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#5 シュウカイドウ
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今日も一日。やっと終わったー。
そう思いながら会社のエントランスから出た時だった。
「天川!!」
聞きなれた声が私を呼んだ。
声のする方向を見るとそこには前の部所の先輩の沖田瑠衣がいた。
「あ、瑠衣先輩!!!お久しぶりですー!」
まだ数日しかたっていないのにとても久しぶりな気がした。
「お疲れ様ー。最近どう?社長秘書、慣れた?」
「、、、。」
瑠衣先輩の声。
数日前まで私の日常に溶け込んでいた頼れる懐かしい声。
その声が、まだ慣れない仕事への緊張で凍りついていた私の心を溶かし、ほぐしてくれたかのような、優しく居心地の良いやすらぎを感じた。
感じすぎて、返答せずに、ぼーっとしてしまった。
すると瑠衣先輩が
「おーい!!大丈夫か??」
と心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「あ、すいません!!少しホッとして。」
「ホッと??何に??」
「先輩の懐かしい声に、、。ですかね。」
言葉で発するとなんだかとても恥ずかしくなり思わず下を向いていてしまった。
そして少しの間、沈黙が続いた。
瑠衣先輩は、私の気持ちを悟ってくれたのだろう。その沈黙を切り裂いて、無理に作ったかのような話題を私に振ってくれた。
「あ、そういえば!!今日は社長と一緒じゃないんだな。」
さすが瑠衣先輩。ぎこちなさがないなー。
こういう所も含めてほんとに優しいなと改めて感じる。
「あ、はい。今日は少し仕事が残っているらしくて待たせるのは悪いから先に帰ってくれ。と言われまして、、、。」
「そうなのか、、。もしかしてー、、毎日、一緒に帰っているのか??」
と 、眉間に皺を寄せた顔で何か心配するかのように、私の顔を覗き込んだ。
「ま、まさかー!!いつも成り行きで一緒に帰っているだけですから!」
「ふーん。そうなのか。」
と、答えているのに、何故か瑠衣先輩の顔から疑惑の文字は消えなかった。
そしてまた沈黙の時が流れた。
瑠衣先輩はさっきからずっと考え込んでいるような、ムスッとしているかのような顔で顎に手を当て下を向いて黙っている。
こんな顔、仕事で考え事してる時しか見ないよなー。プライベートはいつも笑顔で、話は絶やさない人なのに、珍しい。
少しその光景を物珍しく見つつ、私はなにか話題を作り、この何となく居心地の悪い沈黙から脱しようと話題の緒をさっきの会話を振り返りつつ探していた。
ん、、、?
そういえば、さっき確か、、、『今日は社長と一緒じゃないんだな』って言ったよな、、。
『は』ってまるで毎日私と社長が一緒に帰っていることを知っているかのような言い方、、、。
気になってしまい、念には念をと、動揺を隠し、さりげなく
「さっき今日『は』って言ってましたけど、、、『は』ってどういうことですか、、、。」
と聞いた。
上手く隠したかったが、私に動揺を隠すなど上手いことは出来なかった。
自分でも、引いた顔で聞いた事が分かるくらい。
「ハハッ!!天川、相変わらず正直だな。俺がせっかく話題を作ってやったというのにー。そんな引いた顔で聞くな。傷つくだろー。」
「す、すいません、、。」
「いいよいいよ!天川だもんな!!」
と笑いながら言って続けた。
「ここ数日帰るタイミングが一緒で何回か見かけたんだ。天川と社長が仲良さそうに一緒に帰っているとこ。」
そうなんだ、、。気づかなかったなー。
と思っていると瑠衣先輩が何かを思い出したかのように
「あ、今度の土曜空いてるか?プライベートの方で少し付き合って欲しいんだけど。」
と私に聞いた。
「土曜ですか、、、空いてるは空いてますけど、、」
先輩にプライベートで誘われるのは初めてだった。
でも、
今度の土曜かー。
ゴロゴロする日って決めてたんだけどなー。
と悩んでいると先輩が
「さっきの言葉、、傷ついたなー。」
といたずら好きの子供のような顔で、唇を突き立てて、ボソッと言った。
痛いところをつかれた。
