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第24話 二撃必殺
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撮影終了後。
その日。心音は、穂織と一緒に帰ることになった。
以前、あのようなことがあったゆえに、苦手意識は抜けないのだが、怒らせさえしなければ怖いことにはならない。穂織の沸点は非常に高い。その滅多に越えない沸点をオーバーした時がヤバいだけなのだ。それだけ注意すれば、いい先輩なのである。
「いやあ、撮影大変でしたね。まさか、京さんがあんなことするなんて……。人にできないことをするのも魅力のうちなんですけど、さすがに和奏先輩がかわいそうというか……」
「ふふ、そうだね」
ほんのり笑う穂織。その笑みを絶やさぬまま、彼女はおもむろに切り出す。
「ねえ、心音ちゃん。和奏ちゃんの下駄箱にスズメバチを入れたことあったよね?」
「え? そ、それは、そのっ――」
「ああ、いいんだ。あれは終わったことなんだから。もう、仲良しだからね。ね?」
「は、はい! ななな仲良しです!」
「だからさ、教えて欲しいんだ。……あのスズメバチ、どこで捕まえたのか――」
――あ、ヤバい。穂織先輩。裏モードに入ってる。
この状態になった穂織の恐ろしさを、心音は身に染みるほど知っている。たぶん、ヤバいことを考えている。けど当然、断れるわけがなく、口を開いた。
「え、ええと……熊麻山の展望駐車場のトイレの裏に巣があって……」
「そう。巣があるんだ――」
「あ、あの、穂織先輩! 京さんも、悪戯が過ぎたかも知れませんけど、半分は和奏先輩のことを思ってやってるんだと思いますよ!」
「そうかな? じゃ、次は、心音ちゃんがやってみる? 瓦割り」
「あ、頭で、ですか?」
「ううん。顎とかどうかな?」
穂織は笑っている。笑っているけど、絶対に怒っている。
「心音ちゃんって、京史郎さんのストーカーだよね? 住んでるところも知ってるよね? ね? ね? ねぇ?」
☆
翌日。榊原芸能事務所。
昨晩の動画が投稿されたようだ。緑色のモザイクが、和奏の後頭部を掴んで瓦割りに挑戦している一部始終。それを眺めて、和奏は自虐気味につぶやく。
「うっわ……すっげえ再生数……」
半日足らずで三十万再生。乙女華にも、ユーチューバーを目指してる奴がいたが、初めての投稿は一日で五再生とか、その程度だった。そう考えると、京史郎のプロデュースは間違っていなかったことになる。
和奏としては複雑な心境だ。おかげで注目を浴びることができたし、実際に応援のメールなどが、サイトに送られてきている。
「けど、バッド評価ばかりだし……コメント欄も絶賛炎上中なんだよな……」
「――おう。和奏、サボリか?」
京史郎のご登場。気怠そうに応接室へと入ってくる。ちなみに、和奏はサボっているわけではない。穂織は図書委員の仕事で遅れる。心音も飼育委員の仕事があるのだ。何をすればいいのかわからないので、社長を待っていただけなのである。
「おはざす、社長。遅かったっすね」
「朝からトラブっちまってな。おかげでスケジュールがくるっちまった」
「なにがあったんすか?」
「玄関の外にスズメバチの巣ができてたんだよ。めちゃくちゃデカいやつな。一晩で、できるもんなのかね。おかげで外に出られなくてな。業者呼んだりして、忙しかった」
「暖かくなってきたし、蜂も活発になってきたんすかね」
ありとあらゆる方面に恨みを買っている京史郎のことだ。きっと、昆虫からも恨まれているのだろう。
「去年、山奥で刺されたんだよな。蜂って二回刺されるとアナフィラキシーで死ぬんだろ。さすがに慎重にもなるぜ」
「……山奥に何しに行ったんすか?」
「クワガタを取りに」
適当な言葉ではぐらしてきた。ナマモノを埋めに行ったのではないと思いたい。
「んで、動画の方は?」
「絶賛炎上中っす」
「そうか。ま、当人であるおまえがなんとかしとけ。間違っても、俺が逮捕されるような事件にするんじゃねえぞ」
「そっちの方はぬかりねえっす。さっき、メールでインタビューに答えたんで」
☆
その日。秋野道場。
玄関の前には数多の報道陣が押し寄せてきていた。秋野大和が外出しようとするや、それらが一斉に質問を浴びせかける。
「すいません、大和さん! 幼い和奏さんの頭蓋骨を粉砕していたって本当ですか?」「病院にも連れて行かず、唾を付けてなおしたって本当ですか」「虐待の自覚は?」「今後、道場をどう運営するおつもりですか」「弟子にも同じことをしているんですか?」「犯罪だって自覚はありますか」「質問に答えてください!」「逃げないでください!」
