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『冷血騎士』は女嫌い

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「ギルベール様は、超がつくほどの女嫌いなんです…!!」
カルファは叫んで言った。
「…ちょっ!?声が大きいです。」
これでは周囲の人間にも話が聞こえてしまう。
カルファは申し訳なさそうに言った。
「…失礼いたしました。
場所を変えませんか?」

確かに、場所を変えるというのは名案だ。
「…出来れば、人目につかない所がいいんだけど…。」
「分かりました。
ばっちりな場所がありますよ。」

…なんとなく、嫌な予感がしたがこのまま話すわけにもいかないので、
カルファについていくことにした。

ついたと思ってみると、そこは豪華な家ではないか。
「…あの、カルファ?
ここはどこ…??」
「ここは、ギルベール様…つまりは私たちの家です!!」

(…ほら~~~。
嫌な予感がしたのよね。
なんかカルファが妙に活き活きしてたっていうか…。)
だからと言って、このギルベール様たちの家以外に話す場所が見つかる気がしないので、この家で喋ることにした。

「…さて、さっきの話の続きですが…
我が主の、ギルベール様は、女嫌いなのです。」

…この家…屋敷には、使用人がたくさんいた。
たくさんいたが、女性の使用人やメイド一切見ていない。
もしかして、それもギルベール様の女嫌いのせいなのかな…?
私はそう思ったが、今は聞かないことにした。

…それより先に、聞くことがある。
「…結局、私である必要は?」
「大変言いづらいのですが…。
アンジュ様には、ギルベール様との婚約をしてほしいのです。
もちろん、本当に愛し合っていただく方が、従者としては嬉しいのですが…。
ですが!ギルベール様が年増になる前に、婚約相手を見つけてほしいのです!
…つまり、ギルベール様の婚約相手は貴方様しかいないのです!」
(…主を年増扱いするのは従者としてどうなんだ…??)

…とりあえず。状況が見えて来たわね。
多分、カルファがさっき言っていた、
「今のアンジュ様は、ギルベール様と婚約するに最適な条件が揃っています。」という言葉の意味は、
いくらあの『冷血騎士』で、女嫌いのギルベール様でも、婚約すれば衣食住が保証される…
王家を追い出された今の私なら、飛びつくだろうと思ったのか。

「…ちなみに、ギルベール様にこの話は伝えてあるの?
もし私が「えぇ、すぐに婚約します!」なんて言ったら、このまま婚約の手続きになるでしょ?」
カルファは微笑んだ。
「いいえ?伝えてないですけど。」
「なんでよ!?何で伝えてないの!?」
従者が勝手にこんなことしてて良いの…!?
この従者、本当にめちゃくちゃね、、。
「だって~~~!
ギルベール様、婚約相手を探してるなんて事前に伝えたら激怒しますもん。」

…確かに、女嫌いなら、激怒するかも。
カルファの主に対しての態度も少し原因な気がするけど…。

「アンジュ様はこの婚約、受け入れてくれますか?
衣食住が保証されるんですよ~?それに、『冷血騎士』の婚約相手という後ろ盾もできる。
貴方に得しかないと思いますけどね。」
…その通り、だ。
ここは、流れに身を任せて婚約してみるのも手かもしれない。

「…わかりました。
私は、ギルベール様と婚約をします。」

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