そんなことを言われたら、、。
私に「はい」という他に道はあるのだろうか。
そう思いながら会社のエントランスから出た時だった。
「天川!!」
聞きなれた声が私を呼んだ。
声のする方向を見るとそこには前の部所の先輩の沖田瑠衣がいた。
「あ、瑠衣先輩!!!お久しぶりですー!」
まだ数日しかたっていないのにとても久しぶりな気がした。
「お疲れ様ー。最近どう?社長秘書、慣れた?」
「、、、。」
瑠衣先輩の声。
数日前まで私の日常に溶け込んでいた頼れる懐かしい声。
その声が、まだ慣れない仕事への緊張で凍りついていた私の心を溶かし、ほぐしてくれたかのような、優しく居心地の良いやすらぎを感じた。
感じすぎて、返答せずに、ぼーっとしてしまった。
すると瑠衣先輩が
「おーい!!大丈夫か??」
と心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「あ、すいません!!少しホッとして。」
「ホッと??何に??」
「先輩の懐かしい声に、、。ですかね。」
言葉で発するとなんだかとても恥ずかしくなり思わず下を向いていてしまった。
そして少しの間、沈黙が続いた。
瑠衣先輩は、私の気持ちを悟ってくれたのだろう。その沈黙を切り裂いて、無理に作ったかのような話題を私に振ってくれた。
「あ、そういえば!!今日は社長と一緒じゃないんだな。」
さすが瑠衣先輩。ぎこちなさがないなー。
こういう所も含めてほんとに優しいなと改めて感じる。
「あ、はい。今日は少し仕事が残っているらしくて待たせるのは悪いから先に帰ってくれ。と言われまして、、、。」
「そうなのか、、。もしかしてー、、毎日、一緒に帰っているのか??」
と 、眉間に皺を寄せた顔で何か心配するかのように、私の顔を覗き込んだ。
「ま、まさかー!!いつも成り行きで一緒に帰っているだけですから!」
「ふーん。そうなのか。」
と、答えているのに、何故か瑠衣先輩の顔から疑惑の文字は消えなかった。
そしてまた沈黙の時が流れた。
瑠衣先輩はさっきからずっと考え込んでいるような、ムスッとしているかのような顔で顎に手を当て下を向いて黙っている。
こんな顔、仕事で考え事してる時しか見ないよなー。プライベートはいつも笑顔で、話は絶やさない人なのに、珍しい。
少しその光景を物珍しく見つつ、私はなにか話題を作り、この何となく居心地の悪い沈黙から脱しようと話題の緒をさっきの会話を振り返りつつ探していた。
ん、、、?
そういえば、さっき確か、、、『今日は社長と一緒じゃないんだな』って言ったよな、、。
『は』ってまるで毎日私と社長が一緒に帰っていることを知っているかのような言い方、、、。
気になってしまい、念には念をと、動揺を隠し、さりげなく
「さっき今日『は』って言ってましたけど、、、『は』ってどういうことですか、、、。」
と聞いた。
上手く隠したかったが、私に動揺を隠すなど上手いことは出来なかった。
自分でも、引いた顔で聞いた事が分かるくらい。
「ハハッ!!天川、相変わらず正直だな。俺がせっかく話題を作ってやったというのにー。そんな引いた顔で聞くな。傷つくだろー。」
「す、すいません、、。」
「いいよいいよ!天川だもんな!!」
と笑いながら言って続けた。
「ここ数日帰るタイミングが一緒で何回か見かけたんだ。天川と社長が仲良さそうに一緒に帰っているとこ。」
そうなんだ、、。気づかなかったなー。
と思っていると瑠衣先輩が何かを思い出したかのように
「あ、今度の土曜空いてるか?プライベートの方で少し付き合って欲しいんだけど。」
と私に聞いた。
「土曜ですか、、、空いてるは空いてますけど、、」
先輩にプライベートで誘われるのは初めてだった。
でも、
今度の土曜かー。
ゴロゴロする日って決めてたんだけどなー。
と悩んでいると先輩が
「さっきの言葉、、傷ついたなー。」
といたずら好きの子供のような顔で、唇を突き立てて、ボソッと言った。
痛いところをつかれた。
そんなことを言われたら、、。
私に「はい」という他に道はあるのだろうか。
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