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第21話 炎上王子様は実家を焼き尽くしたい
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「……社長の野郎……マジで、あの動画をアップしたのか」
――翌日。和奏が学校に行くと、人だかりができていた。集まっているのは報道陣に警察官。軍服姿の連中もいる。スーツの連中は弁護士か司法書士か、あるいはPTAか。和奏を見つけるや否や、怒濤の如く押し寄せてきた。
「あの女子高生だ!」
「インタビューお願いします!」
「公開暴行の意図は?」
「社長はどんな人物なんですか?」
「元ヤクザというのは本当ですか」
「訴えましょう」
「お願いします、訴えてください」
「県警は、ずっと奴を追いかけてるんです!」
「ヤホーのトップニュースになったのは知ってますか?」
「……トップニュース?」
スマホを弄って確認。すると、トップに和奏と京史郎のことが書かれていた。京史郎との撮影が、虐待の一環として取り上げられているのだ。それを公然の場に晒したというのが、これまでにない最悪のモラルとして、話題を呼んでいるらしい。コメントは惨憺たる有様。
「怪我の方は大丈夫ですか?」
アイドルなら、インタビューには応えた方がいいのだろう。
「あ、あんなのただの遊びっすよ。空手の稽古みたいなもんです」
「それにしては、緑色のチンピラが一方的だったような気がしますが」
「社長は、何事にも全力で取り組むタイプなんで」
「今後、事務所を訴えるご予定は」
「あ、ありえないっすよ! あんなの日常茶飯事ですから!」
「日常茶飯事……まさか、社長の暴行は連日のように行われているのですか?」
問いかけに関しては、ほぼイエスである。拳による暴力だけでなく、言葉による暴力、セクハラ、チンピラの襲撃を退けるための過剰防衛。うん、榊原芸能事務所はグレーをとおり越してブラックだ。ブラッドだ。
和奏が首を縦に振れば、京史郎は一瞬にして塀の中にワープできる。だが、それは望むところではない。女の子らしく生きるための命綱。絶やすわけにはいかない。
「強制されたんじゃないザマスか? 正直に話していいザマスよ。あなたは社会に守られているのザマスから」
「当たってないんです! ぎりぎり避けてます! やられたフリをしてるだけですから!」
「じゃあ、その傷は? 青痣だらけじゃないですか!」
うん。うち、お嬢様学校だもんね。マスコミからすればスキャンダルは大歓迎だよね。
「秋野さん、勇気を出して真実を教えてください!」
炎上商法という言葉があるが、それを狙っているのなら効果は抜群だ。ただし、社長が刑務所にいかなければの話である。ならば、やることはひとつだ。矛先を変える。
「……うち、道場やってるんです」
和奏は、おもむろに話を切り出した。
「今回の事件となんの関係が?」
「三歳の頃から暴力は日常茶飯事。毎日のように稽古と称して殴られ蹴られ、稽古をサボれば井戸に吊され、丸一日なにも食べさせてもらえませんでした」
突然の語りに、マスコミたちは息をのむ。
「逆らえば殴られます。酷いときは骨折もあります。血を吐くまで蹴られ続けたこともありました。山奥に置き去りにされたことも……うちは、そういったことが日常茶飯事の道場です。この前だって、肩の関節を外されました……」
「たしか、彼女の家は秋野道場……」
「この辺りじゃ有名だぞ」
和奏は悲しそうに俯きながら続ける。
「――それに比べたら、お遊戯みたいなもんですよ。日常的に児童虐待をやってるのが、うちの道場ですから。この怪我も、ほとんどが以前からのモノです。動画は、あくまで撮影……。安全には十分配慮してます」
「無名事務所と秋野道場……」
「秋野道場の取材をした方が数字とれるんじゃないか?」
「あの……なぜ、お父様はそんなに厳しいのですか?」
「うちは跡継ぎがいないので、あたしを男として育てたかったんです。……だから、人権なんてなくて……家にアルバムがあるので、幼い頃の写真を見てください。男みたいなカッコばかりですよ。小学生の時なんて、ボウズにされたこともあるんです……うう……」
「なんて時代錯誤な……」
「よし、チンピラなんてどうでもいい!
