフェアじゃないわ。悪いけど、あたしはヴァルディスさんに協力させてもらう。いいわよね?」
「くっ!」
アスティナがタオルを鞭のように振るった。トーレスもタオルで応戦する。魔力を帯びたそれらが、バチンとぶつかり合った。
「こんなところで戦ったら、熱中症になって死ぬわよ? お互い熱波師なんだから、仕事をしましょうよ」
「誰が熱波師よッ! この偽者がッ!」
風魔法で切り刻もうとするアスティナ。トーレスも風魔法を放って相殺する。
「「やめろ」」
俺とヴァルディスが同時に言い放った。
「ここはサウナだぜ。静かにできない奴は出て行ってくれ」
「うむ。下がれトーレス」
たじろぐふたり。
けど、アスティナは引かなかった。
「わかったわよ。静かにするわ。けど、ここがサウナだってんなら、熱波師としての仕事をする権利はあるわよね」
そう言うと、彼女はタオルを振り回して空気を循環させる。トーレス(アスティナ)も同じようにタオルを振り回す。
「偽者に技術で負けるわけがないわ」
「どうかしら? あなたの一挙一動、真似させてもらうわよ」
俺とヴァルディスは、お互いを一瞥する。そして、フッと笑って彼女たちの手伝いを許すのだった。
☆
はっきり言おう。トーレスのコピー能力は侮れない。奴の動きを観察していたが、ほぼ完璧。
動きは当然だが、熱波にほのかな魔力を込めてリラックスさせる技術も真似できている。敵ながら見事だと言うほかないだろう。
冷水、そして外気浴。俺たちは完全にととのった状態となった。タイミングは同時。強襲をかけることはできない。
用意してくれていたタオルで身体を拭き、衣服と装備を纏う。すると、メリアがポーションを持ってきてくれた。
「ベイルくん。特別製のオリポです。生薬の種類を変えてみたのです。これなら、きっと翼が生えるぐらい元気になりますよ」
「ありがとう――」
するとヴァルディスのもとにもメリア(トーレス)がオリポを提供していた。さすがは魔王軍随一のコピー能力の持ち主といったところか。おそらく配合に関しても完全に再現しているのだろう。
「ふふ、あなたのオロポは完全に真似させてもらったのです。ズルは許さないのです」
俺とヴァルディスは一気に飲み干す。
そして――。
再び戦いが始まったのだった。
――強い。
ヴァルディスの成長力はハンパない。と、素直に思う。初めて戦った時も感じたが、こいつにはサウナーとしての凄まじい才能を感じた。
少なくとも、俺がこれまで戦った誰よりも強い。誰よりもサウナを楽しんでいる。
――凄え、つらい。
こんなに才能あるサウナーと殺し合わなくちゃならないなんて。
じっくり身体を温めていた、その時だった。
――バン!
扉が豪快に開いた。外の冷たい空気が、ほのかにサウナをかき回す。俺たちは、ピクリと反応して、来訪者を見やった。
現れたのはハッピ姿のアスティナだった。いつものようにロウリュウの準備をしての登場だった。
「アスティナ……?」
「悪いけど、手伝わせてもらうわよ」
「邪魔をするな。これは俺とヴァルディスの戦いだ」
「冗談じゃないわ。この戦いには、世界の命運が懸かっているんだから、指をくわえて見てるだけなんて嫌よ」
すると、ヴァルディスはほのかな笑みを浮かべて言葉を滑らせる。
「ほう、小娘。ベイルに加担する気か?」
「いけないことかしら?」
俺にだけ上質な熱波を与えて、ととのい度を上げる。それはあまりにもフェアではない。いや、アスティナはそのフェアではない行為を望んでいるのだろう。
「…………構わん。それがおまえたちのやり方だというのなら、好きにすればいい」
しかし、俺にも意地がある。
「出て行け、アスティナ。俺は、実力でコイツを捻じ伏せる」
「簡単に引き下がるコトなんてできないわ。勇者が仲間と共に戦ってなにが悪いのよ」
アスティナは、俺の言うことを聞かずにロウリュウを始める。サウナストーンに水がかけられる。バチバチと響き渡る音は、まるで俺たちの激闘の火花を演出しているかのようだった。
「もう一度言う、出て行けアスティナ――」
「うるさい! ひとりで背負い込むな! あたしは、絶対にあんたを勝たせなくちゃいけないの! それが、大魔道士リオンの娘としての使命なんだからッ!」
厄介なことになったと思った、その時だった。扉の向こうから声が聞こえた。
「別に、いいんじゃないかしら?」
そう言って、入ってきたのはもうひとりのアスティナだった。
「アスティナがふたり……?」
俺は、目を丸くしてつぶやいた。
「トーレスか……」
ヴァルディスは気づいたようだ。
変幻のトーレスの力ならば、アスティナを真似ることぐらい容易かったのだろう。口調までをもコピーし、彼は言葉を紡ぐ。
「そうよ。いくらなんでも、これはフェアじゃないわ。悪いけど、あたしはヴァルディスさんに協力させてもらう。いいわよね?」
「くっ!」
アスティナがタオルを鞭のように振るった。トーレスもタオルで応戦する。魔力を帯びたそれらが、バチンとぶつかり合った。
「こんなところで戦ったら、熱中症になって死ぬわよ? お互い熱波師なんだから、仕事をしましょうよ」
「誰が熱波師よッ! この偽者がッ!」
風魔法で切り刻もうとするアスティナ。トーレスも風魔法を放って相殺する。
「「やめろ」」
俺とヴァルディスが同時に言い放った。
「ここはサウナだぜ。静かにできない奴は出て行ってくれ」
「うむ。下がれトーレス」
たじろぐふたり。
けど、アスティナは引かなかった。
「わかったわよ。静かにするわ。けど、ここがサウナだってんなら、熱波師としての仕事をする権利はあるわよね」
そう言うと、彼女はタオルを振り回して空気を循環させる。トーレス(アスティナ)も同じようにタオルを振り回す。
「偽者に技術で負けるわけがないわ」
「どうかしら? あなたの一挙一動、真似させてもらうわよ」
俺とヴァルディスは、お互いを一瞥する。そして、フッと笑って彼女たちの手伝いを許すのだった。
☆
はっきり言おう。トーレスのコピー能力は侮れない。奴の動きを観察していたが、ほぼ完璧。
動きは当然だが、熱波にほのかな魔力を込めてリラックスさせる技術も真似できている。敵ながら見事だと言うほかないだろう。
冷水、そして外気浴。俺たちは完全にととのった状態となった。タイミングは同時。強襲をかけることはできない。
用意してくれていたタオルで身体を拭き、衣服と装備を纏う。すると、メリアがポーションを持ってきてくれた。
「ベイルくん。特別製のオリポです。生薬の種類を変えてみたのです。これなら、きっと翼が生えるぐらい元気になりますよ」
「ありがとう――」
するとヴァルディスのもとにもメリア(トーレス)がオリポを提供していた。さすがは魔王軍随一のコピー能力の持ち主といったところか。おそらく配合に関しても完全に再現しているのだろう。
「ふふ、あなたのオロポは完全に真似させてもらったのです。ズルは許さないのです」
俺とヴァルディスは一気に飲み干す。
そして――。
再び戦いが始まったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる
静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】
【複数サイトでランキング入り】
追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語
主人公フライ。
仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。
フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。
外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。
しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。
そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。
「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」
最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。
仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。
そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。
そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。
一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。
イラスト 卯月凪沙様より
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記
ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。
そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。
【魔物】を倒すと魔石を落とす。
魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。
世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる