騎士の勇気・世界樹の願い

影葉 柚希

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1章

10話「呪いの力に侵された大地」

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 スジエルとオルターナの国境にて闇の力を確認したガイアとフェランドはアベルゾの指示の元、闇の力を撃破する為に剣を引き抜き闇の力の中に飛び込んでいく。他の騎士達も同じ様に闇の力を撃破していきながらなんとか生き残っているが外で指示を出しているアベルゾは気付く。
 この闇の力……デデルの怨念ではないか? との考えは裏付けされる。大地が腐り、国境付近に住む人々が呪われ、大地の下に通るマナの枯渇……アベルゾはどうにかしてこの怨念を晴らさなくてはオルターナだけではない、スジエルにも影響が出始めてしまう。アベルゾはすぐに聖なる魔法を使える騎士達に指示を出した。
「聖魔法で闇を弱めて、浄化をしていきなさい! この闇はデデルの怨念、怨念の本体を探し出すのです!」
「フェランド!」
「分かっている。光よ、我々に光の加護を!」
 フェランドが剣の先端に聖魔法を宿し、周囲の闇を弱めていく。ガイアはその弱った闇を銀の剣で切り捨てて闇を浄化していくと国境付近の闇は徐々に薄くなってはいく。
 だが、一度腐り果ててしまった大地、枯れてしまったマナはそう簡単には元には戻らない。人々も呪いを受けている、すぐにどうにかなる訳ではないが、ゆくゆくは命に関わってくる可能性もある。
 アベルゾはそんなに怪我もしてない騎士を2人選んでスジエルにある白の神殿へ呪い解除の為に巫女達を派遣するように求める為の早馬を出した。闇の浄化は終わりを迎えるがその浄化によって怪我を負った騎士達が多過ぎる。
 アベルゾは怪我人の治療を決定して、国境の近くにある小さな村に駐留する事にした。怪我人の治療を担当する騎士達も怪我をしているが、それだけのマナを持っている今は治療に動く事を優先している。
「こっちの騎士に魔法を掛けるが止血をお願いしたい」
「そちらの騎士はどうだ?」
「怪我の深さ的に魔法である程度塞いで止血を重点的に行うぞ」
 総勢20名いる騎士達の15名が負傷者、その15名の中にフェランドも姿を見せているがフェランドは自分の治療も程々に他の騎士達の治療へと加わっていた。アベルゾ、ガイアは怪我は軽微でルートの確認の話し合いを行っていたがアベルゾとガイアは少し迷いを見せている。
 怪我人の多い今、無理して進めば命を落とす可能性も高い。ならば怪我人の治療が終わるまでこの村で暫く療養するべきか? 色々な可能性を考えていく。
 そこに治療に当たっていた騎士が定期報告の為にアベルゾ達の元に訪れて報告をしていく。アベルゾの隣に立って聞いていたガイアはその報告を聞いて色々と戦略や今後の行軍にどう活かすかの思案を始める。
「どんな結果であれ、暫くはこの村に滞在するしか考えれる方法はないですね」
「駐留するのであれば村の人々に何か困っている事はないか聞いて、それに協力するって事はどうでしょうか? 剣の訓練にもなりますし、腕の感覚が鈍るという事は避けれるかなとは思いますが」
「そうですね、それは非常に効果的だと思います。まずは村の長である村長に駐留の意を伝えてテントを張る許可を得ましょう」
「分かりました。俺は治療班の様子を伺ってきます」
 ガイアが治療班の確認に赴くとある程度の治療は終わり掛けていた。深い傷を負った騎士にはまだ魔法を掛けられているが、それでも死に至るまでの怪我からは回復した騎士達の体力を回復する為にも駐留は必要だろうとガイアは判断する。
 治療している騎士の中にフェランドの姿を確認したガイアは少し眉を寄せる。見た限りではフェランドの怪我はそこまで酷くはないように見えているが、ガイアはフェランドの性格をしっかり理解している。
 だが、フェランドの手から放たれる回復魔法は他の騎士よりも効果が高い事もあって、止める事はガイアには出来なかった。それは転生者の力を使っているのではない、フェランドの生まれ持ったマナの強さに依存しているからだ。
「助かったよフェランド」
「いえ、他の重症者の治療に当たるので何かあったら呼んで下さいね」
「お前も無理はするなよ? お前だって怪我人なんだから」
「あはは、ありがとうございます。マナの回復中は休んでおきます」
「……はぁ、俺が言っても止めないだろうなあいつ」
 フェランドは自分の事よりも目の前に困っている相手がいれば、助けられる相手がいれば、優先する性格を持っている。だからこそガイアはフェランドがマナの回復で少し休みを取るまでは後方支援の仕事に応じる事にした。
 アベルゾは村長に暫く怪我人の治療と回復をさせてほしい、そう申し出ると村長は快く受け入れてくれた。村長はアベルゾ達スジエルの騎士には希望を抱いていると告げられる。
「我々はオルターナとスジエルの国境で暮らしているからこそ、闇の勢力がオルターナを飲み込んで、次いでスジエルを襲ったのも見ております。でも、我々は希望を持つという事は夢の果てかもと思ってしまう事もあります。ですが、それでもこうしてスジエルの騎士様達がオルターナを解放してここで身を休められている現実を見て実感するのです。我々は神々にまだ愛されている事を」