「秋野道場へ聞き込みに行くぞ!」
「諸悪の根源は父親か!」
「抗議に行くザマス!」
京史郎みたいなチンピラよりも、秋野道場師範の方がビッグネームだと思ったのだろう。あれほどいたギャラリーが、一瞬にして消え去っていく。少なくとも、事務所への風当たりは分散できたのではないか。
けど、まあ、しかし――。
「……あたしも社長に似てきたかなあ」
トントンと、肩を叩かれる和奏。
「あの、県警の者ですけど……どうか、京史郎を訴えてはもらえませんかね……? あいつ、元極道で――」
「あ、無理っす」
☆
十数分後。秋野道場。
「すいません! 秋野道場の秋野大和さんですよね!」「なぜ、娘さんを虐待したんですか!」「一連のニュースに関してどう思われます?」「和奏ちゃんの未来を考えたことはないんですか!?」「本気で跡継ぎにする気なんですか?」
「な、なんだきみたちはッ?」
「娘さんにちんちんがはえているってのは本当ですか?」「なぜ、井戸に吊したんですか?」「児童虐待で、今後警察の手入れがあると思いますが、どうお考えですか?」「ごまかしても無駄ですよ。和奏さんが証言してくれましたから!」
「あ、あのどら娘めぇえぇぇッ!」
――翌日。和奏が学校に行くと、人だかりができていた。集まっているのは報道陣に警察官。軍服姿の連中もいる。スーツの連中は弁護士か司法書士か、あるいはPTAか。和奏を見つけるや否や、怒濤の如く押し寄せてきた。
「あの女子高生だ!」
「インタビューお願いします!」
「公開暴行の意図は?」
「社長はどんな人物なんですか?」
「元ヤクザというのは本当ですか」
「訴えましょう」
「お願いします、訴えてください」
「県警は、ずっと奴を追いかけてるんです!」
「ヤホーのトップニュースになったのは知ってますか?」
「……トップニュース?」
スマホを弄って確認。すると、トップに和奏と京史郎のことが書かれていた。京史郎との撮影が、虐待の一環として取り上げられているのだ。それを公然の場に晒したというのが、これまでにない最悪のモラルとして、話題を呼んでいるらしい。コメントは惨憺たる有様。
「怪我の方は大丈夫ですか?」
アイドルなら、インタビューには応えた方がいいのだろう。
「あ、あんなのただの遊びっすよ。空手の稽古みたいなもんです」
「それにしては、緑色のチンピラが一方的だったような気がしますが」
「社長は、何事にも全力で取り組むタイプなんで」
「今後、事務所を訴えるご予定は」
「あ、ありえないっすよ! あんなの日常茶飯事ですから!」
「日常茶飯事……まさか、社長の暴行は連日のように行われているのですか?」
問いかけに関しては、ほぼイエスである。拳による暴力だけでなく、言葉による暴力、セクハラ、チンピラの襲撃を退けるための過剰防衛。うん、榊原芸能事務所はグレーをとおり越してブラックだ。ブラッドだ。
和奏が首を縦に振れば、京史郎は一瞬にして塀の中にワープできる。だが、それは望むところではない。女の子らしく生きるための命綱。絶やすわけにはいかない。
「強制されたんじゃないザマスか? 正直に話していいザマスよ。あなたは社会に守られているのザマスから」
「当たってないんです! ぎりぎり避けてます! やられたフリをしてるだけですから!」
「じゃあ、その傷は? 青痣だらけじゃないですか!」
うん。うち、お嬢様学校だもんね。マスコミからすればスキャンダルは大歓迎だよね。
「秋野さん、勇気を出して真実を教えてください!」
炎上商法という言葉があるが、それを狙っているのなら効果は抜群だ。ただし、社長が刑務所にいかなければの話である。ならば、やることはひとつだ。矛先を変える。
「……うち、道場やってるんです」
和奏は、おもむろに話を切り出した。
「今回の事件となんの関係が?」
「三歳の頃から暴力は日常茶飯事。毎日のように稽古と称して殴られ蹴られ、稽古をサボれば井戸に吊され、丸一日なにも食べさせてもらえませんでした」
突然の語りに、マスコミたちは息をのむ。
「逆らえば殴られます。酷いときは骨折もあります。血を吐くまで蹴られ続けたこともありました。山奥に置き去りにされたことも……うちは、そういったことが日常茶飯事の道場です。この前だって、肩の関節を外されました……」
「たしか、彼女の家は秋野道場……」
「この辺りじゃ有名だぞ」
和奏は悲しそうに俯きながら続ける。
「――それに比べたら、お遊戯みたいなもんですよ。日常的に児童虐待をやってるのが、うちの道場ですから。この怪我も、ほとんどが以前からのモノです。動画は、あくまで撮影……。安全には十分配慮してます」
「無名事務所と秋野道場……」
「秋野道場の取材をした方が数字とれるんじゃないか?」
「あの……なぜ、お父様はそんなに厳しいのですか?」
「うちは跡継ぎがいないので、あたしを男として育てたかったんです。……だから、人権なんてなくて……家にアルバムがあるので、幼い頃の写真を見てください。男みたいなカッコばかりですよ。小学生の時なんて、ボウズにされたこともあるんです……うう……」
「なんて時代錯誤な……」
「よし、チンピラなんてどうでもいい!
「秋野道場へ聞き込みに行くぞ!」
「諸悪の根源は父親か!」
「抗議に行くザマス!」
京史郎みたいなチンピラよりも、秋野道場師範の方がビッグネームだと思ったのだろう。あれほどいたギャラリーが、一瞬にして消え去っていく。少なくとも、事務所への風当たりは分散できたのではないか。
けど、まあ、しかし――。
「……あたしも社長に似てきたかなあ」
トントンと、肩を叩かれる和奏。
「あの、県警の者ですけど……どうか、京史郎を訴えてはもらえませんかね……? あいつ、元極道で――」
「あ、無理っす」
☆
十数分後。秋野道場。
「すいません! 秋野道場の秋野大和さんですよね!」「なぜ、娘さんを虐待したんですか!」「一連のニュースに関してどう思われます?」「和奏ちゃんの未来を考えたことはないんですか!?」「本気で跡継ぎにする気なんですか?」
「な、なんだきみたちはッ?」
「娘さんにちんちんがはえているってのは本当ですか?」「なぜ、井戸に吊したんですか?」「児童虐待で、今後警察の手入れがあると思いますが、どうお考えですか?」「ごまかしても無駄ですよ。和奏さんが証言してくれましたから!」
「あ、あのどら娘めぇえぇぇッ!」
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