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第十話〜前田君との出会い①〜
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「澄依ちゃん最近元気ない?」
華奈ちゃんは鋭いな。
でも元気ない訳じゃないよ。
外の梅雨空と同じで少しスッキリしない気分なのと、ただポカーンと心に穴が開いたみたいに、少し寂しいだけ。
もしかしたらそれを元気ないって言うのかもしれないし、華奈ちゃんには全部見透かされてるかもしれないけど、心配かけないように精一杯の笑顔で応える。
「そんな事ないよ」
「そう? 何か相談したい事あったら遠慮なく言ってね」
「ありがとう」
そしてなんだかんだで空気を読む子だから、こういう時に無理に話を聞き出そうなんて野暮な事もしない。
それが彼女の良いところで、私が彼女を好きな理由。
でも、頭の回転が速い彼女の誘導尋問に引っかかってしまう事は多々あるけど。
「次は一号館だよね? ちょっと急ごうか」
「うん」
青山君とはあれ以来連絡を取っていない。
少し前まで毎日のように連絡を取っていたのが嘘のよう。
あれほど待ち遠しかった夜が、今は鳴らないスマホをただ待つだけの寂しい夜になっている。
前みたいに、連絡来るの毎晩待ってるのに。
あの日、青山君が別れ際に言った言葉、本当は何て言ったの?
独り言なんて嘘だよね?
どうして何て言ったのか教えてくれないの?
最近、暇さえあればこうやって青山君の事ばかり考えてる気がする。
家でも、バイト先でも、講義中の今ですら。
「――ちゃん、澄依ちゃん! お昼どうする? 今日は学食でいい?」
隣の席の華奈ちゃんがノートと教科書をリュックに仕舞いながら言う。
あ、いつの間にか講義終わってたんだ。
どうにかノートだけは書き写したものの、途中から先生の話が全く頭に入っていない。
これだとテスト前まずいから、後で華奈ちゃんに要点を絞って教えてもらわなきゃ。
「うん、学食行こう」
二限が終わり、構内の学食へ向かう。
この時間帯は一番混んでるけど、今日はこの後三限があるので早めに済ませたいところ。
券売機に並びながら何にしようか考える。
「今日は何にしようかな~揚げ物の気分なんだよね~」
華奈ちゃんは、ボリュームたっぷりの唐揚げ定食にするらしい。
いつもお肉をたっぷり食べる華奈ちゃんは、とてもスタイルが良い。
脚は真っ直ぐスラーっと長くて、おそらくお胸も大きい。
出るところと引っ込むところのメリハリがちゃんとついていて羨ましい限りだ。
いいなぁ。
私はどうしようかな。
少しでも元気が出るように、がっつりと豚丼にしようかな。
これで四百円は本当にありがたい。
ピッ♪
券売機のボタンを押す指先だって軽快そのものだ。
丼コーナーで豚丼の乗ったトレイを受け取ると、見知らぬ男子に声を掛けられた。
華奈ちゃんは鋭いな。
でも元気ない訳じゃないよ。
外の梅雨空と同じで少しスッキリしない気分なのと、ただポカーンと心に穴が開いたみたいに、少し寂しいだけ。
もしかしたらそれを元気ないって言うのかもしれないし、華奈ちゃんには全部見透かされてるかもしれないけど、心配かけないように精一杯の笑顔で応える。
「そんな事ないよ」
「そう? 何か相談したい事あったら遠慮なく言ってね」
「ありがとう」
そしてなんだかんだで空気を読む子だから、こういう時に無理に話を聞き出そうなんて野暮な事もしない。
それが彼女の良いところで、私が彼女を好きな理由。
でも、頭の回転が速い彼女の誘導尋問に引っかかってしまう事は多々あるけど。
「次は一号館だよね? ちょっと急ごうか」
「うん」
青山君とはあれ以来連絡を取っていない。
少し前まで毎日のように連絡を取っていたのが嘘のよう。
あれほど待ち遠しかった夜が、今は鳴らないスマホをただ待つだけの寂しい夜になっている。
前みたいに、連絡来るの毎晩待ってるのに。
あの日、青山君が別れ際に言った言葉、本当は何て言ったの?
独り言なんて嘘だよね?
どうして何て言ったのか教えてくれないの?
最近、暇さえあればこうやって青山君の事ばかり考えてる気がする。
家でも、バイト先でも、講義中の今ですら。
「――ちゃん、澄依ちゃん! お昼どうする? 今日は学食でいい?」
隣の席の華奈ちゃんがノートと教科書をリュックに仕舞いながら言う。
あ、いつの間にか講義終わってたんだ。
どうにかノートだけは書き写したものの、途中から先生の話が全く頭に入っていない。
これだとテスト前まずいから、後で華奈ちゃんに要点を絞って教えてもらわなきゃ。
「うん、学食行こう」
二限が終わり、構内の学食へ向かう。
この時間帯は一番混んでるけど、今日はこの後三限があるので早めに済ませたいところ。
券売機に並びながら何にしようか考える。
「今日は何にしようかな~揚げ物の気分なんだよね~」
華奈ちゃんは、ボリュームたっぷりの唐揚げ定食にするらしい。
いつもお肉をたっぷり食べる華奈ちゃんは、とてもスタイルが良い。
脚は真っ直ぐスラーっと長くて、おそらくお胸も大きい。
出るところと引っ込むところのメリハリがちゃんとついていて羨ましい限りだ。
いいなぁ。
私はどうしようかな。
少しでも元気が出るように、がっつりと豚丼にしようかな。
これで四百円は本当にありがたい。
ピッ♪
券売機のボタンを押す指先だって軽快そのものだ。
丼コーナーで豚丼の乗ったトレイを受け取ると、見知らぬ男子に声を掛けられた。
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