「そう言ってもらえるだけで光栄です。でも、我々はまだまだオルターナを救ったとは言い難いです。ですが、皆様の為に剣を振るう事で魔神アガルダの力を抑制する事に繋がるのであれば命を賭して戦う所存であります」
「アベルゾ様、そのお身体に宿る命はどんなに足掻いても1つだけでございます。その事を忘れないで頂きたい。そして、どうか最後の瞬間にまでそのお命をお大事にされて下さい」
 村長はそう言ってアベルゾにテントを張る場所を教える為に家から出ていく。アベルゾもそれに着いて行くと点との張る位置を教えてもらい仲間達に指示を出していく。
 アベルゾは村長に深い礼を告げればテントを張り始める仲間達を手伝い始める村人達の為にアベルゾは少し考えている。この村は国境付近であるが故に危険も隣り合わせているからこそ、どうにか安全面を確立させて希望を抱かせて未来を繋げる事になるだろう。
 アベルゾは村長にある提案をする、その申し出に少し驚いていた村長にアベルゾは静かに語る。その言葉に村長は瞳に涙を浮かべて静かに頷いた。
「フェランド」
「ガイア、そっちは終わったかい?」
「あぁ、一先ず行軍開始まではこの村で駐留する事になる。その中で村に恩義を果たす為に色々と協力をする事になる事が決まった」
「なら俺もしっかり村の人達の力にならないとね」
「その前に、フェランドの怪我がどんな程度だと確認させてもらうぞ」
「ふぇ? わっ! が、ガイア!?」
「大人しくしてろ!」
 ガイアはフェランドのアーマー類を脱がしてインナーに滲み込んでいる血の濃さに眉を寄せてしまった。まだインナーに滲み込んでいる血は真新しい。
 インナーを脱がせれば脇腹からドクドクと血が流れているのが分かってしまった。その怪我はデデルの怨念による呪いで出来た傷だから回復魔法の効果が薄いのだ。
 周囲にいた騎士達はフェランドの怪我にギョッと目を見開き急いで手当ての準備に入っていた。ガイアの右手が傷口に触れて呪いの解除を始める。
「っ、い、痛いよガイア……」
「我慢しろ。呪いを解除しないと回復魔法の効果は薄いだろうが」
「フェランド、お前俺達の為に怪我を我慢していたなんて水臭いぞ! まずは傷口を酒で洗って消毒だな!」
「これを使え! フェランドの傷口は深いか? 深いなら縫わないとダメだぞ」
「み、皆……大丈夫だからっ」
「よし、呪いは解除出来た。傷口は……切り傷ではあるが深さは少しある。しっかり手当てされて寝てろ」
 ガイアの手によって解除された呪いの流血は止まり始める。フェランドは仲間達の手により充分に充実した手当てを受けて宛がわれたテント内で寝かされる。
 傷口に施された手当てから感じる眠気に抗えずに寝入っていたフェランドは不意に髪を撫でる手に意識が浮上させる。髪を撫でているのは同郷の友に、兄弟のように、そして、相棒とも言えるガイアの手だと理解したフェランドは力無く微笑みを浮かべた。
「が、いあ……」
「起こしたか?」
「ん、気持ちいいから大丈夫……」
「マナは回復したか? 寝ている間にこの村近くのマナを回復させたんだが」
「ん……、少し回復したっぽい。まぁ、無理はしてないよ」
「ならいい。それでフェランドは考えているとは思うんだが……」
「何を? あ、行軍の事?」
「いや、スジエルが何故希望国だって呼ばれる事をな」
「スジエルは……神々に愛されて、世界樹の加護を受けた国でもあるんだよな? それと同時にスジエルの国に巡るマナは魔神アガルダを封じるだけの威力があるんだっけ?」
「そうだ。魔神アガルダを封じるだけの威力を持つマナが生まれる場所に国として立っている。俺達が魔神アガルダを倒す事はスジエルを……最後の砦として守る必要があるんだ」
 ガイアはそう話しながらフェランドの髪を何度でも撫でる。少しだけガイアの脳裏には切ない記憶が浮かんだのも仕方ないだろうと思う。
 フェランドと一緒にこの騎士としての道を歩く人生を考えるとガイアは考える。フェランドは少しだけ無鉄砲な部分がある、その部分が戦闘でも顕著に出てくるのを仲間達から聞いている。
 だからこそ、ガイアはフェランドは早死にするんじゃないか? との不安に苛まれていたのである。そんなガイアにフェランドはキョトンとして見上げている。
「ガイア?」
「あ、あぁ……フェランド、お前はマナの濃度は他の騎士よりかは濃い。だが、それが故にお前は少しだけ危ないんだ」
「危ない?」
「魔神アガルダがお前の事を見極めたら狙ってくるだろうと考えられるんだよ」
「それはそれで好都合じゃないの?」
「仮に好都合でもあるんなら狙い目でもあるんだが、少しだけ不安要素がある……魔神アガルダがマナを奪っている理由が支配以外の理由があった場合だ」
 そう、ガイアは前世の記憶の持ち主……コーネルドの記憶に残されているある事実。それを考えるとガイアの言葉には重たい圧迫感を感じずにはいられない。
 フェランドもガラハッドの記憶に残されている真実を思い出して真剣に深く考える。そう……ガイアもフェランドもその記憶に残されている事実に色々と考えなくてはいけない事であるのを感じるのであった――――。
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