生者の記憶、亡き人の願い。

Tobal

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1.俺たちの全てが奪われたあの日。

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あの日というのは、とうとう俺たちが暮らしているリッキャ王国というところにも
ウイルスが蔓延し始めた時の事だ。
ウイルスの情報は既に広がりつつあったのだが、まだまだ謎なことは多い一方だ。
最初に、俺の知り合いの農家のおじさんが感染した。
ここ最近顔を見ていないと思ったら酷い状態で発見された。
家畜を食べていたのか、どこが生臭く、血の匂いがした。
おじさんは、もう遅く、亡くなっていた。
この前、野菜をたくさんくれた。もうおじさんはいない。辛かった。悲しかった。
当然の話だが、遺体は誰かが処理しなければいけない。
そこで、役員が処理することになった。
役員は酷くおびえていた。死体を見たからだろうか。
それとも、最近新たに分かった情報を知っていたのか…。
役員は、死体処理後、ウイルスに感染したらしい。
自覚がないままでほかの役員に移しまくったらしいが…。
その出来事からあっという間だった。
俺の親、友だち、近所の子供たち…。
次々に倒れていった。見てられなかった。
みんな、最期は決まってこう言うんだ。
「強く生きろ。早く出ていけ」
「今までありがとう…。早く逃げなさい」
耐えられるわけがない。知り合いを一度に失うなんて…。
弟も失った。だけどとても印象に残る言葉を残して逝ってしまった。
「僕は兄ちゃんから離れないから…!本当だもん…。橋の向こうで待ってるからさ、そのときは色々お話…」
あの時、弟は最期に何を言おうとしたのだろう。
俺の推測だが、「お話聞かせてね。」と言おうとしたのか。
弟は昔からだが物語や話を聞くことが大好きだった。
俺はあまりにも多くのものを失いすぎた。
もう、笑うしかない。笑わないと耐えられない。
でも、悲しみが消える。いや、薄れることもないだろう。
あぁ。もう嫌だ。逃げたい。でも…そうはいかない。
俺は突然として、何人もの思いを背負って生きていかなきゃいけなくなった。
ここから俺の「価値観」というものが狂っていった。
俺はなぜ生きているのか。何度も自ら命を絶とうとしたこともあった。
だが、家族のため、一番は弟のためにも生きて、話を持ち帰らなければ。
これが俺の唯一の「使命」だ。
俺が生きる希望を持てたのは「使命」があるからな…。

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