Secret🥀Speech

UNAGI--UNAGI

文字の大きさ
5 / 6

#5 シュウカイドウ

しおりを挟む
今日も一日。やっと終わったー。
そう思いながら会社のエントランスから出た時だった。
「天川!!」
聞きなれた声が私を呼んだ。
声のする方向を見るとそこには前の部所の先輩の沖田瑠衣がいた。
「あ、瑠衣先輩!!!お久しぶりですー!」
まだ数日しかたっていないのにとても久しぶりな気がした。
「お疲れ様ー。最近どう?社長秘書、慣れた?」
「、、、。」
瑠衣先輩の声。
数日前まで私の日常に溶け込んでいた頼れる懐かしい声。
その声が、まだ慣れない仕事への緊張で凍りついていた私の心を溶かし、ほぐしてくれたかのような、優しく居心地の良いやすらぎを感じた。

感じすぎて、返答せずに、ぼーっとしてしまった。
すると瑠衣先輩が
「おーい!!大丈夫か??」
と心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「あ、すいません!!少しホッとして。」

「ホッと??何に??」

「先輩の懐かしい声に、、。ですかね。」
言葉で発するとなんだかとても恥ずかしくなり思わず下を向いていてしまった。
そして少しの間、沈黙が続いた。

瑠衣先輩は、私の気持ちを悟ってくれたのだろう。その沈黙を切り裂いて、無理に作ったかのような話題を私に振ってくれた。
「あ、そういえば!!今日は社長と一緒じゃないんだな。」
さすが瑠衣先輩。ぎこちなさがないなー。
こういう所も含めてほんとに優しいなと改めて感じる。
「あ、はい。今日は少し仕事が残っているらしくて待たせるのは悪いから先に帰ってくれ。と言われまして、、、。」
「そうなのか、、。もしかしてー、、毎日、一緒に帰っているのか??」
と 、眉間に皺を寄せた顔で何か心配するかのように、私の顔を覗き込んだ。
「ま、まさかー!!いつも成り行きで一緒に帰っているだけですから!」
「ふーん。そうなのか。」
と、答えているのに、何故か瑠衣先輩の顔から疑惑の文字は消えなかった。

そしてまた沈黙の時が流れた。
瑠衣先輩はさっきからずっと考え込んでいるような、ムスッとしているかのような顔で顎に手を当て下を向いて黙っている。

こんな顔、仕事で考え事してる時しか見ないよなー。プライベートはいつも笑顔で、話は絶やさない人なのに、珍しい。

少しその光景を物珍しく見つつ、私はなにか話題を作り、この何となく居心地の悪い沈黙から脱しようと話題の緒をさっきの会話を振り返りつつ探していた。

ん、、、?
そういえば、さっき確か、、、『今日は社長と一緒じゃないんだな』って言ったよな、、。
『は』ってまるで毎日私と社長が一緒に帰っていることを知っているかのような言い方、、、。

気になってしまい、念には念をと、動揺を隠し、さりげなく
「さっき今日『は』って言ってましたけど、、、『は』ってどういうことですか、、、。」
と聞いた。
上手く隠したかったが、私に動揺を隠すなど上手いことは出来なかった。
自分でも、引いた顔で聞いた事が分かるくらい。
「ハハッ!!天川、相変わらず正直だな。俺がせっかく話題を作ってやったというのにー。そんな引いた顔で聞くな。傷つくだろー。」

「す、すいません、、。」

「いいよいいよ!天川だもんな!!」
と笑いながら言って続けた。
「ここ数日帰るタイミングが一緒で何回か見かけたんだ。天川と社長が仲良さそうに一緒に帰っているとこ。」

そうなんだ、、。気づかなかったなー。
と思っていると瑠衣先輩が何かを思い出したかのように
「あ、今度の土曜空いてるか?プライベートの方で少し付き合って欲しいんだけど。」
と私に聞いた。
「土曜ですか、、、空いてるは空いてますけど、、」
先輩にプライベートで誘われるのは初めてだった。
でも、
今度の土曜かー。
ゴロゴロする日って決めてたんだけどなー。
と悩んでいると先輩が
「さっきの言葉、、傷ついたなー。」
といたずら好きの子供のような顔で、唇を突き立てて、ボソッと言った。
痛いところをつかれた。
そんなことを言われたら、、。

私に「はい」という他に道はあるのだろうか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】愛する夫の務めとは

Ringo
恋愛
アンダーソン侯爵家のひとり娘レイチェルと結婚し婿入りした第二王子セドリック。 政略結婚ながら確かな愛情を育んだふたりは仲睦まじく過ごし、跡継ぎも生まれて順風満帆。 しかし突然王家から呼び出しを受けたセドリックは“伝統”の遂行を命じられ、断れば妻子の命はないと脅され受け入れることに。 その後…… 城に滞在するセドリックは妻ではない女性を何度も抱いて子種を注いでいた。 ※完結予約済み ※全6話+おまけ2話 ※ご都合主義の創作ファンタジー ※ヒーローがヒロイン以外と致す描写がございます ※ヒーローは変態です ※セカンドヒーロー、途中まで空気です

【完結】愛されないと知った時、私は

yanako
恋愛
私は聞いてしまった。 彼の本心を。 私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。 父が私の結婚相手を見つけてきた。 隣の領地の次男の彼。 幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。 そう、思っていたのだ。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
恋愛
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

元婚約者が修道院送りになった令嬢を呼び戻すとき

岡暁舟
恋愛
「もう一度やり直そう」 そんなに上手くいくのでしょうか???

処理中です...