異世界サウナ。ととのえばととのうほど強くなる勇者がサウナの力で無双する。~能力を恐れた魔王軍が全裸の時に攻めてくるので、全力でもてなします~

倉紙たかみ

文字の大きさ
60 / 66

第60話 プロテインよりも焼き肉が好き

しおりを挟む
 黒毛牛専門焼肉『銀丸』

 ここは地元の農家が丹精込めた牛を、丸ごと一頭仕入れている。腕の良い職人が捌いて提供してくれる本格焼き肉。

 炭火焼きというのもアリなのだが、この店はあえて魔道ロースターを使っている。炭の方が美味いと思われがちだが、ケースバイケースなのである。

 炭はたしかに赤外線と炭の香りと香ばしさ、いぶされた燻製感などもあるので旨味を倍増させる。しかし、ロースターの場合は、そういった付加価値がないぶん、牛肉本来の味を楽しめる。

 俺とヴァルディスは、銀丸の座敷席にて向き合った。ちなみに、アスティナたちは俺たちの食事を眺めている。

「ほう、銀丸……か。パンフレットを見た時から、来たいと思っていたところだ。感謝するぞ」

「オープンと同時に予約でいっぱいだったんだがな。無理を言って、席を空けてもらったんだ」

 しばらくすると、店員がキムチを持ってくる。

 さっそくとばかりにヴァルディスが手を伸ばす。彼の口内から、シャリという音が響き渡った。

「ほう……。よく浸かっている。ヤンニョムも美味い。だが、野菜の味を邪魔することのない絶妙な塩梅。唐辛子も辛すぎず、心地よい刺激を与えてくれる」

「食通みてぇな口をきくようになったじゃねえか」

「おまえと出会ったあの日以来、俺は食に感謝するようになった。一口一口を大事にするようになった。ただ、それだけだ」

「そうかよ。じゃあ、今日は牛に感謝して、いただくとしようぜ――」

 まずは牛タン。軽めの塩と胡椒で焼き、ネギをのせて頬張る。シンプルな薄切りタンだが、ここの売りはネギ塩だ。辛みを抜いたみじん切りのネギには、ごま油やおろしニンニクを和えてある。最初の肉にしてはあまりに贅沢。初攻にして至高。

「なるほど、片面焼きか」

「新鮮なタンならでは、だな。焼いた部分の食感と生の部分の食感、そして、ネギの食感の三重奏だ。この店は、いい肉を食わせるだけじゃねえ」

 お次は壺漬けカルビだ。バラ肉の中でも『ゲタ』と呼ばれる部位を使う。フルーツベースのタレが肉質を柔らかくする。

 店の実力が垣間見える一品だ。俺たちは思わず白米を注文。肉をバウンドさせ、一気にかっこむ。

 そして特上ロース。通称ザブトンと呼ばれる部位。いわば大トロの部分である。きめ細やかなサシの入った肉が網の上で焼ける。

 ツツと脂汗をかく牛の肉。表面がメイラード(焦げ)反応を起こしたところでサッと取り上げる。

 銀丸の肉は融点が低い。要するに油が溶けやすい。ゆえに、サラッとしていてしつこくない。ボリュームのある肉でありながら、何枚でもイケてしまう。

 幾種類の肉を平らげたあと、〆は柚シャーベットだ。柚を半分に切って、実の部分を抉ったそれを器にして、さわやか極まりないシャーベットがぎっしりと詰まっている。ほのかな酸味と甘み。しつこくないミルキーな香りが鼻腔を抜ける。

 焼き肉を堪能した俺たちは、まるで激戦を繰り広げてきたかのように肩で息をしていた。

「はあ、はあ……やるではないか、ベイル。見事な『焼き』だったぞ」

「肉ってのは、ただ焼けばいいってもんじゃねえ。部位ごとに最適な焼き加減ってのがある。だが、最終的にはその人の好みだ。タンをタレで食べたいって奴がいるんなら、それもアリだ」

 焼肉の神髄は、客に焼かせるところにある。料理人は、肉を切って盛り付け、お客に提供するところまでしか関与できない。リレーのアンカーを任されたお客の使命は、自分にとっての最高のゴールを迎えることなのだ。

「さて、そろそろ第2ラウンド目と行くか?」

「くくっ、焦るな。メシを食べてすぐのサウナは消化に悪かろう」

 言って、ヴァルディスは拳をググッと握ってみせる。どうやら、肉のタンパク質を吸収して、筋肉がさらなる成長を遂げようとしているようだった。

     ☆

 アスティナは葛藤していた。

 ――これでいいのだろうか。
 
 ベイルとヴァルディスが、再びサウナへと戻った。アスティナたちは、それを見守ることしかできないのかと歯痒かった。

 これはサウナ。大衆的な娯楽でありながら、行く末には世界の命運がかかっている。

「もう、我慢できないわ……」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

処理中です...