騎士の勇気・世界樹の願い

影葉 柚希

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2章

12話「精霊の導きと騎士達の決意」

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 村に戻ってきたガイアとフェランドはアベルゾとルーデリッシュの元に姿を見せてからユリウスの言葉に色々と考えているのは分かってしまうが、ユリウスはガイアとフェランドの姿にある種の違和感を覚えていた。まるでガイアとフェランドに白い光が纏わりついているのをアベルゾとルーデリッシュも確認した。
「どうしたんですか……?」
「俺達に何かあります?」
「お2人共……その身体に纏わりついている光は、なんですか?」
「「光??」」
 アベルゾの言葉にガイアもフェランドも首を傾げながらも自分達の身体を見下ろして光の存在を確認する。その光はガイアとフェランドの身体を包み込み癒すように暖かな温もりを与えてくる。
 ルーデリッシュとユリウスはその光に何かを感じて少し凝視してから首を傾げていた。そんな時だった、村の広場に集まっていた子供達の姿に視線を向けた時1人の少女の存在に気付く。
 緑の髪を持ち、他の子供達とは異なる外見をしているが違和感は感じられない程に馴染んでいる。だが、アベルゾとユリウスはその少女から放たれる警戒心を感じていたのである。
「あの少女……この村の子供でしょうか?」
「分かりませんが、まるで村の子供達には害を与えるような存在ではない、と伝えているようではありますが」
「あの少女は近くのキャラバンの娘だと聞いているが」
「キャラバン……」
 少女は子供達の輪に混じりながら遊んでいる。その少女の事をアベルゾもユリウスもルーデリッシュも頭の端に置いておくだけの存在であると言えた。3人がテントの中で今後のスケジュールを話し合っている間の事だった。
 ガイアとフェランドのテントの前に例の少女が立ってガイアとフェランドも対応して少女に視線を合わせてしゃがんでいた。少女は緑の瞳をガイアとフェランドに向けて小さな声で告げる。
「運命の騎士。オルガスタン大陸を救うか? それとも破滅へと導くか?」
「……君は……?」
「子供、じゃないな……なんだお前は……?」
「オルガスタン大陸の精霊を知りたいのであれば泉へ来るがいい……私はお前達を迎えたいと思う。だが、それだけの覚悟を持っているのであれば、な……」
「ガイア……」
「このお嬢さんは何かを知っているご様子だ。泉……そこに行けば真実を聞かせてくれるんだろうな。行こうか」
 緑の髪と緑の瞳を持っている少女は小さく笑ってガイアとフェランドの前からフワリと姿を風に溶かして消した。それを見たガイアとフェランドは確信する。
 少女は人間ではない上に自分達の事を見極めに来た存在である事を。だが、泉に行くしか真実を知る事は出来ないからこそテントから出た2人は村から出て行く。
 泉に行くまでの道を歩いて行きつつガイアとフェランドの中には少女の言葉を思い返すだけの余裕があった。そう、少女はオルガスタン大陸の精霊に関して何かの情報を持っている事実は間違いないのだから。
「この泉……だよな?」
「だとしか思えないんだけれど……。んーあの少女は何処にいるんだろう?」
「この泉に来れば真実を教えてくれるって言葉だった筈だが……ん?」
「泉が……光り始めた……? えっ!? うっ、うわぁ!!」
「フェランド! な、なんだ!?」
『真実を知りたいのであれば抗うな。この泉に残されし”記憶”を見せてあげよう』
 少女の声が聞こえたと同時にガイアとフェランドの身体は泉の中に引き込まれていた。そして、次に意識を取り戻してみれば視界を埋め尽くすのは無数の……幻覚である。
 しかし、その幻覚を見ても2人は驚いてはいるものの混乱して暴れたりはしない。逆に冷静になって幻覚を見つめて情報を集める事に集中する。
 幻覚はガイアとフェランドには視線を向けてもいない、だが、2人の周囲を囲んでいるのには違いないので圧迫感はあるものの敵対している様子は見られなかった。そこで初めて2人は気付いてしまう、この幻覚は自分達の中にある”転生者”の記憶に合致する記憶が映し出されているのである。
「この幻覚は転生者達に近い存在の記憶……って事かな?」
「かも知れない。でも……かなり詳細に近い記憶だと言える。でも……同時にこの幻覚は間違いない、俺達と同じ記憶を持った人物の”記憶”だ」
「なら、どうしてこの幻覚は俺達に記憶を見せ始めているんだろう……まるで俺達の記憶を捕捉するか、調整するかの違いに感じるんだけれど……」
『そう、貴方達はまだ覚醒が完全じゃないから教えてあげているのだよ』
「「!!」」
『この幻覚は貴方達と同じ転生者の記憶が宿っている器。その記憶は全てとは言えないけれども、今の貴方達にとって大事に近い記憶を見せる事が出来る。ただ……覚悟がないのであれば言って欲しい。この先にある記憶は……”優しく”ないのだから』
 少女の声はガイアとフェランドの脳裏に届く。それだけの言葉を言いながら感情を乗せないように必死に理性を働かせているのを2人は感じ取っていた。
 そして、同時に2人は顔を見合わせて頷いた。そう2人は覚悟はしているのだ、その覚悟を感じ取ったドリアードの心に不安を生み出すが。
