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第十一話〜前田君との出会い②〜
しおりを挟む「あれぇ? この間の……」
「えっ?」
かなり明るい髪色に垂れ下がるピアス、人は見た目で判断してはいけないと分かっているけど、見るからにチャラそうな出立ちに、警戒心がマックスになった。
「ごめんごめん! 俺、前田って言うんだけど、この間ここで咲音と話してた子だよね? 人違い?」
「あぁ! 青山君の!」
言われてやっと思い出した。
青山君に『席取っておく』って声掛けてた人だ!
「そうそう! だから怪しい者じゃないですよ」
笑うとこの人全然印象が違う。
目尻にクシャって皺が寄って、急に可愛らしく見える。
やっぱり人は見た目で判断してはいけなかった。
いけない、いけない。
「ごめんなさい。実は怪しんでいました」
「あははっ! 素直かよ! 咲音あっちにいるよ。良かったら一緒に食べない? 友達も一緒にさ」
「えーと……」
「はーい! 食べる食べるぅ。お言葉に甘えて行こう、澄依ちゃん!」
華奈ちゃんたらいつの間に――
――ソシテ、ドウシテコウナッタ。
元気でノリの良い華奈ちゃんのおかげで、青山君の友達である前田君に言われるがまま付いてきたわけですが、何故私が青山君の隣の席に!?
気まずい……これは非常に気まずいです。
もちろん、元気そうな顔を見られたのは嬉しい。
彼からの連絡を待っていたのも本当。
でもまさか、こうして今日目の前で会うとは思ってもみなくて。
久々に会ったから緊張するのもあるけど、この間の『キス出来る』発言といい、今日私は例のヘアゴムで髪をまとめているのだ。
あ、でも"使ってます"アピール出来るから返って良いのかも?
いや、別にアピールする必要なんてないか。
もうこうなったら無限豚丼だ。
息つく間もなく夢中で頬張れば、特に会話もせずに済むし、余計な事も考えずに済むだろう。
「豚丼美味しい?」
「むぐっ」
一心不乱に口をモグモグ動かす私に先制攻撃を仕掛けたのは、意外な事に青山君の方だった。
「う、うん。美味しいよ、これ」
「そこついてる」
差し出されたペーパーナプキンを有り難く受け取ると、青山君は人差し指を立てて私の顎先を指差した。
これ、私の顎に付いてるって事だよね!?
恥ずかしっ。
カッコ悪っ。
「違うそこじゃない、そっち」
「え? ここ? 違う?」
「ちょっといい?」
ドキッ――
一瞬、手を握られたのかと思って心臓が飛び跳ねた。
これは違う、ペーパーナプキンを誘導してくれただけ。
だから勘違いしてはいけない。
勘違いなんてしないけど、私の顎に彼の手が近づいた時、あの甘ったるい香水の香りがフワッと鼻を掠めたのには参った。
私はあの匂いを嗅ぐとどうしても変な気分になる。
切ないような、胸の奥が疼くような、簡単な言葉では表せないような気分に。
「こんなところでイチャつくなよ」
「違うって。顎に付いてたから教えただけ」
ニヤニヤする前田君に揶揄われ私は再度心臓が跳ねたけど、青山君はなんて事ない表情でサラッと返す。
「ねぇ、澄依ちゃんと華奈ちゃんさ、来月〇〇市で花火大会あるの知ってる? 良かったら俺らと一緒に行かない?」
「え!? 行く行く!! いいよね? 澄依ちゃんっ」
「マジで~? じゃあ連絡先交換しよ!」
無邪気にはしゃぐ華奈ちゃんと前田君、無関心なのか、頬杖をついて窓の外を眺める青山君。
私は――
確かにさっき自己紹介したけど、すでに下の名前呼び……早っ。
私と青山君なんて、名前で呼ぶのに何ヶ月もかかったのに。
やりおるな、この前田君って言う人。
こんな事をひとり考えていた。
「前田、小澤達にも予定があるだろ」
窓の外を見つめていた青山君が、突然口を開いたのをきっかけに我に返る。
「私達は大丈夫だよね?」
「う、うん」
華奈ちゃんの迫力に押し切られた感は否めないけど、確かに来月の予定は何も入っていなかった。
そんな私達を横目に、呆れたように息を漏らす彼を見て胸がズキリと痛む。
私はいいけど、もしかして青山君は私がいると迷惑なのかな。
そんな青山君をよそに、あの後あっという間に私達四人のグループチャットが作られてしまった。
『よろしく』
みんなで送り合ったスタンプとメッセージの中に、青山君からのメッセージはひとつも見当たらなかった。
*
夜、お風呂上がりに華奈ちゃんから借りたノートを開いて、今日の復習をしていた時。
ポヨン♪
通信アプリの通知が鳴った。
誰だろう?
ロックを解除すると、『昼間は前田がごめんね。花火は無理しないで』と、待ちに待った人からのメッセージが。
『無理してないよ!』
すかさず返信を打つ……けど返事は来ない。
あ、あれ?
これだけ?
既読もつかない。
しつこいかもしれないけど、もうひとつ送っちゃう。
『楽しみにしてるからよろしくね』
可愛いウサギのスタンプも一緒に。
結局、その日は彼からの返信はもらえなかった。
次の日の朝、通信アプリを起動して、再度青山君とのトークルームを開く。
既読はついてる。
でも返事はやっぱりもらえなかった。
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