「またおまえらか! ええい、失せろ、失せろぉっ! おのれ、和奏めぇええぇぇッ!」
その日。心音は、穂織と一緒に帰ることになった。
以前、あのようなことがあったゆえに、苦手意識は抜けないのだが、怒らせさえしなければ怖いことにはならない。穂織の沸点は非常に高い。その滅多に越えない沸点をオーバーした時がヤバいだけなのだ。それだけ注意すれば、いい先輩なのである。
「いやあ、撮影大変でしたね。まさか、京さんがあんなことするなんて……。人にできないことをするのも魅力のうちなんですけど、さすがに和奏先輩がかわいそうというか……」
「ふふ、そうだね」
ほんのり笑う穂織。その笑みを絶やさぬまま、彼女はおもむろに切り出す。
「ねえ、心音ちゃん。和奏ちゃんの下駄箱にスズメバチを入れたことあったよね?」
「え? そ、それは、そのっ――」
「ああ、いいんだ。あれは終わったことなんだから。もう、仲良しだからね。ね?」
「は、はい! ななな仲良しです!」
「だからさ、教えて欲しいんだ。……あのスズメバチ、どこで捕まえたのか――」
――あ、ヤバい。穂織先輩。裏モードに入ってる。
この状態になった穂織の恐ろしさを、心音は身に染みるほど知っている。たぶん、ヤバいことを考えている。けど当然、断れるわけがなく、口を開いた。
「え、ええと……熊麻山の展望駐車場のトイレの裏に巣があって……」
「そう。巣があるんだ――」
「あ、あの、穂織先輩! 京さんも、悪戯が過ぎたかも知れませんけど、半分は和奏先輩のことを思ってやってるんだと思いますよ!」
「そうかな? じゃ、次は、心音ちゃんがやってみる? 瓦割り」
「あ、頭で、ですか?」
「ううん。顎とかどうかな?」
穂織は笑っている。笑っているけど、絶対に怒っている。
「心音ちゃんって、京史郎さんのストーカーだよね? 住んでるところも知ってるよね? ね? ね? ねぇ?」
☆
翌日。榊原芸能事務所。
昨晩の動画が投稿されたようだ。緑色のモザイクが、和奏の後頭部を掴んで瓦割りに挑戦している一部始終。それを眺めて、和奏は自虐気味につぶやく。
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半日足らずで三十万再生。乙女華にも、ユーチューバーを目指してる奴がいたが、初めての投稿は一日で五再生とか、その程度だった。そう考えると、京史郎のプロデュースは間違っていなかったことになる。
和奏としては複雑な心境だ。おかげで注目を浴びることができたし、実際に応援のメールなどが、サイトに送られてきている。
「けど、バッド評価ばかりだし……コメント欄も絶賛炎上中なんだよな……」
「――おう。和奏、サボリか?」
京史郎のご登場。気怠そうに応接室へと入ってくる。ちなみに、和奏はサボっているわけではない。穂織は図書委員の仕事で遅れる。心音も飼育委員の仕事があるのだ。何をすればいいのかわからないので、社長を待っていただけなのである。
「おはざす、社長。遅かったっすね」
「朝からトラブっちまってな。おかげでスケジュールがくるっちまった」
「なにがあったんすか?」
「玄関の外にスズメバチの巣ができてたんだよ。めちゃくちゃデカいやつな。一晩で、できるもんなのかね。おかげで外に出られなくてな。業者呼んだりして、忙しかった」
「暖かくなってきたし、蜂も活発になってきたんすかね」
ありとあらゆる方面に恨みを買っている京史郎のことだ。きっと、昆虫からも恨まれているのだろう。
「去年、山奥で刺されたんだよな。蜂って二回刺されるとアナフィラキシーで死ぬんだろ。さすがに慎重にもなるぜ」
「……山奥に何しに行ったんすか?」
「クワガタを取りに」
適当な言葉ではぐらしてきた。ナマモノを埋めに行ったのではないと思いたい。
「んで、動画の方は?」
「絶賛炎上中っす」
「そうか。ま、当人であるおまえがなんとかしとけ。間違っても、俺が逮捕されるような事件にするんじゃねえぞ」
「そっちの方はぬかりねえっす。さっき、メールでインタビューに答えたんで」
☆
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「すいません、大和さん! 幼い和奏さんの頭蓋骨を粉砕していたって本当ですか?」「病院にも連れて行かず、唾を付けてなおしたって本当ですか」「虐待の自覚は?」「今後、道場をどう運営するおつもりですか」「弟子にも同じことをしているんですか?」「犯罪だって自覚はありますか」「質問に答えてください!」「逃げないでください!」
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