 2人の身体に静かに細い糸が絡み付いていくとその糸は四肢に吸い込まれていき、その部分から幻覚の器内にある記憶が2人の中に流れ込んでくる。その量は……膨大過ぎて頭が破壊され兼ねないがその記憶は2人の中にある転生者の記憶に同調していく。
「コーネルドの記憶に合致している……この記憶は誰の視点で見られた記憶だ?」
「ガラハッドはこの記憶の中では英雄ではなくて……1人の青年。まだ覚醒する前の記憶?」
 2人は同調していく記憶を確認していくと1つ1つその記憶の真実を受け入れていく。だが……その瞬間だった。
 記憶の部分部分に闇の力の影響だろう。記憶が曇っていくのが分かった。
 そして、同時に2人の記憶の中に闇の力による侵食が始まる。侵食に侵されていく都度に痛みに苛まれる脳からの伝達に身体も強張って、身体中が痛みから逃げようと反射的に動き始める。
 口からは苦悶の声が漏れはするけれどもガイアは気合いで痛みに耐えていた。だが、隣にいるだろうフェランドからは痛みに悶絶する声は聞こえない、ただ小さな声で「闇の力」と呟いているだけの声だけだった。
『運命の騎士、この闇の力に染まった記憶をどう受ける? 痛みを通り過ごして精神的に侵されるこの試練を騎士は……そう、超えたのね……。魔神アガルダはこの程度の痛みだけしか与えてくるとは限らない。オルガスタン大陸の未来を託せるだけの器を見せて……』
 そこでガイアとは別に闇の力を確認しているフェランドには異変が見られ始める。ガイアが気付いた時にはフェランドの身体は真っ黒い闇の瘴気に包まれて泉の底に飲み込まれていく姿だった。
 ガイアの手がフェランドの腕を掴もうとしたが、その手は空を切りフェランドの身体は泉の底に消えて行った。だが、同時にガイアの身体中に流れ込む記憶の内容が真実を知らせてきた。
「まさか……魔神アガルダの本当の狙いは……大魔神ポゾロの復活じゃない……?」
『そう。魔神アガルダの本当の狙いは……この大陸に眠っている魔神竜ガルゼッゾの蘇生を目的にしている。精霊たちだけじゃない、オルガスタン大陸の地中に流れているマナを使っても簡単にはいかない。だから……魔神アガルダはこのオルガスタン大陸の全てを犠牲にしても蘇生を求めているの。そして、その鍵になっているのはもう1人の騎士の記憶なの』
「フェランド……の記憶? もしかして……っ」
『あの騎士の前世……希望の英雄である”ガラハッド”は運命の御子なんだよ。そして、その運命は変えれない最後の英雄』
 ドリアードの言葉に聡明なガイアは察してしまう。そうフェランドは魔神アガルダの狙いである魔神竜ガルゼッゾの復活の鍵だという事だ。
 フェランドの生まれ持った濃度の濃いマナを所持していた理由に納得してしまう。そう、フェランドがこの戦いの最後の希望であり、最後の砦でもあるのだ、と。
 そして、ガイアに課される運命の役目をドリアードは静かに語り始める。ガイアにしか出来ない運命を変える為に必要な行動を語っていく。
『御子の力を高めるのに必要なのはオルガスタン大陸の精霊と妖精、それだけじゃない。全ての生物の中に生まれ持っているマナを統合して御子に注ぎ、調和させていく調律を担当しなくてはならない。その役目を貴方が持たないといけない……でも、その果てに貴方は御子と共に未来を歩むには色々と超えなくてはならない試練があるけれど、貴方はそれを超えるだけの覚悟はある?』
「俺は……この運命を変えれるのであれば試練を乗り越えてやる。でも、フェランドと一緒に俺は魂の解放をするまで運命に抗って見せる!!」
 その言葉に乗せられた決意はドリアードを満足させるだけの言葉ではあった。そして、ガイアとフェランドは意識を取り戻した時、泉の傍に座り込んでいる自分達に気付いてお互いの手を握り締めて寄り添っているのだ。
 だが、泉から姿を見せた緑の髪と瞳を持つ少女の姿をしたドリアードは2人の目の前で小さな微笑みを浮かべる。ドリアードの右手から光の輪が生まれてガイアの右手に、フェランドの左手を包み込んで何かを生成して形になったのを2人は確認した。
「これは……?」
「温かい気がする……」
『精霊のマナを辿る為に必要なリング。オルガスタン大陸の精霊の長達に会って協力を仰いで欲しいの。私のようにその土地にしか生きれない精霊は貴方達の旅を祝福する事しか出来ないから。貴方達、運命の騎士にオルガスタン大陸の未来を託すしか出来ない私を許して……』
「ありがとう。君の祝福は俺達に勇気を与えてくれる。きっとオルガスタン大陸の未来を取り返してくるよ」
「精霊の長達に会う為の協力をしてくれるだけでもありがたいよ。お嬢さん、あの記憶はこの土地に住んでいた精霊が残してきた記憶だろう? 貴重な体験をありがとうな」
『貴方達にオルガスタン大陸の加護がありますように……』
 ドリアードの声が聞こえなくなり、姿も見えなくなってから2人は立ち上がり手を繋いだまま村へ戻ろうと足を動かし始める。2人の姿を見たアベルゾとユリウス、ルーデリッシュは安堵の息を吐き出して駆け寄る事で安全を確認する。
 そう、全てはオルガスタン大陸の未来を取り戻す為に戦い始める転生者達は運命に抗うのであった――――。
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